避妊インプラント(皮下に埋め込む避妊法)
概要
避妊インプラントは、二の腕の内側の皮膚の下に、細くてやわらかい小さな棒を入れておく避妊の方法です。棒はマッチ棒くらいの長さで、入れたまま数年間、少しずつホルモン(黄体ホルモン)を出し続けます。このホルモンのはたらきで、子宮の入り口の粘液が固くなって精子が通りにくくなり、子宮の内膜が薄くなり、排卵も起こりにくくなるため、妊娠しにくくなります。毎日薬を飲むのが難しい人でも続けやすい方法のひとつです。日本国内では現在のところ、この方法は承認されていません。使えるかどうかや代わりの方法については、かかりつけの医師にご相談ください。
重要な事実
- 1回入れると数年間(種類により3〜5年程度)効果が続く、長く使える避妊法です。
- 毎日飲む必要がなく、使い忘れが起きにくいのが特長です。
- 性感染症(エイズウイルスやクラミジアなど)は防げません。コンドームの併用が必要です。
- 入れるのも抜くのも医療機関で行います。自分で抜くことはできません。
世界では多くの人が使っている避妊法で、長く続く避妊法の中でも効果が高いとされています。ただし、使える国と使えない国があり、日本国内では承認されていません。
妊娠する可能性がある年齢の女性(10代後半から40代まで)で、しばらく妊娠を考えていない人に向いています。血栓の病気があった人、肝臓の病気がある人、乳がんの経験がある人などは使えないことがあります。
症状
- 急な息苦しさ、胸の痛み、意識がもうろうとする(血栓などの可能性)
- 片側の脚が急に腫れる・痛む・赤くなる
- 顔やのどが腫れる、息が苦しい、じんましんが広がる(アレルギーの可能性)
- 突然の激しい頭痛、ものが二重に見える、視力が急に変わる
- このような症状があるときは、すぐに119番に電話して救急車を呼んでください。
- ⚠入れた部分が赤く腫れる、熱を持つ、膿が出る、痛みが強くなる(感染の可能性)
- ⚠入れた棒が皮膚から出てきた、抜けかかっているように感じる
- ⚠月経が予定どおり来ない、妊娠の可能性がある
- ⚠強い下腹部の痛みや発熱がある
一般的な症状
- 月経の量が減ったり、月経が来なくなったりすることがあります。
- 月経ではないときに少し出血する(不正出血)ことがあります。多くは数か月で落ち着きます。
- 頭痛、乳房の張り、にきび、気分の変化、体重の変化などを感じることがあります。
- 入れた腕の部分に、内出血や軽い痛みが出ることがあります。
- こうした変化の多くは、体が慣れるまでの数か月で軽くなります。続く場合は医師に相談してください。
原因
主な原因
- 避妊インプラントは「病気」ではなく、妊娠を防ぐための方法です。はたらきの中心は、棒から少しずつ出る黄体ホルモンです。
- このホルモンにより、子宮の入り口の粘液が固くなって精子が通りにくくなります。
- 子宮の内膜が薄くなり、受精卵が着床しにくくなります。
- 排卵が起こりにくくなります。これらが重なって妊娠しにくくなります。
リスク要因
- 血栓症(静脈血栓塞栓症)になったことがある、または家族に多い
- 肝臓の病気がある
- 乳がんの経験がある、または疑いがある
- 原因がわからない性器からの出血がある
- 妊娠中、または妊娠の可能性がある
- 片頭痛(特に前兆のあるもの)がある
- 喫煙している、肥満がある、血圧が高い(血栓のリスクが上がります)
- 飲んでいる薬がある(てんかんの薬など、効果に影響するものがあります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 入れた部分の赤み・腫れ・膿・強い痛みがある
- 入れた棒が皮膚から出てきた、または抜けかかっている
- 月経が来ない、妊娠の可能性がある
- 強い下腹部の痛みや発熱がある
定期受診を予約すべき場合:
- 入れ替えの時期が近づいた、または過ぎた
- 出血のパターンの変化が数か月続いている
- 気分の落ち込みや不安が続いている
- 抜きたい、または他の避妊法と比べたい
- 性感染症が心配
- 月経が止まって心配になった
診断
避妊インプラントは診断する病気ではなく、使うかどうかを決めるための相談と確認から始まります。医師は問診で健康状態・飲んでいる薬・血栓の既往・喫煙などを確認し、血圧を測り、必要に応じて妊娠の有無を調べます。問題がなければ、腕の内側に局所麻酔をして数分で入れます。
行われる可能性のある検査
- 問診(健康状態、既往歴、家族歴、飲んでいる薬、喫煙)
- 血圧の測定
- 妊娠検査(尿検査など)
- 必要に応じた血液検査
- 必要に応じた性感染症の検査
- 入れ替えや除去の前に、棒の位置を確認する触診
診察で予想されること
挿入は外来で行える処置で、数分で終わります。腕の内側に局所麻酔の注射をして、小さな傷から棒を入れ、テープと包帯で固定します。翌日から普通に生活できますが、数日は内出血や軽い痛みが出ることがあります。除去も同じように外来ででき、医師が取り出します。
治療
避妊インプラントは治療ではなく、避妊のための方法です。使うかどうか、いつ入れるか、いつ抜くかは、生活や将来の妊娠の希望に合わせて本人が決めます。日本国内では現在承認されていないため、国内で選べる他の避妊法(飲み薬、子宮の中に入れる器具、コンドームなど)と比べながら、医師と相談して選ぶとよいでしょう。
自宅でのセルフケア
- 入れた日は、医師に言われたとおりにテープや包帯を保ち、傷口を清潔に保つ
- 入れた部分を強くこすったり、重いもので強くぶつけたりするのは数日控える
- 入れた日と入れ替え予定日を手帳やカレンダーに記録しておく
- 出血のパターンや体調の変化をメモしておくと、相談しやすい
- 性感染症を防ぐためにコンドームを併用する
- 自分で抜こうとしない。必ず医療機関で抜いてもらう
医療治療
避妊インプラントそのものは治療ではありませんが、出血が続く、気分の変化がつらいなど気になることがある場合は、医師が状況を確認し、様子を見るか、他の避妊法に変えるかを一緒に考えます。症状に応じた対応は医師の判断で行われます。自己判断で薬を重ねたり、自分で抜いたりしないでください。
手術が検討される場合
挿入と除去は、いずれも小さな処置として医療機関で行います。入院は通常必要なく、外来で数分から十数分で終わります。
この病気と共に生きる
入れてから数日は腕に少し違和感があるかもしれませんが、多くの人はすぐに普段どおり生活できます。効果が始まる時期は入れるタイミングによって変わるため、医師から「最初の数日は別の避妊法も使ってください」と言われたらそのとおりにしてください。入れた部分は、強く押したりぶつけたりしなければ、服の下で目立たずに過ごせます。
生活習慣のアドバイス
- 入れ替えの時期をカレンダーに登録しておく
- 腕に強い衝撃を受けるスポーツや仕事をしている場合は、事前に医師に伝える
- 出血の変化や気分の変化を記録しておく
- コンドームを併用して性感染症も防ぐ
- 喫煙は血栓のリスクを高めるため、禁煙を考える
食事と運動
特別な食事の制限はありません。いつもどおりの食事と運動を続けてかまいません。激しい運動やぶつかりやすいスポーツをする場合は、入れた部分をぶつけないよう気をつけ、心配なら医師に相談してください。喫煙は血栓のリスクを上げるため、禁煙がすすめられます。
精神的健康と心の健康
避妊の心配から解放されて気持ちが楽になる人もいれば、出血の変化や気分の揺れ、体重の変化などが気になって不安になる人もいます。気分の落ち込みや不安が続くときは、一人で抱えずに医師や看護師、助産師に話してください。避妊の方法を変えることも選択肢のひとつです。つらい気持ちが強いときは、地域の相談窓口や医療機関に早めに連絡してください。
予防
避妊インプラントは、望まない妊娠を防ぐための方法です。正しく入っていれば避妊効果はとても高く、使い続ける限り効果が続きます。ただし性感染症は防げないため、コンドームの併用が大切です。
検診プログラム
定期的に血圧を測り、気になる症状があれば早めに受診してください。性感染症の検査は、心配があれば医療機関で受けられます。入れ替えの時期が来たら、忘れずに受診して相談してください。
合併症
治療しない場合
- 避妊をしない場合は、望まない妊娠の可能性が高くなります。
- 避妊インプラントは性感染症を防がないため、コンドームを使わないと感染のリスクが残ります。
- 入れた後に出血が長く続く、痛みが続くなどの場合は、放置せずに受診してください。
長期的な見通し
避妊インプラントは、続けやすく効果の高い避妊法のひとつです。体に合うかどうかは人によって違いますが、合わないと感じたら他の方法に変えることができます。自分に合った方法を医師と一緒に探していくことが、安心につながります。
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最終更新: 2026年10月22日
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