コステロ症候群(Costello症候群)とは—ご家族のための基礎知識
概要
コステロ症候群は、生まれつきの遺伝子の変化によって起こる、とても珍しい疾患です。原因となるのはHRAS(エイチラス)という遺伝子の変化で、この遺伝子は体の細胞が「いつ、どれくらい成長するか」を調整する役割を持っています。その調整がうまく働かないことで、体の成長、皮膚、心臓、関節など、さまざまな部分に特徴的な症状が現れます。同じ診断名でも症状の重さや現れ方は人によって大きく異なり、一人ひとりに合わせた支援が大切です。
重要な事実
- 生まれつきの遺伝子の変化が原因であり、妊娠中の過ごし方や育て方が原因ではありません。
- 心臓の合併症(心筋症や不整脈など)と、一部の腫瘍ができやすいことが知られており、定期的な検査がとても大切です。
- 症状の程度には大きな個人差があり、多くのお子さんが発達支援やリハビリを受けながら成長しています。
- 日本では指定難病の一つに位置づけられており、医療費助成などの制度の対象となる場合があります。詳しくは主治医やお住まいの自治体の窓口にご確認ください。
とても珍しい疾患です。海外の報告では、数十万人に1人程度の頻度とされています。日本国内の患者さんも少なく、診療経験のある医療機関は限られています。珍しいからこそ、専門チームとつながることが安心につながります。
生まれつきの疾患で、男女の差はありません。多くは家族に同じ疾患の人がいない中で起こる偶発的な遺伝子の変化によるものです。きょうだいに同じ疾患が起こる可能性は一般に低いとされていますが、次のお子さんを考えるときは遺伝カウンセリングで確認することができます。
症状
- 呼吸が苦しそう、息が速い、顔色が青白い、唇が紫っぽい
- 意識がない、呼びかけに反応しない
- けいれんが数分以上続く、または何度もくり返す
- 心臓の病気がある人が、急に具合が悪くなった、胸の痛みが強い、動悸が止まらない
- むくみが急にひどくなり、横になると息苦しい
- ⚠発熱が続く、ぐったりしていつもと様子が違う
- ⚠嘔吐や下痢がひどく、水分がとれない、尿の量が極端に少ない
- ⚠急に体重が減った、食べられない状態が続く
- ⚠おなかが張って痛がる、便が出ない状態が続く
- ⚠耳の痛みや耳だれが続く
一般的な症状
- 目立つ眉や広い鼻、厚めの唇など、特徴的な顔立ち
- 手のひらや足の裏のしわが深く、皮膚がやわらかくゆるい
- 巻き毛の髪、短い首
- 身長や体重の増え方がゆっくりしている
- 関節がやわらかく、柔軟すぎる
- 口のまわりや肛門のまわりに、いぼのような小さなできものができることがある
- 哺乳がうまくいかない、吐き戻しが多い、食べることに時間がかかる
- 心臓の病気(心筋症、不整脈など)
- 発達の遅れ(歩く、話すなど)や学習の困難
- けいれん、聴こえにくさ、見えにくさ
- 人と関わることが好きで社交的な一方、不安が強かったりこだわりが強かったりすることがある
子供の症状
- 母乳やミルクを飲む量が少なく、体重が増えにくい
- 体がやわらかく、抱っこするとたるんだ感じがする
- 首のすわりや寝返り、歩き始めがゆっくり
- 中耳炎をくり返す、耳に水がたまりやすい
- 便秘やおむつかぶれが続く
- 眠りが浅い、夜泣きが多い
- 初めての場所や変化への不安が強い
高齢者の症状
- 成人期も心臓の定期的なフォローが必要
- 骨がもろくなりやすい(骨密度の低下)
- 股関節や背骨のゆがみ、関節の痛み
- 膀胱の腫瘍のリスクに注意が必要
- 体重が増えやすい、血糖値が高くなりやすい
- 不安や気分の落ち込みが続くことがある
- 成人の患者数は少ないため、小児期からの継続的な診療体制づくりが課題になっている
原因
主な原因
- HRAS遺伝子の生まれつきの変化(変異)が原因です。この遺伝子は細胞の成長のスイッチの役割をしており、スイッチが入りっぱなしになることで症状が現れると考えられています。
- 多くは、両親には見られない偶発的な変化として起こります。
- コステロ症候群を含む「ラスオパチー」というグループの疾患は、同じ細胞内の信号の通り道の違いによって起こります。
リスク要因
- 家族に同じ疾患の人がいる場合は、遺伝カウンセリングを受けて再発の可能性を確認することが勧められます。
- 両親の年齢や妊娠中の生活習慣との明確な関連は知られていません。
- 妊娠中に何かをした・しなかったことが原因ではない、ということをご家族に知っていただくことが大切です。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 呼吸が苦しそう、顔色が悪い、意識がぼんやりしている
- けいれんが起きた、またはいつもと違うふるえがある
- 心臓の病気がある人で、動悸や胸の痛み、急な息切れがある
- 水分がとれないほどの嘔吐や下痢、尿が出ない
- 高熱が続き、ぐったりしている
定期受診を予約すべき場合:
- 成長曲線から外れてきた、体重が増えない
- 歩く・話すなどの発達の遅れが気になる
- 皮膚にいぼのようなできものができた
- 中耳炎や耳だれをくり返す
- 便秘やおむつかぶれが長引く
- 睡眠の問題や、強い不安・こだわりが生活に影響している
- 学校生活や友だち関係について相談したい
- 成人期の通院先の移行(小児科から大人の診療科へ)を相談したい
診断
診察で見られる身体の特徴や成長の記録、これまでの病歴から疑いを持ち、遺伝子検査でHRAS遺伝子の変化を確認することで診断が確定します。同時に、心臓や発達、聴力、視力など全身の状態を評価し、必要な支援の計画を立てます。専門の遺伝子診療科や小児科、臨床遺伝の専門家と相談しながら進めます。
行われる可能性のある検査
- 遺伝子検査(血液を採ってHRAS遺伝子を調べる)
- 心臓の検査(心電図、心エコー検査)
- 腹部の超音波検査、尿の検査(腫瘍の早期発見のため)
- 発達の評価(心理検査や発達検査)
- 聴力検査、目の検査
- 必要に応じて頭部の画像検査、股関節や背骨のレントゲン検査
- 骨密度の検査、血液検査
診察で予想されること
診断がつくまでに時間がかかることがあります。結果を聞く日はご家族にとって大きな出来事です。遺伝カウンセリングでは、疾患の説明だけでなく、次のお子さんについての考え方や、家族への伝え方も相談できます。気持ちが揺れるのは自然なことなので、心理的なサポートも遠慮なく利用してください。
治療
コステロ症候群そのものを治す根本的な治療法はまだありません。現在は、一人ひとりの症状に合わせて、心臓の管理、発達・摂食の支援、腫瘍の早期発見などを組み合わせた「総合的なケア」を行います。定期的な通院を生活のリズムにすることが、長期的な安心につながります。
自宅でのセルフケア
- 手洗いやうがいなど、感染症の予防を心がける
- 成長の記録(身長・体重)を家庭でもつけて受診時に見せる
- 食事の量やむせこみなど、気づいたことをメモしておく
- リハビリで教わった運動や関わりの方法を日常に取り入れる
- 睡眠を十分にとり、生活のリズムを整える
- ご家族自身が休息をとる時間を意識してつくる
- 学校や療育の先生と、その日の様子を共有する
医療治療
心臓の状態に合わせて専門医が定期的に観察し、必要に応じて治療を行います。発達面では、理学療法・作業療法・言語聴覚療法などのリハビリと、療育や教育の支援を組み合わせます。食べることの困難には、栄養の専門家と相談しながら形態や回数を工夫します。皮膚のいぼのようなできものは、状態に応じて対応します。腫瘍を早く見つけるために、腹部の超音波検査や尿の検査を定期的に行います。骨密度やホルモン、成長についても評価します。具体的な薬や治療の内容は、主治医とよく相談して決めてください。
手術が検討される場合
心臓の手術、股関節や背骨の整形外科的な手術、いぼのようなできものの切除、腫瘍に対する手術が必要になることがあります。手術が必要かどうかは、状態とリスクを専門医が総合的に判断します。迷ったときは、複数の専門家の意見を聞くことも選択肢です。
この病気と共に生きる
定期的な通院を生活の予定に組み込み、成長の記録や体調の変化を家族で共有しましょう。学校とは、個別の支援計画や緊急時の対応(連絡先、避けるべき運動、発作時の動き)を事前に話し合っておくと安心です。きょうだいへの説明や、家族それぞれの時間を守ることも大切です。
生活習慣のアドバイス
- 十分な睡眠と規則正しい生活
- 感染症予防(手洗い、必要な予防接種は主治医と相談)
- 歯のケアと定期的な歯科受診
- 心臓の状態に合わせた安全な運動を主治医と相談する
- 思春期以降は、大人の診療科への移行を早めに準備する
- 困ったときに頼れる人や相談先を、あらかじめ決めておく
食事と運動
食べることの困難がある場合は、一度にたくさん食べずに小分けにする、やわらかい形態にするなどの工夫が役立ちます。栄養の専門家に相談すると、成長に合わせた具体的な提案が得られます。運動はとても大切ですが、心臓の状態によって安全な範囲が異なるため、必ず主治医に確認してください。水泳など負担の少ない運動が勧められることもあります。骨を丈夫にするために、栄養と適度な体重管理にも気を配りましょう。
精神的健康と心の健康
珍しい疾患であることで、周囲に理解されにくく、不安や孤立感、気分の落ち込みを抱えることがあります。ご家族自身が疲れやストレスを感じるのも自然なことです。心理カウンセリングや、同じ経験を持つ家族との交流(ピアサポート)が支えになります。もし自分や家族を傷つけたい気持ちがわいてきたときは、一人で抱えず、すぐに医療機関や地域の相談窓口、緊急時は119番に連絡してください。
予防
コステロ症候群を予防する方法は知られていません。原因となる遺伝子の変化は偶然起こるもので、妊娠中の過ごし方で防ぐことはできません。次のお子さんを考える際には、遺伝カウンセリングを受けて、再発の可能性や検査の選択肢について専門家と話し合うことができます。
検診プログラム
診断後は、心臓の検査(心電図・心エコー)、腫瘍を早期に見つけるための腹部超音波検査や尿検査、聴力検査、目の検査、発達の評価、骨密度の検査などを、主治医が決めた間隔で定期的に受けます。成人になっても、これらのフォローを続けることが大切です。
合併症
治療しない場合
- 心筋症や不整脈が進み、心不全になることがある
- 腫瘍(横紋筋肉腫、神経芽腫、膀胱の腫瘍など)の発見が遅れる
- 食べる困難から栄養不足になり、成長が妨げられる
- 股関節の脱臼や背骨のゆがみが進む
- 聴こえにくさや見えにくさが学習に影響する
- 発達や学習の困難が、学校生活や社会生活の負担になる
- 強い不安や気分の落ち込みが続く
長期的な見通し
コステロ症候群は生涯にわたる付き合いになる疾患ですが、心臓の管理や腫瘍の早期発見、発達支援が進歩したことで、成人期を迎え、学校や仕事など自分らしい生活を送る方が増えています。症状の重さには大きな個人差があり、将来の見通しは主治医と定期的に話し合って更新していくことができます。希望を持ちながら、その時々に必要な支援を一つずつ整えていきましょう。
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最終更新: 2026年10月22日
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