口唇裂・口蓋裂(こうしんれつ・こうがいれつ)
概要
口唇裂(こうしんれつ)は、生まれつき上くちびるに裂け目(さけめ)ができる状態です。口蓋裂(こうがいれつ)は、口の中の天井にあたる部分(口蓋=こうがい)に裂け目ができる状態です。赤ちゃんがお母さんのおなかの中で育つとき、顔のパーツが真ん中でくっつく時期があります。このくっつきがうまくいかないことで起こります。勉強やしつけ、妊娠中の過ごし方が原因になるものではありません。手術やことばの練習などの支援を組み合わせることで、多くの子どもがふつうの生活を送れるようになります。
重要な事実
- 生まれつきの状態で、親の育て方や愛情が原因ではありません。多くの場合、家族の誰かのせいでもありません。
- 日本ではおよそ500人に1人くらいの割合で生まれるといわれ、生まれつきの状態の中では比較的よくみられます。
- 口唇裂と口蓋裂は一緒に起こることも、どちらかだけのこともあります。
- 手術を中心に、授乳・ことば・歯・耳のケアを組み合わせて、成長に合わせて長く支えていく状態です。
はい。生まれつきの体の特徴(先天異常)の中では比較的よくみられるもので、日本ではおよそ500人に1人くらいといわれています。決してめずらしいことではなく、同じ経験をした家族もたくさんいます。
症状
- ミルクや食べ物が気管に入り、息ができない、顔色が青白い、呼吸が苦しそう
- 口の中や手術した部分からの出血が止まらない
- 意識がない、けいれんが続く
- 急にぐったりして反応が弱い
- ⚠ミルクをほとんど飲めず、おしっこの量が減っている(脱水のおそれ)
- ⚠発熱が続く、とくに手術のあとに熱が出た
- ⚠手術した部分が赤く腫れてきた、膿のようなものが出ている
- ⚠飲むたびにむせて、ゼーゼーいう息が続く
一般的な症状
- 上くちびるの裂け目(片側だけのことも、両側のこともあります)
- 口の中の天井(口蓋)の裂け目。見た目ではわかりにくいこともあります
- 鼻の形の左右差や、鼻の穴の形の違い
- ミルクをうまく吸えず、飲むのに時間がかかる、むせる、鼻からもれる
- 体重が増えにくい、飲む量が少ない
- ことばの発音がはっきりしない(成長して話し始めたころ)
- 耳の中に水がたまりやすく、中耳炎をくり返しやすい
- 歯並びやかみ合わせの乱れ
子供の症状
- 授乳に時間がかかり、疲れて途中でやめてしまうことがある
- 飲んでいる途中でむせたり、鼻からミルクがもれたりする
- 体重の増えがゆっくりで、成長曲線から外れることがある
- ことばの遅れや、発音の不明瞭さを指摘される
- 中耳炎をくり返し、聞こえの確認が必要になることがある
- 歯が生えてくる時期や歯並びに影響が出ることがある
- 見た目や声のことで、友だちとの間で不安を感じることがある
高齢者の症状
- 大人になってから初めて見つかることは、ほとんどありません
- 子どものころに手術を受けた人は、鼻の形、かみ合わせ、あごの成長などについて長く経過を見ていくことがあります
- ことばの相談や、歯・かみ合わせの治療を大人になってから受ける人もいます
- 必要に応じて、二次的な手術(後から行う手術)を検討することがあります
- 手術の傷あとや見た目について、本人の希望を医師と話し合うことが大切です
原因
主な原因
- 赤ちゃんがおなかの中で育つとき、顔のパーツが真ん中でくっつく過程がうまくいかないことで起こります
- 多くの場合、はっきりした原因はひとつではありません。遺伝的な要因と、妊娠中の環境的な要因が組み合わさって起こると考えられています
- 一部は、ほかの体の特徴と一緒に現れる症候群(いくつかの特徴がまとまって現れる状態)の一部として起こります
- 両親の育て方や、妊娠中の食事の好み、運動などが原因になるわけではありません
リスク要因
- 家族(親やきょうだい、親戚)に同じ状態の人がいる
- 妊娠中の喫煙、または周りの人の煙を吸うこと
- 妊娠中の飲酒
- 妊娠初期の栄養状態(葉酸などの栄養素との関連が研究されています)
- 妊娠中の血糖値のコントロールがよくない状態
- 妊娠中の肥満
- 妊娠中に服用した薬が関係する場合があるといわれています。薬を自己判断でやめたり変えたりせず、必ず医師や薬剤師に相談してください
- 妊娠中の感染症などが関係する場合があります
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 生まれたばかりの赤ちゃんの授乳がうまくいかず、体重が増えない
- 飲むたびにむせて、呼吸が苦しそうなとき
- 手術のあとに熱が出た、傷が腫れた、出血が続く
- おしっこの量が減る、ぐったりしているなど脱水が心配なとき
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠中の超音波検査で、顔の形について指摘された
- 家族に同じ状態の人がいて、妊娠前や妊娠中に相談したい
- ことばの発音が気になる、話し始めが遅いと感じる
- 中耳炎をくり返す、聞こえが悪そうに感じる
- 歯並びやかみ合わせが気になる
- 見た目や傷あとについて、本人や家族が悩んでいる
診断
多くの場合は、生まれたときに上くちびるの裂け目を見てわかります。口蓋裂は、口の中を明るい光でよく見て確認します。妊娠中の超音波検査(おなかの中の赤ちゃんを画像で見る検査)で見つかることもありますが、口蓋裂は見つけにくいことがあります。
行われる可能性のある検査
- 体の診察(口の中、鼻、あごの形を確認します)
- 妊娠中の超音波検査
- 体重・身長の測定と、飲む量の記録
- 聴力検査(聞こえの確認)と耳の診察
- ことばの発達の評価(ことばの専門家による確認)
- 歯科・矯正歯科での診察(歯並びやかみ合わせの確認)
- 必要に応じて、血液検査や遺伝カウンセリング(遺伝について専門家と話す機会)
- いびきや睡眠中の呼吸が気になる場合の検査
診察で予想されること
生まれたあと、できるだけ早い時期に小児科や形成外科で評価を受けます。ひとつの科だけでなく、小児科・形成外科・歯科・耳鼻咽喉科・ことばの専門家・看護師などがチームになって支える体制が整っていることが多いです。最初の診察では、授乳の方法や今後の予定について一緒に確認していきます。質問はメモにまとめて持っていくと安心です。
治療
治療の中心は手術で、裂けている部分を閉じます。それに加えて、飲む・食べるの支援、ことばの練習、耳のケア、歯並びの治療などを、成長に合わせて組み合わせていきます。ひとつの治療で終わるのではなく、子どもが大きくなるまで継続して支えていく形が一般的です。
自宅でのセルフケア
- 授乳や食事の方法は、赤ちゃんに合った姿勢や飲ませ方を医療スタッフと一緒に工夫します。自己判断で器具を変える前に相談しましょう
- 手術の前後は、傷を清潔に保ち、医師や看護師の指示に従ってケアします
- 決められた受診日をできるだけ続けることが、長い目の支援につながります
- 家でのことばの練習は、遊びのなかに取り入れて無理なく続けましょう
- 歯みがきの習慣を早くから身につけ、定期的に歯科でみてもらいます
- 子どもの気持ちをよく聞き、見た目や声について話し合える関係をつくります
医療治療
手術によって裂けている部分を閉じる治療が中心です。口唇裂の手術は生後数か月ごろ、口蓋裂の手術は生後1年から1年半ごろまでに行うことが多いといわれますが、子どもの状態によって時期は変わります。耳に水がたまりやすい場合には、耳鼻咽喉科で鼓膜の処置を行うことがあります。ことばの練習は、ことばの専門家と一緒に進めます。歯並びやかみ合わせについては、歯科・矯正歯科で治療をすることがあります。成長の途中や大人になってから、鼻の形やかみ合わせを整えるための追加の手術を検討することもあります。使う薬や処置の具体的な内容は、必ず担当の医師の説明を受けてください。
手術が検討される場合
手術の時期は、裂け目の範囲や体の成長、全身の健康状態によって一人ひとり違います。一般的な目安として、口唇裂は生後数か月ごろ、口蓋裂は生後1年から1年半ごろまでに手術を行うことが多いといわれていますが、これはあくまで目安です。いつ、どの手術を行うかは、医療チームと家族で話し合って決めていきます。
この病気と共に生きる
授乳や食事の工夫、定期的な通院、ことばの練習など、毎日のなかで続けていくことがあります。最初は覚えることが多くて大変に感じるかもしれませんが、医療スタッフが具体的な方法を一緒に考えてくれます。保育園や学校には、必要な配慮(食事の時間、聞こえのサポートなど)をあらかじめ伝えておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 受診の予定をカレンダーで家族全員が共有しておく
- 耳の状態、歯みがき、ことばの練習を日々の習慣に取り入れる
- 傷あとは紫外線で目立ちやすくなることがあるため、日差しの強い日は帽子や日焼け止めで守る
- 本人が自分の状態をどう説明したいかを、年齢に応じて一緒に考える
- 家族だけで抱え込まず、同じ経験をした家族とつながる
- からかいや嫌な言葉があったときは、一人で対処させず、学校と一緒に考える
食事と運動
手術の前は、むせないように飲み込みやすい形や姿勢を工夫し、体重が増えているかを確認しながら進めます。手術のあとは、医師の指示に従って少しずつ食事を再開します。ふだんの運動はほとんどの場合ふつうに行えますが、手術のあとはしばらく激しい運動や口の周りへの刺激を控えるよう指示されることがあります。栄養については、母子手帳の健診や管理栄養士の相談も活用してください。
精神的健康と心の健康
見た目や声のことで不安になったり、からかわれて傷ついたりすることがあります。赤ちゃんの親御さんが「自分のせいかもしれない」と自分を責めてしまうことも少なくありませんが、それは事実ではありません。子ども自身も家族も、気持ちが揺れるのは自然なことです。つらい気持ちが続くときや、眠れない、気分が落ち込み続けるときは、一人で抱えずに医療機関やお住まいの自治体の相談窓口に相談してください。命に関わる緊急の状態のときは、ためらわずに119番へ連絡してください。
予防
口唇裂・口蓋裂を完全に防ぐ方法は、今のところわかっていません。ただ、妊娠前から妊娠中にかけての健康管理が、リスクを下げる可能性があるといわれています。禁煙(周りの人の煙を避けることも含む)、飲酒を控える、バランスの良い食事をとる、持病の血糖値をコントロールする、薬は自己判断で使わず医師や薬剤師に相談する、といったことが大切です。すでに妊娠中で思い当たることがあっても、自分を責める必要はありません。次の妊娠を考えるときの参考として、医師に相談してみてください。
ワクチン
この状態を防ぐワクチンはありません。妊娠中の感染症を防ぐためのワクチンについては、かかりつけの医師に相談してください。
検診プログラム
妊娠中の超音波検査で、赤ちゃんの顔の形を確認することがあります。ただし口蓋裂は見つけにくいことがあります。家族に同じ状態の人がいる場合は、妊娠前や妊娠中に遺伝カウンセリングを受けて相談することもできます。
合併症
治療しない場合
- ミルクをうまく飲めず、栄養や体重の増えに影響することがある
- ことばの発音の発達に影響が出ることがある
- 耳に水がたまりやすく、中耳炎をくり返して聞こえに影響することがある
- 歯並びやかみ合わせの乱れが出ることがある
- 鼻の形や顔の形に影響が残ることがある
- 見た目や声のことで、学校や社会生活のなかで心理的な負担を感じることがある
長期的な見通し
口唇裂・口蓋裂は、手術と長期的な支援によって、多くの人がふつうの生活を送れるようになる状態です。治療には年月がかかりますが、その分、医療チームが成長に合わせて支えてくれます。学校生活、仕事、恋愛、家族を持つことなど、選択肢は広がっていきます。一人ひとりのペースで進んでいけば大丈夫です。
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最終更新: 2026年10月22日
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