慢性リンパ性白血病(まんせいリンパせい白血病)
概要
慢性リンパ性白血病(CLL)は、血液のがんの一種です。血液の中の「リンパ球」という、からだを守る免疫の担当細胞が、骨髄(こつずい=血液を作る場所)や血液、リンパ節の中で異常に増えてしまう病気です。「慢性」は進行がゆっくりという意味、「リンパ性」はリンパ球から始まるという意味です。
重要な事実
- 進行がゆっくりなことが多く、症状がないときは治療を始めずに定期的に様子を見る(経過観察)ことがよくあります。
- 自覚症状がないまま、健康診断や他の病気の検査の血液検査で見つかることも多い病気です。
- 治療の選択肢は年々増えており、長く付き合っていける病気と考えられるようになっています。
日本では比較的まれな病気ですが、欧米では成人の白血病の中で最も多いタイプです。日本でも高齢の方が増えるにつれて報告が増えています。
主に60代以上の方に見られ、発見時の年齢の中央値は70歳前後とされています。若い方や子どもにはほとんど見られません。男性にやや多く見られます。
症状
- 意識がもうろうとしている、返事がおかしい
- 呼吸が苦しい、息ができない感じがする
- 38度以上の高熱が続き、ぐったりしている
- 出血が止まらない、血を吐いた、便が黒い・血が混じる
- 突然の激しいおなかの痛みや、おなかの張りが急に強くなった
- ⚠発熱が続く、寒気がする
- ⚠急に息切れが強くなった、動悸がする
- ⚠新しいあざが増えた、歯ぐきや鼻の出血が止まりにくい
- ⚠リンパ節が急に大きく腫れた
- ⚠体重が短期間に大きく減った、寝汗がひどい
一般的な症状
- 疲れやすい、だるい、力が出ない
- 首・わきの下・足の付け根などのリンパ節が腫れる(多くは痛みがない)
- 微熱が続く、夜に汗をかく(寝汗)
- 特に努力していないのに体重が減る
- おなかが張る、張りがある(脾臓=ひぞうが大きくなることがある)
- 風邪をひきやすい、感染症にかかりやすい
- 皮膚のかゆみや赤い発疹が出る
- 息切れ、動悸(貧血によることがある)
- 青あざができやすい、歯ぐきや鼻の出血が止まりにくい
子供の症状
- この病気は子どもにはほとんど見られません。小児の白血病は別のタイプが多く、症状も異なります。
- お子さんのことで気になる症状があるときは、小児科の医師に相談してください。
高齢者の症状
- 症状がほとんどなく、血液検査の数字で見つかることが多いです。
- 持病の薬や体力、生活の状況をふまえて、治療を始めるかどうかを相談します。
- 感染症にかかると重症化しやすいので、発熱などいつもと違う変化に気をつけましょう。
- 疲れやすさや息切れを「年のせい」と思い込まず、気になる変化は主治医に伝えましょう。
原因
主な原因
- リンパ球の遺伝子(からだの設計図)に変化が積み重なることで起こると考えられています。
- 生まれつき親から受け継ぐ病気ではなく、家族の中で同じ病気になることはまれです。
- はっきりした原因はまだ一つに特定されていません。
- この病気になったのは、何かの行いや生活のせいではありません。
リスク要因
- 年齢(60代以上で多く見られます)
- 性別(男性にやや多い)
- ごくまれに家族内で見られることがある
- 農薬や一部の化学物質、放射線への曝露との関連が指摘されることがありますが、確実な原因としては証明されていません
- 免疫の働きに関わる病気や、免疫を抑える治療を受けたことがある場合
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 38度以上の発熱が続く、寒気をともなう
- 息切れや動悸が急に強くなった
- 出血が止まりにくい、あざが急に増えた
- リンパ節が急に腫れた、痛みが強くなった
- おなかが急に張って苦しい
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断で「リンパ球が多い」と言われた
- 疲れやすさやだるさが続いている
- リンパ節の腫れが数週間以上続いている
- 微熱や寝汗、体重減少が気になる
- 風邪をくり返す、感染症にかかりやすい
診断
まず血液検査で、白血球(特にリンパ球)の数や形を調べます。確定のためには、細胞の表面にある目印(マーカー)を調べる検査や、骨髄(こつずい)の中の細胞を調べる検査を行うことがあります。診断がついたあとは、病気の広がりや進行の程度を確認します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(血算、血液の細胞を顕微鏡で見る検査)
- フローサイトメトリー(細胞の表面の目印を調べる検査)
- 骨髄穿刺・骨髄生検(骨髄の中の細胞を調べる検査)
- 染色体検査や遺伝子検査(病気の性質や見通しを判断する材料になります)
- リンパ節の生検(必要に応じて)
- 超音波検査やCT検査(リンパ節や脾臓の大きさを確認)
- 免疫グロブリンというタンパク質の量を調べる検査
- 肝炎ウイルスなどの感染症の検査(治療方針を決めるために行います)
診察で予想されること
検査の結果が出るまでに数日から数週間かかることがあります。結果をもとに、病気の広がり(病期)と、「今すぐ治療が必要か、それとも様子を見てよいか」を医師と一緒に考えます。診断された直後に必ず治療を始めるわけではないことを知っておくと、少し心が落ち着くかもしれません。
治療
慢性リンパ性白血病は、すべての人がすぐに治療を始めるわけではありません。症状がなく、血液の数字も落ち着いている場合は、治療をせずに定期的に通院して様子を見る「経過観察」が選ばれることが多くあります。治療が必要になったときに、体の状態や病気の性質に合わせて方法を選びます。
自宅でのセルフケア
- 手洗い・うがいをこまめに行い、人混みをできるだけ避ける
- 予防接種は自己判断で受ける前に、必ず主治医に相談する
- 十分な睡眠と休養をとり、疲れをためない
- バランスの良い食事を心がけ、生ものはできるだけ避ける
- 無理のない範囲で体を動かす(ウォーキングなど)
- 毎日の体温や体調の変化を記録して、通院時に伝える
- 発熱や出血など気になる症状があれば、自己判断せず早めに連絡する
医療治療
治療が必要になったときは、薬による治療が中心になります。免疫の働きを利用した治療、がん細胞の目印を狙う治療、抗体を使った治療、化学療法などを、病気の性質や年齢、体力、持病を考えて組み合わせます。大きなリンパ節や脾臓の症状を和らげるために放射線治療を使うこともあります。造血幹細胞移植は、若い方や病気の性質によって検討されることがあります。どの方法を選ぶかは、主治医とよく相談して決めていきましょう。
手術が検討される場合
通常、手術でこの病気を治すことはありません。手術が行われるのは、リンパ節の検査のために一部を取る場合や、脾臓が大きくなりすぎて症状が強い場合に脾臓を摘出する場合などです。
この病気と共に生きる
多くの方は通院しながら、普段と変わらない生活を続けています。経過観察の期間は「何もしない」のではなく、「定期的に確認している」期間です。疲れやすさに合わせて予定を調整したり、感染症予防を心がけたりしながら、自分のペースで過ごしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 手洗い・うがいを習慣にし、病気の人との接触をできるだけ避ける
- 禁煙を心がけ、飲酒はほどほどにする
- 睡眠をしっかりとり、体力を保つ
- ペットの世話やガーデニングの後は手をよく洗う(感染症予防のため)
- 旅行や外出の予定は、主治医に相談してから決める
- 気になる症状や体調の変化はメモして通院時に伝える
食事と運動
この病気に特別な食事療法があるわけではありません。野菜やたんぱく質をバランスよくとり、生ものはできるだけ避けて食品を安全に扱うことが大切です。運動は、ウォーキングなど息が上がりすぎない程度のものを無理なく続けましょう。疲れやすい日は休むことも大切です。食事や運動の内容で迷ったら、主治医や管理栄養士に相談してください。
精神的健康と心の健康
「がんだ」と言われて不安になるのは自然なことです。特に経過観察の期間は、「治療していない」ことに不安を感じる方も多くいます。気持ちが落ち込む、眠れない、不安が強いといった状態が続くときは、ひとりで抱え込まずに主治医や看護師、医療ソーシャルワーカー、心理の専門職に話してください。地域の相談窓口や自治体のこころの健康相談も利用できます。もし気持ちが追い詰められて自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわずに救急(119)や地域の緊急相談窓口に連絡してください。
予防
慢性リンパ性白血病を確実に防ぐ方法は、今のところ分かっていません。生活習慣を変えれば必ず防げるというものでもありません。早期に見つけるためには、健康診断などで血液検査を受けておくことが役立ちます。気になる症状があるときは早めに医師に相談しましょう。
ワクチン
感染症はこの病気の方にとって重症化しやすいことがあります。予防接種は有効な対策の一つですが、種類によっては受ける前に主治医への相談が必要です。自己判断で受けずに、必ず主治医に相談してください。
検診プログラム
日本では、この病気だけを対象とした公的な検診はありません。健康診断や他の病気の検査で行う血液検査が、見つかるきっかけになることが多いです。
合併症
治療しない場合
- 貧血が進み、息切れや疲れやすさが強くなることがあります
- 血小板が減って、あざや出血が起きやすくなることがあります
- 免疫の働きが弱まり、感染症にかかりやすく、重症化しやすくなることがあります
- リンパ節や脾臓が大きくなり、圧迫による痛みや張りが出ることがあります
- まれに、進行が急に速くなる別のタイプに変わる(転化)ことがあります
長期的な見通し
慢性リンパ性白血病はゆっくり進むことが多く、何年も治療を必要とせずに過ごす方もいます。治療薬は近年大きく進歩しており、長く病気をコントロールできるようになってきています。経過は一人ひとり異なるため、ご自身の見通しについては主治医に遠慮なく尋ねてください。心配なことを質問することは、治療を進めるうえで大切なことです。
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最終更新: 2026年10月22日
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