先天性緑内障(生まれつきの緑内障)
概要
先天性緑内障は、生まれたとき、または生後1年くらいまでの間に見つかる緑内障です。目の中には「房水(ぼうすい)」という水が循環していて、目の形を保ち、栄養を届けています。この水の出口(排水路)が生まれつきうまくつくられていないと、水がたまって目の圧力(眼圧)が高くなります。眼圧が高い状態が続くと、目の奥にある視神経(物を見るための信号を脳へ送る神経)が傷つき、視力の発達に影響することがあります。
重要な事実
- 生まれつき目の排水路のつくりに異常があるために起こる、まれな病気です。
- 赤ちゃんでは「涙がよく出る」「光をまぶしがる」「黒目が白く濁る」「目が大きくなる」などが手がかりになります。
- 治療の中心は手術で、早く見つけて早く治療を始めるほど、視力を保てる可能性が高くなります。
まれな病気です。発生率はおおよそ1万分の1前後といわれ、日本でも多くの小児眼科で診療が行われています。決して珍しすぎて誰にも相談できない病気ではなく、専門の医療チームが対応できる病気です。
生まれたばかりの赤ちゃん、または乳幼児に起こります。男の子にやや多く、両方の目に起こることが多いといわれています。家族に同じ病気の人がいる場合や、他の先天異常(生まれつきの体の特徴)がある場合に起こりやすいことが知られていますが、家族歴がないことも少なくありません。
症状
- 赤ちゃんが急に激しく泣き続け、目を強くこすり、嘔吐(おうと)を伴う
- 目が急に大きく腫れ、白く濁ったように見える
- 目に強い痛みがあり、顔色が悪くぐったりしている
- 目にけがをした可能性があり、見え方が急におかしい
- ⚠黒目が白っぽく濁って見えると言われた
- ⚠目が大きすぎる気がする、左右で大きさが違う
- ⚠涙目とまぶしがる様子が数日以上続く
- ⚠健診や園・学校で目の異常を指摘された
一般的な症状
- 涙がたくさん出る(涙目が続く)
- 光をまぶしがる(明るい場所で目を開けにくい、顔をそらす)
- まぶたがけいれんするようにぎゅっと閉じる
- 黒目(角膜)が白っぽく濁って見える
- 目やまぶたをよくこする、こすりたがる
子供の症状
- 黒目が大きすぎる、目が大きい(牛眼のように見える)
- 黒目の表面がくもって見える
- 物をじっと見つめない、目で追いかけにくい
- 日の光の下で機嫌が悪くなる、泣く
- 片方の目だけ涙や濁りがある
- 目の充血が続く
高齢者の症状
- 先天性緑内障は赤ちゃんの病気ですが、治療が遅れた場合や、成長してから気づかれる場合には、かすみ目、まぶしさ、視野が欠ける感じ、頭痛などが手がかりになることがあります。大人になってからの緑内障と区別するため、小児眼科での確認が大切です。
原因
主な原因
- おなかの中での目の発達の途中で、水の出口(前房隅角:ぜんぼうぐうかく)のつくりがうまくできず、排水が悪くなることが主な原因です。
- 遺伝子の変化(生まれつきの体の設計図の違い)が関係することがあります。
- 他の先天異常や症候群の一部として起こることもあります。
- 多くは、妊娠中の母親の過ごし方や食事が原因になるものではありません。ご家族を責める必要はありません。
リスク要因
- 家族に先天性緑内障の人がいる
- 男の子である
- 他の先天異常や症候群がある
- 近親婚(血縁の近い者どうしの結婚)がある家系
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 黒目が白く濁って見える、目が大きくなった気がする
- 強いまぶしがりや涙目が続き、授乳や睡眠に影響している
- 目の充血と痛そうな様子が続く
- 健診で「目が大きい」「角膜が濁っている」と言われた
定期受診を予約すべき場合:
- 乳幼児健診(1か月健診、3〜4か月健診など)で目の異常を指摘された
- 家族に先天性緑内障の人がいて、子どもの目が気になる
- 涙目やまぶしがりが長く続いている
- 目の動きや物の見え方が気になることがある
診断
小児眼科(子どもの目を専門とする眼科)で、目の様子をていねいに観察し、眼圧や黒目の大きさ、目の奥の視神経の状態を調べます。赤ちゃんはじっとしていられないため、必要に応じて鎮静(ちんせい:うとうとした状態にすること)や検査用の麻酔を使って、正確に調べることがあります。
行われる可能性のある検査
- 眼圧検査(目の硬さ=圧力を測る)
- 細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)による角膜や前房の観察
- 角膜の大きさ・濁りの測定
- 眼底検査(目の奥の視神経の状態を見る)
- 超音波検査(目の中の様子を見る)
- 成長したお子さんでは視野検査や視力検査
- 必要に応じて遺伝カウンセリングや血液検査
診察で予想されること
検査のために、お子さんをうとうとさせる処置を行うことがあります。検査の前は授乳や食事の時間に制限がある場合があるので、事前に指示を確認しておくと安心です。診断までに何度か通院して検査を重ねることもあります。ご家族が症状に気づいた時期や様子をメモしておくと、診療の助けになります。
治療
先天性緑内障の治療の中心は、目の排水路を広げて水が流れやすくする手術です。診断されたら、できるだけ早い時期に手術を検討することが一般的です。手術の前後には、眼圧を下げる点眼薬などを補助的に使うことがあります。治療は「眼圧を下げて、視神経を守り、視力を育てる」ことを目標に、長い目で続けていきます。
自宅でのセルフケア
- 点眼薬は、回数や使い方を守って続ける(自己判断で中断しない)
- 目を強くこすらないように見守る。爪を短く切り、必要なら赤ちゃん用の手袋を使う
- まぶしがるときは、帽子や日よけ、カーテンで光をやわらげる
- 通院日を記録し、検査結果を一冊のノートにまとめておく
- 園・学校には、目のことを伝えておき、ぶつかる遊びに配慮してもらう
- 気になる様子があれば、次の受診を待たずに医療機関へ相談する
医療治療
眼圧を下げるための点眼薬を使うことがあります。また、手術では、目の中の水の出口を広げたり、新しい通り道をつくったりする方法が行われます。手術の方法は、目の状態や年齢、医療機関の体制によって選ばれます。治療方針や手術の内容は、主治医から詳しい説明を受けたうえで、ご家族と一緒に決めていきます。薬の名前や量については、必ず主治医・薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
多くの場合、診断後できるだけ早い段階で手術が検討されます。眼圧が高いままでは視神経が傷つき続ける可能性があるためです。手術後も眼圧や視力の発達を定期的に確認し、必要に応じて追加の治療を行うことがあります。
この病気と共に生きる
先天性緑内障は、手術のあとも長くつきあっていく病気です。定期的な通院で眼圧と視力の発達を確認し、必要に応じて眼鏡や弱視(じゃくし)の訓練などを組み合わせていきます。視力は子どもが成長するにつれて育っていくため、就学前や学校生活の中での見え方のサポートも大切です。
生活習慣のアドバイス
- 規則的な生活リズムと十分な睡眠を心がける
- まぶしさが強いときはサングラスや帽子を活用する
- 目をぶつける可能性が高い遊びやスポーツは、主治医に相談してから決める
- プールや水遊びは、目の状態について主治医に確認する
- テレビやスマートフォンは距離と時間に気をつけ、休憩をとる
- 兄弟姉妹にも病気のことをやさしく説明し、家族で支え合う
食事と運動
特別に決まった食事制限はありません。ふだんのバランスのよい食事で問題ありません。運動も、目を強く打つ心配の少ない遊びや運動は積極的に楽しんでよいといわれています。激しい接触のあるスポーツや、目に水が入る遊びについては、主治医に相談してから始めると安心です。
精神的健康と心の健康
子どもの目に病気があると告げられると、ご家族は不安、悲しみ、自分を責める気持ちを抱えやすくなります。とくに手術や通院が続くと、疲れや孤独感が大きくなることもあります。こうした気持ちは自然なもので、一人で抱え込む必要はありません。つらいときは、医療チームや地域の相談窓口に話してみてください。気持ちが追い詰められて自分や赤ちゃんを傷つけそうに感じたとき、または緊急の危険を感じたときは、ためらわず119番に連絡してください。
予防
生まれつきの目のつくりによるため、完全に予防することは難しい病気です。ただし、早く見つけて早く治療を始めることで、視力を守れる可能性が大きく変わります。「予防できないから何もできない」のではなく、「早期発見が最大の味方」と考えてください。
検診プログラム
乳幼児健診は、目の異常に気づく大切な機会です。健診では目の大きさや黒目の濁り、光への反応などを確認します。家族に先天性緑内障の人がいる場合や、健診で気になる点を指摘された場合は、小児眼科で早めに相談してください。
合併症
治療しない場合
- 眼圧が高いまま続くことで視神経が傷つき、視力が低下する
- 黒目が濁ったままになり、見えにくさが残る
- 目の成長が妨げられ、近視が強くなったり、弱視(視力の発達が遅れる状態)になったりする
- 斜視(しゃし:目の向きがずれる)や眼振(がんしん:目が揺れる)が出ることがある
- 両方の目に起こっている場合、視力への影響が大きくなりやすい
長期的な見通し
先天性緑内障は、早く見つけて治療を始めれば、多くのお子さんが視力を保ち、成長していくことができます。ただし、手術のあとも眼圧が上がりやすいことがあり、生涯にわたる定期的な通院と検査が必要です。治療を続けながら視力の発達を支えていくことで、学校生活や将来の可能性を広げていけます。心配なことは、遠慮なく主治医にたずねてください。
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最終更新: 2026年10月22日
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