女性の不妊手術(卵管の結紮・切除)
概要
女性の不妊手術は、妊娠をほぼ確実に防ぐための、元に戻すのが難しい避妊の方法です。おなかの中にある「卵管(らんかん)」は、卵子が子宮へ向かう通り道で、精子と出会う場所でもあります。この卵管をしばったり、一部を取り除いたりすることで、卵子と精子が出会えなくなり、妊娠が起こりにくくなります。手術は一度受けると元に戻すのが難しいため、「これ以上妊娠は望まない」とよく話し合ったうえで選ぶ方法です。
重要な事実
- ほぼ確実に近い避妊効果があり、長く続く避妊の選択肢のひとつです。
- 元に戻す手術(復元手術)は可能な場合もありますが、必ず妊娠できるとは限らず、基本的には「元に戻らない方法」と考えます。
- 性感染症(クラミジアやHIVなど)を防ぐ効果はありません。必要な場面ではコンドームの使用が大切です。
- 手術の方法や麻酔、入院の必要性は、施設や体の状態によって変わります。
日本では、避妊の方法としてはコンドームがもっとも広く使われていて、女性の不妊手術を選ぶ人は比較的少なめです。海外では、避妊の選択肢のひとつとして広く行われている地域もあります。
妊娠を望まないと決めた成人女性が対象になります。年齢や子どもの有無にかかわらず選べますが、将来の妊娠の可能性や気持ちの変化も含めて、時間をかけて考えることが大切です。10代や若い人の場合は、将来の選択肢を広く残すため、まず他の避妊法が検討されることが多いです。
症状
- 38度以上の高熱と、おなかの激しい痛みが同時にある
- 大量の出血が続く(1時間でナプキンを何度も替える必要がある)
- 意識が遠のく、ふらついて立てない、気を失った
- 息苦しさや胸の痛みがある
- 手術後に妊娠の可能性があり、強い下腹部の痛みや肩の痛み、ふらつきがある(子宮外妊娠(しきゅうがいにんしん)の可能性があります。卵子が子宮の外で育ってしまう状態で、早い対応が必要です)
- ⚠37.5度以上の発熱が続く
- ⚠傷の赤み・腫れ・膿のような分泌物が増えている
- ⚠出血が1週間以上続く、または量が増えてきた
- ⚠強い吐き気や嘔吐が続き、水分がとれない
- ⚠排尿時におしっこが痛い、回数が増えた
一般的な症状
- 手術後数日は、おなかの軽い痛みや張り、傷の違和感があることがあります。
- 腹腔鏡(ふくくうきょう)という、おなかに小さな穴をあけて行う手術では、肩や背中の軽い痛みが出ることがあります(おなかをふくらませたガスの影響で、数日でおさまります)。
- 少量の出血やおりものの変化が数日続くことがあります。
- だるさや眠気、軽い吐き気が出ることがあります。
- 傷の周りが赤くなったり、かゆくなったりすることがあります。
子供の症状
- 小児にこの手術を行うことはありません。10代の人が希望する場合は、将来の妊娠の可能性を考え、まず他の避妊法についての相談が勧められます。
高齢者の症状
- 40代以降では、閉経が近づくと避妊が必要なくなる時期も近くなります。手術の必要性や体への負担について、あらためて医師と話し合うことが大切です。
- 閉経後は避妊は不要になります。閉経かどうかがあいまいな時期は、医師に相談してください。
原因
主な原因
- 不妊手術は「病気」ではなく、妊娠を防ぐための方法です。手術を受ける理由は、これ以上妊娠を望まない、体の負担や他の避妊法の相性などの事情が人それぞれにあります。
リスク要因
- 手術の合併症が起きやすくなる要因として、喫煙、肥満、糖尿病などの持病、過去のおなかの手術歴、骨盤内の炎症の既往などがあります。
- 麻酔や手術のリスクは、年齢や持病によって変わります。事前の診察で確認します。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 手術後に上記の「緊急」「早めに受診」にあてはまる症状があるとき
- 手術後に妊娠の可能性があり、下腹部の痛みや出血があるとき
定期受診を予約すべき場合:
- 不妊手術を考え始めたとき(他の避妊法との比較を含めて相談できます)
- 手術後の診察や傷の確認が必要なとき
- 気持ちが変わった、迷いがある、パートナーと意見が合わないとき
- 生理の変化や体調の変化が気になるとき
- 避妊法を見直したいとき
診断
不妊手術は、検査で「診断」するものではなく、話し合いと同意によって進めるものです。医師(産婦人科)とのカウンセリングで、体の状態、これまでの妊娠歴、他の避妊法との違い、元に戻すのが難しいことを確認します。妊娠していないことの確認も行います。
行われる可能性のある検査
- 妊娠検査(手術前に妊娠がないことを確認します)
- 問診と診察(既往歴、手術歴、服薬、アレルギーなど)
- 血液検査(貧血や体の状態、麻酔の安全性の確認)
- 必要に応じて超音波検査(子宮や卵巣の状態を確認)
- 必要に応じて性感染症の検査
- 麻酔の安全性を確認するための検査(心電図、胸部の画像検査など)
診察で予想されること
手術を受ける前に、医師からの説明と同意が何度か行われます。その場で決めるのではなく、一度持ち帰って考える時間をとることも大切です。パートナーと一緒に説明を聞くこともできます。迷いがあるときは、その気持ちをそのまま伝えてください。
治療
不妊手術は、おなかの小さな穴から器具を入れて行う腹腔鏡下手術が一般的です。全身麻酔または部分的な麻酔を使い、日帰りから1泊程度で行われることが多い治療です。帝王切開で出産するときに同時に行う場合もあります。
自宅でのセルフケア
- 傷は清潔に保ち、医師の指示どおりにガーゼやテープを交換します。
- 手術後しばらくは無理な運動や重いものを持ち上げるのを控え、ゆっくり体を慣らします。
- 痛みが強いときは、医師から処方された痛み止めを使います。市販薬を自己判断で重ねて使うのは避け、まず相談してください。
- 入浴や性交の再開の時期は、医師の指示に従います。
- 手術直後は避妊効果が確実になるまで少し時間がかかる場合があるため、医師に確認するまでは他の避妊法を併用します。
- パートナーと、避妊や今後の家族計画について話し合っておくと安心です。
医療治療
手術以外にも、避妊の方法はいくつかあります。飲み薬のホルモン避妊、体内に装着するタイプの避妊、コンドームなどがあり、それぞれ効果や使い方、体への影響が異なります。どれが合うかは体の状態や生活によって変わるため、かかりつけの医師や婦人科、薬局の薬剤師に相談しながら選びます。ここでは特定の薬の名前や量はお伝えしません。
手術が検討される場合
手術は、十分な話し合いと同意のうえで、体調のよい時期に予定を立てて行います。腹腔鏡下手術が難しい場合(過去のおなかの手術歴や持病など)は、別の方法が検討されます。手術は元に戻すのが難しいため、将来の妊娠の可能性について納得いくまで話し合ってから決めることが大切です。
この病気と共に生きる
手術後は、数日から1〜2週間ほどで日常生活に戻る人が多いです。傷の違和感や疲れやすさが続く間は、予定を詰め込まず、体の声を聞きながら過ごしてください。避妊効果は高いですが、性感染症を防ぐ効果はないため、必要に応じてコンドームを使います。
生活習慣のアドバイス
- 手術後は禁煙がおすすめです。傷の治りや血管の健康に良い影響があります。
- 飲酒は、麻酔や痛み止めの影響が残る間は控え、医師の指示に従います。
- 傷が治るまでは、湯船につかる前に医師に確認します。
- 強い痛みや出血があるときは、無理をせず予定を変更して受診します。
食事と運動
手術後は、バランスのよい食事と水分をしっかりとることが回復を助けます。便秘はおなかの痛みを強く感じることがあるため、食物繊維や水分を意識するとよいでしょう。運動は、散歩などの軽いものから始め、1〜2週間ほどかけて徐々に戻していきます。痛みが出る場合は無理をせず、医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
不妊手術は「もう妊娠しない」という大きな決断です。手術後にほっとした気持ちになる人もいれば、時間がたってから迷いや悲しさ、後悔を感じる人もいます。パートナーとの関係や家族の意見で気持ちが揺れることも自然なことです。つらい気持ちが続くときは、一人で抱え込まず、医師や助産師、カウンセラーに話してください。気持ちがとてもつらいときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわず救急(119)や地域の相談窓口、かかりつけ医に連絡してください。
予防
不妊手術は、予期しない妊娠を防ぐための方法そのものです。自分に合った避妊法を選び、パートナーと話し合っておくことが、望まない妊娠を防ぐ第一歩になります。避妊法はひとつに決めなくてもよく、状況に合わせて組み合わせることもできます。
ワクチン
避妊とは別の話になりますが、子宮頸がん(しきゅうけいがん)を防ぐワクチンは、厚生労働省の定期接種の対象になっています。接種の時期や対象年齢については、自治体の案内やかかりつけ医に確認してください。
検診プログラム
20歳以上の人には、子宮頸がん検診が2年に1回程度勧められています(厚生労働省の指針)。不妊手術を受けた後も、定期的な婦人科の検診は大切です。
合併症
治療しない場合
- 手術を選ばない場合、避妊法によっては望まない妊娠の可能性が残ります。
- 手術そのものの合併症として、出血、感染、周りの臓器を傷つけること、麻酔による体調の変化などが、まれに起こることがあります。
- 手術後に妊娠した場合、子宮外妊娠(卵子が子宮の外で育つ状態)になるリスクが高まることが知られています。妊娠の可能性があるときの下腹部痛は、早めに受診してください。
- 時間がたってから「元に戻したい」と感じる人もいます。復元手術が可能な場合もありますが、妊娠が必ずかなうとは限りません。
長期的な見通し
不妊手術は、多くの人にとって安全で、避妊効果の高い方法です。手術後の経過はおおむね良好で、ほとんどの人は数日から2週間ほどで日常生活に戻ります。一方で、後悔を感じる人も一定数いるため、手術前の十分な話し合いが何より大切です。迷いがあれば、決断を急がず、何度でも相談してください。
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最終更新: 2026年10月22日
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