赤ちゃんを亡くしたとき
概要
大切な赤ちゃんを亡くす経験には、おなかの中にいるときに亡くなる場合、生まれてすぐの時期に亡くなる場合、生後1年未満で亡くなる場合があります。日本では、妊娠22週以降に亡くなることを「死産(しさん)」、生後1年未満で亡くなることを「乳児死亡」、22週より前を「流産(りゅうざん)」と呼びます。名前は違っても、ご家族が受ける悲しみの大きさは変わりません。そして多くの場合、お母さんやお父さんの何かの行動が原因ではありません。
重要な事実
- 亡くなった原因がはっきり分からないことも少なくなく、多くは誰かの不注意や失敗によるものではありません。
- 悲しみの感じ方やペースは人それぞれで、パートナーや家族の間で違ってもかまいません。
- 体の回復と心の回復は別々に進みます。どちらも時間がかかって当然です。
日本でも毎年多くのご家族が、赤ちゃんを亡くす経験をしています。決してめずらしいことではなく、あなただけが特別なわけではありません。同じ経験をした人は、あなたが思うより多くいます。
年齢、健康状態、初めてのお産かどうかに関わらず、どんなご家族にも起こりえます。悲しみはお母さんだけでなく、お父さん、きょうだい、祖父母、そして周りの大切な人たちにも広がります。
症状
- 赤ちゃんの呼吸がなく、心臓の動きが感じられず、呼びかけても反応がない → すぐに119番。救急隊の指示に従って心肺蘇生を行ってください。
- お母さんに大量の出血がある、意識がもうろうとしている、けいれんしている、息苦しい
- 自分を傷つけたい気持ち、死にたい気持ちが強くなったとき(一人にならず、119番や救急、身近な人を頼ってください)
- ⚠胎動が減った、または感じられない(すぐにかかりつけの産婦人科へ連絡してください)
- ⚠出血、破水、発熱、激しい腹痛
- ⚠強い頭痛、視界のちらつき、急なむくみ
- ⚠産後の急な発熱、悪臭のあるおりもの、おなかの強い痛み
- ⚠眠れない・食べられない・涙が止まらない状態が続き、日常生活が回らない
- ⚠赤ちゃんの世話や自分の体のことで強い不安やパニックがある
一般的な症状
- おなかの中の赤ちゃんの動き(胎動)が急に減った、または感じられなくなった
- 妊婦健診で、赤ちゃんの心臓の動きが確認できないと言われた
- 性器からの出血や、水のようなおりもの(破水)があった
- 生まれた赤ちゃんに呼吸や心臓の動きがなく、体が動かない、呼びかけに反応しない
- 赤ちゃんの体が冷たく、皮膚の色が青白い
- 亡くした後の親の心と体の反応:涙が止まらない、呆然とする、眠れない、赤ちゃんの声が聞こえる気がする、おなかが張る、母乳が出る、傷や痛みが続く
子供の症状
- きょうだいは年齢なりの理解で悲しみます。赤ちゃん返り(おねしょ、抱っこを求める)、かんしゃく、腹痛や頭痛などの体の不調が出ることがあります。
- 「赤ちゃんはどこに行ったの?」と何度も聞く、逆に赤ちゃんの話を避ける、静かになる、学校に行きたがらない、などの反応もあります。
- 「自分のせいだ」と思い込むことがあるため、あなたのせいではないと繰り返し伝えて安心させることが大切です。
高齢者の症状
- 祖父母も深く悲しみます。自分の子どもの悲しみと孫の死という二重の悲しみを抱えることになります。
- 睡眠や食欲が乱れ、血圧や持病の調子が崩れやすくなることがあります。
- 昔の経験を語りたがることがありますが、それは親の悲しみを軽く見ているのではなく、自分なりの支え方であることが多いです。
原因
主な原因
- 胎盤の異常(胎盤が早くはがれる、胎盤が正常な位置にないなど)
- へその緒の異常(へその緒が体に巻きつく、血流が途絶えるなど)
- 赤ちゃんの成長が途中で止まる(胎児発育不全)
- 赤ちゃんの先天的な病気や染色体の変化
- 妊娠中の感染症(母子感染)
- お母さんの病気(妊娠高血圧症候群、糖尿病など)
- 早産や低出生体重に伴う合併症(生後の死亡の場合)
- 乳幼児突然死症候群(SIDS:睡眠中に亡くなる、原因不明のもの)
- 事故(窒息、溺水など)によるもの(まれです)
- はっきりした原因が見つからないことも少なくありません
リスク要因
- 以前に妊娠中や出産で赤ちゃんを亡くした経験がある
- 高血圧、糖尿病、肥満、甲状腺の病気などの持病がある
- 35歳以上での妊娠(リスクは少し上がりますが、多くは問題なく経過します)
- 双子や三つ子などの多胎妊娠
- 喫煙、飲酒、薬物の使用
- 妊娠中の感染症
- 早産の経験がある、子宮の形に異常がある
- 赤ちゃんの睡眠環境(柔らかい寝具、うつぶせ寝、大人と同じ布団、暖めすぎ)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胎動の変化に気づいたとき(迷ったらすぐ産婦人科に電話してください)
- 出血、破水、発熱、激しい腹痛があるとき
- 生まれた赤ちゃんの呼吸が弱い、顔色が悪い、反応が弱いと感じたとき(119番または救急へ)
- 産後の大量出血や発熱があるとき
- 自分を傷つけたい気持ちがわいたとき
定期受診を予約すべき場合:
- 退院の前後で、体の回復(出血、傷の痛み、母乳の張り)について相談したいとき
- 母乳が張ってつらいとき(対処の方法は助産師に相談できます)
- 次の妊娠を考え始めたとき、または妊娠への不安が強いとき
- 気分の落ち込みや眠れない状態が続くとき
- きょうだいの様子が気になるとき
- 検査の結果や、亡くなった理由についてもう一度説明を聞きたいとき
診断
赤ちゃんが亡くなったことは、超音波検査などで確認します。そのうえで、なぜ起こったのかをできるだけ知るために、お母さんの血液検査、胎盤やへその緒の検査、赤ちゃんの体の診察などが行われます。ご家族の同意があれば、病理解剖(体を調べて原因を探す検査)や遺伝の検査を行うこともあります。乳幼児突然死症候群(SIDS)が疑われる場合は、そのときの状況を詳しく聞き取る調査が行われます。原因が分からないことも多いことを、あらかじめ知っておくと心の準備がしやすいかもしれません。
行われる可能性のある検査
- 超音波検査(赤ちゃんの心臓の動きや成長の確認)
- 血液検査(感染症、貧血、血糖、血圧に関わる項目など)
- 胎盤とへその緒の検査
- 赤ちゃんの体の診察、必要に応じて画像検査
- ご家族の同意による病理解剖(剖検)や遺伝学的検査
- 次回の妊娠に向けた検査(子宮の状態、血液の固まりやすさなど)
診察で予想されること
検査は一度で終わらず、結果が出るまで数週間から数か月かかることもあります。結果を聞くときは、パートナーや信頼できる人と一緒に行くと安心です。聞きたいことをメモしておき、分からないことは何度でも質問してください。結果を聞いてつらくなったときは、その場で「少し時間をください」と伝えてよいのです。
治療
亡くなった赤ちゃんを生き返らせる治療はありません。ケアの中心は、お母さんの体の安全を守ること、赤ちゃんと過ごす時間を支えること、そしてご家族の心を支えることです。いくつか選べることもありますので、急がされずに相談して決めてよいのです。
自宅でのセルフケア
- 食べられるときに、少しずつでかまいませんので口にする。水分も忘れずに。
- 眠れるときに横になる。昼間に眠ってしまっても大丈夫です。
- 入浴やシャワーは医師の指示に従う。
- 母乳が張ってつらいときは、自己流で強く絞らず、助産師や看護師に相談する。
- 悲しみを我慢せず、泣きたいときに泣く。
- 日記や赤ちゃんへの手紙を書く、名前を呼ぶ、写真や小さな持ち物を残すなど、思い出を形にする。
- 赤ちゃん関連の情報がつらいときは、SNSやニュースを無理に見ない。
- 引っ越し、仕事、次の妊娠などの大きな決断は、急がない。
医療治療
医療的なケアには、次のようなものがあります。①お母さんの体の回復を支えるケア(出血や感染を防ぐ、痛みを和らげる、母乳のケアなど)、②お産の方法と時期の相談(自然に待つか、陣痛を起こす処置が必要か、帝王切開が必要か)、③赤ちゃんと過ごす時間の支援(抱っこ、名前をつける、思い出を残すための協力)、④悲しみへの支援(専門の相談やカウンセリングの紹介)、⑤原因を調べる検査と結果の説明、⑥次の妊娠に向けた相談。薬の名前や量はここには書きませんので、必要な場合は担当の医師や薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
亡くなった赤ちゃんを外に出すお産では、多くの場合、陣痛を起こす処置が行われます。お母さんの体の状態や前回のお産の方法によっては、帝王切開が必要になることがあります。胎盤が早くはがれる、大量の出血がある、感染があるなど緊急の場合は、すぐに手術となることがあります。
この病気と共に生きる
悲しみは波のようにやってきます。予定日、月命日、赤ちゃんの誕生日、年末年始、母子手帳やエコー写真に触れたときなど、思いがけない瞬間に押し寄せることがあります。波が来たら、その場を離れて深呼吸する、窓を開けて外の空気を吸う、誰かに連絡するなど、自分なりの「しのぎ方」を少しずつ見つけていけば大丈夫です。
生活習慣のアドバイス
- できるだけ決まった時間に、少しでも食べて眠る。
- 散歩など、体が楽な範囲での軽い動きを取り入れる。
- アルコールに頼らない(気分の落ち込みが悪化しやすくなります)。
- 予定を詰め込みすぎず、断る練習をする。
- パートナーと気持ちを話す時間を意識して作る。悲しみ方は違ってよいものです。
- きょうだいには年齢に合った言葉で説明し、「あなたのせいではない」と繰り返し伝える。
- 記念日やお参りなど、赤ちゃんを思い出す時間を家族で決める。
食事と運動
特別な食事制限はありません。産後の回復のために、たんぱく質や鉄分、水分を意識して、食べられるものを少しずつ取るとよいでしょう。体調が許せば軽い散歩から始めてみてください。つらくて動けない日があっても、それは怠けているのではなく、心と体が回復の途中だからです。
精神的健康と心の健康
深い悲しみ、罪悪感、怒り、何も感じない感覚、赤ちゃんの声が聞こえる気がする、集中できない、眠れない、食欲がない——多くは悲しみへの自然な反応で、時間とともに波が少しずつ小さくなっていくことが多いものです。ただし、何週間も眠れない・食べられない状態が続く、日常生活が回らない、自分や赤ちゃんを傷つけたい気持ちがわくときは、一人で抱えず医療者に相談してください。つらい記憶がよみがえる、悪夢を見るといった状態が続く場合も相談の目安です。パートナーも同じように傷ついています。悲しみ方の違いでぶつかることもありますが、それは愛情の大きさの違いではありません。
予防
多くは防ぐことが難しく、原因が分からないことも少なくありません。ですから「あのときこうしていれば」と自分を責めないでください。できる範囲で意識したいことは、妊婦健診を定期的に受けること、胎動の変化に気づいたらすぐ連絡すること、禁煙、持病の管理、そして赤ちゃんを迎えた後の安全な睡眠環境を整えることです。
検診プログラム
妊婦健診は、赤ちゃんの成長やお母さんの体の変化を早く見つける助けになります。次回の妊娠を考えている方は、妊娠前からかかりつけの産婦人科で相談しておくと安心です。妊娠中や産後の心の状態についても、健診のときに遠慮なく話してみてください。
合併症
治療しない場合
- お母さんの体:出血が続く、感染(発熱や悪臭のあるおりもの)、貧血、母乳のトラブル
- 心:強い悲しみが長引き日常生活が難しくなる状態(遷延性悲嘆症)、うつ、不安、パニック、心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- 次の妊娠への強い不安や、妊娠中の緊張が続くこと
- パートナーとの関係の緊張、家族や友人との距離ができること
- 仕事や社会生活への影響(休職、集中できない、人に会いたくないなど)
長期的な見通し
悲しみが完全になくなることはないかもしれません。それでも多くの方が、赤ちゃんを心の中に大切に抱えながら、少しずつ日常を取り戻していきます。回復は一直線ではなく、よい日とつらい日を行き来しながら進みます。助けを求めることは、弱さではなく回復の一部です。あなたのペースで進んでよいのです。
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最終更新: 2026年10月22日
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