周期性嘔吐症候群(しゅうきせいおうとしょうこうぐん)
概要
周期性嘔吐症候群は、何もなかったように元気な時期が続いたあと、突然はげしい吐き気と嘔吐の発作が繰り返し起こる病気です。発作は数時間から数日続くことがあり、おさまるとまた普段どおりに戻るのが特徴です。「食べ物にあたった」「胃腸炎」と言われても、同じような発作が何度も繰り返す場合は、この病気が隠れていることがあります。
重要な事実
- 発作は「突然始まり、数時間〜数日続き、すっかり良くなる」という同じようなパターンで繰り返すことが多いです。
- 発作のない間は、多くはふだんどおり元気に過ごせます。
- 吐き続けることで水分が体から失われやすいため、脱水(体の水分が足りなくなること)に注意が必要です。
- 特別な検査で「はい、これです」と一度で分かる病気ではなく、症状の経過をよく聞いて他の病気を除きながら診断します。
子どもではそれほどめずらしくない病気で、繰り返す嘔吐の原因のひとつとして知られています。大人では比较少なく、本人も周囲も「胃腸の弱さ」と思って長く気づかれないこともあります。
主に就学前から学童期の子どもに多くみられますが、思春期や大人になってから発症する人もいます。片頭痛(ずきずきする頭痛)のある人や、その家族歴がある人に多い傾向があります。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応がにぶい、ぐったりして起こせない
- けいれんが起きた
- 呼吸が苦しそう、息が浅い、唇が青白い
- 嘔吐物に血が混じっている(コーヒー色・黒っぽいものを含む)
- はげしい頭痛や首のこわばり、何度も繰り返す嘔吐とあわせて様子が明らかにおかしい
- 真夏や寒い時期を問わず、水分がとれずおしっこが長時間出ないうえに反応がにぶい
- ⚠嘔吐が半日以上続き、水分を受けつけない
- ⚠おしっこの量が目に見えて減っている、口の中が乾いている、涙が出ない
- ⚠ぐったりしている、立てない、ふらつく
- ⚠発熱をともなう
- ⚠おなかの痛みがどんどん強くなっている
- ⚠体重が減り続けている
一般的な症状
- 突然始まるはげしい吐き気と、何度も続く嘔吐
- おなかの痛み(へその周りや胃のあたり)
- 顔色が青白くなる、冷汗が出る
- 食欲がなくなる、よだれが増える
- 頭痛、光や音がつらく感じる
- 発作の前に「なんだか変だな」という前兆(吐き気、あくび、顔色の変化など)を感じることがある
- 発作がおさまると、けろりと元気になる
子供の症状
- 発作の間はぐったりして、水分もとれないことが多いです
- 繰り返し吐くため、おしっこの量が減る・口の中が乾くなど脱水のサインが出やすいです
- 子どもは症状をうまく言葉にできないことがあるので、顔色・元気のなさ・おしっこの回数を見てあげてください
- 発作のあとはケロッとしているのに、また数週間後に同じ発作が起こる、という経過をたどることがあります
高齢者の症状
- 大人では腹痛が強く出たり、嘔吐が長引いたりすることがあります
- 年齢とともに脱水が進みやすく、ふらつき・だるさ・尿の減少が出やすいです
- 繰り返す発作で食事がとれず、体重が減ってしまうことがあります
- 仕事や家事を休まざるを得なくなり、生活への影響が大きくなりやすいです
原因
主な原因
- はっきりした原因はまだ解明されていませんが、脳と消化管のやりとり(脳腸相関)が関係していると考えられています。
- ストレス、感染症、睡眠不足、疲れ、特定の食べ物、月経、乗り物酔いなどが「引き金」になることがあります。
- 大人では、ある種の嗜好品(大麻など)が関係していると言われることがあります。
- 片頭痛との関連が指摘されており、家族に片頭痛の人が多い傾向があります。
- 体質(遺伝的な背景)が関わっている可能性も指摘されています。
リスク要因
- 子ども(特に就学前〜学童期)
- 本人または家族に片頭痛がある
- 乗り物酔いをしやすい
- ストレスが多い時期、睡眠不足、生活リズムの乱れ
- 感染症にかかったあと
- 月経のある人では、生理の時期に発作が出やすいことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 嘔吐が長引いて水分がとれず、脱水が心配されるとき
- ぐったりして元気がない、意識がはっきりしないとき
- 嘔吐物に血が混じるとき、はげしい腹痛があるとき
- 発熱をともなうとき
定期受診を予約すべき場合:
- 同じような嘔吐の発作がこれまでに何度も繰り返している
- 発作のたびに学校や仕事を休むことになる
- 発作の前に決まった前兆がある
- 体重が減ってきた、食欲が戻りにくい
- 「胃腸炎」と言われることが多いが、毎回同じパターンで繰り返す
診断
診断の中心は、症状の「経過」をくわしく聞くことです。どんなふうに始まり、どれくらい続き、発作のない間はどんな様子か、同じパターンで繰り返しているかを確認します。そのうえで、嘔吐の原因になる他の病気(胃腸炎、胃や腸の病気、頭の中の病気、代謝の病気など)がないかを調べます。
行われる可能性のある検査
- 問診(発作の記録、家族歴、服薬や生活の様子の確認)
- 血液検査・尿検査(脱水や電解質のバランス、他の病気の手がかりを調べる)
- 腹部の超音波(エコー)検査
- 必要に応じて、腹部の画像検査や内視鏡検査
- 症状によっては頭部の画像検査
- 発作時の脱水の程度をみる検査
診察で予想されること
一度の受診ですぐに診断がつくとは限らず、何度かの受診と経過の記録で見えてくることがあります。検査で「異常なし」と言われても、それは安心材料のひとつです。発作の記録をつけておくと、診断の助けになります。
治療
治療は大きく3つに分かれます。①発作が起きたときに、つらさをやわらげ脱水を防ぐ、②発作を起こしにくくするために生活のリズムや引き金を整える、③発作を繰り返す場合に、医師と相談しながら予防の治療を考える、という流れです。
自宅でのセルフケア
- 発作のときは、静かで少し暗い部屋で横になって休む
- 水分は一度にたくさんではなく、少量ずつこまめに口に含む
- 発作のきっかけ(食べ物、睡眠不足、ストレス、生理など)を記録しておく
- 発作の始まり・終わり・続いた時間をメモしておくと受診時に役立ちます
- 発作のあとは無理に食事を戻さず、体調に合わせて少しずつ再開する
医療治療
発作のときは、脱水を防ぐための点滴や、吐き気・痛みをやわらげる対応が中心になります。発作を繰り返す場合は、生活リズムの調整に加えて、医師の判断で発作を予防するための治療が検討されることがあります。どの治療が合うかは人によって違うため、自己判断で市販薬を重ねたりせず、かかりつけ医や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
通常、この病気で手術が必要になることはありません。ただし、別の病気が隠れていないかを調べるために検査が行われることがあります。
この病気と共に生きる
発作のない時期を、いかに穏やかに過ごせるかが大切です。発作が来たときに慌てないよう、家や学校・職場で「こうなったらこうする」という備えを決めておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 毎日の睡眠時間をそろえ、生活のリズムをできるだけ崩さない
- 食事は決まった時間に、無理のない量で
- ストレスをためこまないよう、息抜きの時間を意識してつくる
- 乗り物酔いしやすい人は、移動時の工夫(席の選び方、休憩)をしておく
- 発作の記録を続け、パターンが見えたら医師と共有する
- 学校や職場には、発作のときの対応をあらかじめ伝えておく
食事と運動
食事は、発作のあとは消化のよいものを少量ずつから始めると負担が少ないです。特定の食べ物で発作が出やすいと感じる場合は、記録をもとに医師と相談しながら調整しましょう。激しい運動は脱水を招くことがあるため、発作のあとは無理をせず、ふだんは軽い散歩など体調に合った運動を続けると生活のリズムづくりに役立ちます。
精神的健康と心の健康
繰り返す発作は、本人にも家族にも大きな不安になります。「また起きたらどうしよう」という気持ちは自然なものです。発作そのものだけでなく、不安や疲れも体調に影響することがあります。ひとりで抱えこまず、かかりつけ医や学校の先生、地域の相談窓口に話してみてください。気持ちがつらくて眠れない、涙が止まらないといった状態が続くときは、医療機関に相談しましょう。緊急に助けが必要なときは119番へ連絡してください。
予防
完全に防ぐことは難しい病気ですが、引き金になるものを知って避けることで、発作の回数を減らせることがあります。睡眠・食事・ストレス管理などの生活リズムを整えることが基本です。
検診プログラム
特別なスクリーニング検査があるわけではありません。片頭痛の家族歴がある場合や、繰り返す嘔吐がある場合は、かかりつけ医に相談してみてください。
合併症
治療しない場合
- 脱水(体の水分が足りなくなること)
- 電解質のバランスの乱れ(体の中のミネラルのバランスが崩れること)
- 食欲が落ちて体重が減る
- 学校や仕事を休むことが増え、生活のリズムが乱れる
- 不安や落ちこみなど、心の負担が大きくなる
長期的な見通し
周期性嘔吐症候群は、多くの人にとって長く付き合っていく病気ですが、決して絶望的なものではありません。子どもの場合は成長とともに発作が軽くなったり、起こりにくくなったりすることが多いとされています。大人でも、生活の工夫と医師との相談で発作をコントロールしている人がたくさんいます。あせらず、一歩ずつ整えていきましょう。
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最終更新: 2026年10月22日
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