糖尿病がある人は大腸がんのリスクが高め — 知っておきたいこと
概要
大腸がんは、食べ物の通り道である大腸(消化管の最後の部分)の内側の壁からできるがんです。多くの場合、まず「ポリープ」という小さなこぶができ、それが長い時間をかけて大きくなって、一部ががんになると考えられています。一方、糖尿病は、血液中の糖(血糖)が高い状態が続く病気です。この二つは別の病気ですが、糖尿病がある人は大腸がんになるリスクがやや高いという研究結果が多く報告されています。糖尿病があるからといって必ず大腸がんになるわけではありません。大切なのは、リスクが少し高めだと知っておき、検診などで早めに気づくことです。
重要な事実
- 糖尿病がある人は、ない人に比べて大腸がんになるリスクがやや高いと報告されています。特に2型糖尿病で、期間が長い人、血糖のコントロールがよくない人ほどリスクが高めというデータがあります。
- 大腸がんは初期にはほとんど症状がありません。症状が出たときには進んでいることもあるため、症状の有無にかかわらず検診を受けることが大切です。
- 大腸がんは、早期に見つかれば内視鏡で切除できたり、手術で治せたりする可能性が高いがんです。早く見つけることがとても重要です。
大腸がんは、日本でかかる人が多いがんで、女性では特に多いがんです。糖尿病も日本に非常に多い病気です。ですから、この二つが重なることは決して珍しくありません。糖尿病の通院を続けている人ほど、大腸がん検診も一緒に受けやすいという利点があります。
糖尿病のある人、とくに2型糖尿病の人、糖尿病になってからの期間が長い人、血糖コントロールがよくない状態が続いている人、そして肥満や運動不足がある人は、大腸がんのリスクが高めと考えられています。年齢では40歳以上、特におおよそ50歳以上で大腸がんが増えてきます。家族に大腸がんの人がいる場合もリスクが高まります。糖尿病のない人でも、これらの要因があれば関係があります。
症状
- 大量の血便や下血があり、顔面が青白い、冷や汗が出る、意識がぼんやりする(すぐに119番)
- 激しいおなかの痛みで動けない、おなかが硬く張っている(すぐに119番)
- 吐血した、またはコーヒー色のものを吐いた(すぐに119番)
- 立てないほどのめまいや失神があった(すぐに119番)
- ⚠血便や便の黒さが数日続く(当日〜翌日に医療機関へ)
- ⚠強いおなかの痛みや張りが続き、食事がとれない
- ⚠発熱とおなかの痛みが同時にある
- ⚠息切れや動悸が強くなり、ふらつく(貧血の可能性)
一般的な症状
- 初期はほとんど無症状のことが多い(自覚症状がないまま進行することがある)
- 便に血が混じる(血便)、または便が黒っぽくなる
- 便が細くなる、便が出にくい、便秘と下痢を繰り返す
- おなかの張り、おなかの痛み、ガスがたまった感じが続く
- 理由に心当たりがないのに体重が減っていく
- 疲れやすい、息切れがする(見えない出血による貧血のことがある)
- 残便感がある(出し切った感じがしない)
子供の症状
- 子どもでは大腸がんはとてもまれです。子どものおなかの痛みや血便は、便秘や感染性の胃腸炎など別の原因がほとんどです。
- ただし、1型糖尿病の子どもは将来にわたって健康管理が大切です。大人になったときの検診のことを、かかりつけ医に聞いておくとよいでしょう。
- 子どもの血便や強いおなかの痛み、繰り返す下痢は、小児科で相談してください。
高齢者の症状
- 高齢の方では症状が出にくく、貧血の検査で初めて見つかることがあります。
- 糖尿病や心臓病などの持病があると、「いつものこと」と思って受診が遅れがちです。気になる変化は早めに相談しましょう。
- 複数の薬を飲んでいる場合は、検査や治療の前に、かかりつけ医や薬剤師に薬の情報を伝えておくと安心です。
原因
主な原因
- 大腸の内側の細胞の遺伝子に変化が積み重なり、ポリープからがんへと進んでいくと考えられています。
- 糖尿病では血糖が高い状態が続くことで、細胞の増え方に影響する物質(インスリンに似た働きをする成長因子など)が増えたり、体の慢性の炎症が続いたりすることが、大腸がんのリスクと関係する可能性が指摘されています。
- 糖尿病でよくみられる肥満や運動不足、食生活の偏りも、大腸がんのリスクを高める要因になります。
リスク要因
- 糖尿病(特に2型糖尿病、期間が長い、血糖コントロールがよくない)
- 肥満(とくにおなか周りに脂肪がつくタイプ)
- 運動不足、長い時間すわり続ける生活
- 喫煙、飲酒量が多いこと
- 赤身の肉や加工肉(ハム・ソーセージなど)の多い食事、食物繊維や野菜が少ない食事
- 家族に大腸がんの人がいる(家族歴)
- 年齢(40歳以上、とくに50歳以上で増える)
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)を長く患っている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 血便が続く、便が黒い状態が続く
- 理由のない体重減少がある
- おなかの痛みや張りが続き、食事がとりにくい
- 健康診断で貧血を指摘された、便潜血検査が陽性だった
- 便秘と下痢の繰り返しが2週間以上続く
定期受診を予約すべき場合:
- 糖尿病の通院をしている人は、次回の診察のときに大腸がん検診の話を聞いてみる
- 40歳以上で、ここ数年大腸がん検診を受けていない
- 家族に大腸がんの人がいる
- 血糖コントロールが思わしくない状態が続いている
- 生活習慣(食事・運動・喫煙)を見直したい
診断
まずは問診と、便に目に見えない血が混じっていないかを調べる検査(便潜血検査)から始まることが多いです。陽性だった場合や症状がある場合は、大腸内視鏡検査(肛門から細いカメラを入れ、大腸の内側を直接見る検査)を行います。必要に応じて、組織を少し取って調べる検査(生検)や画像検査を行い、がんかどうか、広がりはどうかを確認します。糖尿病の通院中の方は、主治医に検診の結果を伝えておくと話がスムーズです。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状、家族歴、これまでの病歴、飲んでいる薬の確認)
- 便潜血検査(便に混じる目に見えない血を調べる)
- 血液検査(貧血の有無や全身の状態を確認)
- 大腸内視鏡検査(大腸の内側を直接観察し、必要なら組織を採取)
- CT検査や腹部超音波検査など(病変の位置や広がりを確認する画像検査)
- 必要に応じて、ポリープや組織の一部を採って調べる病理検査
診察で予想されること
大腸内視鏡検査の前には、腸の中をきれいにするための下剤を飲む準備が必要です。検査中は鎮静剤を使うことがあり、多くの場合、痛みは軽くすみます。検査のあとは、結果の説明を受けるまでに数日から1週間ほどかかることがあります。待っている間は不安なものです。検査の流れや準備、結果がわかる時期について、あらかじめ医療スタッフに聞いておくと心の準備ができます。
治療
大腸がんの治療は、がんの大きさ、位置、広がり(ステージ)、体の状態によって選ばれます。早期のがんであれば、内視鏡で切除できることがあります。より深く広がっている場合は手術が中心になります。状況に応じて、薬物療法(抗がん剤など)や放射線治療を組み合わせることもあります。同時に、糖尿病の血糖コントロールを保つことも治療の大切な一部です。治療方針は、主治医とよく相談しながら決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 糖尿病の治療を続け、血糖コントロールを保つ(自己判断で薬をやめない)
- 禁煙する。飲酒は量と頻度を控えめにする
- バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動を続ける
- 決められた検診・検査の予定を守り、気になる症状は早めに伝える
- 体調の変化や便の様子をメモしておき、診察のときに伝える
- 水分をしっかりとる。便秘が続くときは相談する
医療治療
治療は「内視鏡で切除する」「手術で取り除く」「薬物療法(がんの増え方を抑える治療)」「放射線治療」などを、がんの状態に合わせて組み合わせます。どの治療が合うかは、がんのステージや体の状態、生活の状況によって変わります。具体的な治療の種類や進め方については、主治医から詳しい説明を受け、納得してから決めてください。当記事では特定の薬の名前や量はお伝えしません。
手術が検討される場合
手術は、がんが大腸の壁の深くまで入り込んでいる場合や、リンパ節に広がっている可能性がある場合などに検討されます。早期で内視鏡だけで切除できる場合もあります。手術の範囲や方法、体への負担、術後の生活については、担当医から詳しい説明があります。糖尿病がある場合は、手術前後の血糖管理についても事前に相談しておくと安心です。
この病気と共に生きる
糖尿病と大腸がんを同時に抱えると、通院や検査が増え、体も心も疲れることがあります。すべてを一度に完璧にこなす必要はありません。通院の予定を一つの手帳やカレンダーにまとめる、家族や周りの人に付き添いを頼むなど、負担を減らす工夫を少しずつ試してみてください。体調がよい日は無理のない範囲で動き、つらい日は休む。その繰り返しで大丈夫です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける。禁煙外来など、使える支援を活用する
- 飲酒は控えめにし、飲まない日をつくる
- 睡眠をしっかりとり、生活のリズムを整える
- ストレスをためこまず、話せる相手や相談先を持つ
- 主治医・看護師・薬剤師・管理栄養士と相談しながら、自分に合った生活のペースをつくる
食事と運動
食事は、野菜・きのこ・海藻・豆類などの食物繊維をとり、赤身の肉や加工肉は控えめに、塩分もほどほどにするのが基本です。糖尿病の食事管理と大腸がん予防の食事は、多くの部分で重なります。血糖の急な上がり下がりを避けるため、主食は適量を、よくかんでゆっくり食べましょう。運動は、ウォーキングなど息が少しはずむ程度のものを、無理のない範囲で続けるのがおすすめです。治療中や手術後は、どの程度動いてよいかを必ず主治医に確認してください。食事や運動の具体的な内容は、管理栄養士やかかりつけ医に相談すると安心です。
精神的健康と心の健康
「糖尿病があるから、がんになったらどうしよう」という不安や、検査結果を待つ間の緊張は、とても自然な気持ちです。気持ちが落ち込む、眠れない、何もする気が起きないといった状態が2週間以上続くときは、一人で抱え込まずに相談してください。かかりつけ医、地域の保健所や保健センター、がん相談支援センターなどが力になります。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えたときや、命に関わる危険を感じたときは、ためらわず119番に連絡するか、近くの救急外来を受診してください。あなたの気持ちは、必ず誰かに話してよいものです。
予防
大腸がんを完全に防ぐ方法はまだありませんが、リスクを下げることはできます。とくに糖尿病がある人にとっては、血糖コントロールをよく保つこと、適正体重を保つこと、禁煙、節酒、食物繊維の多い食事、運動習慣が、大腸がんのリスクを下げる可能性があります。どれか一つを完璧にするより、できることから少しずつ続けることが大切です。
ワクチン
大腸がんを予防するワクチンは、現在ありません。
検診プログラム
日本では、大腸がん検診として便潜血検査が行われています。厚生労働省の指針では、40歳以上の男女を対象に問診と便潜血検査を行うことが推奨されており、自治体のがん検診ではふつう2年に1回の受診が案内されています。糖尿病で通院している人は、主治医に「大腸がん検診を受けたほうがよいか」を確認してみましょう。家族歴などがある場合は、より早い年齢から、または大腸内視鏡検査を勧められることがあります。検診の内容や間隔は、年齢や体の状態に合わせて医療機関に相談してください。
合併症
治療しない場合
- がんが大腸の壁の深くへ広がり、治療が難しくなることがある
- リンパ節や肝臓・肺など、離れた場所に転移することがある
- 腸が狭くなって便が通らなくなる(腸閉塞)ことがある
- 出血が続いて貧血が進み、息切れや強い疲れが出ることがある
- まれに腸に穴が開き、おなかの激しい痛みや腹膜炎を起こすことがある
長期的な見通し
大腸がんは、早い段階で見つかれば、内視鏡や手術で治せる可能性が高いがんです。糖尿病がある人も、検診を続け、気になる症状があれば早めに相談することで、十分に備えることができます。治療の進歩は続いており、たとえ進行していても、生活の質を保ちながら長く付き合っていける場合が増えています。不安なときは、主治医に今の状態と見通しを具体的に聞いてみてください。知ることで、気持ちの整理がつきやすくなることがあります。
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最終更新: 2026年10月22日
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