サイトカインストーム(サイトカイン放出症候群)
概要
サイトカインストームは、体の免疫(体を守る仕組み)が過剰に反応してしまう状態です。免疫細胞はふだん、サイトカインという「信号物質」を出し合って病原体と戦います。ところが何らかのきっかけでこの信号が一気に大量に出て、止まらなくなると、体じゅうで強い炎症(熱や腫れ、痛みを起こす反応)が広がります。その結果、発熱や呼吸の苦しさ、血圧の低下などが起こり、いくつかの臓器に負担がかかることがあります。まれな状態ですが、早期に見つけて手当てすることが大切です。
重要な事実
- 免疫の働きが暴走し、体のあちこちで強い炎症が起こる状態です。感染症そのものではなく、体の反応のしかたの問題です。
- 重症の感染症や、免疫の働きを強く刺激する治療のあとなど、特定の状況で起こることが多いです。
- 早期に気づいて医療機関で手当てをすれば、回復できる方が多い状態です。
とてもよくある状態ではありません。多くの人にとってはまれで、特定の病気や治療の経過中に起こるものとして知られています。ふつうの風邪や軽い感染症で起こることはほとんどありません。
年齢を問わず起こる可能性はありますが、多くは「重症の感染症にかかっている人」「免疫の働きを刺激する治療を受けている人」「もともと免疫の病気がある人」などの状況で報告されています。小さな子どもでは、遺伝的な体質が関係するタイプが見つかることもあります。
症状
- 呼吸が苦しい、息ができない、唇や顔色が青白い
- 意識がない、呼びかけに反応が乏しい、けいれんが起きた
- 急に倒れた、立てない、血圧がとても低いと言われた
- 胸が強く痛む
- 皮膚がまだらに白っぽい、手足がとても冷たい
- ⚠高い熱が続き、どんどん具合が悪くなる
- ⚠発疹が広がる、顔やのどが腫れてきた
- ⚠尿がほとんど出ない、水分がとれない
- ⚠強いおなかの痛み、繰り返す嘔吐
- ⚠治療中に発熱や悪寒が出た(特に免疫の治療を受けている場合)
一般的な症状
- 高い熱が続く(38度以上が何日も続くなど)
- 強いだるさ、ぐったりした感じ
- 息苦しさ、呼吸が速くなる
- 手足が冷たく感じる、めまい、立ちくらみ(血圧が下がっているサインのことがあります)
- 皮膚の発疹、赤み、腫れ
- 頭がぼんやりする、集中できない、会話がかみ合わない
- 吐き気、おなかの痛み、下痢
- 尿の量が減る
子供の症状
- 長く続く高い熱
- 発疹や皮膚の赤み
- 不機嫌、ぐったりして元気がない
- 母乳やミルクを飲まない、食事がとれない
- リンパ節(首やわきのしこり)の腫れ
- 呼吸が速い、息苦しそう
高齢者の症状
- 熱が目立たないことがある一方で、急に元気がなくなる
- 意識がぼんやりする、話がかみ合わない
- 立ち上がれない、歩けないなど急な体力低下
- 血圧が下がりやすい
- 尿の量が減る、水分がとれない
原因
主な原因
- 重症の感染症(ウイルスや細菌によるものなど)
- 免疫の働きを強く刺激する治療のあと(医師の管理下で起こることがあり、あらかじめ注意して観察されます)
- 自己免疫疾患や、免疫の調整がうまくいかない病気の急な悪化
- 特定の薬に対する強い反応
- 遺伝的な体質が関係するタイプ(主に小児で見つかることがあります)
リスク要因
- 重症の感染症にかかっている
- 免疫の働きを刺激する治療を受けている
- もともと免疫や炎症に関係する病気がある
- 生まれつき免疫の調整に関わる体質がある
- 治療の内容や体調によっては、医療者がとくに注意して観察する必要がある場合
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 呼吸が苦しい、息が速い、話すのがつらい
- 意識がぼんやりする、反応がおかしい
- 高い熱と発疹が同時に出て、どんどん悪くなる
- 尿が出ない、水分がとれない
- 免疫の治療中やその後に発熱・悪寒が出た
定期受診を予約すべき場合:
- 数日続く発熱やだるさがあり、よくならない
- 皮膚の発疹や腫れが気になる
- 治療の副作用かもしれないと感じる(自己判断で治療をやめず、まず主治医に連絡してください)
- 回復したあとも疲れやすさが続く
診断
サイトカインストームを決める単独の検査はありません。医師は、症状の経過、体の診察、血液検査や画像検査の結果を組み合わせて総合的に判断します。重症の感染症や免疫の治療中は、医療者が意識して観察しているため、変化に早く気づけることが多いです。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(炎症の程度や血球の数、肝臓・腎臓の働きなどを調べます)
- 血液中の酸素の量を測る検査(パルスオキシメーターなど)
- 胸部のレントゲンやCTなどの画像検査
- 血圧・脈・呼吸数の確認
- 原因となる感染症を探すための検査
診察で予想されること
検査は何度か繰り返し行われ、時間の経過とともに状態がどう変わるかを見ることが大切になります。入院して観察が必要になることもあります。検査の意味や結果については、その場で医療者にたずねてください。
治療
治療の中心は、体の状態を支えながら、過剰な炎症とその原因に働きかけることです。多くは病院での管理が必要になります。どの治療を選ぶかは、原因や症状の重さ、年齢や持病などをふまえて医師が判断します。
自宅でのセルフケア
- 医療者の指示を守り、自己判断で治療を中断しない
- 水分をこまめにとる(指示がある場合はそれに従う)
- 安静を保ち、回復期は無理をしない
- 体調の変化(熱、息苦しさ、尿の量、意識の状態)を家族と共有する
- 気になる症状は早めに医療者に伝える
医療治療
治療は大きく分けて、(1) 呼吸や血圧、水分・栄養など体の状態を支えるケア、(2) 炎症や免疫の働きを抑える治療、(3) 原因となっている感染症や病気に対する治療、の3つを組み合わせて行われます。炎症を抑える治療には、免疫の働きに働きかける薬が使われることがありますが、内容や使い方は医師が状態を見ながら決めます。具体的な薬の種類や量については、担当の医師・薬剤師にご確認ください。
手術が検討される場合
サイトカインストームそのものに対して手術が行われることは通常ありません。ただし、原因となる病気や合併症によっては、別の治療や処置が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
回復には時間がかかることがあり、退院後も疲れやすさが続くことがあります。体調を記録しながら、少しずつ日常の活動を戻していくのがよい方法です。通院の予定は忘れずに守りましょう。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠を十分にとり、無理のない範囲で活動を増やす
- 手洗い・換気・人混みを避けるなど、感染症の予防を心がける
- 決められた通院と検査を続ける
- 体調の変化をメモに残し、受診時に伝える
- 喫煙をしている場合は、禁煙について医療者に相談する
食事と運動
回復期は、バランスのよい食事と十分な水分が大切です。運動は、息苦しさや強い疲れを感じない範囲で、散歩など軽いものから始めましょう。どの程度まで動いてよいかは、主治医に確認すると安心です。
精神的健康と心の健康
急な入院や集中治療は、不安やこわさ、眠れない日々につながることがあります。退院後も「また起こるのでは」という心配が続く方もいます。そうした気持ちは自然なことであり、一人で抱えずに医療者や家族に話してください。つらさが強いときは、こころの相談窓口やかかりつけ医に相談することが助けになります。
予防
サイトカインストームそのものを完全に防ぐ方法はありませんが、原因となる感染症や病気を早めに治療すること、免疫に関わる治療中は医療者の指示に従って体調の変化を伝えることが、リスクを下げる助けになります。
ワクチン
ワクチンは、重症の感染症を防ぐ助けになります。日本では厚生労働省が定期接種などの方針を示しています。自分や家族に必要なワクチンについては、かかりつけ医や自治体の案内でご確認ください。
検診プログラム
サイトカインストームだけを目的とした一般的な検診はありません。ただし、免疫の治療中や重症の感染症の治療中は、医療者が定期的に血液検査やバイタルサイン(体温・血圧・呼吸など)を確認することで、変化を早く見つけられます。
合併症
治療しない場合
- 呼吸不全(酸素がうまく取り込めなくなる状態)
- 血圧の低下による臓器への負担
- 腎臓や肝臓、心臓など複数の臓器の機能低下
- 血液の凝固の異常
- 集中治療が必要になるほど状態が重くなること
長期的な見通し
サイトカインストームは重い状態になりうる一方で、早期に気づいて適切なケアを受ければ回復される方は多くいます。医療の進歩により、見つけ方も治療の選択肢も増えてきました。不安が大きいときは、主治医に今の状態と見通しを具体的にたずねてみてください。
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最終更新: 2026年10月22日
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