乗り物酔いとうまく付き合うために
概要
乗り物酔い(医学用語では「動揺病(どうようびょう)」)は、車・バス・電車・船・飛行機などで体が揺れたり加速したりするときに、気分が悪くなる・吐き気がする・めまいがするといった不快な症状が出る状態です。目から入る情報(車内の景色など)と、耳の奥にある「平衡感覚(バランスを感じる器官)」からの情報が食い違うことで起こると考えられています。たとえば車内でスマホを見ていると、目は「止まっている」と感じ、体は「揺れている」と感じるため、脳が混乱してしまうのです。
重要な事実
- 乗り物酔いは病気というよりも、誰にでも起こりうる体の反応です。命に関わるものではありません。
- 多くは乗り物を降りて休めば、数十分から数時間で自然に楽になります。
- 席の選び方や過ごし方の工夫、事前の準備で、症状をかなり軽くできます。
とてもよくあることです。子どもの頃に経験したことがある人も多く、大人になっても特定の乗り物や状況で酔いやすい人は少なくありません。決して珍しいことではないので、恥ずかしく思う必要はありません。
2〜12歳くらいの子どもに特に多くみられます。大人でも、女性、片頭痛(ずきずきする頭痛)のある人、乗り物の揺れに敏感な人、疲れや睡眠不足がある人に起こりやすいとされています。逆に、何度も乗るうちに体が慣れて軽くなることもあります。
症状
- 激しい頭痛、ろれつが回らない、顔や手足の片側の麻痺、意識がもうろうとする(乗り物酔い以外の原因の可能性があります)
- 胸の痛み、息苦しさ、動悸が強い
- けいれん(ひきつけ)が起きた
- 繰り返し吐いて水分がとれず、ぐったりしている(特に子どもや高齢者)
- これらの症状があるときは、ためらわずに119番(救急車)を呼んでください。
- ⚠吐き気や嘔吐が止まらず、水分が飲めない
- ⚠尿の量が少ない、口やのどが異常に乾く(脱水のサイン)
- ⚠耳が聞こえにくい、耳鳴りがする、ぐるぐる回るめまいが続く
- ⚠症状が何日も続く、だんだん悪くなる
一般的な症状
- 吐き気、むかむかした感じ
- 冷や汗、顔色が青白くなる
- めまい、ふらつき
- 頭痛、頭が重い感じ
- よだれが増える、あくびが出る
- 嘔吐(吐いてしまうこと)
- 食欲がなくなる、胃のあたりの不快感
- 強い疲れ、ぼんやりする感じ
子供の症状
- 顔色が悪くなる、ぐったりする
- あくびが何度も出る、眠そうにする
- 機嫌が悪くなる、泣く、ぐずる
- 「気持ち悪い」と言えず、黙ってつらそうにしている
- 吐いてしまう
- よだれが増える
高齢者の症状
- めまいやふらつきが強く出て、転びそうになることがある
- 吐いて水分が取れず、脱水(体の水分が足りなくなること)になりやすい
- 疲れやだるさが長引きやすい
- 飲んでいる薬の影響でふらつくこともあるため、気になる場合は医師や薬剤師に相談すると安心です
原因
主な原因
- 目から入る情報と、耳の奥の平衡感覚の情報が食い違うこと(車内で読書やスマホを見ると起こりやすくなります)
- 揺れ、加速、減速、回転、上下動などの動き
- 慣れない乗り物、長い移動、悪路や乱気流
- 車内のにおい(芳香剤、食べ物、排気ガスなど)、暑さ、むしむしした空気
- 空腹すぎる、または食べすぎた状態
- 睡眠不足、疲れ、体調不良
- 不安や緊張、過去に酔った経験による怖さ
リスク要因
- 2〜12歳くらいの子ども
- 片頭痛の経験がある
- 内耳(耳の奥のバランスを感じる器官)の病気がある
- 乗り物の揺れに敏感な体質
- 不安が強い、乗り物が苦手という気持ちが強い
- 睡眠不足や疲れがたまっている
- 乗る前のアルコール摂取
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 吐き続けて水分がとれない、尿が出ない、ぐったりしているとき
- 激しい頭痛、意識の変化、ろれつが回らない、手足の動きにくさがあるとき(すぐに受診を。ためらう場合は119番へ)
- 耳の聞こえにくさや耳鳴りをともなう強いめまいが続くとき
定期受診を予約すべき場合:
- 乗るたびに毎回つらい思いをして、生活や仕事に支障がある
- 市販の酔い止め薬を使っても十分に楽にならない(使い方については薬剤師に相談してください)
- めまい、耳鳴り、聞こえにくさが続いている
- 頭痛をともなうことが多い
- 乗り物を避けるようになり、旅行や通勤が不安になっている
診断
多くは問診(お医者さんが話を聞くこと)だけで判断できます。「どんな乗り物で」「どんなときに」「どんな症状が」「どれくらい続くか」を伝えると診断の助けになります。同時に、めまいや吐き気を起こす他の原因(内耳の病気、片頭痛、低血糖など)がないかを確認します。
行われる可能性のある検査
- 通常は特別な検査は必要ありません
- 必要に応じて耳の検査(聴力検査や平衡機能検査)
- 血液検査
- 症状や経過から必要と判断された場合の画像検査
- 検査が必要かどうかは医師が判断します。すべての人が受けるわけではありません。
診察で予想されること
診察は短時間で終わることが多く、質問に答えていただくのが中心です。乗った状況や症状の出方をメモしておくとスムーズです。「酔いやすいこと」を伝えるのは恥ずかしいことではありません。
治療
乗り物酔いは、多くが「予防」と「その場での対処」の工夫で軽くなります。症状が強いときは医療機関で相談でき、生活に支障がある場合にはその人に合った方法を一緒に考えてもらえます。
自宅でのセルフケア
- 進行方向を見て、先の景色を見るようにする
- 車内での読書やスマホの操作は控える
- 窓を開けて新鮮な空気を取り入れる、または換気のよい席を選ぶ
- 車なら助手席や前の席、バスなら前の方、船なら中央の低い位置、飛行機なら翼の近くなど、揺れが少ない席を選ぶ
- におい(芳香剤、食べ物、たばこなど)を避ける
- 乗る前に軽く食べておく。空腹すぎても食べすぎてもよくありません
- 水分を少しずつとる
- 気分が悪くなったら目を閉じて、頭を支えて静かにする
- 可能なら途中で降りて休む
- 酔い止め薬を使う場合は、事前に薬剤師に相談し、説明書に従って使う
- 深呼吸をしてリラックスする。緊張をほぐすだけでも楽になることがあります
医療治療
症状が強い場合、医師が乗り物酔いに使う薬を処方することがあります。使うタイミングや注意点は医師・薬剤師の説明に従ってください。片頭痛が関係している場合や内耳の病気が疑われる場合には、その相談・対応を進めることがあります。また、乗り物に少しずつ慣れていく方法を提案してもらえることもあります。
手術が検討される場合
乗り物酔いでは、通常、手術は行われません。
この病気と共に生きる
乗る予定がある日は、余裕をもって準備し、席を選び、途中で休憩をはさむようにすると安心です。つらくなったときの対処法をあらかじめ決めておくと、気持ちが落ち着きます。
生活習慣のアドバイス
- 十分な睡眠をとり、疲れをためない
- 乗る前のアルコールは控える
- 乗り物に乗る前に、軽く食事をとる
- 不安が強いときは、深呼吸や音楽などで気持ちを落ち着ける
- 短い距離から少しずつ乗る機会を増やして、体を慣らしていく
- 家族や友人に「酔いやすい」と伝えておく
食事と運動
乗る前は脂っこい食事や食べすぎを避け、おにぎりやパンなど軽めのものを少量とるとよいでしょう。水分は少しずつとってください。ふだんから散歩などで体を動かし、バランス感覚を保つことも役立ちます。
精神的健康と心の健康
乗り物を避けるようになると、旅行や通勤、通学が不安になることがあります。子どもでは登園・登学をいやがることもあります。不安が強いと症状も強く出やすいので、無理をせず、少しずつ慣らしていくことが大切です。つらい気持ちが続くときは、ひとりで抱え込まず、かかりつけ医や地域の相談窓口、電話相談などのサポートを利用してください。
予防
完全に防ぐことは難しいですが、席の選び方、乗る前の準備、車内での過ごし方の工夫で、症状をかなり軽くすることができます。自分が酔いやすいパターンを知っておくことが一番の予防になります。
検診プログラム
乗り物酔いのための特別な検診はありません。ただし、めまいや耳の症状が気になる場合は、早めに医療機関に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 脱水(水分が足りなくなること)や体力の消耗
- 高齢者の場合、ふらつきによる転倒のリスク
- 乗り物を避けることで、旅行や通勤・通学の選択肢が狭くなる
- 「また酔うかもしれない」という不安が強くなる
長期的な見通し
乗り物酔いの多くは命に関わるものではなく、工夫次第で上手に付き合っていけます。年齢とともに軽くなることも多く、少しずつ慣れていく人もいます。心配なときは早めに相談しながら、自分に合った方法を見つけていきましょう。
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最終更新: 2026年10月22日
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