色覚異常(色の見え方が少しちがうこと)
概要
色覚異常とは、色の見分け方が多くの人と少し違う状態のことです。目の中には「錐体(すいたい)」という、色を感じ取る細胞があります。この細胞の働き方や組み合わせが生まれつき違っていると、特定の色どうしが似て見えたり、区別しにくくなったりします。多くは病気ではなく「見え方のちがい」で、生活の工夫で十分に対応できます。
重要な事実
- 生まれつきの色覚異常がほとんどで、男性にとても多く見られます(日本人男性ではおよそ20人に1人)。
- 赤と緑、茶色と緑などが似て見えやすいタイプが最も一般的ですが、明るさや濃さの違いは区別できることが多いです。
- 生まれつきの色覚異常は健康に害がなく、進んだり悪くなったりすることはありません。ただし、大人になってから急に色の見え方が変わったときは目の病気のサインのことがあるので、早めに眼科へ相談してください。
とてもよくあることです。日本人では男性のおよそ20人に1人(約5%)、女性ではおよそ500人に1人程度といわれています。クラスに1人くらいの割合で、特別なことではありません。
生まれつきのタイプは男性に多く、女性は保因者(遺伝子を持っていても見え方に変化が出にくい人)になることが多いです。年齢を問わず見られますが、高齢になってから初めて気づいた変化は、白内障や緑内障など別の目の病気が原因のことがあります。
症状
- 突然、片方の目が見えにくくなった、または視野の半分が欠けた(脳卒中の可能性があります。ためらわず119番へ)
- 急に、ものが二重に見える、ろれつが回らない、手足に力が入らないなどの症状が同時に出た
- 激しい目の痛みと頭痛、吐き気が急に始まった
- ⚠ここ数日で色の見え方が明らかに変わった
- ⚠片方の目だけ色がくすんで見える、赤みが弱く感じる
- ⚠目のかすみやまぶしさが続いている
- ⚠糖尿病がある人で、急に見え方が変わった
一般的な症状
- 赤と緑、茶色と緑、オレンジと赤などが似た色に見え、区別しにくい
- 色の濃さや明るさの違いはわかりやすいことが多い
- 信号の赤と青は、位置や点灯の順番で判断できることが多い
- 地図やグラフの色分け、色のついた線の見分けが苦手に感じる
- 「この色は何色?」と聞かれると答えに迷うことがある
- 日常生活で大きな困りごとがない人も多い(本人が気づいていないこともあります)
子供の症状
- 色の名前を覚えるのが、少し遅いように見える
- クレヨンや色鉛筆の色をよく間違える
- 「赤いのを取って」などの指示で迷うことがある
- 学校の色覚検査で初めて指摘されることが多い
- 本人は「自分だけ見え方が違う」と気づいていないことが多いので、責めずに伝えることが大切
高齢者の症状
- 白内障で水晶体(レンズの役割をする部分)が黄色っぽくなると、青色がにごって見えたり、色が全体に黄ばんで見えたりする
- 緑内障や網膜・視神経の病気で、色の見え方が変わることがある
- 片方の目だけ色の見え方が違う
- 新しい薬を始めてから色がおかしく感じる
原因
主な原因
- 遺伝(生まれつき): 色を感じる細胞の働きに関わる遺伝子の変化によるものが最も多く、赤緑タイプが中心です。
- 加齢や白内障: 水晶体がにごったり黄色っぽくなったりすると、色の見え方が変わります。
- 目の病気: 緑内障、網膜の病気、視神経の病気などで色覚が変化することがあります。
- 全身の病気の影響: 糖尿病による網膜の変化などで見え方が変わることがあります。
- 薬や化学物質の影響: 一部の薬で色の見え方が変わる報告があります(薬の自己判断での中断はせず、必ず医師・薬剤師に相談してください)。
リスク要因
- 家族(特に母方の親族)に色覚異常の人がいる
- 男性である(生まれつきのタイプ)
- 高齢である(白内障など目の病気が増える)
- 糖尿病や高血圧などの生活習慣病がある
- 目をぶつけた、または目の病気の治療歴がある
- 喫煙(目の血流に悪影響を与えるといわれています)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に色の見え方が変わった、または片方の目だけ違って見える
- 視野が欠ける、視界に大きな影がかかる
- 目の強い痛みや頭痛、吐き気をともなう
- 脳の症状(ろれつが回らない、手足の麻痺、二重に見える)があるときはすぐ救急へ
定期受診を予約すべき場合:
- お子さんの色の名前の覚え方や、色分けの苦手さが気になるとき
- 学校や職場の検査で色覚について指摘されたとき
- 進路や仕事で色の見分けが必要かどうか相談したいとき
- 家族に色覚異常の人がいて、ご自身やお子さんの見え方が気になるとき
- 白内障の手術を考えているとき(手術後の見え方の変化について相談できます)
診断
眼科で、色の見分け方を調べる検査を受けます。多くは数分から十数分で終わる、痛みのない検査です。必要に応じて、目の病気がないかを調べる詳しい検査も行います。
行われる可能性のある検査
- 石原式色覚検査表(色のついた丸の中に浮かぶ数字や線を読む検査)
- パネルD-15検査(色のついた小さな円盤を順番に並べる検査)
- アノマロスコープ検査(赤と緑の混ざり具合を調整して、感じ方を細かく調べる器械の検査)
- 眼底検査や光干渉断層計(OCT)など、目の病気を調べる検査(後天的な変化が疑われるとき)
診察で予想されること
検査は痛みがなく、短時間で終わります。結果はその場で、または後日説明されます。「見え方が人と違うかもしれない」と伝えるだけで、検査を受けやすくなります。結果が分かると、生活の工夫や進路の相談もしやすくなります。
治療
生まれつきの色覚異常を「治して普通の見え方にする」治療は、今のところありません。大切なのは、色以外の手がかり(形・位置・文字・明るさ)を使って生活しやすくする工夫です。大人になってからの変化は、原因となっている目の病気の治療が中心になります。
自宅でのセルフケア
- 色の名前だけで伝えず、「明るいほう」「大きいほう」「右側」など、色以外の言葉も使う
- 服や書類、ケーブルなどにラベルやタグを付けて見分ける
- スマートフォンやタブレットの「色覚サポート」設定や、色を見分けやすくするアプリを使う
- 部屋やデスクを明るくし、ものの形や配置で区別しやすくする
- 家族や同僚、学校の先生に、あらかじめ見え方の特徴を伝えておく
- 安全に関わる場面(ケーブルの配線、薬の色分けなど)では、誰かに確認してもらう習慣をつける
医療治療
色覚そのものを変える治療薬はありません。サプリメントや特別な訓練で色覚が治るという確かな根拠もありません。色フィルターの入った眼鏡を使う人もいますが、効果は人によって異なり、すべての人に合うわけではありません。後天的な変化の場合は、原因となる目の病気(白内障、緑内障、網膜の病気など)や全身の病気の治療を優先します。治療の内容は医師の判断で決まります。気になる療法器や健康食品を試す前に、眼科医や視能訓練士(目の見え方の訓練や相談の専門家)に相談してください。
手術が検討される場合
色覚異常そのものを手術で治す方法はありません。ただし、白内障など手術で改善できる目の病気が原因で色の見え方が変わっている場合は、手術によって見え方が変わる可能性があります。手術が適切かどうかは、眼科医とよく相談して決めましょう。
この病気と共に生きる
色の見分けは、工夫次第でほとんど困らなくなります。信号は点灯する位置で判断でき、色以外の情報もたくさんあります。「色がわからない」と隠すより、まわりに伝えて助けてもらうほうが、生活はずっと楽になります。
生活習慣のアドバイス
- スマートフォンやパソコンの色覚サポート機能を設定しておく
- 色分けされた地図やグラフは、白黒印刷や文字での説明も活用する
- 洋服は「組み合わせ済み」で収納したり、家族に確認してもらう
- 照明を明るくし、もののコントラストをつけて見やすくする
- (車の運転について)信号や標識は位置・形でも判断できますが、不安があれば眼科や運転免許の相談窓口に相談する
- 仕事や進路選びは、色の見分けが必要かどうかを事前に調べておく
食事と運動
色覚異常のための特別な食事や運動の制限はありません。ふだんどおりの食事と運動で大丈夫です。糖尿病のある人は血糖値を良好に保つことが目の健康につながります。禁煙も目の血流を守る助けになります。
精神的健康と心の健康
学校の検査や進路の場面で「自分は人と違う」と感じたり、からかわれた経験から、不安や落ち込みを抱える人がいます。それは自然な気持ちです。一人で抱え込まず、家族や先生、眼科のスタッフ、学校の相談員に話してみてください。気持ちのつらさが続くときは、心の相談窓口や医療機関に相談することが大切です。
予防
生まれつきの色覚異常は、予防することはできません。ただし、後天的な色の見え方の変化は、ある程度予防できます。目の病気を早く見つけて治療すること、糖尿病や高血圧を管理すること、禁煙、紫外線やけがから目を守ることが大切です。
検診プログラム
日本では、学校の健康診断での色覚検査は現在必須ではなく、希望する場合に行われます(平成15年度から必須項目ではなくなりました)。気になるときは、学校の先生に相談するか、眼科で検査を受けられます。大人も、目の定期検査をきっかけに分かることがあります。なお、検査を受けるかどうかは、お子さん本人の気持ちを大切にして決めましょう。
合併症
治療しない場合
- 生まれつきの色覚異常は進行せず、体の健康に害はありません。
- 色分けが多い教科や仕事で、誤解や小さな困りごとが続くことがあります。
- 一部の職業(安全上、色の判別が求められる職種)では、進路の選択肢が限られることがあります。
- 大人になってからの変化を放置すると、白内障や緑内障などの病気が進んでしまうことがあります。
長期的な見通し
生まれつきの色覚異常を持つ人のほとんどは、工夫をしながらふつうに学校生活・仕事・暮らしを送っています。見え方の特徴を知っておくことは、自分を守る力になります。大人になってからの変化も、早めに受診すれば対応できることが多いので、心配しすぎず、気になることは眼科に相談してください。
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最終更新: 2026年10月22日
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