人工肛門(ストーマ)の合併症について
概要
人工肛門(コロストミー)は、大腸の一部をお腹の表面に出して、便を体の外に出す手術で作られた出口のことです。この出口を「ストーマ」と呼びます。ストーマの合併症とは、このストーマやその周りの皮膚のトラブル、そしてストーマがあることで起こる体の不調をまとめた呼び方です。多くは、日ごろのケアの見直しや早めの相談で良くなります。
重要な事実
- ストーマの合併症でもっとも多いのは、排泄物(便や消化液)でストーマの周りの皮膚がかぶれる「皮膚障害」です。
- ストーマの穴が狭くなる(狭窄)、腸が飛び出す(脱出)、周りの筋肉がゆるんで膨らむ(傍ストーマヘルニア)など、形の変化もよく見られます。
- 便もガスも出ない、お腹が張って激しく痛む、出血が続くといったときは、腸閉塞(腸が詰まること)などのサインのことがあります。早めに医療機関に相談してください。
ストーマを作った人の多くが、程度の差はあれ、皮膚のかぶれや装具(パウチ)のトラブルなど、何らかの合併症を経験します。決してめずらしいことではありません。
大腸がん、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)、けがなどでストーマを作った方が対象です。年齢は問いませんが、高齢の方、体力や栄養状態が低下している方、肥満の方では合併症が起こりやすいことが知られています。
症状
- 大量の出血が止まらない、血の塊を吐く、黒い便が続く(すぐに119番へ)
- ストーマが飛び出したまま戻らず激しく痛む、色が黒っぽく変わる(すぐに119番へ)
- 激しい腹痛とお腹の張りに、冷汗、顔色の悪さ、意識がもうろうとするものが伴う(すぐに119番へ)
- 高熱と激しい腹痛が同時にあり、動けない(すぐに119番へ)
- ⚠便もガスもまったく出ず、お腹が張って痛む、吐き気が続く(当日中に受診)
- ⚠水分がとれず、尿がほとんど出ない、口が渇く、ぐったりしている(当日中に受診)
- ⚠ストーマからの出血が続いている(当日中に受診)
- ⚠ストーマの周りがひどく腫れて痛む、膿のようなものが出る、発熱がある(当日中に受診)
- ⚠ストーマの穴が急に狭くなり、便がほとんど出なくなった(当日中に受診)
一般的な症状
- ストーマの周りの皮膚が赤くなる、かゆい、ただれる、しみる
- 装具(パウチ)がはがれやすい、便がもれる、においが気になる
- ストーマから出血する(軽いこすれ程度のことも、続く出血のこともある)
- ストーマが大きくなる、長く飛び出す(脱出)
- ストーマの穴が狭くなり、便が細くなる・出にくくなる(狭窄)
- ストーマの近くが膨らむ、いきむと盛り上がる(傍ストーマヘルニア)
- 便の量が急に増える、水のような便が続く、のどが渇く(脱水のサイン)
- お腹が張る、痛む、吐き気がする、便やガスが出ない
- ストーマの周りに傷や穴ができる(瘻孔)
子供の症状
- 機嫌が悪い、泣き止まない、ミルクの飲みが悪い
- 装具の下の皮膚が赤くただれる、おむつかぶれのように見える
- 尿が少ない、口の中が乾く、涙が出にくい(脱水のサイン)
- お腹が張っている、嘔吐を繰り返す、便が出ない
- 装具を何度も触って気にしている、痛がる
高齢者の症状
- 皮膚が薄くもろいため、装具をはがすときの刺激で傷つきやすい
- のどの渇きを感じにくく、脱水に気づきにくい
- 手の動きや認知面の変化で装具の交換がうまくいかず、もれやかぶれが増える
- 咳や便秘でお腹に力がかかり、脱出やヘルニアが起こりやすい
- 薬の影響で便の状態が変わりやすい
原因
主な原因
- 排泄物(便や消化液)が皮膚に長時間ふれることによるかぶれ・皮膚障害
- 装具のサイズが合っていない、交換のしかたが合っていないことによるもれや刺激
- ストーマの作られ方や腹壁の状態による狭窄・脱出・ヘルニア
- 腸の癒着や硬い便による腸閉塞
- 下痢や嘔吐、水分不足による脱水と電解質(体の塩分などのバランス)の乱れ
- ストーマの周囲の感染や瘻孔(穴ができること)
リスク要因
- 肥満、急な体重の増減
- 慢性の咳、便秘、重いものを持つなど、お腹に力がかかる生活
- 皮膚が弱い、アレルギーがある、ステロイドなどの薬を使っている
- 栄養状態の低下、高齢
- ストーマの位置(お腹のしわや骨の近くにあると装具が合いにくい)
- 介護が必要で、装具の交換を自分で行うのが難しい
- 喫煙(傷の治りや合併症に関係することがある)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 便もガスも出ない、お腹が張って痛い、吐き気が続く
- ストーマからの出血が続く
- ストーマの周りの激しい腫れ・痛み・発熱
- 脱水のサイン(尿が少ない、口が渇く、ふらつく)
- ストーマが急に飛び出した、色が変わった
定期受診を予約すべき場合:
- 皮膚のかぶれが続く、装具がたびたびはがれる
- ストーマの形や大きさが変わってきた
- 便の回数や硬さがいつもと違う状態が続く
- においやガスが気になって生活に支障がある
- 装具の交換のしかたに不安がある、別の製品を試したい
診断
まず、ストーマとその周りの皮膚をよく観察し、使っている装具の種類や交換のしかた、ふだんの便の様子をうかがいます。多くの場合は診察だけで見当がつきます。腸の詰まりやヘルニア、瘻孔などが疑われるときには、いくつかの検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 診察とストーマ周囲の皮膚の観察
- 装具のフィッティング(サイズや形の確認)
- 血液検査(脱水、炎症、栄養状態の確認)
- 腹部のレントゲン検査
- 腹部のCT検査や超音波検査
- 必要に応じて内視鏡検査や造影検査
診察で予想されること
診察では、ふだんの装具交換の様子を見せていただくことがあります。恥ずかしいことではないので、使っている装具や困っていることをそのまま伝えてください。検査は外来でできることが多く、結果の説明とあわせて今後のケアについて相談できます。
治療
治療の中心は、ストーマと皮膚のケアを見直すことです。装具のサイズや種類を変える、皮膚を守る用品を使う、便の状態を整えるなどで、多くの合併症は改善に向かいます。腸閉塞や脱出など、形の変化が強い場合には医療的な処置が必要になります。
自宅でのセルフケア
- 装具の穴を皮膚のサイズに合わせて切り、ぴったり合わせる
- 交換のときに皮膚をこすらず、やさしく洗ってよく乾かす
- かぶれているときは、医療者に相談して皮膚を守る用品を使う
- 水分をこまめにとり、便が硬くなりすぎないようにする
- 急にいきんだり、重いものを持ったりしない
- 咳が続くときは早めに相談する
- 定期的にストーマの大きさを測り、装具を見直す
- においやガスが気になるときは、食事の内容や食べ方を工夫する
医療治療
皮膚の炎症には、医療者の判断で塗り薬や皮膚を守る用品を使うことがあります。脱水や電解質のバランスの乱れには、水分や点滴で補正します。腸閉塞が疑われるときは、飲食を控えて点滴で休める処置を行うことがあります。狭窄が強い場合や脱出が戻らない場合には、医療者による処置や、ときに手術が検討されます。薬の名前や使い方は、必ず医師・看護師・薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
ケアを続けても良くならない強い狭窄、繰り返す脱出、戻らない脱出、大きな傍ストーマヘルニア、瘻孔などでは、手術が検討されることがあります。手術が必要かどうかは、症状の強さや生活への影響をふまえて、主治医とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
ストーマのケアは、慣れるまでに時間がかかりますが、多くの方は数か月で自分のペースをつかんでいきます。交換の時間を決めて日課にし、外出先でも困らないよう予備の装具を持ち歩くと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 予備の装具や清拭用品を常に携帯する
- 外出先のトイレや多目的トイレの場所を事前に確認しておく
- ウエストを締めつけすぎない服装を選ぶ
- 入浴や軽い運動は、医師から制限がなければ問題ないことが多い
- 旅行の際は装具を余分に持ち、事前にかかりつけ医に相談する
- においが気になるときは、消臭用品や食事の工夫を取り入れる
食事と運動
食事は、よくかんでゆっくり食べ、一度にたくさんとらないことが大切です。水分はこまめにとりましょう。便の出方に合う食べ物は人によって違うので、食べたものと便の様子をメモすると参考になります。腸閉塞を防ぐため、食物繊維を急に大量にとるのは避け、様子を見ながら増やしてください。運動は、お腹に力がかかりすぎない散歩や軽いストレッチから始めるとよいでしょう。内容は主治医に相談してください。
精神的健康と心の健康
ストーマがあることで、恥ずかしさ、においへの不安、人に言いにくい気持ち、気分の落ち込みを感じる方は少なくありません。これは自然な気持ちで、あなたの弱さではありません。つらさが続くとき、眠れない、何も楽しめないと感じるときは、医療者や相談窓口に話してください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えたときは、すぐに医療機関や地域の相談窓口に連絡し、緊急時は119番に電話してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、日ごろのケアで起こりにくくすることはできます。皮膚を清潔に保ち、装具を皮膚にぴったり合わせ、交換のしかたを定期的に見直すことが大切です。体重を適正に保ち、咳や便秘を放置しないことも役立ちます。不安なときは早めにストーマ外来に相談してください。
ワクチン
特定のワクチンでストーマの合併症を防ぐことはできません。ただし、一般的な感染症の予防接種については、主治医やお住まいの自治体の案内に従ってください。
検診プログラム
ストーマ外来での定期的なチェックが、合併症の早期発見につながります。皮膚の状態、ストーマの大きさ、装具が合っているかを定期的に確認してもらいましょう。
合併症
治療しない場合
- 皮膚障害が悪化して装具が貼れなくなり、日常生活がつらくなる
- 脱水や電解質の乱れが進み、だるさ、めまい、意識の変化につながる
- 腸閉塞が進むと、激しい腹痛や嘔吐、腸の障害につながることがある
- ストーマの脱出が戻らないまま血流が悪くなることがある(まれ)
- 瘻孔や感染が広がると、治療に時間がかかることがある
- 痛みや不安から外出が減り、気分の落ち込みや孤立につながることがある
長期的な見通し
ストーマの合併症は、多くが早めの相談とケアの見直しで良くなります。合併症を経験しても、工夫しながらこれまで通りの生活を続けている方はたくさんいます。気になる症状があれば、ひとりで悩まず早めに医療者に相談してください。あなたのペースで少しずつ慣れていけば大丈夫です。
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最終更新: 2026年10月22日
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