肋軟骨炎(ろくなんこつえん)〜胸の痛みのよくある原因〜
概要
肋軟骨炎(ろくなんこつえん)は、肋骨(あばらぼね)と胸骨(胸の中央にある骨)をつないでいる軟骨(なんこつ:骨よりやわらかい組織)に炎症が起きて、胸が痛くなる状態です。英語ではコストコンドライティスと呼ばれます。痛む場所を押すととくに痛く、深呼吸・せき・上半身を動かしたときにも痛みが強くなることが多いです。胸の痛みというと心臓の病気を心配しがちですが、肋軟骨炎は心臓や肺の病気ではないことが多く、命にかかわるものではありません。ただし、胸の痛みは別の病気のサインであることもあるので、初めての胸の痛みは医療機関で相談してください。
重要な事実
- 胸の中央〜左右の肋骨のつけ根を押すと痛むのが特徴です。
- 多くは数週間から数か月で自然に良くなります。再発することもあります。
- 心臓や肺の深刻な病気ではないことが多いですが、初めての胸の痛みは自己判断せず受診してください。
はい、よくある症状です。胸の痛みで医療機関を受診する人のなかでも多い原因のひとつで、若い人から中年の人まで幅広く見られます。
10代から40代くらいに多く、女性にやや多く見られます。スポーツをしている人、長引くせきがある人、上半身をよく使う仕事や家事をする人にも起こりやすいです。子どもにも起こりますが、子どもの胸の痛みはまず医療機関で相談してください。
症状
- 突然の激しい胸の痛み、または胸を締めつけられるような痛みが続く
- 痛みが肩・腕・あご・背中に広がる
- 冷や汗、息苦しさ、吐き気、めまいをともなう
- 意識がもうろうとする、倒れる、唇や顔が青白い
- これらの症状があるときは、ためらわず救急車を呼んでください(日本では119番)
- ⚠発熱をともなう胸の痛み
- ⚠呼吸が苦しい、息が浅い
- ⚠胸を強く打ったあとの痛み
- ⚠痛みが日に日に強くなる、または痛む範囲が広がる
- ⚠せきが長く続いて胸が痛む
- ⚠これらの症状は、できるだけ当日中に医療機関を受診してください
一般的な症状
- 胸の中央(胸骨)の左右、肋骨とのつなぎ目あたりの痛み
- その場所を押すと痛む(圧痛:おさえると痛むこと)
- 深呼吸やせきをすると痛みが強くなる
- 腕を上げる、体をひねるなどの動きで痛む
- 鈍い痛みが続く、または時々チクッと痛む
- 痛みは片側のことも、両側のこともある
- 走ったり階段を上ったりすると痛む
子供の症状
- 成長期の子どもに起こることがあり、スポーツや長引くせきのあとに痛みが出ることがあります
- 子どもは痛みの場所をうまく説明できないことがあるため、「胸が痛い」と言ったら安静にして様子を見ましょう
- 発熱、息苦しさ、顔色の悪さ、元気がないなどがあれば、すぐに医療機関に相談してください
高齢者の症状
- 高齢者では、心臓や肺の病気との区別がいっそう大切です
- 持病(心臓病、肺の病気、糖尿病など)がある方は、胸の痛みを我慢せず早めに受診してください
- 痛みで呼吸が浅くなると、体への負担が大きくなることがあります。深呼吸がしづらいときは相談してください
原因
主な原因
- はっきりした原因がわからないことが多い
- 胸をぶつけるなどのけが
- かぜや気管支炎などで長引くせき(せきで肋骨と軟骨のつなぎ目に負担がかかる)
- スポーツや筋トレなど、上半身を繰り返し使うこと
- ウイルス感染(かぜのウイルスなど)にともなう炎症
- 重い荷物を運ぶ、長時間の同じ姿勢など、体への負担
- まれに、関節の病気や感染症など別の原因が隠れていることがある
リスク要因
- 激しい運動や上半身をよく使う活動をしている
- せきが長引いている、または最近かぜをひいた
- 最近、胸を打つなどのけがをした
- 上半身に負担のかかる仕事や家事が多い
- ストレスや不安が強い時期
- 若い年代、とくに10代〜40代
- 女性にやや多いとされている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の激しい胸の痛み、締めつける痛み、冷や汗や息苦しさがある(この場合は119番へ)
- 発熱をともなう胸の痛み
- 呼吸が苦しい、息が十分に吸えない
- 胸を強く打ったあとの痛み
- 痛みがどんどん強くなる
定期受診を予約すべき場合:
- 胸の痛みが数日以上続いている
- 押すと痛む場所がはっきりしている
- 市販の痛み止めを使っても改善しない(薬の使用は薬剤師や医師に相談してください)
- 痛みのせいで眠れない、仕事や家事に支障がある
- 何度も繰り返す
診断
診断は、問診(いつから、どこが、どんなふうに痛むか)と触診(体にふれて確認すること)が中心です。胸の中央や肋骨とのつなぎ目を軽く押して、痛む場所を確認します。同時に、心臓や肺の病気ではないかを確認するために、必要に応じて検査が行われます。肋軟骨炎では、画像の検査で大きな異常が出ないことが多いのも特徴です。
行われる可能性のある検査
- 問診と触診(痛む場所、痛み方、きっかけを確認)
- 心電図(心臓の電気の動きを調べる検査)
- 胸部レントゲン(肺や心臓の大きさ、胸の骨の様子を見る)
- 血液検査(炎症の程度や心臓の病気の手がかりを調べる)
- 必要に応じて心臓の超音波検査やCT検査
- せきや発熱が強い場合は、肺の病気を調べる検査
診察で予想されること
診察は数分から十数分程度で、痛む場所を押して確認するのが中心です。検査は、心臓や肺の病気を否定するために行われるもので、すべての人に必要なわけではありません。結果の説明を受け、原因が肋軟骨炎と考えられれば、痛みをやわらげながら自然に良くなるのを待つ方針になることが多いです。
治療
肋軟骨炎の多くは、時間とともに自然に良くなります。治療の中心は、痛みをやわらげることと、胸に負担をかけないようにすることです。痛みの強さや日常生活への影響に合わせて、医師と相談しながら進めます。
自宅でのセルフケア
- 痛みが強いあいだは、上半身を激しく使う運動や重い物を持つことを控える
- せきが続いている場合は、せきをやわらげる方法について医師や薬剤師に相談する
- 痛む部分を冷やす、または温めると楽になるほうを試す(冷やしすぎ・温めすぎに注意)
- 姿勢を意識し、長時間同じ姿勢を避ける
- ゆっくり深く呼吸する練習をして、呼吸が浅くならないようにする
- 痛みの程度を記録しておくと、受診のときに伝えやすい
- 市販の痛み止めを使う場合は、かかりつけの医師や薬剤師に相談してからにする
医療治療
医療機関では、痛みや炎症をやわらげるための薬(飲み薬や貼り薬)が使われることがあります。薬の種類や使い方は、年齢・持病・妊娠の有無などによって変わるため、医師や薬剤師の指示に従ってください。まれに、痛みが強い場合に注射が検討されることがあります。また、姿勢や体の使い方を見直すリハビリや、痛みに配慮した運動の指導が行われることもあります。具体的な薬の名前や量については、ここではお伝えしません。必ず医療機関で相談してください。
手術が検討される場合
肋軟骨炎は通常、手術は必要ありません。別の病気が疑われる場合や、まれに強い痛みが長く続く場合に、専門の医療機関で詳しい検査が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
痛みは急に消えるものではなく、少しずつ良くなっていくことが多いです。痛みが強い日は無理をせず、体を休める時間を作りましょう。痛みの波があることを知っておくと、気持ちが少し楽になります。
生活習慣のアドバイス
- 運動は、痛みに合わせて無理のない範囲から再開する
- 重い荷物は小分けにする、台車を使うなど、体への負担を減らす工夫をする
- デスクワークでは、画面の高さや椅子の位置を調整して姿勢を整える
- 睡眠を十分にとり、体の回復を助ける
- せきが続くときは早めに医療機関に相談する
- ストレスをためないよう、自分に合った息抜きの時間を作る
食事と運動
特別な食事制限はありません。バランスのよい食事と十分な水分を心がけましょう。運動は、痛みがない範囲でウォーキングなどの軽い活動から始め、痛みが強くなったら休む、というように調整してください。胸の筋肉を急に鍛え始めるのは避け、再開するときは少しずつ段階を踏みましょう。
精神的健康と心の健康
胸の痛みが続くと、「心臓の病気ではないか」と不安になったり、痛みで気分が落ち込んだりすることがあります。痛みが長引くとストレスが増え、そのストレスが痛みを強く感じさせることもあります。不安が強いときは、一人で抱え込まずに医師や看護師、家族に話してください。気持ちのつらさが続くときは、お住まいの地域の保健所や医療機関、心の健康の相談窓口に相談してください。気分の落ち込みが強い、眠れない、自分を傷つけたい気持ちがわいた、といったときは、早めに医療機関や信頼できる人に助けを求めてください。
予防
肋軟骨炎を完全に防ぐ方法はありませんが、胸に負担をかけない工夫をすることで、リスクを下げたり再発を防いだりできる可能性があります。
検診プログラム
肋軟骨炎そのものを早期に見つけるスクリーニング検査はありません。気になる胸の痛みがあれば、我慢せずに医療機関で相談してください。
合併症
治療しない場合
- 多くの場合、時間とともに自然に良くなります
- 痛みが長引いて、仕事や家事、睡眠に影響することがある
- 痛みで呼吸が浅くなり、体が疲れやすくなることがある
- いったん良くなっても再発することがある
- まれに、別の病気が隠れていることがあるため、長引く場合は再評価が必要
長期的な見通し
肋軟骨炎の多くは、数週間から数か月で良くなります。痛みが長引くこともありますが、命にかかわる病気ではないことがほとんどです。痛みが続くときは、医療機関で状態を確認しながら、無理のない範囲で日常生活を続けていきましょう。良くなったり悪くなったりを繰り返しながら回復していくことも多く、心配しすぎないことが大切です。
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最終更新: 2026年10月22日
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