股関節置換術の合併症
概要
人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)は、すり減ったり傷んだりした股関節(足の付け根の関節)を、人工の関節に置き換える手術です。合併症とは、手術のあとに起こる可能性のある別の問題のことです。すべての人に起こるわけではありません。
重要な事実
- 合併症には、感染、血のかたまり、脱臼、人工関節のゆるみ、骨折などがあります。
- 手術後しばらくの腫れや痛みはよくありますが、急な変化や強い症状は早めの相談が必要です。
- 多くの合併症は、早く見つけて適切に対応することで改善が期待できます。
合併症が起こる割合は、手術の内容や体の状態によって変わります。多くはありませんが、起こりうる問題として注意が必要です。
変形性股関節症や股関節の骨折などで手術を受けた人が対象です。高齢、糖尿病、肥満、喫煙、免疫の低下などがある人は、特に注意が必要です。
症状
- 突然の息切れ、胸の痛み、呼吸の苦しさがある(血のかたまりが肺につまった可能性)
- 意識がもうろうとする、失神する、会話がかみ合わない
- 手術した脚が急に動かせない、明らかに変形している、激痛がある
- 手術の傷から大量に出血し、止まらない
- 高い熱と傷の強い腫れ・膿があり、ぐったりしている
- ⚠傷の赤み、腫れ、熱感、膿のようなものが出ている
- ⚠脚のふくらはぎが片側だけ腫れる、痛む、赤くなる、熱を持つ
- ⚠発熱がある、または寒気がする
- ⚠手術した股関節の痛みが急に強くなった
- ⚠転倒したあとから痛みが強く、歩けない
- ⚠脚のしびれや力の入りにくさが急に出てきた
一般的な症状
- 手術した股関節や脚の痛みが急に強くなる
- 傷のまわりが赤く腫れる、熱を持つ、膿(うみ)のようなものが出る
- 脚のふくらはぎが片側だけ腫れる、痛む、赤くなる
- 発熱がある
- 脚が急に動かしにくくなる、長さが違うように感じる
- 歩くときの不安定さや、股関節の強い違和感が続く
- 脚のしびれや力の入りにくさがある
子供の症状
- 人工股関節置換術は主に大人が受ける手術で、小児ではほとんど行われません。子どもの股関節の病気については、小児科や整形外科に相談してください。
高齢者の症状
- 高齢者では、転倒による脱臼や骨折、筋力の低下、感染、一時的な混乱(せん妄)などに注意が必要です。
- 痛みで動くのがつらいときは、無理をせず、家族や医療者に早めに伝えましょう。
原因
主な原因
- 手術の傷や人工関節のまわりに細菌が入ること(感染)
- 手術後の安静や動きの少なさで、脚の奥の静脈に血のかたまりができること
- 人工関節が本来の位置から外れること(脱臼)
- 人工関節と骨の間がゆるむこと
- 転倒などによる骨折
- 手術中や手術後に神経や血管が傷つくこと
- 傷の治りが悪いこと
- 脚の長さの違いや、人工関節の向きの問題
リスク要因
- 高齢であること
- 糖尿病、腎臓の病気、貧血などがあること
- 肥満があること
- 喫煙習慣があること
- 免疫の働きが弱まっていること
- 手術前後に感染症があること
- 転倒しやすい環境や、筋力の低下があること
- リハビリを十分に続けられないこと
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 傷の赤み・腫れ・膿、発熱など感染を疑う症状がある
- 脚の片側だけの腫れや痛みがある
- 急に強い痛みが出た、脚が動かせない
- 転倒したあとから歩けない
- 息苦しさや胸の痛みがある場合は、ためらわずに119番へ連絡する
定期受診を予約すべき場合:
- 手術した股関節の痛みや違和感が長く続く
- 歩きにくさや脚の長さの違いが気になる
- 傷の治りが気になる
- リハビリの進み方について相談したい
- 不安や心配が強い
診断
症状の聞き取りと診察を行い、必要に応じて血液検査や画像検査で合併症の有無を調べます。感染、血のかたまり、脱臼、ゆるみ、骨折などが疑われる場合は、それぞれに合った検査が行われます。
行われる可能性のある検査
- 診察(傷の状態、脚の動き、腫れ、痛みの場所を確認)
- 血液検査(感染や炎症のサインを調べる)
- レントゲン検査(人工関節の位置やゆるみ、骨折を確認)
- 超音波検査(脚の静脈の血のかたまりを調べる)
- CT検査(体の断面を画像で見る検査。必要に応じて行う)
- MRI検査(磁気を使う画像検査。人工関節の種類によっては行えないことがあるため、医師が判断する)
- 関節の液を調べる検査(感染が疑われる場合など)
診察で予想されること
問診と診察のあと、必要に応じて検査を行います。結果を待つ間は不安かもしれませんが、医師が結果を説明し、治療の方針を一緒に考えます。気になることは遠慮なく質問してください。
治療
合併症の種類と程度によって、治療の方法は変わります。安静やリハビリで様子を見る場合もあれば、処置や手術が必要になる場合もあります。自己判断で治療を中断せず、医療者の指示に従うことが大切です。
自宅でのセルフケア
- 医療者に指示されたリハビリを無理のない範囲で続ける
- 傷を清潔に保ち、医師の指示に従ってケアする
- 転倒を防ぐため、部屋の整理や手すりの利用を考える
- 長時間同じ姿勢を避け、適度に脚を動かす
- 喫煙がある場合は、禁煙について相談する
- 気になる症状をメモして、診察時に伝える
医療治療
感染が疑われる場合は、医療機関で感染に対する治療が行われます。血のかたまりが疑われる場合は、血液を固まりにくくする治療が検討されます。脱臼は、元の位置に戻す処置や装具などで対応することがあります。人工関節のゆるみや骨折、繰り返す脱臼では、再手術が検討されることがあります。痛みや腫れには、リハビリや医師の判断による痛みをやわらげる治療が行われることがあります。
手術が検討される場合
感染が強い、人工関節が大きくゆるんだ、骨折した、脱臼を繰り返す、などの場合には手術が検討されます。手術が必要かどうかは、整形外科医が体の状態や検査結果を総合して判断します。
この病気と共に生きる
手術後の生活では、転倒を防ぐことと、リハビリを続けることが大切です。痛みや腫れの変化を記録し、診察時に伝えると役立ちます。無理をしすぎず、できる範囲で日常生活を整えていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 部屋の中の物を整理し、床に物を置かない
- 浴室や階段など、滑りやすい場所に注意する
- 必要に応じて手すりや杖などを使う
- 長時間の同じ姿勢を避ける
- 体重管理について医師や管理栄養士に相談する
- 疲れをためず、休息をとる
食事と運動
バランスのよい食事を心がけ、たんぱく質やカルシウムを含む食品を適度にとりましょう。運動は、医療者や理学療法士の指示に沿って行うことが大切です。痛みが強いときは無理をせず、運動の内容を相談してください。
精神的健康と心の健康
痛みや不安で気持ちが落ち込むことがあります。手術後の回復には個人差があり、焦らなくて大丈夫です。つらさが続くときは、医師や看護師、地域の相談窓口に相談してください。緊急の危険がある場合は119番へ連絡してください。
予防
すべての合併症を防ぐことはできませんが、感染予防、転倒予防、リハビリ、禁煙、血糖値の管理などでリスクを下げられることがあります。手術前後の指示をよく守りましょう。厚生労働省などがすすめる一般的な感染予防の考え方に沿って、手洗いや傷の清潔保持を心がけることも大切です。
ワクチン
手術前に、医師と予防接種歴や感染症の既往を確認しておくことが大切です。必要な予防接種があるかどうかは、医師や地域の保健所に相談してください。
検診プログラム
手術前の検査で、感染や貧血、血糖値などを確認します。手術後も定期的な診察や画像検査で、人工関節の状態を確認します。
合併症
治療しない場合
- 感染が広がり、全身の状態が悪くなることがある
- 脚の血のかたまりが肺につまり、息苦しさや胸の痛みを引き起こすことがある
- 脱臼を繰り返し、日常生活に大きな支障が出ることがある
- 人工関節のゆるみや骨折で、再手術が必要になることがある
- 脚の長さの違いや歩行の障害が残ることがある
- 痛みや筋力低下が長引き、回復が遅れることがある
長期的な見通し
多くの合併症は、早く見つけて適切に対応することで改善が期待できます。リハビリを続け、気になる症状を早めに医療者へ伝えることが大切です。不安が強いときは、医師や看護師、理学療法士に相談してください。
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最終更新: 2026年10月22日
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