慢性骨髄性白血病(CML)
概要
慢性骨髄性白血病(まんせいこつずいせいはっけつびょう、CML)は、血液のがんのひとつです。骨の内側にある「骨髄(こつずい)」という血液を作る場所で、白血球のもとになる細胞の遺伝子に変化が起こり、正常に育たない白血球が少しずつ増えていく病気です。名前のとおり、多くの人では進行がゆっくりで、長い間ほとんど症状がないこともあります。
重要な事実
- 白血病の中ではまれなタイプで、日本では1年間に10万人あたり1〜2人くらいが新たに診断されると言われています。
- 「フィラデルフィア染色体」とよばれる、細胞の中の遺伝子の並び替えが原因で起こります。この変化は生まれたときからあるものではなく、後から体の中で起きたもので、親から子へ遺伝するものではありません。
- 今は毎日飲む飲み薬を中心とした治療で、病気の勢いを長く抑えながら、仕事や家事、学校などの日常生活を続けている人が多くいます。
よくある病気ではありません。大人の白血病の中では比較的よく見られますが、がん全体から見るとまれな部類に入ります。
主に大人に多く、年齢が上がるほど診断される人が増えます。男性にやや多いとされています。子どもで見つかることはとてもまれです。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけても反応が弱い
- 息が苦しくて話せない、顔色が青白い
- 胸を強く痛がる、冷汗が出ている
- 大量の出血が止まらない、血を吐いた、黒い便が続く
- ⚠38℃以上の発熱がある、または熱が下がらずぐったりしている(治療中の発熱は感染症のサインのことがあり、急ぎの対応が必要です)
- ⚠息苦しさが強くなってきた
- ⚠あざや点状の出血が急に増えた、歯ぐきの出血が止まりにくい
- ⚠おなかの左側が急に張って痛い
- ⚠尿が出にくい、尿の色が赤い
一般的な症状
- 疲れやすい、体がだるい、少し動くと息が切れる(貧血による症状)
- 微熱が続く、夜に汗をかく(寝汗)
- 食欲が落ちる、体重が減る
- おなかの左側が張る、しこりを感じる、服のウエストがきつくなる(脾臓(ひぞう)という臓器が大きくなるため)
- あざができやすい、歯ぐきや鼻から出血しやすい
- かぜをひいたわけでもないのに、だらだらと具合が悪い期間が続く
- 特に初期は症状がほとんどなく、健康診断の血液検査で白血球の多さを指摘されて見つかることも多い
子供の症状
- 子どもでCMLが見つかることはとてもまれです
- 大人と同じように、疲れやすさ、微熱、おなかの張りなどが手がかりになります
- 成長や学校生活への影響も考えて、小児を専門とする医療機関で相談しながら進めることが大切です
高齢者の症状
- 高齢の方では症状が出にくく、疲れや息切れを「年のせい」と思ってしまいがちです
- ほかの病気(高血圧や糖尿病など)の治療中の血液検査で、偶然見つかることもあります
- 体力や持病、生活の状況をふまえて、治療の強さや通院の間隔を調整します
原因
主な原因
- 9番目と22番目の染色体の一部が入れ替わることで、「フィラデルフィア染色体」という変化が生まれます。
- この変化により、白血球を増やすスイッチが入りっぱなしのような状態になり、異常な白血球が増えていきます。
- この遺伝子の変化は、体の細胞の中で後から起こるもので、生まれつき持っているものではありません。家族にうつしたり、遺伝したりするものではありません。
- なぜその変化が起きるのかは、多くの場合よく分かっていません。本人の生活や性格のせいではありません。
リスク要因
- 年齢:大人に多く、年齢とともに増えます
- 性別:男性にやや多いとされています
- 高い線量の放射線を浴びた経験(原爆被爆者や、放射線治療を受けた方など)との関連が知られています
- 喫煙や食生活など、生活習慣との強い関連は今のところ確認されていません
- 家族に同じ病気の人がいる場合でも、遺伝する病気ではないと考えられています
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 38℃以上の発熱が続く、または高熱でぐったりしている
- 息苦しさが強くなった、動悸が止まらない
- 出血が止まりにくい、あざが急に増えた
- おなかの左側が急に張って痛む
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断や人間ドックで「白血球が多い」と言われた
- 何週間も続く疲れ・だるさがある
- 説明のつかない体重減少や寝汗がある
- おなかの左側に張りやしこりを感じる
- 熱が長引く、かぜのような症状がすっきりしない
診断
まず血液検査で、白血球の数や種類の偏りを調べます。CMLが疑われたときは、骨髄(こつずい)という血液を作る場所から少し細胞を採って調べる検査と、染色体や遺伝子を調べる検査を行い、確定します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(血算・血液像):白血球の数や、成熟していない細胞が混ざっていないかを見ます
- 骨髄穿刺(こつずいせんし)・骨髄生検:腰の骨などから細い針で骨髄の細胞を少し採取します
- 染色体検査:フィラデルフィア染色体があるかを調べます
- 遺伝子検査(PCR法など):病気の量を数値で測り、治療の効果を追いかけます
- 腹部超音波検査:脾臓が大きくなっていないかを確認します
- 肝臓・腎臓の働きなどの一般検査:治療を選ぶときの参考にします
診察で予想されること
検査の結果が出るまでに数日から2週間ほどかかることがあります。待っている間は不安なものです。説明を受けるときは、家族や信頼できる人と一緒に行くと安心です。聞きたいことをメモにしておき、分からない言葉はその場で「どういう意味ですか」と尋ねてよいのです。治療の目標や通院の見通しについても、早めに共有してもらうと心の準備ができます。必要であれば、別の医師の意見を聞く(セカンドオピニオン)こともできます。
治療
CMLは、今では「長く付き合いながら抑えていく病気」と考えられるようになっています。特に進行がゆっくりな「慢性期」に治療を始めた場合、多くは毎日飲む飲み薬が中心になります。治療の効果は、血液検査や遺伝子検査の数値を見ながら、時間をかけて確認していきます。目標は、病気の量をとても少ない状態(深い寛解(かんかい))で長く保ち、ふだんどおりの生活を続けられるようにすることです。
自宅でのセルフケア
- 決まった時間に薬を飲む:飲み忘れを防ぐために、服薬カレンダーやスマートフォンの通知を活用しましょう
- 自己判断で薬をやめたり量を変えたりしない:副作用がつらくても、まずは主治医や薬剤師に相談してください。調整できることが多くあります
- 感染症予防:手洗い・うがい、人混みではマスク、体調が悪い人との接触を控える
- 発熱があったら自己判断で市販薬を飲み続けず、早めに医療機関に連絡する
- 睡眠と休息をしっかりとり、無理のない範囲で体を動かす
- 検査結果を手元に記録しておくと、体調の変化に気づきやすくなります
- サプリメント・健康食品・市販薬・ハーブは、治療に影響することがあるので、始める前に必ず主治医か薬剤師に相談する
医療治療
中心になるのは、CMLの原因となる異常なタンパク質の働きを抑える種類の飲み薬(分子標的薬(ぶんしひょうてきやく)とよばれるグループの薬)です。毎日続けて飲むことで、病気の勢いを長く抑えることを目指します。効果が十分でない場合や、副作用が強い場合は、別の種類に変更したり、量を調整したりします。このほか、症状を和らげるための支持療法(水分や栄養の補給、必要に応じた輸血、感染症の治療など)を行うことがあります。若い方など限られた状況では、造血幹細胞移植(ぞうけつかんさいぼういしょく)を検討することもあります。具体的な薬の種類や量は、病状・年齢・持病・生活状況をふまえて主治医が決めます。気になることは遠慮なく質問してください。
手術が検討される場合
CMLは血液のがんで、手術で切り取って治す病気ではありません。ただし、脾臓がとても大きくなって痛みや圧迫症状が強い場合などに、脾臓を取る手術を検討することがあります。また、造血幹細胞移植は「移植」とよばれ、手術とは仕組みが異なります。
この病気と共に生きる
多くの人は、通院しながら仕事や家事、学校生活を続けています。毎日の服薬が生活の一部になりますが、習慣にしてしまえば続けやすくなります。通院の間隔は、最初は短めで、状態が落ち着いてくると少しずつ延びていくのが一般的です。体調の波や副作用は人それぞれなので、遠慮せずに医療者に伝えましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を心がける(感染症や血管の病気のリスクも下がります)
- お酒はほどほどに。量について主治医に相談しましょう
- 手洗い・うがいを習慣にし、流行期は人混みを避ける
- インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンについて、主治医に相談する(治療中は生ワクチンを避けることがあります)
- 疲れをためない:こまめに休む、睡眠時間を確保する
- 薬によっては日光に弱くなることがあるため、外出時の紫外線対策を相談する
- 妊娠・出産を考えている場合は、治療の影響があるため、必ず事前に主治医と家族計画について相談する
食事と運動
特別な食事制限が必要ないことが多い病気です。バランスよく、主食・たんぱく質・野菜をそろえて食べることを心がけましょう。治療中は感染予防のため、生の魚や生卵などは時期によって控えるよう案内されることがあります。運動は、散歩や軽いストレッチなど、息が上がりすぎない範囲から始めるのがおすすめです。食事や運動の具体的な内容は、主治医や管理栄養士、理学療法士に相談すると安心です。
精神的健康と心の健康
「がんだ」と告げられたときの衝撃、先の見えない不安、通院の負担、副作用による気分の落ち込みなど、心の負担は決して小さくありません。不安や悲しみは自然な気持ちで、弱さではありません。眠れない、涙が出る、何も楽しめない、といった状態が2週間以上続くときは、がまんせずに主治医・看護師・薬剤師・心理の専門家に話してください。話すだけで楽になることがあります。もし「消えたい」「死にたい」と思う気持ちがわいたときは、ひとりで抱え込まず、すぐに主治医や看護師、地域の相談窓口、または救急(119)に連絡してください。あなたのつらさは、必ず誰かに受け止めてもらえます。
予防
CMLは、体の細胞の中で後から起こる遺伝子の変化が原因で、生活習慣を改めれば防げるという病気ではありません。自分や家族のせいではないことを、どうか覚えていてください。確立された予防法はありませんが、健康診断の血液検査を毎年受けておくことは、体の変化に早く気づく助けになります。
ワクチン
CMLそのものを防ぐワクチンはありません。ただし治療中は感染症が重症化しやすいため、インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンについて主治医に相談してください。生ワクチンは治療の状況によって避けることがあります。
検診プログラム
CMLだけを対象にした検診はありません。健康診断や人間ドックの血液検査で白血球の多さを指摘され、見つかることよくあります。気になる数値を指摘されたら、次回の健診まで待たずに相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 病気が「慢性期」から「促進期」、さらに「急性転化(きゅうせいてんか)」へと進み、急に勢いが強くなって治療が難しくなることがあります
- 脾臓が大きくなり、おなかの張りや痛み、食べるとすぐにおなかが苦しくなるなどの症状が出ます
- 貧血が進み、強い疲れや息切れ、動悸が起こります
- 正常な白血球が減り、感染症にかかりやすく、重症化しやすくなります
- 血小板が減って、出血しやすくなることがあります
長期的な見通し
CMLは、飲み薬を中心とした治療が大きく進んだ病気です。慢性期に治療を始めた多くの人が、病気の量をとても少ない状態で長く保ち、ふだんどおりの生活を続けています。経過は人によって異なり、効果が十分でないときに治療を替えることもできます。定期的な検査を続けながら、主治医と一緒に一歩ずつ整えていくことができます。希望を持って、遠慮なく質問や相談をしてください。
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最終更新: 2026年10月22日
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