循環器(心臓と血管)のしくみと、気をつけたい変化
概要
循環器(じゅんかんき)とは、心臓・血管・血液をまとめた呼び名で、体の中の「運搬のしくみ」のことです。心臓はポンプのように血液を送り出し、血管はその血液が通る道です。血液は、酸素と栄養を体のすみずみまで届け、かわりに二酸化炭素や老廃物(体のいらなくなったもの)を持ち帰ります。このしくみが滞ると、息切れ・むくみ・胸の痛みなど、体のいろいろな場所にサインが現れます。
重要な事実
- 心臓は1日に約10万回ほど打ち、血液を全身に送り続けています。
- 血管は全身に張りめぐらされ、その長さは地球を2周以上するともいわれます。
- 循環器の不調は、心臓だけでなく脳・腎臓・足など、体のさまざまな場所に影響します。
とてもよくある領域です。心臓や血管の病気は日本人の死因の上位を長く占めており、高血圧や脂質異常(コレステロールなどの異常)は中高年の何割もの人が持つ身近な状態です。ただし、多くは生活習慣の見直しと早めの受診で進行をゆるやかにできます。
年齢を重ねるほど多くなりますが、若い人でも起こります。生まれつき心臓や血管に形の特徴がある人、糖尿病・高血圧・脂質異常がある人、喫煙する人、家族に心臓病の人がいる人などは特に注意が必要です。男女差もあり、女性は閉経後にリスクが上がるといわれます。
症状
- 突然の激しい胸の痛みが15分以上続く、または冷や汗をともなう胸の圧迫感(迷ったらすぐ119番)
- 突然の強い息苦しさ、呼吸ができない感じ、顔色が悪い
- 意識を失った、倒れて呼びかけに反応が弱い
- 顔の片側がゆがむ、片方の手足が動かない・しびれる、ろれつが回らない、急に見えにくい(脳の血管のサインの可能性)——すぐ119番
- 脈がとても速くて止まらない、胸が苦しくて立っていられない
- ⚠動悸が何十分も続く、脈が飛ぶ感じが繰り返す
- ⚠数日のうちに足のむくみが急に強くなった、体重が急に増えた
- ⚠少し歩いただけで息切れするようになった
- ⚠手足が急に冷たくなり、痛む、色が白や紫に変わった
- ⚠血圧がいつもと大きく違う(とても高い、または低い)状態が続く
一般的な症状
- 動悸(どうき)——心臓の鼓動がドキドキしたり、脈が飛んだりして強く感じる
- 息切れ——階段や坂道で、以前より息が上がりやすい
- 胸の痛みや圧迫感——締めつけられる、重い、押されるような感じ
- むくみ——足のすねや足首、まぶたなどが腫れる
- 疲れやすい、すぐだるくなる
- めまい、立ちくらみ、ふらつき
- 手足の冷え、しびれ、皮膚の色が青白くなる
- 脈が速い・遅い・不規則だと感じる
子供の症状
- 哺乳(母乳やミルクを飲むこと)の途中で疲れてすぐやめてしまう、体重が増えにくい
- 泣いたり動いたりしたときに息が苦しそう
- 唇や爪の色が青紫色に見える(ちあのーぜと呼びます)
- 成長がゆっくり、走るとすぐ息切れする
- 突然ふらついて倒れる、意識が一瞬遠くなる
高齢者の症状
- 胸が痛くないのに、息切れや強い疲労感だけが出ることがある
- 足のむくみ、体重が数日で急に増える
- 夜中にトイレに起きる回数が増える、横になると息苦しい
- 食欲が落ちる、元気がない、ぼんやりする(体の不調が『なんとなく』で現れやすい)
- 転倒が増える、歩くのが遅くなった気がする
原因
主な原因
- 動脈硬化——血管の内側に脂肪などがたまり、硬く狭くなる状態
- 高血圧——血管に高い圧力がかかり続け、心臓にも負担がかかる
- 脂質異常(コレステロールや中性脂肪の異常)
- 糖尿病——高い血糖が血管を傷つける
- 不整脈——心臓の電気の流れが乱れる
- 心臓の弁や筋肉の病気、生まれつきの心臓の形
- 感染症による心筋の炎症(心筋炎)、血栓(血のかたまり)が血管を詰まらせる
- 喫煙、過度の飲酒
リスク要因
- 年齢(加齢)と家族に心臓・血管の病気が多いこと
- 喫煙(受動喫煙も含む)
- 塩分の多い食事、野菜や魚が少ない食事
- 運動不足、長時間すわったまま過ごすこと
- 肥満、特におなか周りの脂肪
- 高血圧・脂質異常・糖尿病(健診で指摘されたことがある)
- 睡眠不足、強いストレス、睡眠時無呼吸(いびきと息が止まる状態)
- 過度の飲酒
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の痛みや強い圧迫感がある、または冷や汗をともなう
- 安静にしていても息苦しい、横になると息が苦しい
- 動悸が続いて落ち着かない、脈が明らかにおかしい
- 足のむくみが急に出た、体重が数日で大きく増えた
- 失神した、意識が遠のいたことがある
定期受診を予約すべき場合:
- 階段や坂道で息切れしやすくなった気がする
- 脈が飛ぶ感じ、ドキドキする感じがときどきある
- 夕方になると足がむくむ
- 健診で血圧・コレステロール・血糖を指摘された
- 家族に心臓病や脳卒中の人がいる
- 手足が冷たい、しびれる、歩くとふくらはぎが痛くなる
診断
まず問診と診察で、症状の出方・生活習慣・家族歴を確認します。血圧を測り、脈の速さや規則性を触れ、聴診器で心臓と肺の音を聞きます。そのうえで、必要に応じて検査を組み合わせて、心臓や血管の状態をやさしく調べていきます。
行われる可能性のある検査
- 血圧測定、脈の確認、聴診
- 血液検査(コレステロール、血糖、腎臓の働き、心臓に負担がかかっていないかを見る項目など)
- 心電図(心臓の電気の流れを記録する検査)
- 心エコー(超音波で心臓の形や動きを見る検査。痛みはありません)
- ホルター心電図(24時間つけて脈の乱れを調べる)
- 運動負荷試験(歩いたり自転車をこいだりして心臓の反応を見る)
- 胸部レントゲン、CT・MRI(血管のつまりや形を画像で見る)
- 血管エコー、足の血圧測定(ABI)——手足の血管の状態を調べる
- カテーテル検査(細い管を血管から入れて詳しく調べる。必要と判断された場合)
診察で予想されること
検査の多くは痛みがなく、日帰りで行えます。心電図や血圧測定は数分で終わります。カテーテル検査など入院が必要なものは、事前に医師から説明があります。結果の説明のときに聞きたいことをメモしておくと、あとで振り返りやすくなります。
治療
治療の土台は、生活習慣を整えることです。そのうえで、状態に合わせて血圧・血糖・コレステロールを整える薬、血液が固まりにくくなる薬、心臓の負担を減らす薬などが使われます。どの薬が必要かは、検査結果と体の状態を見て医師が判断します。自己判断で薬をやめたり量を変えたりせず、気になることは薬剤師にも相談してください。
自宅でのセルフケア
- 家庭で血圧を測り、記録する(毎日同じ時間帯に)
- 減塩を心がけ、汁物の汁は残すなど小さな工夫から始める
- 禁煙する。まずは本数を減らす相談を医療機関で
- 適度なお酒の量を守る、休肝日をつくる
- 無理のない範囲で体を動かす(早歩きの散歩など)
- 体重と足のむくみを時々チェックする
- 睡眠を十分にとる、いびきや息苦しさがあれば相談する
- 処方された薬を決められたとおりに続ける(飲み忘れ対策に、薬剤師に相談するのもおすすめです)
医療治療
治療は大きく3つの柱があります。1つめは生活習慣の見直し、2つめは薬による管理(血圧や血糖、コレステロールを整える、血液を固まりにくくする、心臓の負担を減らす、脈の乱れを整えるなど、目的別に選ばれます)、3つめは必要に応じた手技や手術です。さらに、心臓の病気のあとには心臓リハビリテーション(運動や生活指導を組み合わせた回復プログラム)が行われ、体力と安心を取り戻す助けになります。治療の内容は人によって異なるため、主治医と相談しながら進めます。
手術が検討される場合
狭くなった血管を広げる治療(風船や金具を使う方法)、血管のバイパスをつくる手術、心臓の弁の手術、ペースメーカーなど、心臓の電気を助ける機器の装着が検討されることがあります。手術が必要かどうかは、症状・検査結果・年齢や体の状態をふまえて医師が判断します。急に決めるものではなく、必ず説明を受けたうえで相談できます。
この病気と共に生きる
循環器の不調は、付き合い方を工夫することで毎日の生活を穏やかに保てます。血圧や体重を記録しておくと、体の変化に早く気づけます。寒い季節や朝の起きがけ、入浴時は体への負担が大きくなりやすいので、ゆっくり動く、湯温を熱くしすぎないなどの工夫が役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 朝はゆっくり起きて、急に立ち上がらない(立ちくらみ予防)
- 長時間すわったままを避け、1時間に一度は立って動く
- 寒暖差を避ける(冬は暖かく、夏は冷房で冷えすぎない)
- 便秘を防ぐ(いきむと心臓に負担がかかることがあります)
- 入浴はぬるめのお湯で、長湯を避ける
- 旅行や外出の前に、主治医に相談しておく
- 周りの人に体調の変化を伝えられる関係をつくっておく
食事と運動
食事は、塩分を控えめにし、野菜・果物・魚・大豆製品・全粒穀物をとり、加工食品や脂っこい食事を控えめにする形が基本です。減塩は「だしや香辛料、酢や柑橘を使う」「汁物は汁を残す」など小さな工夫の積み重ねが続けやすくなります。運動は、早歩きの散歩など息が少し上がる程度を、無理のない範囲で定期的に行います。胸の痛みや強い息切れが出たら中止し、医師に相談してください。急に激しい運動を始めるのではなく、少しずつ増やすのが安全です。
精神的健康と心の健康
「心臓」と聞くと不安が大きくなる方は少なくありません。動悸や胸の違和感を気にするあまり、外出を控えてしまうこともあります。不安や落ち込みが続くときは、我慢せずに主治医やかかりつけの看護師・薬剤師、地域の保健センターなどに話してください。強い不安や気分の落ち込みが続くとき、眠れない日が続くときは、医療機関で相談することが大切です。もし自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、その場で一人で抱えず、救急(119番)や医療機関にすぐ連絡してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、多くの循環器の不調はリスクを下げられます。禁煙、減塩、適度な運動、体重管理、質のよい睡眠、飲酒を控えめにすることは、どれも血管と心臓を守る助けになります。小さな変化を長く続けることが一番の近道です。
ワクチン
インフルエンザなどの感染症は、心臓や血管に負担をかけることがあります。心臓の病気を持つ方には、かかりつけ医と相談のうえで予防接種が勧められることがあります。接種の可否や時期は、医師や薬剤師に相談してください。
検診プログラム
日本では、生活習慣病の予防を目的とした健診(特定健診・健康診査)で血圧・脂質・血糖を調べられます。会社や自治体の健診を受けること、家庭で血圧を測ることが早期発見につながります。健診で指摘されたら、放っておかずに医療機関で相談してください。
合併症
治療しない場合
- 心不全——心臓のポンプの力が弱くなり、息切れやむくみが続く状態
- 心筋梗塞——心臓に血液を送る血管が詰まる
- 脳卒中——脳の血管が詰まる、または破れる
- 不整脈の悪化、失神
- 腎臓の働きの低下
- 足の血管が狭くなることによる歩行時の痛み、重症の場合の皮膚の障害
- 生活の質の低下、入院の増加
長期的な見通し
循環器の不調は、うまく付き合っていける領域です。禁煙や減塩、適度な運動、薬による管理、定期的な受診を続けることで、症状を抑え、これまでどおりの生活を続けている方は大勢います。気になるサインに早く気づいて相談することが、いちばんの安心につながります。希望を持って、主治医と一緒に一歩ずつ進めていきましょう。
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最終更新: 2026年10月22日
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