角膜ジストロフィ(角膜が少しずつ濁る病気)
概要
角膜は、黒目の表面にある透明な薄い膜で、光をよく通す「窓」のような役割をしています。角膜ジストロフィは、この角膜の細胞が遺伝子の変化によって少しずつうまく働けなくなり、角膜が濁ったり、でこぼこしたり、傷つきやすくなったりする病気のグループです。「ジストロフィ」は「营养不良(栄養がうまくいかない状態)」という意味ですが、食事の栄養不足が原因ではなく、生まれ持った体のつくり(遺伝子)による変化を指します。多くは両目に、ゆっくりと長い年月をかけて進みます。
重要な事実
- 角膜ジストロフィは、遺伝子の変化が関係する目の病気のグループで、うつる病気ではありません。
- 多くのタイプは進行がゆっくりで、すぐに視力を失うものではありません。
- 症状の出方や進み方はタイプによって大きく異なり、何もしなくても困らない場合もあります。
- 眼鏡や点眼、必要に応じて手術などで、見え方を保つ工夫ができます。
角膜ジストロフィは、一般にはまれな病気のグループです。タイプによって頻度は異なり、比較的多いタイプでも数百人から数千人に一人程度といわれています。目の病気の中では出会うことの少ないものですが、眼科では決して珍しい存在ではありません。
生まれつき遺伝子の変化を持っている人に起こります。多くは小児期には目立った症状がなく、10代から40代ごろにかけて、視力検査や目の診察で見つかることが多いです。家族の中に同じ病気の人がいる場合は、発症する可能性が高くなります。男女どちらにも起こります。
症状
- 突然、片目または両目が見えなくなった、視野が大きく欠けた
- 目の激しい痛みに、頭痛・吐き気・嘔吐を伴う(急性の目の病気の可能性があります)
- 目に強い衝撃を受けた、化学薬品が目に入った
- ⚠急に視界がぼやけるようになった
- ⚠目の強い痛みや充血が数日続いている
- ⚠光がとてもまぶしく、目を開けていられない
- ⚠目やにが増え、黒目が白く濁ってきたように見える
一般的な症状
- 視界がかすむ、ぼやける(眼鏡をかけてもすっきりしないことがある)
- 光がまぶしい、光のまわりがにじんで見える
- 目の異物感(何かが入っているような感じ)
- 角膜の表面が傷ついて、目の痛みや充血を繰り返すことがある
- 夜間や暗い場所で見えにくい
- 進行すると、黒目が白っぽく濁って見えることがある
子供の症状
- 多くの場合は自覚症状がほとんどなく、学校の視力検査で見つかることがある
- 眼鏡を替えても視力が上がりにくい、と言われることがある
- まぶしさを嫌がる、目をよくこする、目を細めるなどの様子が見られることがある
- まれに、幼いころから角膜が傷つきやすいタイプもあり、その場合は目の痛みで気づくことがある
- 家族に同じ病気の人がいる場合は、早めの眼科受診が勧められる
高齢者の症状
- 加齢とともに濁りが進み、見えにくさが実感されやすくなる
- 老眼や白内障と区別がつきにくく、見過ごされることがある
- 白内障や緑内障など、ほかの目の病気を合併することがある
- 長年コンタクトレンズを使ってきた人は、装用感の変化として気づくことがある
- 定期的な眼科通院で、進行の程度を確認することが大切
原因
主な原因
- 生まれつき持っている遺伝子の変化(体の設計図のわずかな違い)が主な原因です
- 遺伝子の変化により、角膜の細胞が作るタンパク質に異常が生じ、角膜の中にたまったり、角膜の層のつくりが乱れたりします
- 遺伝のしかたにはいくつかのパターンがあり、親から子へ伝わる場合もあれば、家族に同じ人がいなくても起こる場合もあります
- 感染(ウイルスや細菌)でうつる病気ではありません
リスク要因
- 家族(親・きょうだい・親戚)に角膜ジストロフィの人がいる
- すでに角膜の濁りや角膜びらん(角膜の表面が傷つくこと)を指摘されたことがある
- 目を強くこする習慣がある(進行を早めることがあります)
- ドライアイやコンタクトレンズの不適切な使用で、角膜が傷つきやすい状態にある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に視力が下がった、視界が急にぼやけた
- 目の強い痛み、充血、まぶしさが続く
- 黒目が白く濁ってきたように見える、目やにが多い
定期受診を予約すべき場合:
- 眼鏡を替えても視界のかすみが続く
- 光のまぶしさや夜間の見えにくさが気になる
- 家族に角膜ジストロフィの人がいる
- 学校や職場の視力検査で、繰り返し引っかかる
- コンタクトレンズが合わなくなってきた、装用すると痛い
診断
眼科で目の詳しい検査を受け、角膜の状態を観察することで診断します。医師は、角膜のどの層にどんな濁りがあるか、傷がついていないか、家族に同じ病気の人がいるかなどを合わせて判断します。必要に応じて、遺伝子の変化を調べる検査が行われることもあります。
行われる可能性のある検査
- 視力検査(眼鏡をかけた状態での見え方も確認します)
- 細隙灯顕微鏡検査(光を当てて角膜を拡大して観察する検査)
- 角膜の形やカーブを調べる検査(角膜トポグラフィー)
- 角膜の厚さを測る検査
- 眼圧検査、眼底検査(ほかの目の病気がないか確認します)
- 必要に応じて遺伝子検査や、ご家族の目の検査
診察で予想されること
検査の多くは痛みがなく、椅子に座ったまま数分から十数分で終わります。角膜の表面を詳しく見るときには、麻酔の目薬をさすことがあります。遺伝子検査は結果が出るまで数週間から数か月かかることがあり、その間は主治医と今後の見通しについて話し合いながら過ごします。
治療
角膜ジストロフィそのものを根本から消す治療は、現時点では限られています。治療の目的は、見え方をできるだけ良い状態に保つこと、角膜の傷や痛みを防ぐこと、進行をゆるやかにすることです。症状の出方やタイプによって方針が変わるため、眼科医と相談しながら進めていきます。
自宅でのセルフケア
- 目を強くこすらない(こすることが進行や傷の原因になります)
- 部屋の乾燥を防ぎ、加湿を心がける
- 長時間の画面作業のときは、ときどき目を休めてまばたきを増やす
- 外出時は帽子やサングラスでまぶしさや紫外線をやわらげる
- コンタクトレンズは医師の指示を守り、清潔に扱う
- 症状の変化(見え方、痛み、まぶしさ)をメモして通院時に伝える
医療治療
医師の判断で、角膜の表面を保護したり、乾燥をやわらげたり、炎症を落ち着かせたりする点眼薬が使われることがあります。角膜の表面が傷ついたときは、傷の治りを助ける治療や、必要に応じて保護のための処置が行われます。見え方に合わせて眼鏡やコンタクトレンズの調整も行います。使う薬や治療の組み合わせは人によって異なるため、自己判断で市販薬を使わず、必ず眼科医や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
角膜の濁りが強くなり、日常生活(読書、運転、仕事など)に大きく支障が出る場合には、角膜移植という手術が検討されます。最近は、濁っている層だけを入れ替える部分的な移植が選ばれることも増えています。移植には提供される角膜が必要で、待ち時間が生じることがあります。手術後も通院と点眼がしばらく続きます。手術が向いているかどうかは、角膜の状態や全身の状態をふまえて眼科医と相談して決めます。
この病気と共に生きる
見えにくさは、ちょっとした工夫でかなり過ごしやすくなります。文字を大きくする、照明を明るめにする、まぶしさを避ける、物の置き場所を決めておく、といった工夫を自分に合う形で取り入れましょう。疲れやすいと感じるときは、無理をせず休むことも大切です。
生活習慣のアドバイス
- 読書やスマートフォンは、明るさと姿勢を整えて無理のない範囲で
- 画面を長時間見るときは、ときどき遠くを見て目を休める
- 目をこすらない、まぶたを強くこすらない
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- 喫煙は目の健康にも良くないため、禁煙を考える
- 屋外では紫外線対策を心がける
- 定期的な眼科受診を続ける
食事と運動
角膜ジストロフィに特別な食事制限はありません。バランスの良い食事を心がけ、野菜や魚なども取り入れてください。運動は制限されませんが、球技など目をぶつける可能性がある場合はゴーグルを使うなど、目を守る工夫をしましょう。体調が良い日は無理のない範囲で体を動かすことが、気分の安定にもつながります。
精神的健康と心の健康
「いつ見えにくくなるのか」「遺伝するのか」といった不安を抱えやすい病気です。見えにくさが続くと、イライラしたり気分が落ち込んだりすることもあるでしょう。それは自然な気持ちです。一人で抱え込まず、家族や信頼できる人、医療者に話してみてください。つらい気持ちが続くときは、地域の相談窓口や心の相談サービスを利用することもできます。気持ちがとてもつらいときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわずに医療機関や地域の緊急の相談先に連絡してください。
予防
遺伝子の変化が原因のため、病気そのものを完全に防ぐことはできません。ただし、目を強くこすらない、乾燥を防ぐ、コンタクトレンズを適切に使うといった工夫で、角膜の傷や進行をゆるやかにできる可能性があります。家族歴がある場合は、遺伝カウンセリングで相談することもできます。
検診プログラム
家族に角膜ジストロフィの人がいる場合は、症状がなくても眼科で定期的に検査を受けることが勧められます。学校や職場の視力検査で見えにくさを指摘されたら、早めに眼科を受診しましょう。
合併症
治療しない場合
- 角膜の濁りが進み、視力が低下することがある
- 角膜の表面が傷つく状態(角膜びらん)を繰り返し、痛みや充血が続くことがある
- 傷から細菌やウイルスが入り、角膜の感染症を起こすことがある
- まぶしさや見えにくさから、運転や読書など日常生活に支障が出ることがある
長期的な見通し
角膜ジストロフィの多くは進行がゆっくりで、長く見え方を保ちながら生活できます。症状が進んだ場合も、眼鏡や点眼、角膜移植などの選択肢があり、見え方を改善できる可能性があります。タイプによって経過は異なるため、今の状態を定期的に確認しながら、一人ひとりに合った付き合い方を見つけていくことができます。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月22日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.