複合性局所疼痛症候群(CRPS)
概要
複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、けがや手術のあとに、けがの程度からは考えられないほど強い痛みが長く続く状態です。痛みだけでなく、皮膚の色や温度の変化、はれ、汗のかき方の変化など、さまざまな症状が同じ手足に出てきます。昔は「反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)」と呼ばれていました。神経の働きや炎症、脳が痛みを感じ取る仕組みの変化などが関係すると考えられていますが、まだよく分かっていない部分も多い病気です。
重要な事実
- けがや手術のあとに起こることが多いですが、はっきりしたきっかけがない場合もあります。
- 「痛みの病気」であると同時に、皮膚・血管・汗・関節など体のいろいろな働きが乱れる病気です。
- 早い段階で痛みの専門家に相談し、リハビリを始めることが回復のために大切だと言われています。
まれな病気です。骨折や手術のあとに起こる割合は数%程度と報告されています。けがをした人のほとんどはCRPSになりません。
大人にも子どもにも起こります。女性にやや多く見られます。手や足のけが、骨折、手術のあとに多く、手足を長く動かさなかった場合にも起こることがあります。年齢を問わず起こりますが、思春期前後の子どもや、骨折をした高齢者にも見られます。
症状
- 突然、手足が動かない・力が入らない、ろれつが回らない、顔がゆがむ(脳卒中の可能性)
- 高熱とともに手足が急にはれ、赤みがどんどん広がる、膿のようなものが出る
- 胸の痛み、息苦しさ、意識がもうろうとする
- ⚠痛みが急に強くなり、眠れない、日常生活がまったくできない
- ⚠皮膚が破れて汁や膿が出る、発熱がある
- ⚠手足の感覚が急に鈍くなった、動かせなくなった
- ⚠新しいけがをしたあと、症状が急に悪くなった
一般的な症状
- 焼けるような、刺すような、ずきずきする強い痛みが続く
- 軽く触れただけでも痛く感じる(衣服や風が当たるだけでもつらいことがある)
- 手足のはれ
- 皮膚の色の変化(赤くなる、青っぽくなる、まだらになる)
- 皮膚の温度の変化(熱く感じる、冷たく感じる)
- 汗が異常に多い、または少ない。皮膚がつやつや・かさかさになる
- 関節がこわばり、動かしにくい。力が入りにくい
- 爪や毛の伸び方の変化
- 手足のふるえ、筋肉のぴくつき
- 症状がけがをした場所から指先や腕・脚の広い範囲に広がっていく
子供の症状
- 子どもでも起こりますが、大人より気づかれにくいことがあります。
- 思春期前後に多く、脚に起こることが多いという報告があります。
- 「痛い」と言いにくかったり、学校を休みがちになったりして、心の問題と誤解されることがあります。
- 子どもでは回復が早いこともあります。小児科や整形外科、痛みの専門外来に相談してください。
高齢者の症状
- 骨折や手術のあとに起こることが多く、年齢のせいと片づけられやすいです。
- 痛みのため動かさないことで、関節が固まったり筋力が落ちたりしやすい傾向があります。
- 糖尿病や血管の病気など、似た症状が出る他の病気との区別が必要になります。
- 持病の薬がある場合は、治療の相談時に必ず医師・薬剤師に伝えてください。
原因
主な原因
- 骨折、ねんざ、手術、やけどなどのあとに起こることが多いです。
- 神経の働きの変化、炎症、脳や脊髄が痛みを処理する仕組みの変化が関係すると考えられています。
- 手足を長く動かさずに固定していたことも関係するといわれています。
- はっきりしたきっかけが見つからない場合もあります。
リスク要因
- 手足の骨折や大きなけが、手術を受けた
- けがのあと、痛みのため長く動かさなかった
- 強い痛みやストレスが長く続いている
- 同じ場所に再びけがをした、または手術を受けた
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- けがが治りかけたのに、痛みが急に強くなった
- 皮膚が赤くはれて熱を持ち、広がっていく(感染症の可能性)
- 手足が動かせない、感覚が急に変わった
- 痛みで眠れない日が続き、日常生活が保てない
定期受診を予約すべき場合:
- けがが治ったはずなのに、痛みが長く続いている
- 軽く触れただけで痛い
- 手足のはれ、皮膚の色や温度の変化が続いている
- 関節がこわばって動かしにくい、力が入らない
- 痛みのせいで学校や仕事に行きづらくなっている
診断
CRPSは、話を聞いて診察することが中心になります。似た症状が出る他の病気(神経の傷、血管の病気、感染症など)がないかを確かめ、国際的に使われている診断の目安(ブダペスト基準)に沿って判断します。症状は人によって違うため、診断までに時間がかかることがあります。
行われる可能性のある検査
- 問診と診察(痛みの出方、皮膚の色・温度・汗の変化を確認)
- 血液検査(炎症や他の病気がないかを見る)
- レントゲン、MRI、CT
- 骨シンチグラフィ(骨の血流や代謝を見る検査)
- サーモグラフィ(皮膚の温度の差を見る検査)
- 神経伝導検査(神経の傷がないかを調べる)
- 自律神経の検査、汗の量を調べる検査
診察で予想されること
検査で特別な異常が出ないことも多く、その場合は「気のせい」ではありません。痛みの強さ、出たとき、皮膚の色や温度の変化をメモしておくと、診察の助けになります。診断までに何回か通院が必要になることもあります。
治療
治療の目的は、痛みを減らしながら、手足を動かす力と生活の質を取り戻すことです。ひとつの方法だけでなく、リハビリ、痛みの治療、こころのサポートを組み合わせるのが一般的です。特に、痛みがあっても少しずつ動かしていくリハビリが大切だと言われています。
自宅でのセルフケア
- 痛みの記録をつける(強さ、時間帯、きっかけ、皮膚の変化)
- 理学療法士や作業療法士の指導のもとで、無理のない範囲で少しずつ動かす
- 冷やす・温めるは、自分に合う方法を主治医に相談して決める(やりすぎに注意)
- 睡眠をしっかりとる。寝る前の画面やカフェインを控える
- ストレスを減らす工夫をする(呼吸を整える、好きなことをする時間を持つ)
- 禁煙する。禁煙は痛みや血流にも良い影響があります
- 手足をぶつけたり冷やしすぎたりしないよう、日常生活で保護する
医療治療
治療は組み合わせて行われます。痛みの薬は、神経の痛みに使われる種類のものが検討されますが、効果や副作用には個人差があります。薬は必ず医師の指示どおりに使い、自己判断で量を変えたり中止したりしないでください。ほかには、リハビリ、神経ブロック(痛みの信号を伝える神経の近くに注射する治療)、痛みの感じ方を整える心理療法(認知行動療法など)、神経の働きを調整する電気刺激の治療などが検討されます。症状や生活状況に合わせて、主治医と相談しながら一つずつ試していくのが一般的です。
手術が検討される場合
手術が主な治療になることは多くありません。薬やリハビリなどで十分な効果が得られない難しい場合に、神経の働きを電気で調整する装置を体内に入れる治療(脊髄刺激療法など)が検討されることがあります。適応があるかどうかは、痛みの専門医とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
痛みがあると、どうしても動かすのを避けたくなりますが、まったく動かさないと関節が固まり、症状が長引くことがあります。痛みが少ない時間帯を見つけて、短い時間から少しずつ動くのがコツです。家事や仕事は、休み休み行う、道具を使う、家族に頼むなど、工夫して負担を減らしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 生活のリズムを整え、睡眠時間を確保する
- 痛みが少ない時間帯に、短時間の活動をこまめに入れる
- 寒さで悪化することがあるため、手足を冷やしすぎないよう工夫する
- 禁煙する
- 仕事や学校については、休憩や配置の工夫などを相談する
- ひとりで抱え込まず、家族や周りの人に症状を伝えておく
食事と運動
特別な食事疗法があるわけではありませんが、バランスの良い食事と適正な体重を保つことは、体を動かしやすくする助けになります。運動は、理学療法士など専門家の指導のもとで、無理のない範囲から始めてください。痛みが強い日は休み、良い日に少しずつ、を繰り返す形で構いません。
精神的健康と心の健康
長く続く痛みは、不安、いらいら、落ち込み、眠れないことにつながりやすいです。これは弱さではなく、痛みが続くときに誰にでも起こることです。こころの不調も遠慮なく医師に伝えてください。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療機関や地域の相談窓口、救急(119)に連絡してください。
予防
CRPSを完全に防ぐ方法は分かっていません。ただし、けがのあとに痛みを我慢しすぎず適切に痛みをとること、専門家の指導のもとで早めに手足を動かし始めること、禁煙することが役立つ可能性があると言われています。骨折のあとの栄養についての報告もありますが、自分で判断して何かを始める前に主治医に相談してください。
ワクチン
CRPSを防ぐワクチンはありません。
検診プログラム
CRPSを見つけるための決まった検診はありません。けがのあとに痛みや皮膚の変化が長く続く場合は、早めに医療機関に相談することが大切です。
合併症
治療しない場合
- 関節が固まって動かしにくくなる(拘縮)
- 筋力が落ち、手足が使いにくくなる
- 皮膚や爪の変化が進む
- 骨が弱くなる変化が起こることがある
- 眠れない、疲れやすい状態が続く
- 不安や落ち込みが強くなり、生活の質が下がる
- 学校や仕事を続けることが難しくなる
長期的な見通し
CRPSは人によって経過が大きく異なります。多くのかたは、適切な治療とリハビリを続けることで症状が軽くなり、生活を取り戻していきます。時間がかかる場合もありますが、早めに相談して治療を始めることが助けになります。症状が長引く場合でも、工夫を重ねることで生活の質を保つことは十分に可能です。あせらず、主治医と一緒に一歩ずつ進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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