抗うつ薬の比較:2つのタイプの違いと選ばれ方
概要
うつ病や不安の治療では、抗うつ薬と呼ばれる薬が使われることがあります。抗うつ薬にはいくつかのタイプがあり、大きく分けると「脳の神経の働きを助けて、眠りや食欲を整え、気持ちを落ち着かせるのを助けるタイプ」と「セロトニン(気分や睡眠に関わる脳内の物質)の働きを高めて、気分を明るくするのを助けるタイプ」があります。この記事では、この2つのタイプの特徴を比べます。実際に使われる薬の名前や量は、症状や体の状態に合わせて医師が決めます。気になることは医師や薬剤師に相談してください。
重要な事実
- 同じ「抗うつ薬」でも、得意なこと・苦手なことは違います。どちらが上、ということはありません。
- 眠りにくい、食欲がない、体重が減った、不安が強い、というときは「眠りと食欲を助けるタイプ」が選ばれることがあります。
- 気分の落ち込みやこわばった考えが中心で、眠気や体重増加を避けたいときは「セロトニンを高めるタイプ」が選ばれることがあります。
- 効果や副作用には個人差があり、合うかどうかは使ってみないと分かりません。自己判断で中止せず、医師と相談しながら調整します。
うつ病や不安症はとてもよくある病気で、日本でも多くの人が治療を受けています。抗うつ薬は世界中で広く使われており、ここで比べる2つのタイプはいずれもよく選ばれる治療の選択肢です。
子どもから高齢者まで、どの年代でも起こります。女性に多いとされますが、男性でも珍しくありません。高齢者では薬の効き方や副作用の出方が違うことがあるため、少量から始めるなどの配慮がされます。
症状
- 自分を傷つけたい気持ちが強く、実際に行動しようとしている
- 「死にたい」とはっきり言う、または別れの言葉を口にする
- 薬を一度にたくさん飲んだ可能性がある
- 意識がもうろうとしている、けいれんがある、息が苦しい
- 薬を飲み始めた後に、高熱、汗、ふるえ、筋肉のこわばり、混乱が急に出た(重い副作用のサインの可能性があります)
- ⚠強い落ち込みや不安が何日も続き、食事や水分がとれない
- ⚠眠れない日が続いて、日常生活が回らない
- ⚠発疹、顔やのどの腫れ、息苦しさなどアレルギーを思わせる症状が出た
- ⚠薬を急にやめて、めまい・吐き気・イライラなどが強い
一般的な症状
- 気分が落ち込む、悲しい、涙が出る
- 何をしても楽しめない、興味がわかない
- 眠れない、または寝すぎる
- 食欲がない、または食べ過ぎる
- 疲れやすい、体が重い
- 集中できない、物事が決められない
- 自分を責める、価値がないと感じる
- 「消えたい」「死にたい」という気持ちが浮かぶ
子供の症状
- おなかの痛みや頭痛など、体の不調として現れる
- イライラして怒りっぽくなる
- 学校に行きたがらない、友だちと遊ばなくなる
- 成績が急に下がる、集中できない
- 食欲や睡眠のリズムが乱れる
高齢者の症状
- 「体がだるい」「痛い」など体の不調の訴えが目立つ
- もの忘れや集中力の低下(うつ病による見かけの物忘れのことがあります)
- 意欲がわかない、外出や身支度をしなくなる
- 食欲が落ちて体重が減る、水分をとらなくなる
- 不安が強くなる、夜中に何度も目が覚める
原因
主な原因
- 脳内の神経伝達物質(気分や睡眠に関わる物質)の働きのバランスの乱れ
- もともとの体質や遺伝的な要因
- 仕事・人間関係・介護・喪失などの心理的・環境的なストレス
- 体の病気や、他の薬の影響
- ホルモンの変化(出産後など)
リスク要因
- 家族にうつ病や不安症の人がいる
- 強いストレスが長く続いている
- 慢性の病気がある、痛みが続いている
- 人とのつながりが少ない、孤立している
- アルコールを多く飲む、睡眠不足が続く
- 過去にうつ病や不安症になったことがある
- 出産後、季節の変わり目など
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 「死にたい」「消えたい」という気持ちが強い、または自分を傷つける行動がある
- 食事や水分がとれず、体重が急に減っている
- 薬を飲み始めてから、高熱・ふるえ・混乱など普段と違う強い症状が出た
- 強い吐き気や発疹など、薬の副作用がつらい
定期受診を予約すべき場合:
- 気分の落ち込みや不安が2週間以上続いている
- 眠れない、または寝すぎる状態が続いている
- 食欲の変化や体重の変化が気になる
- 薬について、効果や副作用、飲み続ける期間を相談したい
- 治療を始めて数週間たっても変化を感じない
診断
診断は、検査の数値だけで決まるものではなく、医師との話し合い(問診)が中心です。いつから、どんなふうに気分が沈むのか、眠りや食欲はどうか、考え方のくせ、生活の状況、これまでの治療歴、飲んでいる他の薬などを丁寧に確認します。そのうえで、2つのタイプのどちらが合いそうかを、症状のパターンや副作用の出やすさ、飲み合わせ、過去の反応、生活スタイルから一緒に考えていきます。
行われる可能性のある検査
- 問診と身体診察
- 血液検査(甲状腺の病気や貧血など、似た症状が出る体の病気を除くため)
- 必要に応じて心電図
- 症状を整理するための質問票や心理的な検査
- 飲んでいる薬やサプリメントの確認(飲み合わせを調べるため)
診察で予想されること
診察では、症状の経過や睡眠・食欲の状態を聞かれます。最初から薬を勧められるとは限らず、まず休養や生活の調整、話し合いによる治療(心理療法)を試すこともあります。薬を始める場合も、効果が出るまでに数週間かかることが多く、体に合わせて少量から始めて調整していきます。
治療
治療は、休養、生活の調整、話し合いによる治療(心理療法)、そして必要に応じて薬を組み合わせて行います。2つのタイプの抗うつ薬は得意な分野が違うため、症状に合わせて選ばれます。どちらも「飲んで終わり」ではなく、定期的に効果と副作用を確認しながら調整していく治療です。
自宅でのセルフケア
- 起きる時間をできるだけ一定にして、朝に光を浴びる
- 眠れなくても、布団に入って休む時間を確保する
- 食事を3回とるのが難しいときは、食べられるものを少量ずつでもとる
- アルコールは控えめにする(気分や睡眠を乱し、薬との飲み合わせも心配になります)
- コーヒーやエナジードリンクの取りすぎに気をつける
- 散歩など軽い運動を、無理のない範囲で
- 信頼できる人に、今の状態を話してみる
- 家事や仕事のハードルをいったん下げ、「できたこと」を数える
医療治療
薬には大きく2つのタイプがあります。ひとつは「眠りと食欲を助け、気持ちを落ち着かせるのを助けるタイプ」で、眠りにくい、食欲がない、体重が減った、不安が強いという方に選ばれることが多く、眠気や体重の増加、だるさなどが出ることがあります。もうひとつは「セロトニン(気分や睡眠に関わる脳内の物質)の働きを高めるタイプ」で、気分の落ち込みや不安、こわばった考えに広く使われ、吐き気、頭痛、眠気、性機能の変化などが出ることがあります。どちらも効果が出るまで数週間かかることがあり、急にやめると具合が悪くなることがあるため、医師と相談しながら少しずつ減らします。薬の名前や量、飲み方は必ず医師・薬剤師に確認してください。必要に応じて、認知行動療法などの心理療法や、専門医への相談も組み合わせます。
手術が検討される場合
手術で治す病気ではありません。ただし、似た症状が出る別の体の病気が見つかった場合は、その治療が優先されます。
この病気と共に生きる
飲み忘れを防ぐために、飲む時間を生活の流れに結びつける(朝食後、歯みがきの後など)と続けやすくなります。眠気が出ることがあるので、車の運転や機械の操作は、自分の状態を確かめながら慎重にしてください。気分や睡眠、副作用を簡単なメモに残すと、診察のときに役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠のリズムを整え、夜更かしを減らす
- 仕事や家事の量を、一時的に減らすことを検討する
- 人と話す時間を、短くても定期的につくる
- つらい気持ちを一人で抱え込まない
- 大きな決断(退職、引っ越しなど)は、体調が整ってからにする
食事と運動
食事は、決まった時間に少しずつでもとることが大切です。食欲がないときは、おかゆやスープなど食べやすいもので構いません。運動は、ウォーキングや軽いストレッチなど、息が上がらない程度を短時間から始めると続けやすく、気分や睡眠の助けになります。
精神的健康と心の健康
薬を飲んでいても気分の波はあります。落ち込みが強い日は「今日は休む日」と決めて、回復を最優先にしてください。「消えたい」「死にたい」と感じたときは、ひとりで抱えず、すぐに119番(救急)に連絡する、かかりつけ医に電話する、お住まいの自治体のこころの相談窓口に連絡する、のいずれかを選んでください。つらい気持ちは必ずしも「弱さ」ではなく、治療で軽くなることが多い症状です。
予防
うつ病や不安症を完全に防ぐことは難しいですが、睡眠と生活のリズムを整える、ストレスへの対処法を身につける、つらいときに早めに相談する、治療を自己判断でやめない、といったことが再発のリスクを下げる助けになります。
検診プログラム
特定の検査で必ず見つかるというものではありませんが、健診の場や自治体のこころの健康相談で、質問票を使って状態を確認できることがあります。気になる症状があるときは、そうした機会を待たずに医療機関へ相談してください。
合併症
治療しない場合
- 症状が長引き、仕事・家事・学業が続けにくくなる
- 人とのつながりが減り、孤立しやすくなる
- 食事や睡眠が乱れ、体の病気が悪化することがある
- アルコールに頼るようになることがある
- 自分を傷つけたい気持ちが強まることがある
長期的な見通し
うつ病や不安症は、多くの人が治療によって良くなっていく病気です。合う薬や合う治療法が見つかるまでに時間がかかることもありますが、選択肢はひとつではありません。2つのタイプのどちらかが合わない場合も、量の調整や別の方法への変更ができます。あせらず、医師と一緒に少しずつ整えていくことが大切です。
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最終更新: 2026年11月3日
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