デートレイプ(知っている人・交際相手による性暴力)
概要
デートレイプとは、デートの相手や交際相手、友人、同僚など、あなたが知っている人のなかから、同意なく性行為を強要されることをいいます。相手が「恋人だから」「お酒を飲んでいたから」といった理由であっても、あなたが望んでいない性行為はすべて性暴力であり、犯罪です。飲み物に薬をこっそり入れられて意識がぼんやりしてしまうケースもあります。どんな状況でも、被害にあったあなたに落ち度はありません。
重要な事実
- 性暴力の多くは、まったく知らない人よりも、知っている人・信頼していた人によって行われます。
- お酒を飲んでいた、断らなかった、抵抗できなかった——これは「同意した」ことにはなりません。恐怖で体が動かなくなるのは自然な反応です。
- 日本でも2023年の法改正により、同意のない性行為は「不同意性交等罪」などとして罰せられる犯罪です。
警察や支援機関に寄せられる相談は年々増えていますが、恥ずかしさや恐怖、自責の気持ちから誰にも話せずにいる人が多いと考えられており、実際の件数はもっと多いとみられています。ですから「自分だけが特別おかしい」と感じる必要はありません。
年齢や性別を問わず、誰にでも起こりえます。10代から20代の女性に多いとされていますが、男性、性的マイノリティの人、子ども、高齢者も被害にあうことがあります。
症状
- 意識がない、または深くぼんやりしていて呼びかけに反応が弱い(119番)
- 呼吸がおかしい、けいれんしている、唇が青い(119番)
- 多量の出血がある、激しい痛みがある(119番)
- 今まさに暴行を受けている、または直後で身の危険を感じる(110番)
- 自殺を考えてしまい、自分を守ることが難しいと感じる(119番、または緊急の相談窓口へ)
- ⚠性行為を強要された直後(数日以内、できれば72時間以内)
- ⚠外傷がある、痛みが続く、出血がある
- ⚠飲み物に薬を入れられた可能性がある(眠気、ふらつき、記憶の抜け)
- ⚠望まない妊娠や性感染症が心配
- ⚠眠れない、恐怖が強くて日常生活が保てない
一般的な症状
- 体の痛み、あざ、切り傷、性器からの出血や違和感
- 翌朝に記憶がない、時間が飛んでいる、気づいたら知らない場所にいた
- フラッシュバック(被害の場面が突然よみがえる)、悪夢、不眠
- 強い恐怖、不安、涙が止まらない、気持ちが麻痺したように感じる
- 「自分が悪い」「もっと抵抗できたはず」という強い自責の念
- 人と会うのが怖い、誰も信じられない、ひとりでいるほうが安心する
- 食欲がない、集中できない、学校や仕事に行けない
- 性感染症の症状(おりものの変化、排尿時の痛み、発疹など)や、生理が来ない
子供の症状
- 言葉にできない体の痛みや不調を訴える
- 急に赤ちゃん返りをする、夜尿が戻る、夜泣きが増える
- これまで好きだった遊びや友だちを避ける、学校に行きたがらない
- 特定の人や場所を極端に怖がる
- 性に関する年齢不相応な知識や言動が見られる
- 無気力、ぼんやりする、感情の起伏が大きくなる
高齢者の症状
- 説明のつかないあざやけが、下着の汚れ
- 急に引きこもる、人を避ける、会話が減る
- 不眠、不安、落ち着かない様子が増える
- 性感染症の症状や、原因のわからない体調不良
- 介護者や親族など、身近な人による被害が隠れていることがある
原因
主な原因
- 加害者が相手の意思を無視して性行為に及ぶこと。原因は加害者にあり、被害者ではありません。
- 「付き合っていれば当然」「誘ったのだから応じるべき」といった誤った思い込みや、同意についての誤解
- お酒や薬を使って相手の判断や抵抗を奪う行為
- 暴力や脅し、立場の強さを利用した支配
- 「ノー」と言えない空気をつくる社会的な考え方や偏見
リスク要因
- お酒を飲む場、特に飲み物から目を離す状況
- 二人きりの密室、人の少ない場所、移動の途中
- 初対面や付き合い始めで、相手のことをよく知らない段階
- 一人暮らしを始めたばかり、進学・就職で新しい環境に移った直後
- 過去に性暴力や虐待を受けた経験がある
- 周囲から孤立し、助けを求めにくい状況
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 性行為を強要された直後、または数日以内(緊急の対応が可能な時間には限りがあります)
- けが、出血、強い痛みがある
- 薬を飲まされた疑いがある
- 望まない妊娠や性感染症が心配なとき
- 強い不安、不眠、自殺を考えてしまうとき
定期受診を予約すべき場合:
- 被害から数週間〜数年たっていて、つらさが続いている
- フラッシュバック、悪夢、眠れない日が続く
- 性感染症の検査を受けたい(時期によっては再検査が必要なことがあります)
- 人との関係がうまく築けない、気持ちが落ち込む
- 妊娠や体調について確認したい
診断
医師や支援員は、まずあなたの安全と気持ちを確かめるところから始めます。話したい範囲だけを話し、同意したうえで診察が行われます。警察への届け出はあなたの意思が尊重され、すぐに決めなくてもかまいません。自治体のワンストップ支援センターでは、医療・心理・法律の相談を一か所で受けることができます。
行われる可能性のある検査
- 診察による外傷や痛みの確認(同意を得て、必要な範囲だけ行います)
- 性感染症の検査(血液検査、尿検査、分泌物の検査など)
- 妊娠の検査
- 必要に応じた薬物検査(時間がたつと検出が難しくなります)
- こころの状態を確認する聞き取りや質問票
診察で予想されること
診察はあなたのペースで進みます。途中でやめたいと言ってもかまいませんし、信頼できる人に一緒に来てもらうこともできます。記録や診断書をどう扱うか、誰に伝えるかについても説明を受けられます。つらい気持ちがわいてきたら、その場で休むこともできます。
治療
ケアは「体」と「こころ」の両方から行われます。時間が大切な対応(望まない妊娠を防ぐための対応や性感染症の予防)と、ゆっくり時間をかけて進めるこころの回復があります。どちらも、あなたの意思と同意を大切にしながら進められます。
自宅でのセルフケア
- まず安全で安心できる場所に身を置き、ひとりで抱え込まないようにする
- 信頼できる人に「話を聞いてほしい」と伝えてみる(全部を話さなくて大丈夫です)
- 日時、場所、できごと、体調の変化をメモに残しておく(後で役立つことがあります)
- 眠れないときは無理に寝ようとせず、明かりを落として静かに休む
- お酒や市販の睡眠薬などに頼りたくなる気持ちがわいたら、医療者に相談する
- 「自分が悪い」と考えてしまったときは、その考えを一人で抱えず、支援者に話す
医療治療
医療機関では、けがの治療、望まない妊娠を防ぐための対応、性感染症の検査と予防のための対応が行われます。こころの面では、専門家によるカウンセリングや、トラウマ(心の傷)に焦点をあてた心理療法が用いられることがあります。不安や不眠が強い場合には、精神科・心療内科で相談しながら、その人に合った方法でケアを進めます。治療の方針は必ずあなたと相談して決められます。
手術が検討される場合
大きなけがや、対応が遅れてしまった場合の処置などで、外科的な治療が必要になることがあります。必要かどうかは診察で判断されます。
この病気と共に生きる
回復はまっすぐに進むものではなく、良い日とつらい日を行き来しながら少しずつ進みます。今日は起きられた、誰かにメッセージを送れた——そんな小さな一歩で十分です。つらい記憶がよみがえるときは、安全な場所でゆっくり呼吸し、五感で今ここを確かめる(足の裏の感覚、手に触れるものの温度など)方法が助けになることがあります。
生活習慣のアドバイス
- 生活のリズムを整え、できる範囲で決まった時間に休む
- 安心できる人とのつながりを、無理のない頻度で保つ
- 自分のペースを守れるよう、予定を詰め込みすぎない
- つらい気持ちを書き出す、絵を描くなど、言葉以外の方法も試してみる
- 回復を急がせようとする言葉からは距離を置いてよい
- 大切な判断(引っ越し、転職など)は、体調が落ち着いてから考える
食事と運動
特別な食事疗法があるわけではありません。食べられるものを、食べられる量だけ摂ることが大切です。軽い散歩やストレッチなど、体を無理なく動かすことは、気分や睡眠の安定に役立つことがあります。つらい日は休むことも、立派なセルフケアです。
精神的健康と心の健康
性暴力のあとには、心の傷からPTSD(心的外傷後ストレス障害)、うつ、不安、解離(現実から切り離されたように感じる)、自傷、自殺を考えてしまうことがあります。これは弱さではなく、つらい体験への自然な反応です。そして、適切な支援によって良くなることが分かっています。ひとりで抱えず、医療機関や相談窓口を頼ってください。
予防
残念ながら、被害を完全に防ぐ方法はありません。性暴力を起こすのは加害者であり、防げなかったことをあなたの責任にすることはできません。そのうえで、リスクを下げる工夫として、飲み物から目を離さない、開けた飲み物を渡されたら断る、友人と行動をともにし帰り道を確認しておく、初めて会う人とは人目のある場所で会う、といったことが挙げられます。また、周囲の人が「大丈夫?」と声をかけることや、同意について正しく知ることが、社会全体での予防につながります。
ワクチン
HPVワクチンは、性感染症の一部を予防するワクチンで、日本では公費で受けられる対象年齢が定められています。接種の時期や対象については、かかりつけ医やお住まいの自治体の案内で確認してください。
検診プログラム
性感染症の検査は、症状がなくても受けることができます。被害にあった後は、医療機関で検査の時期について相談してください。また、HPVワクチンとあわせて、子宮頸がん検診を年齢に応じて受けることが勧められています。
合併症
治療しない場合
- 望まない妊娠
- 性感染症(HIV、梅毒、クラミジアなど)の見逃しや悪化
- PTSD、うつ、不安障害などが長引く
- 睡眠や食欲の乱れ、体調不良が続く
- 人との関係を築くのが難しくなる、孤立が深まる
- 自傷や自殺のリスクが高まる
- 再び被害にあいやすくなる、加害を繰り返される
長期的な見通し
性暴力の傷は簡単には消えませんが、適切な医療と支援を受けることで、多くの人が少しずつ日常を取り戻していきます。回復の速さや形は人それぞれで、比べる必要はありません。助けを求めることは、回復への確かな一歩です。
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最終更新: 2026年10月22日
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