緊急避妊(緊急避妊薬・アフターピル)について
概要
緊急避妊とは、避妊に失敗したときや避妊をしなかった性交のあとに、望まない妊娠を防ぐために行う「緊急時の」方法です。ふだん使う避妊法ではなく、あくまで万一のときのための備えです。方法は大きく2つあり、ひとつは産婦人科などで処方してもらう緊急避妊薬を服用する方法、もうひとつは医師が子宮内に避妊器具(IUD)を装着する方法です。どちらも、性交から時間がたつほど効果が下がるため、「できるだけ早く」動くことが大切です。なお、緊急避妊はすでに成立した妊娠を終わらせるもの(中絶)ではありません。
重要な事実
- 性交後できるだけ早く受診することが重要で、遅くなるほど妊娠を防げる可能性は下がります。
- 緊急避妊薬は日本では医師の診察と処方が必要で、産婦人科などで扱っています。
- 緊急避妊は性感染症(STI)を防ぐことはできません。必要に応じて検査を受けましょう。
- 緊急避妊は毎回使う避妊法ではありません。次の月経からの「ふだんの避妊」をあわせて考えることが大切です。
避妊の失敗は、年齢や経験にかかわらず誰にでも起こります。緊急避妊を必要とする状況は決してめずらしいことではなく、恥ずかしがる必要はありません。世界中で多くの人が利用しており、日本の厚生労働省も、緊急避妊を「緊急時の手段」として位置づけ、必要な人が適切に利用できるようにするための検討を進めています。
避妊をしないで性交をした人、コンドームが破れた・外れた人、経口避妊薬(ピル)を飲み忘れた人、性暴力の被害にあった人など、妊娠する可能性のある体を持つ人すべてが対象になります。10代も大人も同じように利用できます。40代以降でも、閉経していない限り妊娠の可能性はあります。
症状
- 激しい下腹部の痛みと、冷や汗・ふらつき・気を失いそうな感じがある(緊急の処置が必要な状態のサインのことがあります)
- 大量の性器出血があり、立っていられない・顔色が悪い
- 性暴力により、命に関わるけがや強い痛みがある
- ⚠性交後、できるだけ早く(目安として72時間以内、可能なら24時間以内)に産婦人科などを受診したい
- ⚠緊急避妊薬を服用したあと数時間以内に嘔吐してしまった(薬が十分に効いていない可能性があるため、すぐ医療機関に相談)
- ⚠次の月経が1週間以上遅れている、またはいつもと違う出血が続く
- ⚠強い下腹部痛、発熱、においのあるおりものがある
一般的な症状
- 緊急避妊そのものに「症状」はありません。症状があるのは、妊娠したとき、あるいは薬の副作用が出たときです。
- 薬の副作用として、吐き気、頭痛、だるさ、乳房の張り、気分の変化などが出ることがあります。多くは数日でおさまります。
- 次の月経が少し早まったり遅れたり、いつもと違う出血(不正出血)が起きることがあります。
- おりものの変化や軽い下腹部の違和感が出ることもあります。
子供の症状
- 10代(思春期)でも体の仕組みは同じで、緊急避妊を必要とする状況は起こります。
- 思春期は月経周期がもともと不安定なことが多く、薬の影響で出血のタイミングが読みにくくなることがあります。
- 緊張や不安から、体調不良(頭痛、腹痛、眠れないなど)として表れることがあります。一人で抱え込まず、信頼できる大人や医療機関につながることが大切です。
高齢者の症状
- 40代以降でも、閉経していない(1年間月経がない状態が確認できていない)間は妊娠の可能性があります。
- 月経周期が乱れていると「もう妊娠しないだろう」と思い込みやすいので注意が必要です。
- 高血圧や血栓の既往など持病がある場合は、受診時に必ず医師に伝えてください。
原因
主な原因
- 避妊をしないで性交をした
- コンドームが破れた、途中で外れた、正しく装着できなかった
- 経口避妊薬(ピル)の飲み忘れが続いた、服用を中断した
- 性交後に嘔吐やひどい下痢があり、薬が吸収されなかった可能性がある
- 子宮内避妊器具(IUD)がずれた、抜けてしまったことに気づいた
- 性暴力の被害にあった
リスク要因
- 月経周期のうち妊娠しやすい時期(排卵の前後)に性交があった
- 飲酒や疲労、強いストレスなどで避妊の準備や判断が難しくなった
- 避妊法について正しい知識を得る機会がなかった、相談できる相手がいなかった
- 若年であること自体は危険因子ではありませんが、避妊について学ぶ機会や医療へのアクセスが限られていることがあります
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 避妊に失敗した、または避妊なしの性交があった直後(できるだけ早く、遅くとも72時間以内を目安に受診)
- 性暴力の被害にあった(体のケア、性感染症の予防、心のサポートのために早急な受診が必要です)
- 緊急避妊薬を服用後、数時間以内に嘔吐した
- 強い下腹部痛、大量の出血、発熱がある
定期受診を予約すべき場合:
- 次の月経が1週間以上遅れている、または出血の様子がいつもと違う
- 今後使う避妊方法を相談したい
- 性感染症の検査を受けたい
- 月経痛や月経不順など、ふだんの周期について相談したい
診断
緊急避妊は、検査で「診断」するものではなく、問診と確認によって進めます。医師は、最後の月経がいつ始まったか、性交があった時期、使った避妊方法、持病や服用中の薬などを確認します。そのうえで、すでに妊娠していないかを確認するために尿検査や超音波検査を行うことがあります。
行われる可能性のある検査
- 問診(最終月経日、性交の時期、避妊方法、既往歴、内服薬の確認)
- 尿による妊娠検査
- 超音波(エコー)検査で子宮の状態を確認
- 必要に応じて血液検査(貧血や持病の確認など)
- 性感染症の検査(希望する場合、または性暴力のあと)
診察で予想されること
受診してから処方までの流れは、施設によって異なりますが、多くの場合1回の受診で完結します。診察は数分から十数分程度で、内診(膣から器具を入れて診察すること)を伴わないこともあります。費用は保険適用外となることが多く、事前に電話で確認しておくと安心です。プライバシーは守られます。
治療
緊急避妊の治療は、大きく2つの方法があります。ひとつは緊急避妊薬を服用する方法、もうひとつは医師が銅付加の子宮内避妊器具(IUD)を装着する方法です。どちらも性交からの時間が短いほど効果が高いとされ、方法や適した時期、注意点は医師から詳しく説明されます。
自宅でのセルフケア
- 迷ったらまず電話。産婦人科・婦人科の窓口に「緊急避妊の相談です」と伝えると話が早く進みます。
- 受診の際は、最終月経の開始日、性交があった日時、使った避妊方法をメモして持っていくとスムーズです。
- 処方されたあとは、医師の説明どおりに服用し、服用後に嘔吐した場合は自己判断せず必ず医療機関に連絡してください。
- 次の月経が来るまでは、妊娠の可能性を完全には否定できないことを意識して過ごしましょう。月経が1週間以上遅れたら妊娠検査を受けましょう。
- 性感染症を防ぐことはできないため、必要に応じて検査を受けましょう。
- 眠れない、不安が強い、気持ちが落ち着かないときは、一人で抱えずに相談窓口や医療機関に話してください。
医療治療
医療機関では、問診と妊娠していないことの確認を行ったうえで、緊急避妊薬を処方します。緊急避妊薬は排卵を遅らせるなどして妊娠を防ぐ薬で、日本では医師の処方が必要です。服用するタイミングが早いほど効果が高いとされ、一般的には性交後72時間以内、できるだけ早い服用がすすめられます。もうひとつの方法として、銅付加の子宮内避妊器具(IUD)を医師が装着する方法があり、性交後5日以内であれば高い避妊効果が期待できるとされています。どちらの方法が向いているか、副作用や注意点、費用についても医師から説明を受け、納得したうえで選びましょう。薬の名前や具体的な使い方は、必ず担当医の説明に従ってください。
手術が検討される場合
手術が必要になるケースは通常ありません。子宮内避妊器具の装着は処置として行われますが、手術室での手術ではなく、外来で短時間で行われることが一般的です。
この病気と共に生きる
緊急避妊を受けたあとは、次の月経が来るまで少し落ち着かない時期が続きます。月経が予定より1週間以上遅れたら、妊娠検査を受けて確認しましょう。体調の変化をメモしておくと、次の受診のときに役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 今後使う避妊方法(コンドーム、経口避妊薬、子宮内避妊器具など)を、医療機関で自分に合うものを相談して決めましょう。
- コンドームは正しい装着が大切です。使い方に不安があれば、保健師や薬剤師に気軽に聞いてみましょう。
- 飲酒は判断力や避妊の準備に影響することがあります。相手との関係の中で、避妊について話し合えることが大切です。
- パートナーと避妊や性の健康について話し合う習慣をつくりましょう。
食事と運動
特別な食事制限や運動制限はありません。バランスのよい食事、十分な睡眠、適度な運動は、月経周期を整え、心身の調子を保つ助けになります。激しい減量や過度な運動は月経不順の原因になることがあるので、無理のない範囲で続けましょう。
精神的健康と心の健康
避妊の失敗や性暴力のあとは、不安、自責感、混乱、眠れないなどの気持ちが続くことがあります。これは自然な反応で、あなたが弱いからではありません。つらい気持ちが2週間以上続く、生活に支障が出る、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、早めに医療機関や相談窓口に連絡してください。一人で抱え込まないでください。
予防
緊急避妊を「使わなくて済む」ようにするには、ふだんの避妊を確実に行うことが大切です。コンドームを正しく使う、経口避妊薬を飲み忘れない工夫をする、必要に応じて避妊法を組み合わせるなど、自分に合った方法を医療機関で相談して決めましょう。緊急避妊はあくまで「万一のときの backup(予備)」であり、くり返し使うものではありません。また、避妊は性感染症を防ぐものではないため、コンドームの使用は性感染症予防の面でも大切です。
合併症
治療しない場合
- 望まない妊娠につながる可能性があります。妊娠が進むほど、選べる対応や体への負担が変わってきます。
- 妊娠した場合、ごくまれに子宮の外で妊娠が育つ状態(異所性妊娠)のことがあり、強い腹痛や出血などの症状が出ることがあります。
- 性感染症にかかっていても気づかないままになり、将来の健康に影響することがあります。
- 不安や自責感が続き、心の健康に影響することがあります。
長期的な見通し
緊急避妊は、早く受診するほど妊娠を防げる可能性が高くなります。たとえ妊娠したとしても、その後の選択肢は複数あり、医療機関が一緒に考えてくれます。避妊の失敗は誰にでも起こることです。自分を責めず、必要なサポートにつながることが、次の一歩になります。
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最終更新: 2026年10月22日
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