行為障害(こういしょうがい)— 子どもの行動の困難を理解する
概要
行為障害(こういしょうがい)は、子どもや10代の若者が、社会のルールや他の人の権利を、長い期間にわたって繰り返し傷つける行動をとり続ける状態を指します。医学用語では「素行障害(そこうしょうがい)」と呼ばれることもあります。ポイントは「一度だけのいたずら」ではなく、同じような行動が何か月も、ときには1年以上続くことです。嘘をつく、物を盗む、けんかや暴力、家出、学校を無断で休む、といった行動が組み合わさって現れます。大切なのは、これは「わるい子」というレッテルではなく、本人が生きづらさを抱え、助けを必要としているサインかもしれない、ということです。
重要な事実
- 単発のいたずらや反抗期とは違います。似た行動が半年から1年以上続き、家庭・学校・友人関係など複数の場面で問題になることが目安になります。
- 背景には、生まれつきの気質、脳の感情や衝動のコントロールの働き、育った環境など、いくつもの要因が重なっていると考えられています。しつけだけが原因ではありません。
- 早い時期に支援が始まると、行動が落ち着きやすく、その後の生活が良くなりやすいことが知られています。
- 本人だけでなく、家族や周りの大人にも支援が必要です。一人で抱え込まないことが大切です。
珍しいものではありません。子どもや10代のおよそ2〜5%に見られると言われています(調査によって幅があります)。男子に多いとされていますが、女子にも起こります。
主に子どもと10代の若者に現れ、多くは学童期から思春期にかけて始まります。思春期前に始まる場合は行動がより長く続きやすいと言われます。大人になってから似た行動が続く場合は、「反社会性パーソナリティ障害」という別の診断名で考えられることが多いです。
症状
- 自分や他の人を傷つけている、または傷つけようとしている
- 刃物や武器になりうる物を持って脅している
- 放火した、火をつけようとしている
- 「死にたい」と言う、自分を傷つける行為(リストカットなど)がある、薬を大量に飲んだ
- 子どもへの虐待が疑われ、命の危険がある
- けが人や意識がない人がいる(119番へ連絡してください)
- ⚠暴力が急に増えた、エスカレートしている
- ⚠家出が続き、行き先がわからない
- ⚠警察に補導された、大きなトラブルになった
- ⚠学校に行けない状態が続いている
- ⚠眠れない日が続く、別人のように様子が変わった、会話がかみ合わない
- ⚠家族が対応に限界を感じている
一般的な症状
- けんかや暴力、いじめなど、人を傷つける行動が繰り返される
- 嘘をつく、人をだます、ごまかすことが多い
- 他人の物を盗む、壊す、放火する
- 動物や人を傷つける
- 家出をする、学校を無断で休む、夜遅くまで帰らない
- ルールや約束を守らない、門限や決まりを破る
- 相手の気持ちに気づきにくく、悪気がなさそうに見える
- 注意されても反省しているように見えず、同じことを繰り返す
- すぐかっとなる、衝動的に行動してしまう
- 罰を恐れず、危険なことをためらわない
子供の症状
- かんしゃくを起こす、たたく、かむ、物を投げる・壊す
- 嘘をつく、ごまかす、人の物を黙って持っていく
- 学校でけんかが多く、先生の指示に従いにくい
- 動物に乱暴する
- 友達とうまく遊べず、孤立したり、逆に強い子についていったりする
- 注意しても態度が変わらず、周りの大人が手を焼く
高齢者の症状
- 大人の場合、暴力、法律に触れる行動、責任を取らない態度が続くことがあります
- 仕事や人間関係が繰り返しうまくいかなくなる
- 約束や借りを守らない、人をだます
- ただし成人では「反社会性パーソナリティ障害」など別の診断名で考えられることが多いため、専門家の評価が必要です
原因
主な原因
- 生まれつきの気質(衝動的になりやすい、刺激を求める傾向が強いなど)
- 脳の働き(感情のコントロール、衝動の歯止め、相手の気持ちを読み取る力に関わる部分の働き方)
- 育つ環境(安定しない養育、厳しすぎる・または一貫しないしつけ、虐待やネグレクト=育児の放棄や無視)
- 学習した行動(暴力や問題行動で思い通りになった経験、仲間からの影響)
- これらが一つではなく、いくつも重なって現れると考えられています
リスク要因
- 家族に似た行動の傾向や精神的な不調がある
- 虐待、ネグレクト、家庭内暴力を見て育った
- 貧困、住まいの不安定さ、地域の治安などの社会的な困難
- ADHD(注意欠如・多動症)、学習障害、言語の困難などがある
- いじめを受けた経験がある、安心できる友達が少ない
- 妊娠中の喫煙・飲酒、低出生体重
- 養育者自身が強いストレスや精神的な不調を抱えている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 自分や他人を傷つける行動がある
- 家出が続いている、行き先がわからない
- 警察沙汰になった、補導された
- 「消えたい」「死にたい」という言葉がある、自分を傷つけている
- 虐待が疑われる状況がある
定期受診を予約すべき場合:
- ルール違反、嘘、暴力などが数か月以上続いている
- 学校から何度も連絡があり、対応に困っている
- 家族が疲れ果てている、どう関わればよいかわからない
- 本人が「生きづらい」「自分はおかしいのかも」と感じている
- 友人関係がうまくいかず、孤立している様子がある
診断
小児科、児童精神科、精神科などの医師が、本人と家族から話を聞き、学校での様子もあわせて確認します。診断は「行動のパターンがどれくらい続いているか」「家庭・学校・友人関係など複数の場面で起きているか」「生活にどんな影響が出ているか」をもとに考えられます。血液検査のような1つの検査で決まるものではありません。
行われる可能性のある検査
- 本人と家族との面談(問診)で、行動の経過や生活の様子を聞く
- 行動チェックリスト(質問紙)で、行動の特徴を整理する
- 学校の先生からの情報提供(連絡帳や面談など)
- 発達検査・知能検査で、学習や発達の特性を確認する
- 必要に応じて身体の検査(甲状腺の働き、睡眠の問題、薬の影響など、他の原因を除外するため)
診察で予想されること
一度の診察で結論が出るとは限らず、数回に分けて話を聞くことがあります。本人が話したがらないときは、家族からの情報が手がかりになります。診断名がついてもつかなくても、困りごとに対してどんな支援が使えるかを一緒に考えることが目的です。納得できない場合は、別の医療機関で意見を聞く(セカンドオピニオン)こともできます。
治療
行為障害の支援の中心は、薬ではなく、本人と家族を支える心理社会的なアプローチです。行動の背景にある困りごと(感情のコントロール、人との関わり方、家庭や学校の環境)に働きかけ、できていることを増やしていくイメージです。早期に始めるほど効果が出やすいと言われています。
自宅でのセルフケア
- 家のルールはできるだけ少なく、はっきりと、毎回同じように伝える
- できたこと、頑張ったことを具体的な言葉でほめる(「〇〇ができたね」)
- 腹が立ったときにどう落ち着くかを、本人と一緒に決めておく(その場を離れる、深呼吸するなど)
- 睡眠・食事・活動のリズムを整え、生活の見通しを立てやすくする
- 家族だけで抱え込まず、学校や相談機関と情報を共有する
- 養育者自身が休息をとる時間と、話を聞いてもらえる相談先を確保する
医療治療
専門家による支援は、いくつかを組み合わせて行われます。たとえば、養育者向けのプログラム(ペアレントトレーニング:子どもの行動への関わり方を学ぶ)、本人への認知行動療法(考え方と行動のパターンを見直す)、家族療法(家族全体のコミュニケーションを整える)、ソーシャルスキル訓練(人との関わり方を練習する)、学校との連携(環境の調整や支援計画づくり)などです。ADHDやうつ、不安など、併存する状態への対応も大切にされます。薬が使われることもありますが、行為障害そのものを治す薬はなく、併存する症状や強い衝動性を和らげる補助として検討されることがあります。薬の必要性や種類は、担当の医師とよく相談して決めてください。
この病気と共に生きる
毎日の小さな積み重ねが力になります。調子が良い日も悪い日もあるのが自然です。うまくいかなかった日を数え上げるのではなく、「今日はここができた」を一つ見つける習慣が、本人の自信と家族の余裕につながります。学校とは、連絡の頻度や伝え方をあらかじめ決めておくと、お互いに楽になります。
生活習慣のアドバイス
- 起きる時間・寝る時間をできるだけ一定にする
- 画面(スマホ・ゲーム)の時間をあらかじめ家族で決めておく
- 週に何回か、体を動かす時間をつくる
- 予定を目に見える形(カレンダーやメモ)にして、見通しを持てるようにする
- 落ち着ける場所・時間を家の中につくる
- 家族で過ごす短い時間を、意識して確保する
食事と運動
特別な食事療法が行為障害に効くという確かな根拠はありません。バランスの良い食事と、決まった時間の食事は、気分の安定や睡眠のリズムを支えます。運動は、強い感情を発散させ、気分を整えるのに役立ちます。ウォーキング、自転車、球技、泳ぎなど、本人が続けやすいものを選ぶとよいでしょう。睡眠が大きく乱れているときは、医療機関に相談してください。
精神的健康と心の健康
本人は「自分はダメだ」という気持ちや不安、怒りを抱えやすいと言われます。家族も、疲れ、孤立感、罪悪感を抱えがちです。どちらも自然な反応で、弱さではありません。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちが出てきたとき、追い詰められた感じがするときは、一人で抱えず、医療機関や地域の相談窓口に連絡してください。命に関わる緊急時は119番(救急)へ、差し迫った危険があるときは110番(警察)へ連絡してください。
予防
完全に防ぐことは難しいですが、リスクを下げ、早く気づくことはできます。安心できる大人との関係、一貫した関わり、虐待やネグレクトの予防、子育て家庭への支援、学校での社会性や感情の扱い方を学ぶ取り組みなどが、予防につながると考えられています。気になる行動があるときは「様子を見よう」と長く迷わず、早めに相談することが一番の予防になります。
ワクチン
行為障害に直接関係するワクチンはありません。ただし、決められた予防接種や健康診査をきちんと受けておくことは、子どもの健康全体を守る基本になります。
検診プログラム
行為障害そのものを調べる決まった検査はありません。乳幼児健診、学校健診、養育相談などの機会に、気になる行動や子育ての困りごとを相談できます。遠慮せずに話してみてください。
合併症
治療しない場合
- 学校での学習が遅れ、進学や就職の選択肢が狭まることがある
- 友人関係がうまくいかず、孤立する、または問題のある集団に巻き込まれる
- アルコールや薬物の問題につながることがある
- けが、事故、法律に触れる行動などのリスクが高まる
- うつ、不安、自傷など、心の不調を併せ持つことがある
- 家族の疲れや関係のこじれが大きくなる
長期的な見通し
希望のある話をします。行為障害は、適切な支援によって行動が落ち着き、社会生活になじめるようになることが少なくありません。成長とともに改善していく人も多く、特に支援が早く始まった場合や、本人の得意なこと・安心できる大人がそばにいる場合に、良い経過が期待できます。一方で、支援が長くかかることもあります。良くなったり揺り戻したりを繰り返しながら進むのがふつうです。あせらず、関係機関と一緒に一歩ずつ進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年10月22日
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