先天性風疹症候群
概要
先天性風疹症候群(CRS)は、お母さんが妊娠中に風疹(ふうしん)にかかることで、おなかの赤ちゃんに影響が出る病気です。風疹ウイルスが胎盤(たいばん:おなかの中で赤ちゃんに栄養を送る器官)を通って赤ちゃんにうつり、耳や目、心臓、脳の発達に長く影響することがあります。風疹は予防接種で防げる感染症です。
重要な事実
- 妊娠初期、特に最初の12週ごろに風疹にかかると、赤ちゃんへの影響が強くなりやすいです。
- 主な症状は、聞こえにくさ、目の病気(白内障など)、心臓の生まれつきの病気、発達の遅れです。
- 風疹の予防接種を受けておくことが、最も大切な予防法です。妊娠中は風疹ワクチンを受けることができません。
日本では、風疹の予防接種が広まったことで、先天性風疹症候群の赤ちゃんはとても少なくなりました。ただし、風疹が流行した年には報告が増えることがあります。
妊娠中に風疹にかかったお母さんから生まれた赤ちゃんが対象です。特にお母さんが妊娠初期に風疹にかかった場合に起こりやすくなります。遺伝する病気ではありません。
症状
- 赤ちゃんの呼吸が速い、苦しそう、息が止まりそう
- 唇や顔色が青白い、または紫色
- けいれんを起こしている
- ぐったりして反応が弱い、意識がはっきりしない
- 母乳やミルクをまったく飲めない、嘔吐(おうと)が続く
- 新生児で高い熱がある
- ⚠耳の聞こえが悪いと感じる、呼びかけに反応しにくい
- ⚠目が赤い、痛がる、白く濁ってきた
- ⚠黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)が強くなる
- ⚠体重が増えない、哺乳が弱い
- ⚠心雑音を指摘された、息切れしやすい
- ⚠妊娠中に風疹の人と接触した、または風疹のような発疹や熱が出た
一般的な症状
- 聞こえにくさ(難聴)
- 目の白濁(白内障:目のレンズが濁る病気)、緑内障、目が小さいなど
- 心臓の生まれつきの病気(心雑音:心臓の音の異常、チアノーゼ:唇や指先が青くなること)
- 発達の遅れ、学習の困難
- 低出生体重(小さく生まれる)
- 生まれたときの皮疹(発疹)、黄疸(おうだん:皮膚や白目が黄色くなること)
- 肝臓や脾臓(ひぞう)が大きくなる
子供の症状
- 聴力の低下に気づかれにくいことがあります。呼びかけに反応しにくい、言葉の発達がゆっくりなど。
- 目が見えにくい、光をまぶしがる、黒目が白く見える。
- 哺乳(ほにゅう)が弱い、体重が増えにくい。
- 首すわりや歩きはじめが遅い、言葉が遅い。
- 心臓の病気で息切れしやすい、疲れやすい。
高齢者の症状
- 先天性風疹症候群の人が大人になっても、聴力や視力、心臓の経過観察が必要なことがあります。
- 難聴が進む、目の病気(緑内障など)に気づくことがあります。
- 糖尿病や甲状腺の病気が起こりやすいという報告もあり、健康診断を受けることが大切です。
- 学習や仕事、社会生活で支援が必要な場合があります。
原因
主な原因
- 妊娠中のお母さんが風疹ウイルスに感染すること
- 感染したウイルスが胎盤を通って赤ちゃんに届くこと
- 妊娠初期ほど影響が強くなりやすい
リスク要因
- お母さんが風疹の予防接種を受けていない、または受けたかわからない
- 風疹にかかったことがない、抗体(免疫)がない
- 風疹が流行している地域に住んでいる、または訪れた
- 周りに風疹の人がいる
- 妊娠中に風疹の抗体検査を受けていない
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 妊娠中に風疹の人と接触した、または発疹や熱がある
- 赤ちゃんの呼吸が苦しそう、顔色が悪い
- けいれん、ぐったり、哺乳がまったくできない
- 目が急に赤く腫れる、痛がる
- 黄疸が急に強くなる
定期受診を予約すべき場合:
- 赤ちゃんの聴力検査で再検査が必要と言われた
- 目の検査で白内障や緑内障を疑われた
- 心雑音を指摘された
- 体重が増えない、発達がゆっくりと感じる
- 先天性風疹症候群と診断され、定期通院の相談をしたい
診断
先天性風疹症候群は、お母さんの妊娠中の風疹感染の有無と、赤ちゃんの症状や検査を組み合わせて診断します。生まれた後、小児科医が全身を診察し、聴力、目、心臓、発達を詳しく調べます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:赤ちゃんの風疹抗体(IgM抗体など)を調べます
- のどや尿の検査:風疹ウイルスがいるかを調べます
- 聴力検査:自動聴性脳幹反応(ABR)など
- 目の検査:眼底検査、眼圧検査など
- 心臓の超音波検査(心エコー)
- 頭の超音波検査やMRI
- 発達の評価:小児科医や心理士が成長をみます
診察で予想されること
検査は赤ちゃんの負担にならないように行われます。診断までに時間がかかることがあります。小児科、耳鼻咽喉科、眼科、循環器科などがチームで関わります。結果を聞くときは、質問をメモしておくと安心です。
治療
先天性風疹症候群のウイルスを直接なくす治療法はありません。赤ちゃんの症状に合わせて、聞こえ、目、心臓、発達を支えるケアを早くから始めることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 定期的な通院を続け、聴力・視力・心臓のチェックを欠かさない
- 母乳やミルク、離乳食を無理なく進め、体重の増え方をみる
- 手洗いをしっかりし、感染症にかからないようにする
- 家族も風疹の予防接種を受け、赤ちゃんを守る
- 赤ちゃんがウイルスを出している間は、妊娠中の人との接触を避ける(医師に相談)
- 睡眠を十分にとり、家族も休息を大切にする
医療治療
症状に合わせて、補聴器や人工内耳などの聴力の支援、白内障や緑内障の目の治療、心臓の病気の治療、発達を促す療育、言語療法、理学療法などを行います。専門の医療チームが定期的に経過をみます。薬は症状に応じて医師が判断します。
手術が検討される場合
白内障、緑内障、心臓の生まれつきの病気、人工内耳などで手術が必要になることがあります。手術の時期や方法は、専門医が赤ちゃんの状態に合わせて決めます。急に決めることは少なく、家族と相談しながら進めます。
この病気と共に生きる
先天性風疹症候群の子どもは、定期的な通院と早期の支援が大切です。聴力や視力に合わせたコミュニケーションの工夫、保育園や学校との連携、発達に合わせた学習の支援を行います。家族の予定を無理なく組み、休息もとりましょう。
生活習慣のアドバイス
- 家族全員が手洗いを習慣にする
- 風疹など防げる感染症の予防接種を家族も受ける
- バランスのよい食事と十分な睡眠
- 無理のない範囲で体を動かす
- 赤ちゃんの聞こえや見え方の変化に気を配る
- 保育園・学校・保健センターと早めに相談する
食事と運動
通常、特別な食事制限はありません。心臓や腎臓に問題がある場合は、医師や管理栄養士の指示に従ってください。運動も、心臓の状態に合わせて無理のない範囲で行います。外遊びや散歩は、医師に確認してから始めると安心です。
精神的健康と心の健康
保護者の方は、診断を受けて不安になったり、自分を責めたりすることがあります。それは自然な気持ちです。一人で抱え込まず、小児科医、保健師、地域の相談窓口、信頼できる人に話してください。子どもの成長に伴う悩みも、遠慮なく相談してください。気持ちが非常に追い詰められ、緊急の助けが必要なときは、119番に連絡するか、地域の救急相談窓口を利用してください。
予防
はい。先天性風疹症候群は、妊娠前に風疹の予防接種を受けることで防げます。妊娠中は風疹ワクチンを受けることができないため、妊娠を考える前に免疫があるか確認することが大切です。
ワクチン
風疹の予防接種は、日本では定期接種として行われています。厚生労働省は、妊娠を希望する女性やその家族にも抗体検査と予防接種を勧めています。予防接種を受けた後は、医師の指示に従って妊娠の時期を相談してください。妊娠中に接種することはできません。
検診プログラム
妊娠前や妊娠初期に風疹の抗体検査(免疫があるか調べる血液検査)を受けられます。抗体がない場合は、妊娠中に風疹の人との接触を避け、医師に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 聞こえにくさが進み、言葉の発達に影響することがあります
- 白内障や緑内障で視力が低下することがあります
- 心臓の生まれつきの病気で、息切れや心不全になることがあります
- 発達の遅れや学習の困難
- 糖尿病や甲状腺の病気が起こることがあります
- 眼圧が上がる緑内障は、早く見つけないと視力を失うことがあります
長期的な見通し
先天性風疹症候群は長く付き合う病気ですが、早くから聴力・視力・心臓・発達の支援を受けることで、多くの人が学校や仕事、社会生活を送っています。定期的な通院を続け、変化に早く気づくことが大切です。希望を持って、専門家と一緒に進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年10月22日
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