冠状動脈性心臓病(虚血性心疾患)
概要
冠状動脈性心臓病は、心臓の筋肉に血液を送る血管(冠状動脈)が狭くなったり詰まったりして、心臓に十分な酸素と栄養が届きにくくなる病気です。冠状動脈は心臓の表面を走る「心臓専用の血管」で、ここが狭くなると、歩いたり階段を上ったりしたときに胸が痛くなる「狭心症」や、血管が完全に詰まって心臓の筋肉が傷つく「心筋梗塞」が起こることがあります。日本では虚血性心疾患とも呼ばれます。
重要な事実
- 心臓に血液を送る血管が狭くなる、または詰まることが原因です。
- 胸の痛みや圧迫感、息苦しさが代表的な症状ですが、症状が出ないこともあります。
- 喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症(コレステロールなどの異常)、肥満などが主な危険因子です。
- 生活習慣の見直しと適切な治療で、進行を抑えたり発作を防いだりできます。
はい。冠状動脈性心臓病は日本でも多くみられる病気で、心臓病による死亡の大きな原因のひとつです。特に中高年以降に増えますが、若い世代でも起こります。
主に40代以降の成人に多くみられますが、若い人でも発症します。男性は比較的若い時期からリスクが高く、女性は閉経後にリスクが上がるといわれています。喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症、家族歴のある方は特に注意が必要です。
症状
- 胸の強い痛みや圧迫感が20分以上続き、安静にしてもよくならない(心筋梗塞の可能性)
- 冷や汗、吐き気、息苦しさを伴う胸の痛み
- 突然の激しい胸の痛みや、意識がもうろうとする
- 胸の痛みとともに失神した、または倒れた
- ⚠今までより軽い労作(少し動いただけ)で胸の痛みや息苦しさが出るようになった
- ⚠胸の痛みが今までより頻繁に、または強く、長く続くようになった
- ⚠安静にしていても胸の不快感が出るようになった
- ⚠動悸や息切れが急に増えた
一般的な症状
- 胸の中央や左側の痛み、圧迫感、締めつけられる感じ
- 胸の不快感が、腕・肩・あご・背中・みぞおちに広がる
- 階段や坂道など体を動かしたときの息苦しさ
- 冷や汗、吐き気、めまい
- 安静にすると数分で軽くなる胸の痛み(狭心症の典型的なパターン)
子供の症状
- 子どもでは非常にまれですが、先天性の心臓の病気や川崎病の後遺症などが関係することがあります。
- 子どもが運動中に胸を痛がる、息苦しそうにする、顔色が悪くなる場合は、早めに小児科に相談してください。
高齢者の症状
- 高齢者では胸の痛みがはっきりせず、息切れ、だるさ、吐き気、食欲低下だけのことがあります。
- 「疲れやすい」「最近元気がない」といった変化も、心臓の病気のサインのことがあります。
- 糖尿病のある方は痛みを感じにくいことがあります。
原因
主な原因
- 冠状動脈の内側にコレステロールなどの塊(プラーク)がたまり、血管が狭くなる動脈硬化
- プラークが破れて血管が詰まり、心臓の筋肉に血液が届かなくなる(血栓による閉塞)
- 冠状動脈のけいれん(血管が一時的に縮むこと)による血流の低下
リスク要因
- 喫煙(受動喫煙も含む)
- 脂質異常症(LDLコレステロールが高い、中性脂肪が高いなど)
- 肥満、特におなか周りに脂肪がつくタイプの肥満
- 運動不足、塩分の多い食事、野菜や魚の少ない食事
- 家族に心臓病の人がいる(家族歴)
- 年齢(男性は比較的若くから、女性は閉経後にリスクが上がる)
- 強いストレス、睡眠不足、過度の飲酒
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の痛みや圧迫感が強く、20分以上続く、または安静にしても治まらない
- 冷や汗、吐き気、息苦しさを伴う胸の痛み
- 胸の痛みで意識が遠のく、倒れた
- 今までより少しの動きで胸の痛みや息切れが出るようになった
定期受診を予約すべき場合:
- 階段や坂道で胸が痛む、または息苦しくなるが、休むと数分で治まる
- 健康診断で血圧・血糖・コレステロールを指摘された
- 動悸や息切れが続いている
- 家族に心臓病の人がいて、自分も心配になった
診断
問診で症状の出方(どんなときに、どこが、どれくらい続くか)を確認し、血圧や心電図、血液検査などを行います。必要に応じて、心臓の血管の状態を調べる検査を行います。痛みのない人でも、健康診断の異常をきっかけに見つかることがあります。
行われる可能性のある検査
- 問診と身体診察(症状のパターン、既往歴、家族歴の確認)
- 心電図(安静時、必要なら運動負荷時)
- 血液検査(心臓の筋肉に負担がかかっていないか、コレステロールや血糖値など)
- 胸部レントゲン、心エコー(心臓の動きや大きさを調べる超音波検査)
- 冠動脈CT検査(血管の狭まりや詰まりを画像で調べる)
- 心臓カテーテル検査(血管の状態を詳しく調べる検査。必要に応じて治療も行います)
診察で予想されること
検査は痛みが少なく、日帰りでできるものも多くあります。ただし、心臓カテーテル検査などは入院が必要なことがあります。検査の前に、担当の医師から目的と流れの説明があります。不安なことは遠慮なく質問してください。
治療
治療の目的は、胸の痛みや発作を防ぎ、心筋梗塞などを起こさないようにすること、そして生活の質を保つことです。生活習慣の見直しと、医師が決めた薬物療法を組み合わせるのが基本です。治療の内容は症状や検査結果によって一人ひとり異なります。
自宅でのセルフケア
- 禁煙する(受動喫煙も避ける)
- 医師の指示に従って血圧・血糖・コレステロールを管理する
- 塩分を控え、野菜・魚・食物繊維を意識した食事にする
- 無理のない範囲で、歩くなどの運動を習慣にする(始める前に医師に相談)
- 十分な睡眠と、ストレスをためない工夫をする
- 処方された薬は自己判断でやめず、飲み忘れに注意する
- 定期的な通院と検査を欠かさない
医療治療
治療には、血管の負担を減らしたり、血液が固まりにくくなるのを助けたり、心臓の働きを守ったりする薬を用いることがあります。どの薬をどのくらい使うかは、症状や検査結果、他の病気との関係をみて医師が判断します。薬の名前や量、飲み方は必ず処方した医師・薬剤師の説明に従ってください。また、血管が狭い場合には、カテーテルという細い管を使って血管を広げる治療を行うことがあります。
手術が検討される場合
薬物療法やカテーテル治療で十分な効果が得られない場合や、血管の狭まりが複数ある場合などには、心臓の血管のバイパス手術(血管の迂回路をつくる手術)を検討することがあります。手術の適応は、心臓の働きや血管の状態、全身の健康状態をみて医師が判断します。
この病気と共に生きる
冠状動脈性心臓病は、付き合いながら生活していく病気です。症状の変化に気をつけ、無理をしない範囲で日常生活を続けることが大切です。胸の痛みが出たときの対処法をあらかじめ医師に確認しておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける。禁煙が難しいときは、医療機関の禁煙支援を利用する
- 塩分・脂肪・糖分を控えめにし、野菜や魚を多くとる
- 医師と相談しながら、ウォーキングなどの有酸素運動を無理なく続ける
- お酒はほどほどに。飲まない人に勧める必要はありません
- 睡眠を十分にとり、寒暖差に注意する(寒いときは血管が縮みやすい)
- 便秘や急に力む動作を避け、排便はゆっくり行う
- ストレスをためず、リラックスする時間をつくる
食事と運動
食事は、塩分を控え、野菜・果物・魚・全粒穀物・食物繊維を意識し、加工食品や揚げ物を控えめにするとよいでしょう。運動は、医師の許可を得たうえで、息が少しはずむ程度のウォーキングを毎日少しずつ行うのがおすすめです。運動中に胸の痛みや息苦しさが出たら、すぐに中止して休み、症状が続く場合は医療機関に連絡してください。
精神的健康と心の健康
心臓の病気と診断されると、不安や落ち込み、将来への心配を感じるのは自然なことです。気持ちの変化を一人で抱え込まず、家族や友人、かかりつけ医に話してみてください。つらさが続くときは、心の健康の専門家に相談することも大切です。
予防
完全に防ぐことは難しいですが、危険因子を減らすことでリスクを下げられます。禁煙、バランスのよい食事、適度な運動、適正体重の維持、血圧・血糖・コレステロールの管理が大切です。
ワクチン
心臓の病気そのものを防ぐワクチンはありません。ただし、インフルエンザや肺炎などの感染症は心臓に負担をかけることがあるため、かかりつけ医と相談のうえで、年齢や持病に応じた予防接種を検討するとよいでしょう。
検診プログラム
健康診断での血圧測定、血液検査(コレステロール・血糖)、心電図などが、リスクを知る手がかりになります。日本では特定健康診査(メタボ健診)や職場の健診などで受けられます。結果に異常があれば、かかりつけ医に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 心筋梗塞(心臓の筋肉が傷つき、命に関わることもある)
- 心不全(心臓のポンプ機能が弱まり、息切れやむくみが出る)
- 不整脈(心臓のリズムが乱れる)
- 突然の心停止
長期的な見通し
冠状動脈性心臓病は、生活習慣の見直しと適切な治療で、発作を防ぎ、穏やかに生活を続けられる病気です。症状の変化に気をつけ、定期的な通院を続けることで、多くの方は安定した毎日を送っています。早めに相談することが、安心につながります。
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最終更新: 2026年10月22日
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