人工肛門(コロストミー)とともに暮らす
概要
コロストミー(人工肛門)は、大腸の一部をおなかの皮膚の表面に出して、便の新しい出口をつくる手術のことです。肛門から便を出せない、または出しにくいときに選ばれます。おなかの表面には「ストーマ」とよばれる赤い円い出口ができ、そこに装具(パウチ)とよばれる袋を貼って便を受けとめます。コロストミーは病気そのものではなく、治療や生活を支えるための方法のひとつです。
重要な事実
- コロストミーには、一時的に作るもの(状態が落ち着いたら閉じる手術ができる)と、永続的に必要なものがあります。
- 肛門の筋肉(括約筋)で便をがまんする必要がないため、便は自分でコントロールせずに装具にたまります。装具は定期的に交換します。
- 装具は皮膚にしっかり密着するように作られているので、においや便もれを心配せずに過ごせる人がほとんどです。
- 入浴、仕事、旅行、運動など、多くの日常生活はこれまでどおり続けられます。
コロストミーは決してめずらしいものではありません。日本でも毎年多くの人が大腸や直腸の病気でストーマ(人工肛門や人工膀胱)の手術を受け、日常に戻っています。
大腸がん・直腸がん、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)、憩室炎、けが、肛門の機能の障害、生まれつきの病気など、さまざまな理由で年齢を問わず作られます。赤ちゃんや子ども、高齢の方にも必要になることがあります。
症状
- ストーマが黒色や紫色に変わり、強い痛みがある(血流が悪くなっているおそれ)
- 激しい腹痛とおなかの張りがあり、嘔吐が続いて便もガスも出ない(腸閉塞の疑い)
- 大量の出血がある、意識がもうろうとする、ぐったりして反応が弱い
- 高い熱とストーマの周囲のひどい腫れ・膿がある
- ⚠ストーマが急に引っこむ、または長く飛び出す
- ⚠尿が極端に少ない、ふらつく、口が渇くなどの脱水のサイン
- ⚠装具の下の皮膚がひどくただれる、出血する、痛みが強い
- ⚠3日以上便が出ない、吐き気や食欲低下が続く
- ⚠便の量が突然とても多くなり、水のように続く
一般的な症状
- コロストミー自体は「症状」ではありませんが、次のような変化は体からのサインです。
- ストーマの色が青白い、黒っぽい、紫色に見える
- ストーマが急に大きく腫れる、出血が続く
- 装具が何度もはがれる、周りの皮膚が赤くかぶれる・かゆい・ただれる
- 便の量が急に減る、おなかが張って痛い、吐き気がある(腸の詰まりの可能性)
- 下痢が続く、尿が少ない、口が渇く、立ちくらみがする(脱水のサイン)
子供の症状
- 子どもの皮膚は敏感で、装具の粘着剤でかぶれやすいことがあります。
- 成長に合わせて装具のサイズを変える必要があります。
- 学校や園では、トイレの場所や着替えの相談をあらかじめ先生としておくと安心です。
- 自分で装具を交換できるようになるまで、年齢に応じて少しずつ練習します。
高齢者の症状
- 皮膚が弱くなり、テープや粘着剤でかぶれやすいことがあります。
- 視力や手先の動きの変化で、装具の交換が難しくなることがあります。
- 訪問看護や介護サービス、家族の手助けを早めに相談すると負担が軽くなります。
- 脱水や便のつまりに気づきにくいことがあるので、水分と排便の様子に注意しましょう。
原因
主な原因
- 大腸がん・直腸がんの手術で、肛門を残せない、または一時的に腸を休める必要があるとき
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)で腸の状態が良くないとき
- 憩室炎や腸の詰まり、腸のけがなどで腸の一部を切除したとき
- 肛門や骨盤の手術、放射線治療の影響で肛門の機能が保てないとき
- 生まれつきの腸や肛門の病気(主に子ども)
リスク要因
- 年齢が上がるにつれて大腸がんのリスクが高くなる
- 家族に大腸がんの人がいる
- 野菜や果物が少なく、赤身の肉や加工肉が多い食事、飲酒、喫煙、肥満
- 炎症性腸疾患を長く患っている
- 骨盤の手術や放射線治療を受けたことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- ストーマの色の変化、激しい腹痛、便もガスも出ない状態がある
- 脱水のサイン(尿が少ない、ふらつく、口の渇きが強い)がある
- 装具の下の皮膚がひどくただれて痛む、出血する
- 発熱やストーマ周囲の腫れ・膿がある
定期受診を予約すべき場合:
- 装具の選び方や交換の方法で困っているとき
- 皮膚のかぶれや、におい・もれが気になるとき
- 食事や旅行、仕事、運動について相談したいとき
- 気分の落ち込みや不安が続くとき
- ストーマを閉じる手術について知りたいとき
診断
コロストミーが必要かどうかは、原因となっている病気の状態を調べたうえで判断します。大腸の内視鏡検査や画像検査で腸の様子を確認し、手術の必要性や、肛門を残せるかどうかを検討します。
行われる可能性のある検査
- 問診と体の診察
- 血液検査
- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
- CT検査やMRI検査
- 組織の一部を採って調べる病理検査
- 手術前に、おなかのどこにストーマを作ると生活しやすいかを決める位置の確認(ストーマサイトマーキング)
診察で予想されること
手術が決まったら、术前からストーマの基礎知識や装具の扱い方を看護師やストーマの専門職から学ぶ時間があります。手術後は、痛みが落ち着くのを待ちながら、少しずつ装具の交換を自分で練習していきます。入院中から退院後の生活について相談できるので、疑問はその都度メモしておくとよいでしょう。
治療
コロストミーは、原因となった病気の治療の一部として行われます。手術そのものよりも、その後の装具の管理と生活の工夫が中心になります。医療者と一緒に、自分に合った装具の選び方や交換のペースを見つけていきます。
自宅でのセルフケア
- 装具の交換は、皮膚を清潔にしてよく乾かしてから行い、しわのないように貼る
- 皮膚のかぶれを防ぐため、無理にはがさず、専用のはがし剤やぬるま湯を使ってやさしく外す
- 便の硬さや回数を記録し、食生活との関係を自分なりに見つける
- 水分をこまめにとり、暑い季節や下痢のときは特に注意する
- 旅行や外出のときは、交換用の装具やウェットティッシュを多めに持ち歩く
- においが気になるときは、装具の排気口や消臭用品を活用する
医療治療
医療面では、ストーマ外来や訪問看護による定期的なケアと指導が中心になります。皮膚のトラブルには、その状態に合った皮膚保護剤や外用の治療が行われます。便の硬さや回数を整えるために薬が使われることもありますが、内容は体の状態に合わせて医療者が判断します。脱出や狭窄、ヘルニアなどの合併症があるときは、装具の工夫や、必要に応じて手術が検討されます。
手術が検討される場合
一時的に作ったストーマは、元の病気が落ち着き、体の状態が安定したころに閉じる手術を行うことがあります。時期は数か月後から1年以上後まで、病状や治療の経過によって変わります。閉じるかどうかは、主治医とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
装具は数日ごとに交換するのが一般的で、慣れてくれば10〜20分ほどで終わることが多いです。交換の時間を決めておくと生活のリズムが作りやすくなります。入浴は装具を貼ったままで問題ないことがほとんどで、装具を外して浴びる方法を選ぶ人もいます。
生活習慣のアドバイス
- 服装は、ゆったりしたウエストのものを選ぶと装具が目立ちにくく快適です
- 仕事は多くの場合これまでどおり続けられます。必要なら職場に事情を伝えて相談しましょう
- 旅行は可能です。装具は多めに持ち、機内持ち込みの荷物に入れておくと安心です
- 運動も楽しめます。腹圧が強くかかる種目は、主治医に相談してから始めましょう
- 性生活についても、不安があれば医療者に相談してください。工夫できる方法があります
食事と運動
手術後は、かたまりの大きい食べ物や繊維の多い食品を一度にたくさんとると、詰まりの原因になることがあります。よくかんで、少しずつ試しながら自分に合う量を見つけましょう。ガスが増えやすい食品(豆類、炭酸飲料、一部の野菜など)は、少量から試して様子を見ます。水分は毎日こまめにとり、アルコールはほどほどに。散歩などの軽い運動は腸の動きを助け、体力づくりにも役立ちます。
精神的健康と心の健康
見た目の変化や装具の存在に、恥ずかしさや不安、落ち込みを感じるのは自然なことです。慣れるまで時間がかかるのも普通で、少しずつ自分のやり方を見つけていく人が多いです。つらい気持ちが続くときは、一人で抱えずに主治医や看護師、地域の保健所や精神保健福祉センターなどの相談窓口に話してください。気持ちが追い込まれ、自分を傷つけたい気持ちが浮かんだときは、すぐに医療機関や救急(119番)に助けを求めてください。
予防
コロストミーそのものを防ぐ方法はありませんが、必要になる原因の多くは予防や早期発見が可能です。禁煙、節酒、バランスのよい食事、適正体重を保つことが、大腸がんや憩室炎のリスクを下げる助けになります。
検診プログラム
大腸がんは早期に見つかれば治療の選択肢が広がります。日本では、自治体のがん検診で40歳以上の方に便潜血検査(便に血が混じっていないかを調べる検査)が推奨されています。詳しくはお住まいの自治体の案内や、かかりつけ医にご相談ください。
合併症
治療しない場合
- ストーマの周囲の皮膚障害(かぶれ、ただれ、出血)
- 脱水や電解質のバランスの乱れ
- 腸の詰まり(腸閉塞)
- ストーマの脱出、狭窄、引っこみ
- ストーマのそばの腹壁ヘルニア
- 心理的な負担や社会生活への不安
長期的な見通し
コロストミーは大きな変化ではありますが、多くの人がケアに慣れ、仕事や旅行、趣味など以前に近い生活を取り戻しています。合併症があっても、装具の工夫や医療者のサポートで対処できることがほとんどです。困ったときは早めに相談することが、安心して過ごす一番の近道です。
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最終更新: 2026年10月22日
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