寒さが体に与える影響(寒さによる不調)
概要
寒い季節や低温の場所に長くいると、体はどんどん熱をうばわれ、体温を保つのが難しくなります。「寒さによる不調」とは、こうした低温が原因で体に起こるさまざまな変化や病気の総称です。代表的なものに、体の中心の温度が危険なほど下がる低体温症(ていたいおんしょう)、手足の皮膚が傷むしもやけや凍傷(とうしょう)、急な温度差で血圧が大きく上下するヒートショック、転びやすくなることによる骨折、喘息(ぜんそく)や心臓の病気の悪化などがあります。寒さは屋外だけでなく、暖房の少ない室内でも体を冷やします。
重要な事実
- 体の中心の温度(深部体温・しんぶたいおん)が35℃を下回ると「低体温症」とよばれ、命に関わることがあります。
- 寒さは屋外だけでなく、暖房の少ない部屋や、脱衣所・浴室・トイレなどでも体を冷やします。
- 高齢者や赤ちゃんは体温を保つ力が弱く、寒さの影響を受けやすいです。また、のどの渇きを感じにくく、水分不足になりがちです。
- 石油ストーブやガス器具を換気せずに使うと、一酸化炭素中毒(色もにおいもない気体による中毒)の危険があります。
とてもよくあることです。冬になると、ほとんどの人が手足の冷え、皮膚の乾燥やかゆみ、朝の体のだるさなどを経験します。多くの場合は暖かくして休めば自然に良くなりますが、低体温症や凍傷、ヒートショックのように医療機関の助けが必要な場合もあります。
誰にでも起こりますが、特に影響を受けやすいのは、高齢者、乳幼児(赤ちゃんと小さな子ども)、心臓・肺・甲状腺(こうじょうせん)の病気や糖尿病のある人、貧血のある人、やせている人、低栄養や脱水のある人、屋外で長時間働く人、暖房が十分に使えない住環境にいる人、アルコールを多く飲む人です。
症状
- 意識がない、または呼びかけへの反応がとても弱い
- 呼吸が浅い、遅い、または息が苦しそう
- 激しい震えが止まり、体がとても冷たい(低体温症が進んでいるサイン)
- 言葉が出にくい、ろれつが回らない、顔や手足の片側が動かない(脳の病気の可能性)
- 胸の強い痛みや締めつけられる感じが続く
- 換気の悪い暖房器具を使っていて、頭痛・めまい・吐き気・動悸がある(一酸化炭素中毒の疑い)
- 凍傷で皮膚が黒ずんでいる、白くなって感覚がない、水ぶくれが広がっている
- お風呂や脱衣所で意識を失った、倒れているのを見つけた
- ⚠しもやけが悪化して水ぶくれになった、傷が化膿している
- ⚠皮膚の傷が痛くて眠れない、広がっている
- ⚠喘息(ぜんそく)の発作がいつもの薬で落ち着かない
- ⚠38℃以上の発熱が続く、呼吸が苦しい
- ⚠強いめまい・ふらつきが続き、立ち上がれない
- ⚠寒さのあとから尿の量が減った、むくみが強い
一般的な症状
- 手足や指先の冷え、体が温まりにくい
- 手の指・足の指・耳・鼻などが赤くなり、腫れる・かゆい・痛い(しもやけ)
- 皮膚が白っぽくなり、しびれる・感覚がにぶくなる(凍傷の初期)
- 皮膚の乾燥、ひび割れ、かゆみ
- 鼻水、せき、のどの違和感、喘息(ぜんそく)の悪化
- 関節や腰のこわばり、痛み
- 朝起きにくい、体がだるい、眠気が強い
- 寒い部屋と暖かい部屋を行き来したときのめまい・ふらつき(ヒートショック)
- 血圧がいつもより高くなる
子供の症状
- 体温を保つ力が未熟で、体が冷えやすい
- 寒くても「寒い」と言えず、遊びに夢中になって冷えが進むことがある
- 震えが出にくく、代わりに元気がなくなる・ぼんやりする・眠りがちになる
- 顔色が悪い、唇の色が青白い、手足がとても冷たい
- しもやけができやすい、皮膚が乾燥して赤くなる
- 機嫌が悪い、食欲がない
高齢者の症状
- 寒さを感じにくくなり、体が冷えていても気づかないことがある
- 震えが出にくく、低体温症に気づくのが遅れやすい
- 急な温度変化で血圧が大きく上下し、胸の痛みや脳の症状(ろれつが回らない、手足の麻痺)が起こることがある
- 寒さで体が動きにくくなり、転倒・骨折しやすい
- 水分をとる量が減り、脱水や腎臓への負担が起こりやすい
- 冬に気分が落ち込む、外に出る機会が減る
原因
主な原因
- 気温の低下、冷たい風、雨や雪で体がぬれること
- 暖房が十分でない部屋、床や壁が冷たい住まい
- 暖かい部屋と寒い脱衣所・浴室・トイレを行き来する急な温度差
- 長時間の屋外活動や屋外での仕事
- 換気が不十分なまま暖房器具を使うこと(一酸化炭素中毒の原因)
- 薄着、汗でぬれた衣服、体を締めつける靴や衣類で血の流れが悪くなること
- 食事や水分が不足して、体を温めるエネルギーが足りないこと
リスク要因
- 高齢であること、乳幼児であること
- 心臓・肺・甲状腺(こうじょうせん)の病気、糖尿病、貧血があること
- 血圧や気分に影響する薬、眠気を出す薬などを服用していること(体温調節に影響することがあります)
- やせている、低栄養、脱水がある
- アルコールを多く飲む(一時的に温かく感じても、体の熱は逃げやすくなります)
- 暖房を使いにくい住環境、屋外での作業、長距離の移動
- うつ状態や認知症などで、寒さへの気づきや対応が難しくなっている
- 持病があり、冬に体調をくずしやすい
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 寒さにさらされたあと、強い眠気・ぼんやり・ろれつの回りにくさがある
- 胸の痛み、息苦しさ、動悸(どうき)が続く
- しもやけや凍傷の部分が黒ずむ、感覚がない、水ぶくれが広がる
- 転倒して頭を打った、手足が動かしにくい
- 換気の悪い暖房器具を使ったあとに頭痛・吐き気・めまいがある(その場を離れて換気し、すぐに相談してください)
- 高熱と呼吸の苦しさが同時にある
定期受診を予約すべき場合:
- 手足の冷えやしもやけが何度も繰り返す
- 皮膚の乾燥・かゆみ・ひび割れが続く
- 冬になると気分が落ち込む、眠れない、食欲が変わらない状態が2週間以上続く
- 血圧が冬に高くなりやすいと言われたことがある
- 寒さのあとから体のだるさ、むくみ、尿の量の変化が続く
- 喘息(ぜんそく)や心臓の病気があり、冬に症状が増えている
診断
寒さによる不調は、問診と体の様子の観察で診断が進みます。医師は、どんな環境にどれくらいいたか、寒さにさらされた時間、持病や飲んでいる薬、住まいの暖房の状況などを聞きます。体温(体の中心の温度)を測り、皮膚の色や感覚、血の流れを確認します。しもやけや凍傷は見た目と症状で判断されることが多く、低体温症が疑われるときは体温の測定と全身の状態の確認が重要になります。
行われる可能性のある検査
- 体温測定(必要に応じて体の中心の温度をより正確に測ります)
- 血圧・脈・呼吸・酸素の状態の確認
- 血液検査(貧血、甲状腺の働き、脱水、電解質、心臓への負担などを見ます)
- 心電図(胸の痛みや動悸があるとき)
- 胸部の画像検査(息苦しさやせきが強いとき)
- 皮膚の状態の観察(必要に応じて専門の医師が確認します)
診察で予想されること
多くは診察と簡単な検査で済み、その日のうちに方針が決まります。軽い場合は「暖かくする・保湿する・水分をとる」といったアドバイスが中心です。低体温症や凍傷、心臓・肺の症状が疑われるときは、より詳しい検査や入院が必要になることがあります。医師から説明を受けたら、わからないことはその場で確認しましょう。
治療
治療の基本は「体をゆっくり温めること」と「それ以上冷やさないこと」です。軽い症状なら、暖かい部屋に移り、ぬれた衣服を着替え、毛布で包み、温かい飲み物をとることで改善します。ただし、寒さによる不調の背景に心臓・肺・甲状腺などの病気が隠れていることもあるため、症状が続くときや持病があるときは医療機関で相談することが大切です。
自宅でのセルフケア
- 暖かい部屋に移り、ぬれた衣服をすぐに着替える
- 毛布や重ね着で体を包み、帽子・手袋・靴下で手足と頭を冷やさない
- 温かい(熱すぎない)飲み物や食事をとり、少量ずつこまめに水分をとる
- しもやけの部分はこすらず、ぬるま湯でゆっくり温める
- 皮膚は入浴後に保湿剤でやさしく保護する
- アルコールで体を温めようとしない(一時的に温かく感じても、体の熱は逃げやすくなります)
- 寝る前や朝に、部屋の温度を確認する習慣をつける
- 換気をしながら暖房を使い、就寝中や外出中は暖房器具の扱いに気をつける
- 体調が悪いときは無理に外出や仕事をせず、家族や周囲の人に声をかける
医療治療
医療機関では、寒さによる不調の程度に応じて、体を安全にゆっくり温める処置、温かくした輸液(点滴)、酸素の補助、血の流れや心臓の状態の管理などが行われます。皮膚の傷が化膿しているときは、傷の処置や感染への対応が行われます。心臓・肺・甲状腺などの持病が関係している場合は、その病気の治療が中心になります。薬が必要と判断される場合もありますが、内容は症状や持病によって異なるため、医師・薬剤師の説明に従ってください。
手術が検討される場合
寒さによる不調の多くは手術を必要としません。ただし、凍傷で皮膚や組織が大きく傷んだ場合や、転倒による骨折などがある場合は、専門の医師による処置や手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
冬の間は「体温を急に下げない」ことを毎日の習慣にしましょう。朝起きたらまず部屋を暖め、脱衣所や浴室は入浴前に温めておきます。外出時は天気予報で気温と風を確認し、重ね着で調節できる服装を。夜は寝具を温め、トイレに行くときも上着をはおるなど、小さな工夫が体温を守ります。
生活習慣のアドバイス
- 室温は18℃以上を目安にし、寒いと感じたら無理をせず暖房を使う
- 首・手首・足首・頭を冷やさない(マフラー、手袋、靴下、帽子)
- 入浴は熱すぎないお湯で、脱衣所と浴室を先に温める。長湯は避ける
- 起床時やトイレのときは、ゆっくり動いて急に立ち上がらない
- 換気はこまめに(暖房器具の说明書に従い、定期的に空気を入れ替える)
- たばこは血の流れを悪くするため、寒い時期は特に控えめに
- 一人暮らしの高齢者とは、家族や近所で声をかけ合う約束をしておく
食事と運動
温かい汁物や鍋などで体を中から温め、たんぱく質・野菜・主食をバランスよくとりましょう。水分はのどが渇かなくても少量ずつこまめに。運動は、屋内でできる軽い体操やストレッチ、暖かい時間帯の散歩がおすすめです。寒い日の屋外での激しい運動は、心臓への負担が大きくなることがあるので、体調と気温を見ながら無理のない範囲で行いましょう。
精神的健康と心の健康
冬は日照時間が短く、外に出る機会も減るため、気分が落ち込む、やる気が出ない、眠気が強い、食欲が変わるといった変化が起こりやすくなります。これは「冬季うつ」とよばれることもあります。朝にカーテンを開けて日光を浴び、日中は外の光を感じながら過ごすことが助けになります。つらい気持ちが2週間以上続くときや、日常生活が難しいと感じるときは、一人で抱えず、かかりつけ医やお住まいの自治体の相談窓口、医療機関に相談してください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療機関や地域の緊急相談窓口に連絡し、緊急の場合は119番を呼んでください。
予防
ある程度は防げます。気温をこまめに確認し、重ね着で調節する、部屋と脱衣所を暖める、換気をしながら暖房を使う、水分をこまめにとる——こうした基本の備えで、低体温症やヒートショック、転倒のリスクを大きく下げられます。
ワクチン
冬に流行する感染症(インフルエンザや新型コロナウイルス感染症など)は、寒さで体の抵抗力が落ちたときに重症化しやすくなります。ワクチンを受けるかどうか、いつ受けるかは、年齢や持病、これまでの接種歴によって異なります。かかりつけ医や自治体の案内を確認し、自分に合った方法を相談してください。
検診プログラム
寒さによる不調そのものを調べる検査はありませんが、冬に血圧が上がりやすい人、貧血や甲状腺(こうじょうせん)の病気が心配な人は、健康診断やかかりつけ医での相談が役立ちます。自治体の健康診断の案内も参考にしてください。
合併症
治療しない場合
- 低体温症が進み、意識がぼんやりする、呼吸や心臓の動きが弱くなる
- 凍傷で皮膚や組織が傷み、感覚が戻りにくくなることがある
- ヒートショックによる胸の痛みや脳の症状(脳梗塞・心筋梗塞など)
- 喘息(ぜんそく)や心臓病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の悪化
- 転倒による骨折、寝たきりにつながる体力の低下
- 脱水や腎臓への負担
- 一酸化炭素中毒(気づかないうちに進むことがあります)
- 気分の落ち込みが長引き、生活の質が下がる
長期的な見通し
多くの場合は、暖かくして休み、水分と食事をとることで数日以内に良くなります。寒さは毎年やってくるものですが、服装・住まい・声かけといった備えを少しずつ整えることで、安心して冬を過ごせます。持病がある人も、早めに相談して冬の過ごし方を一緒に考えることで、安定した状態を保ちやすくなります。
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最終更新: 2026年10月22日
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