三心房心(さんしんぼうしん/コール・トライアトリアタム)
概要
三心房心(さんしんぼうしん)は、生まれつき心臓の形に特徴がある状態のひとつです。心臓には血液を受ける部屋(心房)と送り出す部屋(心室)があり、ふつうは左右に1つずつ、合わせて4つの部屋があります。三心房心では、このうちの心房の中に薄い膜のような仕切りがもう1枚あり、心房が2つに分かれて見えます。そのため「3つの心房がある」ように見えることから、この名前がつきました。この膜に穴が開いていて血液がスムーズに流れれば問題が少ないこともありますが、穴が小さいと血液の流れが妨げられ、息切れや疲れやすさなどが出ることがあります。
重要な事実
- 生まれつきの心臓の形の特徴で、心臓の心房の中に余分な膜がある状態です。
- とても珍しく、頻繁に見られるものではありません。
- 膜の穴の大きさによって症状の重さが大きく変わり、大人になってから見つかることもあります。
- 超音波検査(心エコー)で調べることが多く、必要に応じて治療の方針を相談します。
とても珍しい状態で、先天性心疾患(生まれつきの心臓の病気)の中でも頻度の低いもののひとつです。同じ先天性心疾患の中でも、心室中隔欠損などよく知られたものに比べると、出会う機会はかなり少ないとされています。
生まれつきの形の特徴なので、赤ちゃんや子どもに見つかることが多いですが、症状が軽い場合は思春期や大人になってから初めて分かることもあります。男女差ははっきりしておらず、特別に「この人がなりやすい」という生活習慣や体質があるわけではありません。
症状
- 息が苦しくて話すのが難しい、呼吸がとても速い
- 唇や顔色が青白い、または青紫色になっている
- 意識がもうろうとしている、反応が弱い、倒れて意識がない
- 胸の強い痛みが続く
- 突然の失神(気を失うこと)
- ⚠息切れが急に悪化した、安静にしていても息苦しい
- ⚠動悸が長く続いて落ち着かない
- ⚠足のむくみが急に強くなった、体重が数日で大きく増えた
- ⚠発熱と息苦しさが同時にある
- ⚠子どもが飲まない・眠り続ける・元気がない
一般的な症状
- 坂道や階段で息が切れやすい、動くと疲れやすい
- 動悸(どうき)=心臓の鼓動が速く、または強く感じる
- 少し動いただけで息が上がる、横になると息苦しい
- 足や顔のむくみ
- かぜをひいたわけではないのに、せきや息苦しさが続く
子供の症状
- 母乳やミルクを飲むときにすぐ疲れて、途中で休むことが多い
- 体重が増えにくい、成長がゆっくりに感じる
- 呼吸が速い、息をするときに小鼻が動く、あばら骨の間がへこむ
- よく汗をかく、とくに飲んでいる時や泣いている時
- 泣き声が弱い、元気が少ないように見える
- 呼吸器の感染症(かぜや肺炎など)をくり返す
高齢者の症状
- これまで平気だった運動で息切れするようになった
- 動悸や脈の乱れ(不整脈)を感じる
- だるさ、疲れやすさが続く
- 足のむくみや体重の急な増加
- せき、とくに横になると出るせき、血が混じった痰が出ることがある
原因
主な原因
- おなかの中の赤ちゃんが育つ間に、心房ができる過程で形が整いきらなかったことが原因と考えられています。
- 多くの場合、ご家族の育て方や生活習慣が原因になるものではありません。
- 遺伝することが多い状態ではないとされていますが、他の生まれつきの心臓の特徴と一緒に見つかることもあります。
リスク要因
- 他の先天性心疾患(生まれつきの心臓の病気)がある
- まれに、心臓の形に影響する症候群(いくつかの特徴がまとまって見られる状態)の一部として見つかる
- 特定の生活習慣で「防ぐ」ことができる危険因子は、はっきり知られていません
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさが強くなってきた、横になると息ができない
- 動悸が続く、脈が速いまま戻らない
- むくみが急に増えた、体重が短期間で大きく増えた
- 発熱と呼吸の苦しさが一緒にある
- 子どもが哺乳を嫌がる、元気がなくなる、呼吸が速い
定期受診を予約すべき場合:
- 以前より疲れやすい、動くと息が切れると感じる
- 動悸や脈の乱れをときどき感じる
- 健診や学校検診で心雑音(しんざつおん=心臓の音の異常)を指摘された
- 家族に先天性心疾患の人がいて、自分も検査を受けたい
- 妊娠を考えている、または妊娠中で心臓のことが気になる
診断
まず問診と診察で、症状の経過や生活への影響を確認します。その後、心臓の形と血液の流れを直接見られる超音波検査(心エコー)が中心になります。心エコーは体の外から機械を当てるだけの検査で、痛みはありません。必要に応じて他の検査を組み合わせて、膜の位置や穴の大きさ、血液の流れの妨げ具合を詳しく調べます。
行われる可能性のある検査
- 心エコー検査(超音波で心臓の形と血液の流れを見る検査)
- 心電図(心臓の電気の動きを調べる検査)
- 胸部X線(心臓の大きさや肺の状態を見る検査)
- 心臓MRI・CT(心臓の形をより詳しく見たいときに使うことがあります)
- 心臓カテーテル検査(細い管を血管から入れて、心臓の中の圧や血液の流れを測る検査。必要な場合に行います)
- 血液検査(体の状態や心臓への負担を確認するため)
診察で予想されること
検査の多くは痛みがなく、短時間で終わります。心エコーは数十秒から数十分、心電図は数分程度です。結果はその日のうちに説明されることもありますが、画像を詳しく見直すために後日になることもあります。診断がついた後は、症状の程度に合わせて「どのくらいの頻度で通院するか」「治療を考えるか」を主治医と一緒に決めていきます。
治療
治療の方針は、膜の穴の大きさと、症状が生活にどのくらい影響しているかで決まります。症状がほとんどなく血液の流れも良い場合は、定期的に通院して様子を見ることが多いです。息切れやむくみなどがある場合は、手術で膜を取り除いたり、穴を広げたりする方法が検討されます。
自宅でのセルフケア
- 決められた通院を続け、症状の変化をメモしておく(息切れ、むくみ、体重など)
- 毎日体重を測り、急な増加に気づけるようにする
- かぜや感染症を防ぐため、手洗い・うがい・十分な睡眠を心がける
- 歯のケアを大切にする(歯周病やむし歯は心臓に負担をかけることがあります)
- 運動の程度は自己判断にせず、主治医に相談する
- 妊娠を考えている場合は、必ず事前に主治医に相談する
医療治療
症状を和らげるためのお薬を使うことがあります。むくみや息苦しさを軽くするお薬、脈や血圧を整えるお薬などが検討されます。どのお薬をどのくらい使うかは、その人の状態に合わせて医師が判断します。お薬は症状を楽にするためのもので、膜そのものをなくす治療ではありません。飲み方や注意点について不安があれば、医師や薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
息苦しさやむくみなどの症状がある、心臓の中の圧が高い、肺に血液が滞っているといった場合は、手術が検討されます。手術では、心房の中にある膜を取り除いたり、血液の通り道を広げたりします。場合によっては、細い管を使って穴を広げる処置が選ばれることもあります。手術の時期や方法は、心臓を専門とする医師とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
三心房心と診断されても、多くの方は日常生活を送りながら、定期的な通院で状態を確認していきます。自分の体の変化に気づきやすくするために、息切れやむくみ、体重の変化を簡単に記録しておくと役立ちます。体調がいつもと違うと感じたときは、我慢せずに医療機関へ相談しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 十分な睡眠と休息をとり、無理のない範囲で活動する
- 感染症予防のために手洗い・うがいを習慣にする
- たばこは心臓と肺に負担をかけるため、避ける(周りの煙にも注意)
- お酒は主治医に相談し、量を控えめにする
- 歯科検診を定期的に受け、口腔(口の中)の健康を保つ
- 運動を始めるときは、事前に主治医に相談する
- ストレスをためこまず、話せる相手や相談先を持つ
食事と運動
食事は塩分を控えめにし、野菜やたんぱく質をバランスよくとることが基本です。むくみがあるときは、塩分のとりすぎに特に気をつけます。運動は、息が切れすぎない程度の散歩などから始めると続けやすいです。ただし、どのくらいの運動が自分に合っているかは状態によって違うため、主治医に相談してから決めましょう。
精神的健康と心の健康
生まれつきの心臓の状態と聞くと、不安になるのは自然なことです。通院や検査が続くことへの疲れ、将来や妊娠についての心配を感じる方も少なくありません。不安が強いときや気持ちが落ち込むときは、ひとりで抱えこまずに、医療者や家族、信頼できる人に話してみてください。必要に応じて心理的なサポートを受けられることもあります。つらい気持ちが続く場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
予防
三心房心は生まれつきの心臓の形の特徴で、生活習慣を変えることで防ぐことはできません。ただし、早期に見つけて定期的にフォローすることで、症状の悪化を早めに捉えられるようになります。気になる症状があるときは、早めに医療機関に相談することが大切です。
ワクチン
インフルエンザや肺炎などの感染症は心臓に負担をかけることがあります。ワクチン接種については、年齢や体の状態に合わせて主治医と相談してください。
検診プログラム
三心房心そのものを全員に調べる決まった健診はありません。妊娠中の胎児超音波検査や、学校健診・職場健診での心雑音の指摘が、発見のきっかけになることがあります。
合併症
治療しない場合
- 肺に血液が滞り、息苦しさやせきが続くことがある
- 肺の血管の圧が高くなる状態(肺高血圧)につながることがある
- 心臓に負担がかかり続けて心不全の症状が出ることがある
- 脈の乱れ(不整脈)が起きやすくなる
- まれに、心臓の中に血の塊(血栓)ができて、脳などに流れることがある
長期的な見通し
三心房心は珍しい状態ですが、症状の程度に応じて適切にフォローや治療を受けることで、多くの方が落ち着いた生活を送っています。手術が必要な場合も、血液の流れが改善し症状が軽くなる例が多く報告されています。大切なのは、定期的な通院を続け、体の変化を主治医と共有することです。将来についての不安も含めて、遠慮なく医療者に相談してください。
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最終更新: 2026年10月22日
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