新型コロナワクチンは「長引くコロナ」のリスクを下げる可能性があります
概要
「長引くコロナ」は、新型コロナウイルス感染症にかかったあと、熱は下がって回復したはずなのに、だるさ・息切れ・頭がぼんやりする・においが分からないといった症状が、数週間から数か月、ときにはそれ以上続く状態をいいます。英語では「Long COVID(ロングコビッド)」、日本語では「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(りかんごしょうじょう)」や「後遺症」と呼ばれています。この記事のテーマは、その長引く症状が起きるリスクと、ワクチン接種の関係についてです。いくつかの研究では、ワクチンを接種しておくと、感染したあとに長引く症状が起きるリスクが低くなる可能性が報告されています。ただし研究結果にはばらつきがあり、まだ研究中の部分も多くあります。
重要な事実
- 複数の研究で、ワクチン接種を受けた人は受けていない人に比べて「長引くコロナ」になりにくい傾向が報告されています。一方で、効果の大きさについては研究ごとに差があり、確定的ではありません。
- 「長引くコロナ」は、感染時に軽い症状ですんだ人でも起こることがあります。重症だった人ほど起こりやすい傾向はありますが、軽症だから安心とは言いきれません。
- 症状は人によってまったく異なり、だるさ、息切れ、集中しにくさ、動悸、におい・味の異常などが代表的なものです。決まった一つの治療法があるわけではなく、症状に合わせたケアが中心になります。
報告によって数字に幅がありますが、感染した人のおよそ1割前後の人に何らかの長引く症状が見られるとされ、入院が必要だった人の場合はより高い割合になるという報告もあります。つまり、決してめずらしいものではなく、誰にでも起こりうる状態だと考えられています。
年齢や性別を問わず、子どもから高齢者まで、どの年代でも起こります。感染時に重症だった人、入院が必要だった人、感染初期にたくさんの症状があった人、糖尿病・喘息・心臓病・自己免疫疾患などの持病がある人、肥満がある人ではリスクが高い傾向が報告されています。子どもでは大人より少ないとされますが、起こらないわけではありません。
症状
- 安静にしていても息が苦しい、呼吸が速い、話すのがやっと
- 胸の強い痛みや圧迫感が続く
- 唇や顔色が青白い、汗が止まらない
- 意識がぼんやりする、もうろうとする、呼びかけに反応しにくい
- けいれんが起きた、体が動かない、ろれつが回らない
- ⚠動いたときの息切れが急に悪くなる
- ⚠熱がぶり返して高い熱が続く
- ⚠動悸とめまいが一緒に起きる、立ちくらみで倒れそうになる
- ⚠水分がとれない、尿の量が極端に減っている
- ⚠症状がここ数日で急に悪くなっていると感じる
一般的な症状
- 強いだるさ、疲れやすさ(少し動いただけでぐったりする)
- 息切れ、坂道や階段で息が上がる
- 頭がぼんやりする、物事に集中しにくい、記憶が曖昧になる(いわゆる「ブレインフォグ」)
- 動悸(心臓がドキドキする感じ)、胸の不快感
- においや味を感じにくい、感じない
- せきが長く続く、のどの違和感
- 頭痛、筋肉痛、関節の痛み
- よく眠れない、寝ても疲れが取れない
- 気分の落ち込み、不安が続く
- 髪が抜けやすくなる
- おなかの調子が不安定になる
子供の症状
- 大人と同じようにだるさや頭痛、息切れがみられますが、比較的軽いことが多いとされます
- 学校で集中できない、授業についていきにくい
- すぐに疲れる、体育や遊びのあとにぐったりする
- おなかの痛み、食欲がない、気持ちが悪い
- 眠りが浅い、夜泣きや不安が増える
- におい・味の異常
高齢者の症状
- 強いだるさや、以前より歩くのが遅くなる、力が出ない
- 階段や買い物など、日常の動作での息切れ
- 転びやすくなる、バランスが悪くなる
- 物忘れのような症状が目立つ、話がまとまりにくい
- もともとの持病(心臓・肺・糖尿病など)の悪化
- 食欲が落ちる、体重が減る、脱水になりやすい
原因
主な原因
- ウイルスそのもの、またはウイルスの断片が体内に長くとどまる可能性が考えられています
- 感染後の免疫の働きが乱れ、自分自身の体に負担がかかる状態が続く
- 体の炎症が長引き、全身にさまざまな症状が出る
- 感染中に血管や臓器が傷つき、回復に時間がかかる
- 感染をきっかけに、もともとの持病が悪化する
- はっきりした仕組みはまだ研究中で、一つではなく複数の要因が重なると考えられています
リスク要因
- 感染時に重症だった、入院が必要だった
- 感染の初期に多くの症状があった
- 糖尿病、喘息、心臓や肺の病気、自己免疫疾患などの持病がある
- 肥満がある
- 女性であること(報告により傾向がみられます)
- 年齢が高い
- ワクチン接種を受けていない(接種によりリスクが下がる可能性が報告されています)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさが急に強くなった、横になると息が苦しい
- 胸の痛みや強い動悸がある
- 高い熱が続く、または熱がぶり返す
- 水分がとれず、尿がほとんど出ない
- 症状が急激に悪化していると感じる
定期受診を予約すべき場合:
- 感染から4週間以上たっても、だるさ・息切れ・集中しにくさなどが続いている
- 症状が良くなったり悪くなったりを繰り返し、仕事や学校、家事に支障が出ている
- においや味の異常が長く続いている
- 眠れない日が続く、気分の落ち込みや不安が続いている
- 症状が長引き、どう対処すればよいか分からない
診断
「長引くコロナ」には、これ一つで分かる決まった検査はありません。まず医師が、いつ感染したか、どんな症状がいつからどれくらい続いているかをくわしく聞き取ります。そのうえで、貧血や甲状腺の病気、心臓や肺の病気など、似た症状が出る別の原因がないかを確かめていきます。つまり、症状の経過を丁寧にたどりながら、他の病気を一つずつ除外していく形になります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(貧血、炎症、甲状腺の働きなどを確認)
- 胸部レントゲン検査
- 心電図検査
- 肺機能検査(息切れの原因を調べる)
- 症状に応じて、胸部CT検査や心臓の超音波検査
- 必要に応じて、専門の診療科(呼吸器、循環器、神経、精神科など)の診察
診察で予想されること
すべての人に全ての検査が必要なわけではありません。症状に合わせて必要な検査が選ばれます。診察は1回で終わらず、何度か通いながら症状の変化を見ていくこともあります。受診の前に、症状が出た日や時間帯、何をすると悪化するかを簡単にメモしておくと、話がスムーズに進みます。
治療
今のところ、「これをすれば必ず治る」という特効薬はありません。治療の中心は、出ている症状を一つずつやわらげることと、体に無理をさせずに少しずつ活動を取り戻していくことです。あせらず、回復のペースに合わせて進めることが大切です。
自宅でのセルフケア
- ペース配分(活動と休憩をこまめに分ける)を意識する。疲れてから休むのではなく、疲れる前に休む
- 症状日記をつけ、どんなときに悪くなるかを記録する
- 睡眠のリズムを整える。決まった時間に起き、昼寝は短めにする
- 水分をこまめにとり、栄養のバランスを意識する
- 一度に多くの用事をこなさない。優先順位を決めて、家族や周りの人に頼る
- 回復に合わせて、少しずつ活動量を増やす(急に増やさない)
- 喫煙を避け、アルコールは控えめにする
- 体調が悪い日は無理をせず、回復を優先する
医療治療
症状に合わせたケアを組み合わせていきます。だるさや息切れが強い場合には、無理のない範囲で体を動かしていくリハビリテーション的な支援が行われます。せき、痛み、眠りの問題、気分の落ち込みなどには、それぞれの症状に応じた対応や相談が行われます。必要に応じて専門の診療科と連携したり、複数の職種がチームで支えたりする場合もあります。どのような方針が合うかは症状や体調によって変わるため、具体的な治療については必ず医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
「長引くコロナ」そのものに対して手術が必要になることは通常ありません。ただし、別の病気が見つかった場合には、その病気に応じた対応が検討されます。
この病気と共に生きる
長引く症状があるときは、「今日は調子が良いからと張り切りすぎない」ことが大切です。活動と休息を小刻みに組み合わせ、体の声を聞きながら一日の予定を組み立ててみてください。予定を詰め込みすぎた日は、翌日にしっかり休むなど、調整する日を作るのも一つの方法です。周りの人に自分の状態を伝えておくと、頼りやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 活動と休息のリズムを一定に保つ
- 睡眠時間を確保し、寝る前のスマートフォンやカフェインを控える
- 無理のない範囲で、日中の軽い散歩やストレッチを取り入れる
- 体調の記録をつけ、悪化のきっかけを把握する
- 仕事や学校とは、負担を減らす相談を早めにする
- ストレスをためこまず、話せる相手や相談先を持つ
食事と運動
食事は、たんぱく質・野菜・主食をバランスよくとり、水分をこまめにとることが基本です。食欲がないときは、一度にたくさんではなく、回数を分けて食べるとよいでしょう。運動は、息が上がりすぎない程度の軽い活動から始め、翌日に疲れが残らない範囲にとどめるのが安心です。調子が良い日に一気に運動するより、少しずつ続けるほうが体には優しい方法です。どの程度動いてよいか迷うときは、医師やリハビリの専門職に相談してください。
精神的健康と心の健康
長引く症状は、体だけでなく気持ちにも大きな負担をかけます。「なぜ治らないのか」「周りに理解してもらえない」という不安や、将来への心配、気分の落ち込みが起こることは少なくありません。これは弱さではなく、つらい状態が続くときの自然な反応です。ひとりで抱えこまず、家族や友人、かかりつけ医、地域の相談窓口に話してみてください。もし、自分を傷つけたい気持ちや消えてしまいたい気持ちが浮かんだとき、気持ちが追い詰められて眠れないときは、すぐに地域の相談窓口や医療機関に連絡し、緊急の場合は119番に助けを求めてください。
予防
感染そのものを完全に防ぐことは難しいですが、できることはあります。ワクチン接種、換気の良い環境づくり、手洗い、体調が悪いときは無理に出かけないこと、そして感染してしまったときはしっかり休んで回復を優先することが大切です。感染中の無理は、その後の回復を遅らせる可能性があります。
ワクチン
日本では、厚生労働省の方針に基づいて、お住まいの自治体がワクチン接種の案内を行っています。対象になる人や接種の時期は年度によって変わるため、自治体の案内やかかりつけ医に確認してください。ワクチンは、感染したときの重症化を防ぐ効果が確認されています。さらに、接種を受けた人では「長引くコロナ」のリスクが低いという報告も複数あります。一方で、効果の大きさについてはまだ研究が続いており、接種しても長引く症状が起こることはあります。接種を受けるかどうかは、年齢、持病、これまでの感染歴などをふまえて、医療者と相談しながら決めるとよいでしょう。
検診プログラム
「長引くコロナ」を早期に見つけるための、決まったスクリーニング検査はありません。感染後に気になる症状が続くときは、検査の有無にかかわらず、早めに医療機関に相談することが大切です。
合併症
治療しない場合
- だるさや息切れが長引き、仕事・学業・家事などの日常生活に支障が出る
- 体力や筋力が落ち、動ける範囲が狭くなる
- 眠れない日が続き、疲れが取れにくくなる
- 気分の落ち込みや不安が強まり、社会生活がつらくなる
- もともとの持病が悪化する
- 人とのつながりが減り、孤立感が強まる
長期的な見通し
「長引くコロナ」は、多くの人にとって時間とともに少しずつ良くなっていくことが報告されています。回復の速さは人それぞれで、波のように良くなったり悪くなったりしながら進むこともあります。今はまだ分かっていないことも多い分野ですが、研究は世界中で進んでおり、支援の形も広がっています。あせらず、自分のペースで、必要な助けを借りながら進んでいくことが大切です。
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最終更新: 2026年10月22日
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