子どもの便秘(便秘と子ども)
概要
便秘(べんぴ)は、うんちが硬(かた)くなって出しにくくなったり、排便の回数が少なくなったりする状態です。大人では「何日でたか」が話題になりますが、子どもでは「回数」よりも「うんちの硬さ」と「痛(いた)くないか」が大切な目安になります。硬いうんちを一度痛い思いをして出すと、子どもは「また痛いのは嫌だ」と我慢(がまん)します。我慢すると腸(ちょう)にうんちがたまって、さらに硬く大きくなり、また痛くなる――という悪循環(あくじゅんかん)になりやすいのが、子どもの便秘の特徴です。
重要な事実
- 子どもは毎日出なくても元気なら心配いらないことが多いです。2〜3日に1回でも柔らかく痛みなく出ていれば心配しすぎなくて大丈夫です。
- 硬いうんちを痛くて我慢すると、ますます硬くなって悪循環になりやすいので、早めにやわらかくしてあげることが大切です。
- 基本は食事・水分・運動・トイレの習慣を整えること。それでも続くときは小児科で相談しましょう。
子どもの便秘はとてもよくあることです。小児科を受診する理由としても多い症状のひとつで、決して珍しいものではありません。
赤ちゃんから中学生まで、幅広い年齢の子どもに起こります。とくに離乳食(りゅうにゅうしょく)が始まる時期、トイレトレーニングの時期、園や学校生活が始まる時期に起こりやすいといわれています。
症状
- 激しいおなかの痛みが続く、泣き止まない、体を丸めて苦しそう
- おなかが固く大きく張っている、何度も吐(は)く
- うんちに血が混じる、または肛門(こうもん)から大量に出血している
- ぐったりしている、意識がぼんやりしている、けいれんがある
- 高熱が続き、うんちもおならも出ない状態が続いている(腸(ちょう)がつまる病気の可能性があります)
- ⚠うんちが出ないまま3〜4日以上たって、とても苦しそう
- ⚠おしりが切れて血が出る、痛がって座れない
- ⚠食欲がなく、体重が減っている
- ⚠家庭でのケアを続けても悪くなる一方のとき
- ⚠1歳未満の赤ちゃんで便秘が続く、元気がない
一般的な症状
- 排便の回数が週に3回より少ない(ただし回数だけで判断しないことが大切です)
- うんちがコロコロ、硬い、または大きすぎる
- 出すときに強くいきむ、顔を赤くする、痛がる
- おなかが張(は)る、おなかが痛い
- 出したあとも「残っている感じ」がある
- 少量のうんちが少しずつ下着やパンツにつく(漏(も)らす)
子供の症状
- トイレを嫌がる、トイレに行くのを隠す、和式トイレや学校のトイレをこわがる
- パンツやおむつに少しずつうんちがついてしまう
- 不機嫌(ふきげん)になる、食欲が落ちる、なんとなく元気がない
- おしりをかく、おしりを痛がる(硬いうんちでおしりが切れてしまうことがあります)
- 赤ちゃんでは、うんちのときに泣いて反(そ)り返る、ミルクの飲みが悪くなる、おなかが張る
原因
主な原因
- 食物繊維(しょくもつせんい:野菜や果物、豆、全粒穀物などに多い成分)や水分が足りない
- トイレを我慢してしまう(遊びを優先する、学校のトイレが苦手、恥ずかしい、タイミングを逃す)
- 離乳食が始まる、ミルクから牛乳に変わるなど食事の変化
- 生活リズムの乱れやストレス(入園・入学・引っ越し・家族の変化など)
- 運動不足、座りっぱなしの時間が長い
- 「痛い思いをした→我慢する→もっと硬くなる」という悪循環
- 薬の影響や、まれに体の病気が関係していることもあります
リスク要因
- 便秘になりやすい体質や、家族に便秘の人がいる
- トイレトレーニングを急か(せか)された、プレッシャーを感じている
- 偏食(へんしょく)が強い、野菜や水分をなかなかとらない
- 環境の変化(引っ越し、進学、転園など)
- 長時間すわって過ごすことが多い
- 持病があり、治療の影響で便が出にくくなっている
- 早産(そうざん)や発育の経過で腸の動きがゆっくりなことがある(まれな要因です)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しいおなかの痛み、何度も吐く、おなかが固く張っている
- うんちに血が混じる、肛門からの出血が続く
- ぐったりしている、元気がない、高熱が続く
- 1歳未満の赤ちゃんで便秘が続き、飲みが悪い・泣き方がいつもと違う
定期受診を予約すべき場合:
- 便秘が2週間以上続いている、または繰り返している
- トイレを痛がる、トイレをこわがって行きたがらない
- パンツに少しずつ漏れてしまうことが続いている
- 食欲が落ちている、体重が増えない気がする
- 家庭での食事や生活の工夫をしても改善しない
診断
小児科では、まずおうちの人からのお話をうかがいます。排便の回数、うんちの硬さ、痛がるかどうか、いつからか、食事や水分、トイレの様子、生活リズムなどを聞きます。そのうえでおなかをやさしく触って診察し、必要に応じて追加の検査を考えます。多くの場合、検査をしなくても診断がつきます。
行われる可能性のある検査
- 問診(もんしん):便の回数・硬さ・痛み・生活習慣の聞き取り
- おなかの診察(触診(しょくしん)):張りや硬さ、便のたまり具合をみる
- 便の記録:家族が1〜2週間つける「うんち日記」(硬さや回数、痛がったかをメモ)
- 必要に応じて:おなかのレントゲン検査、血液検査、尿検査
- まれに:より詳しい検査や専門医への紹介
診察で予想されること
診察は短時間で終わることが多く、痛い検査はほとんどありません。うんち日記をつけていくと、診断や治療の相談がスムーズになります。症状や治療の方針について分からないことがあれば、その場で遠慮なく質問してください。
治療
子どもの便秘の治療は、大きく2つに分かれます。ひとつは食事・水分・運動・トイレの習慣を整えること。もうひとつは、医師の判断で便をやわらかくするお薬を使いながら、硬い便の悪循環を断ち切ることです。治療の中心は「痛くない排便を経験して、トイレへの不安をなくすこと」にあります。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとる(麦茶や水など。甘い飲み物ばかりにしない)
- 野菜・果物・豆・きのこ・海藻・全粒穀物など、食物繊維を意識してとる
- 早起き・朝ごはん・決まった時間の食事など、生活リズムを整える
- 朝食後など、食後に少しトイレにすわる習慣をつける(出なくてもOK)
- 足が床につくように足台(あしだい)を用意する。姿勢が安定すると力みやすくなります
- できたことをほめる。出なくても「すわったね」と認めてあげる
- 外遊びや歩く時間を増やす
- おしりが切れて痛がるときは、やさしく洗って清潔に保つ
医療治療
医師の判断で、便をやわらかくして出しやすくするお薬や、腸の動きを助けるお薬が使われることがあります。治療は「少しの間だけ」ではなく、しばらく続けて排便の悪循環を断ち切ることが多いのが特徴です。自己判断で急にやめると、また硬い便に戻ってしまうことがあるため、量や期間は必ず医師の指示に従ってください。具体的な薬の種類や量については、医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
ほとんどの子どもの便秘は手術は必要ありません。ただし、まれに腸の形や働きの生まれつきの病気(例:ヒルシュスプルング病など)が関係している場合には、専門医による検査や治療が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
便秘は「1日で治す」ものではなく、少しずつ整えていくものです。うんちの回数や硬さを記録しておくと、変化に気づきやすくなります。出なかった日も「トイレにすわれたね」と前向きに声をかけてあげると、子どもの不安がやわらぎます。
生活習慣のアドバイス
- 決まった時間に起きて、朝ごはんをしっかり食べる
- 食後にトイレにすわる時間を、無理のない範囲で決める
- トイレを「がまんしない」でいいんだよ、と伝える
- 園や学校のトイレのことを先生に相談しておく
- 便が出た日は、さりげなく一緒に喜ぶ
- 家族みんなで食事や運動を楽しむ
食事と運動
食事では、野菜・果物・豆・きのこ・海藻・全粒穀物などを少しずつ増やし、水分もこまめにとりましょう。一度にたくさん変えると子どもが嫌がるので、いつもの料理に足す形がおすすめです。体を動かすことは腸の動きを助けます。外で走る、歩く、なわとび、公園遊びなど、楽しく体を動かす時間をつくりましょう。
精神的健康と心の健康
便秘は、子どもにとって恥ずかしさや不安のもとになることがあります。学校で漏れてしまった、トイレをこわがる、友達に知られたくない、といった気持ちはよくあります。責めずに「一緒に何とかしよう」と寄り添うことが大切です。おうちの人自身が焦ったり落ち込んだりしていると、子どもも不安を感じやすくなります。ひとりで抱え込まず、小児科や保健師、学校の先生などに相談してください。気持ちがつらくて眠れない、学校に行きたくないなどが続くときは、医療機関や地域の相談窓口に早めに相談しましょう。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、毎日の生活を整えることで、便秘が起こりにくくなり、繰り返しを減らすことができます。とくに「痛い思いをして我慢する」前に対処することが大切です。
検診プログラム
便秘そのものを見つける検査はありませんが、乳幼児健診(にゅうようじけんしん)や学校健診の機会に相談できます。気になることがあれば、健診を待たずに小児科で相談してかまいません。
合併症
治療しない場合
- 硬く大きいうんちでおしりが切れ、痛みでさらに我慢してしまう悪循環
- うんちがたまっておなかの痛みや張りが続く
- 少量ずつ漏れてしまう状態が続き、本人が恥ずかしさや不安を感じる
- 食欲が落ちる、元気が出ない
- まれに、腸がつまるなどの重い状態につながることがある(強い痛みや嘔吐があるときはすぐ受診)
長期的な見通し
多くの子どもの便秘は、食事や生活の工夫と、必要なときの医師の治療で、少しずつ良くなっていきます。時間はかかることがありますが、あせらず続けることが大切です。気になることがあれば、早めに小児科に相談してください。
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最終更新: 2026年10月22日
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