思春期が遅いかも?と思ったら(思春期遅延)
概要
思春期(ししゅんき)は、体が子どもから大人の体へと変わっていく時期です。ふつう、女の子は乳房がふくらみはじめ、男の子は精巣(睾丸)が大きくなりはじめることで始まります。思春期遅延(ししゅんきちえん)とは、この変化の始まりが平均より遅い状態をいいます。目安として、女の子は13歳ごろまでに乳房のふくらみが始まらない、男の子は14歳ごろまでに精巣が大きくならない場合に、そう呼ばれることがあります。ただし、これはあくまで目安で、体の成長の速さには大きな個人差があります。多くは体質による「晩熟(ばんじゅく)」で、あとから自然に追いつきます。
重要な事実
- 思春期の始まりが平均より遅い状態で、多くは体質による「晩熟」です。
- 家族にも同じように遅かった人がいることがよくあります。
- 病気や栄養不足など別の原因が隠れていることもあるため、気になるときは小児科に相談しましょう。
- 治療の中心は「見守る」こと。多くの子は自然に追いつきます。
めずらしいことではありません。体質的な遅れはよくみられ、特に男の子では比較的多いとされています。
主に小学生の高学年から中学生の子どもです。女の子は13歳ごろ、男の子は14歳ごろが一つの目安になります。
症状
- がまんできないほどの激しい頭痛、何度も繰り返す嘔吐、視野が欠けるなど、頭の病気を思わせる症状がある(すぐに119番へ)
- けいれんを起こした、意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応がおかしい(すぐに119番へ)
- 過度なダイエットや嘔吐が続き、水も飲めない、ぐったりしている(すぐに119番へ)
- ⚠数か月の間に体重が大きく減った、食事をほとんどとれない
- ⚠強いだるさ、めまい、立ちくらみが続く
- ⚠気分の落ち込みや不安が強く、学校に行けない日が続く
一般的な症状
- 女の子:13歳ごろまでに乳房のふくらみが始まらない
- 男の子:14歳ごろまでに精巣が大きくならない、陰部の変化がない
- 陰毛や腋毛(わきげ)がなかなか生えない
- 声変わりがない(男の子)
- 女の子:15歳ごろまでに初経(初めての月経)が来ない
- 身長の伸びが目立たず、同級生より背が低い
- 体つきが細く、筋肉がつきにくい
子供の症状
- 同級生と比べて体の変化が少なく、着替えや体育をいやがる
- 身長が伸びないことを気にして、自分を責める
- からかわれたり、あだ名で呼ばれたりする
- 学校で目立たないようにふるまうようになる
- 食が細い、体重が増えない
高齢者の症状
- 思春期遅延の多くは10代のうちに解決しますが、原因によっては大人になっても二次性徴(体つきの変化)が十分でないことがあります。
- 月経が来ないまま大人になった、体つきの変化が乏しいままだったという場合は、婦人科や内分泌科(ホルモンを専門とする科)で相談してみましょう。
- 不妊の検査の途中で初めて分かることもあります。
原因
主な原因
- 体質による遅れ(家族性・体質性思春期遅延):もっとも多いパターンで、家族にも遅かった人がいることが多いです。
- 栄養不足や極端なダイエット、過度な運動:体が「今は成長より命の維持を優先する」と判断して、思春期の始まりを後ろにずらすことがあります。
- 慢性の病気:消化器の病気、腎臓の病気、甲状腺(こうじょうせん)の病気など。
- 染色体(遺伝の設計図)の違いによるもの:ターナー症候群、クラインフェルター症候群など。
- ホルモンを作る脳の部分(視床下部・下垂体)や卵巣・精巣の働きの問題。
- 強いストレスや睡眠不足が続いていること。
リスク要因
- 家族に思春期が遅かった人がいる
- やせている、体重が少ない、食事量が少ない
- スポーツなどで運動量が非常に多い
- 慢性の病気がある、長く薬を飲んでいる
- 強いストレスを抱えている、よく眠れていない
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 頭痛・視野の異常・嘔吐など、頭の病気を思わせる症状がある
- 体重が急に減った、食べられない状態が続く
- 気分の落ち込みや不安が強く、日常生活が難しい
- 成長の記録を見て、身長がほぼ伸びていない期間が1年以上続いている
定期受診を予約すべき場合:
- 女の子で13歳ごろまで乳房のふくらみが始まらない
- 男の子で14歳ごろまで精巣が大きくならない
- 女の子で15歳ごろまで初経が来ない
- 同級生との体の差が大きく、本人がつらがっている
- 家族に思春期が遅かった人がいて、心配になった
診断
まずはお話を聞かせていただきます。身長と体重のこれまでの記録、家族の中で思春期が遅かった人がいるか、食事の量、運動の量、睡眠、学校での様子などをうかがいます。そのうえで体を診察し、成長の段階(タナー段階という目安)を確認します。必要に応じて検査を行い、体質的な遅れなのか、別の原因がないのかを確かめます。
行われる可能性のある検査
- 身長・体重の測定と、成長曲線(成長の記録のグラフ)の確認
- 手のレントゲン写真で骨の年齢(骨年齢)を調べる
- 血液検査:ホルモンの値、貧血、栄養状態、慢性の病気の手がかりを調べる
- 女の子では超音波(エコー)で子宮や卵巣の様子を見る
- 必要に応じて染色体検査や頭部のMRI検査
診察で予想されること
検査の多くは痛みが少なく、外来で受けられます。結果が出るまで数日から数週間かかることがあります。母子健康手帳や学校の健康診断の記録、家でつけている身長の記録を持っていくと、診断の助けになります。
治療
治療の中心は「見守る」ことです。体質的な遅れであれば、3〜6か月ごとに身長や体の変化を確認しながら、自然に追いつくのを待ちます。栄養不足や慢性の病気など、別の原因が見つかった場合は、その原因に対する対応を行います。
自宅でのセルフケア
- 3食バランスよく食べ、極端なダイエットをしない
- 十分な睡眠をとる
- 適度に体を動かす。ただし運動のしすぎには注意する
- 身長と体重を定期的に記録する
- からかわれたときの相談先(家族、先生、養護教諭など)を決めておく
医療治療
原因に合わせて対応します。栄養不足や体重減少があれば食事や生活の見直しを、甲状腺などホルモンの病気が見つかれば専門医による治療を行います。体質的な遅れでも本人のつらさが強い場合などには、思春期を進めるためのホルモンによる治療が検討されることがあります。これは小児内分泌科(子どものホルモンを専門とする科)などの専門医が、成長への影響も含めて慎重に判断するものです。薬の名前や量はここではお伝えしません。主治医にご相談ください。
手術が検討される場合
手術が必要になることはほとんどありません。原因によっては外科的な治療が検討されることがありますが、まれです。
この病気と共に生きる
周りの友達と体の変化の時期が違うと、不安や恥ずかしさを感じることがあります。「人にはそれぞれ自分のペースがある」ことを、繰り返しやさしく伝えてあげてください。比べすぎない環境づくりが、本人の安心につながります。
生活習慣のアドバイス
- 決まった時間に寝て、決まった時間に起きる生活リズムをつくる
- 家でほっとできる時間と場所を確保する
- 学校の担任や養護教諭と情報を共有しておく
- 体型や成長を話題にするときは、本人の気持ちを先に聞く
食事と運動
3食をバランスよくとることが基本です。極端な減量や、食べる量を極端に減らすことは、思春期の始まりをさらに遅らせることがあります。適度な運動は骨と心の健康によく、ストレスの発散にもなります。スポーツを頑張っている場合は、食事量が足りているかを時々見直してみましょう。
精神的健康と心の健康
見た目や体の変化をからかわれると、自己肯定感(自分で自分をよいと思える気持ち)が下がったり、学校に行きづらくなったりすることがあります。本人の気持ちを否定せずに聞き、つらいときは一人で抱えこまないよう伝えてください。つらい気持ちが続くとき、死にたい気持ちが出てきたときは、ためらわずに学校のスクールカウンセラー、地域の相談窓口、医療機関、または救急(119番)に連絡してください。
予防
体質による思春期の遅れは、予防できるものではありません。ただし、極端なダイエット、栄養不足、運動のしすぎ、睡眠不足を避けることは、思春期が順調に進む助けになります。
ワクチン
思春期遅延そのものを防ぐワクチンはありません。定期接種などの予防接種については、かかりつけ医と相談しながら年齢に応じて受けておきましょう。
検診プログラム
思春期遅延のための決まった検診はありません。学校の健康診断や成長曲線の記録で気になる点があれば、早めに小児科に相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 原因となる病気(ホルモンの病気や慢性疾患)に気づくのが遅れることがある
- 骨密度(骨の丈夫さ)が十分に育たないことがある
- 原因によっては、最終的な身長が伸びにくいことがある
- 自己肯定感の低下、不安、学校生活の困難
- 原因によっては、将来の生殖機能に関わる問題が残ることがある
長期的な見通し
多くは体質的な「晩熟」で、遅れて始まった思春期は自然に追いつき、大人になると周りと変わらないことがほとんどです。原因が見つかった場合も、早めに相談して適切に対応すれば、多くの場合よい経過が期待できます。心配なことは、早めに小児科で相談してください。
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最終更新: 2026年10月22日
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