先天異常(生まれつきのからだの形や働きの違い)について
概要
先天異常とは、赤ちゃんがお母さんのおなかの中で育つあいだに、からだの一部の形や働きが、ふつうとはちがう形でつくられてしまうことをいいます。生まれつきの「形のちがい」と「働きのちがい」をまとめた呼び方で、心臓、手足、口の中、脳や神経、胃や腸、腎臓やおしっこの道など、いろいろな場所に起こります。命に関わらない軽いものもたくさんあり、外から見ただけでは分からないものもあります。先天異常は、誰かの育て方や努力が足りないせいで起こるものではありません。
重要な事実
- 先天異常は、生まれた赤ちゃんの数%に見られるもので、決してめずらしいものではありません。
- 原因がはっきり分かるものは一部で、多くは原因不明です。ご家族の育て方や生活のせいではありません。
- 早い時期に見つけて必要な支援を始めることで、こどもが健やかに育つ力は大きく広がります。
日本を含む多くの国の調査では、生まれた赤ちゃんのおよそ3〜5%に何らかの先天異常が見られると報告されています。30人に1人くらいの割合で、決して特別なことではありません。軽いものまで含めると、もっと多くなると考えられています。
どの家庭にも起こる可能性があります。年齢や住んでいる場所、収入、これまでの健康状態にかかわらず起こり、家族に同じ病気の人がいない場合も多いです。特別な家系だけに起こるものではない、ということを知っておいてください。
症状
- 呼吸が苦しそう、ゼーゼー・ヒューヒューいう、息を吸うたびに胸がへこむ
- 顔色や唇が青白い、紫っぽい、血色が悪い
- ぐったりしていて反応が弱い、意識がない、呼びかけても反応しない
- けいれんが起きて止まらない、または短いけいれんをくり返す
- ミルクをまったく飲めない、何度も吐いて水分がとれない、半日以上おしっこが出ない
- ⚠発熱がある(生後3か月未満の赤ちゃんの発熱は特に急いで受診してください)
- ⚠ミルクの飲みがいつもより明らかに少ない、元気がない日が続く
- ⚠体重が増えない、顔や手足がむくんでいる
- ⚠手術した場所や傷が赤く腫れて、膿のようなものが出ている
- ⚠くり返す嘔吐や下痢で、ぐったりしてくる
一般的な症状
- 生まれたときに、口の周り・手足の指・背中・おなかなどの形のちがいが分かる
- 心臓の音に雑音があると言われる(多くは命に関わらないものですが、詳しい検査が必要です)
- ミルクの飲みが悪い、飲んでもすぐ疲れてしまう
- 体重が増えにくい、成長の線がゆるやか
- 皮膚や唇の色が青白く見えることがある
- おなかが張る、うんちが出ない、吐き戻しが続く
- 妊娠中の超音波検査(エコー)で、からだの形のちがいを指摘される
子供の症状
- 首のすわり、寝返り、おすわり、歩きはじめなどの目安が、ゆっくり進む
- ことばが出るのが遅い、呼びかけへの反応が少ないと感じる
- かぜや肺炎など感染症をくり返しやすい
- 食事に時間がかかる、むせやすい、食べられるものが少ない
- 耳の聞こえにくさがあり、呼んでも気づかないことがある
- 保育園や学校での活動に疲れやすい、息が上がりやすい
高齢者の症状
- 多くの先天異常は小児期までに見つかりますが、心臓の小さな穴や腎臓・尿の道の形のちがいなどは、大人になって健康診断や別の検査で初めて分かることがあります
- 大人になって見つかった場合は、日常生活にほとんど支障がないことも多くあります
- これまで大きな問題がなくても、妊娠を考えたときや手術の前などに、これまでの経過を医師に伝えると安心です
原因
主な原因
- 遺伝子や染色体の変化(からだの設計図の一部が、生まれつき少しちがう形になっていること)
- おなかの中での感染症(風疹など、妊娠中にかかると赤ちゃんに影響することがあるもの)
- 妊娠中に使った一部の薬や、アルコール・たばこの影響
- お母さんの持病(糖尿病など)や、栄養のバランスの大きな偏り
- 多くの場合はいくつかの要因が重なって起こると考えられ、はっきりした原因は分かりません
リスク要因
- 妊娠したときの年齢が高い(染色体の変化が起こる割合が少し上がります)
- 糖尿病などの持病がある
- 妊娠中に一部の薬を使った、または使う必要があった
- 妊娠中の飲酒・喫煙
- 妊娠中に風疹などの感染症にかかった
- 家族に同じような先天異常の人がいる
- 妊娠前からの葉酸不足、極端に偏った食事
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 妊娠中に、超音波検査で赤ちゃんの形や育ち方のちがいを指摘された(できるだけ早く主治医に相談してください)
- 生まれた赤ちゃんの呼吸が苦しそう、顔色が悪い、ミルクを飲めない
- こどもがぐったりしている、けいれんした、意識がはっきりしない
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠を考えている、または妊娠が分かった(早めに相談すると、安心して過ごすための情報が得られます)
- 健診や乳幼児健診で、発達や体重の増え方について相談したいことがある
- からだの形や動きで気になる部分があり、急ぎではないが一度見てもらいたい
- 大人になって、心臓や腎臓の検査で「生まれつきの形のちがい」と言われた
- 家族に先天異常の人がいて、これからの妊娠について知りたい
診断
先天異常は、妊娠中の超音波検査(エコー)で見つかることもあれば、生まれた直後の診察で気づかれることもあります。見た目では分からないものは、哺乳の様子や体重の増え方、心臓の音などを手がかりに、必要な検査を進めて見つかります。診断は、ひとつの検査だけで決まるのではなく、いくつかの検査と経過をあわせて总合的に判断されます。
行われる可能性のある検査
- 超音波検査(エコー)——おなかの上や膣から音波をあてて、からだの中の形を見る検査
- 診察と身体計測——からだの形、動き、体重・身長の伸びを確認します
- 血液検査——感染症や内臓の働き、栄養の状態などを調べます
- 画像検査(レントゲン・CT・MRI)——骨や内臓の形をくわしく見ます
- 心臓超音波検査——心臓の穴や弁の形、血液の流れを調べます
- 染色体・遺伝子の検査——血液などを用いて、設計図の変化の有無を調べます(必要性がある場合に行います)
- 聴力検査・目の検査——聞こえや見え方への影響を確認します
- 新生児スクリーニング——生まれたあとに受ける、代謝の病気や聞こえの検査
診察で予想されること
検査の結果が出るまでには時間がかかることがあります。結果の説明では、専門の医師や遺伝カウンセリングの担当者と一緒に、今わかっていること・まだ分からないことを整理していきます。むずかしい言葉が多いと感じたら、メモを持参して「やさしい言葉で」「ここをもう一度」と伝えて大丈夫です。家族で一緒に話を聞くことも助けになります。
治療
先天異常への対応は、種類と程度によって大きく変わります。命に関わるものには早い段階で治療を行い、そうでないものは成長を見守りながら、必要になったときに支援を足していく形が一般的です。治療の目標は「障害をなくすこと」だけでなく、そのこどもが安心して食べ、眠り、遊び、学べるようにすることです。
自宅でのセルフケア
- 健診・乳幼児健診・専門外来の予定を守り、記録を一冊のノートにまとめておく
- 授乳や食事の量・時間、体重、排泄の様子を記録し、変化に気づけるようにする
- 処方された薬は自己判断でやめたり量を変えたりせず、気になることは薬剤師に相談する
- 感染症を予防するため、手洗いや周りの人の健康管理を心がける
- 家族だけで抱えこまず、地域の保健師や相談窓口に早めにつながる
医療治療
治療は、からだの機能を助ける内科的なケア(栄養や feeding の工夫、呼吸のサポート、リハビリテーションなど)、手術による形の修正、そして発達を支える療育やリハビリテーションを組み合わせて進めます。使う薬や治療の内容は、症状や年齢、体の状態によって一人ひとり異なるため、必ず主治医の説明を受けてください。当記事では具体的な薬の名前や量はお伝えしません。
手術が検討される場合
手術が必要かどうかは、先天異常の種類と程度、からだの成長、生活への影響によって決まります。たとえば口の形のちがいや心臓の穴、消化管の閉じた部分などは、生後まもなく、あるいは数か月〜数年のうちに手術が検討されることがあります。一方で、経過を見るだけでよい場合も多くあります。手術の時期や方法は、小児科・小児外科などの専門チームとよく相談して決めていきます。
この病気と共に生きる
先天異常のあるこどもとの毎日は、通院の予定が多かったり、食事や服薬に手間がかかったりと、がんばりが必要な場面があります。同時に、多くのこどもたちは遊び、学び、友人をつくりながら、その子なりのペースで育っていきます。家族みんなで手分けをし、頼れる人やサービスを早めに使うことが、長く続けていくコツです。
生活習慣のアドバイス
- 家族の予定をひとつのカレンダーにまとめ、通院日を共有する
- 学校・保育園・かかりつけ医で情報を共有できる連絡ノートを作る
- きょうだいにも、その子のペースで病気のことを説明する時間をつくる
- 睡眠と休息を家族全員で確保する(保護者の休息も治療の一部です)
- 自治体の障害福祉サービスや医療費助成など、使える制度を保健師に確認する
食事と運動
食事は、飲みこみやすさや消化のしやすさに合わせた工夫(やわらかさ、量、回数など)が役立ちます。管理栄養士に相談すると、家庭の食事に合わせた具体的な工夫を教えてもらえます。運動は、主治医に確認したうえで、無理のない範囲で体を動かすことが体力づくりや気分転換につながります。心臓に負担のかかる運動を制限する必要がある場合もあるので、自己判断せずに相談してください。
精神的健康と心の健康
診断を受けたとき、家族は不安・悲しみ・とまどいを感じるのが自然です。それは弱さではなく、大切な人を思う気持ちの表れです。育てていく中でも、疲れや孤独感がわいてくることがあります。つらい気持ちが続いて眠れない、涙が止まらない、自分を責めてしまうときは、ひとりで抱えず、かかりつけ医や地域の相談窓口、専門のカウンセラーに話してください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えたときは、すぐに医療機関や地域の緊急の相談先に連絡してください。
予防
先天異常の多くは、はっきりした原因が分からず、完全に防ぐことはできません。ただし、妊娠前から準備することでリスクを下げられるものもあります。妊娠を考えている段階で、かかりつけ医や産婦人科に相談してみてください。厚生労働省も、妊娠を計画している段階からの葉酸摂取や、生活習慣の見直しを勧めています。葉酸のとり方については、食事も含めて医師や薬剤師に相談してください。
ワクチン
風疹は、妊娠中にかかると赤ちゃんに影響することがある感染症です。妊娠を考えている人は、妊娠前に風疹の予防接種を受けておくことが勧められています(妊娠中は接種できません)。抗体があるかどうかは血液検査で確認できます。そのほかのワクチンについても、妊娠前・妊娠中の接種の可否を医師に確認してください。
検診プログラム
妊娠中の超音波検査や母子健康手帳の健診、生まれたあとの新生児スクリーニング(代謝の病気や聞こえの検査)は、早期発見と早期支援につながります。妊娠前の健康相談、持病のコントロール、飲酒・喫煙を避けることも大切な準備です。
合併症
治療しない場合
- 栄養がとりにくく、体重や身長の伸びがゆっくりになることがある
- 心臓や肺に負担がかかり、息切れや疲れやすさが出ることがある
- 感染症にかかりやすく、重症化しやすくなることがある
- 聞こえや見え方、ことばの発達への影響が残ることがある
- 排泄や食事の管理に、長く工夫が必要になることがある
長期的な見通し
先天異常とひとことで言っても、その種類と程度はとても幅広く、多くのかたが治療や支援を受けながらふつうの生活を送っています。医療や支援の仕組みは年々進歩しており、早く見つけて関わるほど、こどもの力が伸びる可能性は大きくなります。先のことを心配しすぎるより、いま必要な一歩を主治医や相談先と一緒に決めていくことが、安心につながります。
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最終更新: 2026年10月22日
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