角膜移植と角膜ドナー提供について
概要
角膜(かくまく)は、目のいちばん表面にある、黒目の部分を覆う透明な薄い膜です。カメラでいうとレンズのカバーのような役割をしていて、光をまっすぐ通し、ピントを合わせるのを助けています。この角膜が病気やけがで濁ったり、形がゆがんだり、内側の細胞が減ったりすると、光がうまく通らず視力が下がります。角膜移植は、傷んだ角膜の一部または全部を、提供された健康な角膜(ドナー角膜)と入れ替える手術です。角膜は血液型が合わなくても比較的移植しやすい組織で、日本でも毎年多くの方がこの手術を受けています。
重要な事実
- 角膜移植は、濁ったり形がゆがんだりした角膜を、提供された健康な角膜と入れ替えて見え方を改善する手術です。
- 角膜の全部を入れ替える方法と、濁っている層だけを入れ替える方法があり、病気の場所によって選ばれます。
- 移植した角膜が拒絶されないように、免疫を抑える目薬を長い期間さし続ける必要があります。
- 角膜の提供は、亡くなった方のご家族の承諾のもとで行われます。提供の意思表示が治療の支えになっています。
- 多くの方で視力が改善し、日常生活が楽になります。定期的な通院で合併症にも早く気づけます。
角膜の病気自体はそれほど多いものではありませんが、角膜移植は眼科の中では比較的行われることの多い手術です。日本でも毎年多くの方が移植を受けています。決してまれな手術ではありません。
年齢を問わず行われます。角膜がとがってくる「円錐角膜」は10〜20代の若い方に多く、白内障の手術後や加齢に伴って角膜が濁る「水疱性角膜症」は高齢の方に多くみられます。子どもでは、生まれつき角膜が濁っている場合などに移植が必要になることがありますが、多くはありません。
症状
- 目に強い衝撃を受けた、ものが刺さった、眼球が破けた可能性がある
- 薬品(酸やアルカリなど)が目に入った
- 急に視力がほとんど見えなくなった
- 目の激しい痛みとともに、ひどい頭痛や吐き気がある
- これらに当てはまるときは、ためらわず119番に連絡してください
- ⚠コンタクトレンズをつけたまま、急に目が痛くなった、充血した
- ⚠急に見えにくくなった、視界がかすむようになった
- ⚠目やにが多く、まぶたが腫れている
- ⚠黒目に白い点や濁りができた
- ⚠角膜移植のあとで、急に視力が下がった、充血や痛みが出た
一般的な症状
- 視界がかすむ、ぼやける(眼鏡を変えてもよくならない)
- 光がまぶしい、夜のライトがにじんで見える
- 目の痛みや異物感、ゴロゴロする感じ
- 充血や涙が増える
- 黒目の部分が白っぽく濁って見える
- 進むと、目の前がほとんど見えにくくなる
子供の症状
- 黒目が白っぽく濁って見える
- 光を極端に嫌がる、まぶしそうにする
- 目でものを追わない、反応が少ない
- 涙や目やにが多い
- 自分では見えにくさを言葉にできないため、周りが気づきにくいことがあります
高齢者の症状
- 白内障の手術を受けたあと、数か月から数年して見えにくくなる
- 朝は見えるのに、夕方になるとかすむ
- 目の痛みや異物感が続く
- 加齢に伴って角膜の内側の細胞(内皮細胞)が減ってくる
- 複数の目の病気が重なっていることがある
原因
主な原因
- 円錐角膜:角膜が薄くなって中央がとがり、視力がぼやける病気
- 角膜ジストロフィー:遺伝的な体質で角膜が濁る病気(フックス角膜内皮ジストロフィーなど)
- 水疱性角膜症:角膜の内側の細胞(内皮細胞)が減り、角膜が水ぶくれのように濁る状態
- 白内障手術など、目の手術のあとに角膜が濁る
- 感染による角膜炎(細菌・ウイルス・真菌など)が治ったあとに残る瘢痕(はんこん)
- けが、やけど、化学物質による損傷
- 生まれつき角膜が濁っている(先天性角膜混濁)
リスク要因
- コンタクトレンズの不適切な使い方(長時間の装用、汚れたまま使う、つけたまま寝る)
- アレルギー性の目の病気で、目を強くこすることが多い
- 紫外線に長くさらされる環境
- 家族に角膜の病気の人がいる(遺伝的な体質)
- 目の手術(とくに白内障手術)を受けたことがある、加齢
- 目にけがをしたことがある、化学物質が触れたことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に見えにくくなった、視野が欠けた
- 目の強い痛みや、ひどいまぶしさがある
- コンタクトレンズをしたまま痛みや充血が出た
- 薬品が目に入った、目にものが刺さった(すぐに119番)
- 角膜移植のあとで、急な視力低下や充血、痛みがある
定期受診を予約すべき場合:
- 少しずつ見えにくくなってきた、眼鏡を変えても合わない
- まぶしさや光のにじみが気になる
- 黒目が白っぽく濁ってきた気がする
- 角膜の病気を指摘された、家族に同じ病気の人がいる
- 角膜移植後の定期通院(指示された間隔で)
診断
眼科で、目の状態を直接見ながら調べます。多くの検査は外来で受けられ、短時間で終わります。
行われる可能性のある検査
- 視力検査・屈折検査
- 細隙灯顕微鏡検査(スリットランプ):角膜を拡大して観察する
- 角膜内皮細胞検査:角膜の内側の細胞の数や形を調べる
- 角膜形状解析(トポグラフィー):角膜のカーブや厚みを地図のように調べる
- 眼圧検査
- 必要に応じて、角膜の感染の検査や血液検査、目の超音波検査
診察で予想されること
検査はどれも痛みが少なく、短時間で終わります。点眼の麻酔を使うことがあります。移植が必要かどうか、どの方法が合うかは、検査の結果と生活の状況をあわせて主治医が判断します。納得できないときは、セカンドオピニオンを求めることもできます。
治療
まずは原因に合わせて、点眼や治療用のコンタクトレンズなどで角膜を守り、見え方を保つ治療を行います。それでも見えにくさや痛みが強いとき、角膜の濁りが進むときには、角膜移植を検討します。
自宅でのセルフケア
- 目をこすらない(角膜を傷つけたり、病気を悪化させたりします)
- コンタクトレンズは決められた使い方を守り、清潔に扱う
- 屋外では帽子やサングラスで紫外線を避ける
- 作業時は保護メガネを使う
- 目薬は指示どおりにさし、自己判断でやめない
- 移植後は、決められた通院を欠かさない
医療治療
角膜の状態に合わせて、炎症や感染を抑える目薬、角膜の表面を守る目薬、涙の量を保つ治療などが使われます。角膜の形を整えるために治療用のコンタクトレンズを使うこともあります。移植後は、移植した角膜が体に拒絶されないようにするための目薬(免疫を抑える目薬)を、長い期間さし続ける必要があります。薬の種類や期間は、主治医の指示にしたがってください。
手術が検討される場合
角膜の濁りや形のゆがみで見え方が大きく妨げられているとき、痛みが続くとき、点眼などでは改善が見込めないときに移植を検討します。移植には、角膜の全部を入れ替える方法と、濁っている層だけを入れ替える方法(層状移植・内皮移植)があり、病気の場所によって選ばれます。手術時間や入院の期間、回復までの見通しは、方法や状態によって変わります。ドナー角膜が届くまで待つ期間が生じることがあります。
この病気と共に生きる
移植後は、目薬を続けながら定期的に通院します。目をぶつけない、こすらないといった注意を守ることで、移植した角膜を長く保ちやすくなります。見え方は少しずつ落ち着いていくので、眼鏡の調整が必要になることもあります。
生活習慣のアドバイス
- 目をこすらない、ぶつけない
- スポーツは主治医に相談してから。ボールや接触のある競技ではゴーグルを使う
- 洗顔や洗髪のときは、目に水が入りすぎないように気をつける
- 睡眠をしっかりとり、疲れ目をためない
- 加湿や休憩でドライアイを防ぐ
- 喫煙は目の血流にもよくないため、禁煙を勧められることがある
- 角膜を提供してくれた方とご家族への感謝を、忘れずにいたいものです
食事と運動
特別な食事制限はふつうありません。バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動が、体の回復を助けます。激しい運動や頭を強く打つ可能性のある運動は、手術後しばらくは主治医に相談してください。
精神的健康と心の健康
移植を待つ間や手術のあとは、不安や緊張が続きやすいものです。見え方の変化に一喜一憂してしまうこともあります。提供者とそのご家族への思いを抱えて、気持ちが重くなる方も少なくありません。つらい気持ちが続くときは、一人で抱えず、医療機関や地域の相談窓口、専門の相談員に話してみてください。気持ちが追い詰められていると感じたら、ためらわず周囲や医療機関に助けを求めてください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、角膜を傷つけない工夫や、目の病気の早めの受診でリスクを下げられる場合があります。
ワクチン
角膜移植そのものを防ぐワクチンはありません。
検診プログラム
眼科の定期健診で角膜の状態を確認できます。白内障の手術前には角膜の内皮細胞を調べることがあり、病気の早期発見につながります。アレルギーやコンタクトレンズを使っている方は、定期的に眼科で相談してください。
合併症
治療しない場合
- 見えにくさが進み、読む・歩く・運転といった日常生活が難しくなる
- 痛みや異物感が続く
- 角膜が薄くなり、穴が開く(穿孔)ことがある
- 感染が角膜の深くまで広がる
- 治療が遅れると、視力の回復が難しくなる
長期的な見通し
角膜移植は、目の手術の中でも成績が比較的よい手術です。多くの方で視力が改善し、日常生活が楽になります。移植した角膜が長く保たれることも多い一方で、拒絶反応や感染などの合併症が起こることもあり、その場合は追加の治療が必要になります。定期的な通院を続けることで、早めに対処できます。見え方に不安があっても、あきらめずに主治医と相談しながら進めていけます。
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最終更新: 2026年10月22日
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