認知症の家族を施設に預けるとき ― 罪悪感との向き合い方
概要
これは病気そのものの説明ではなく、認知症の方を自宅で介護し続けることが難しくなったときに、介護施設やグループホームなどへ生活の場を移すことを、どう受け止め、どう進めるかというテーマです。グループホームとは、少人数で共同生活をしながら支援を受ける住まいのことです。慣れ親しんだ家を離れるのは本人にとっても家族にとっても大きな変化で、迷ったり罪悪感を感じたりするのは自然なことです。
重要な事実
- 施設への入所は「見捨てる」ことではなく、安心して暮らせる場所を選ぶことです。
- 決断は一度で終わる必要はなく、何度も話し合いながら調整できます。
- 介護する家族の健康と休息も、本人の暮らしを支える大切な一部です。
とてもよくある悩みです。在宅での介護が長くなるほど、家族が施設入所を考える場面は増えます。多くの家族が同じように迷い、罪悪感を抱えながら決断しています。
認知症の方本人と、その配偶者・子ども・親族など、介護に関わるすべての人に影響します。特に、一人で介護を担っている方や、高齢の配偶者が介護している場合に負担が大きくなりやすいです。
症状
- 本人または介護する人が突然倒れた、意識がない、呼吸が苦しい
- 強い胸の痛み、ろれつが回らない、手足のまひがある
- 自分や他人を傷つける恐れがあり、その場で安全を保てない
- 切迫した希死念慮がある
- ⚠介護する人が数日眠れない、食事がとれない、立てないほど疲れている
- ⚠本人の混乱や興奮が急に強くなり、自宅での対応が難しい
- ⚠発熱、転倒後の痛み、いつもと違うぐったりした様子
- ⚠家族が「もう限界かもしれない」と感じている
一般的な症状
- 夜中に何度も起きて対応が必要になる
- 目を離せない、留守番が不安になる
- 排泄や入浴の介助で腰痛など体の負担が増える
- 物忘れや混乱が進み、会話がかみ合いにくくなる
- 介護する家族が眠れない、疲れが取れない
- ささいなことで涙が出る、イライラする
- 「自分が頑張らなければ」と気持ちが張りつめる
- 罪悪感で胸が苦しくなる
原因
主な原因
- 介護する家族の体調不良や高齢化で、在宅での介助が難しくなる
- 夜間の見守りや徘徊への対応が続き、睡眠がとれなくなる
- 火の元や外出など、安全を守ることが難しくなる
- 排泄・入浴・移動などの身体的な介助の負担が大きくなる
- 仕事や子育てと介護の両立が難しくなる
- 在宅サービスだけでは対応しきれない状態になる
- 本人が施設を嫌がり、家族も迷って決められない
リスク要因
- 介護を一人で抱えている、相談できる人がいない
- 介護する人自身に持病がある、高齢である
- 経済的な不安が大きい
- 家族の間で方針がまとまらない
- 「家で看るのが当たり前」という思い込みが強い
- 相談先(かかりつけ医、ケアマネジャー、地域包括支援センター)につながっていない
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 介護者自身が眠れない・食べられない状態が続く
- 涙が止まらない、何もする気が起きない
- 本人や誰かを傷つけてしまいそうな衝動がある
- 本人の急な体調変化(発熱・ぐったり・転倒後)
定期受診を予約すべき場合:
- 施設入所を考え始めたとき
- 在宅介護の負担が増えてきたと感じたとき
- 介護保険サービスをまだ使っていないとき
- 家族で方針を話し合いたいとき
診断
入所を考えるときは、まず本人の状態と家族の状況を整理します。かかりつけ医や認知症専門医が認知症の進行や体の状態を確認し、ケアマネジャー(介護サービスを調整する専門職)や地域包括支援センター(高齢者の相談窓口)が生活面の支援を一緒に考えます。「診断」というより、これからの暮らし方を一緒に組み立てる作業です。
行われる可能性のある検査
- 問診と日常生活の様子の聞き取り
- 認知機能の検査(記憶や見当識の確認)
- 血液検査(体の病気が原因でないかの確認)
- 頭部の画像検査(CTやMRI)
- 歩行や着替えなど生活動作の確認
- 家族の介護負担や生活状況の聞き取り
診察で予想されること
一度の話し合いですべてが決まるわけではありません。何度か相談し、見学や体験利用を重ねながら、本人と家族にとって無理のない形を探していきます。気持ちが揺れるのは自然なことで、方針を変えてもかまいません。
治療
ここでいう「治療」は、薬で治すことよりも、本人が安心して暮らせる環境を整え、介護する家族の負担を軽くするケアの組み立てを指します。入所はその選択肢の一つです。
自宅でのセルフケア
- 介護する人が、1日に少しでも「自分のための時間」を確保する
- 睡眠と食事をできるだけ崩さない
- 家族や友人、同じ経験を持つ人に気持ちを話す
- 介護保険のサービス(ショートステイなど短期の宿泊サービス)を早めに使う
- 完璧を目指さず、「これで十分」と自分に言い聞かせる
- 面会の日を決めて、会えない時間の不安を減らす
医療治療
認知症の進行をゆるやかにする治療や、不安・不眠・興奮・攻撃的な言動(医療では行動・心理症状と呼びます)への対応を、医師が本人の状態に合わせて行います。具体的な薬の種類や量は、担当医とよく相談して決めます。入所後も、施設のスタッフと医療機関が連携して状態を見守ります。
手術が検討される場合
通常、手術で解決する問題ではありません。
この病気と共に生きる
入所してからも、家族の関わりは続きます。面会のたびに写真を持っていく、好きな音楽を一緒に聞く、昔の話をする。短い時間でも、本人が「覚えていてくれる人がいる」と感じられることが支えになります。面会がつらい日は無理をせず、電話や手紙、施設スタッフからの報告を利用してもよいのです。
生活習慣のアドバイス
- 面会の頻度は家族で無理のない範囲に決める
- 施設のスタッフとこまめに情報を共有する
- 家族会や同じ立場の人の集まりに参加する
- 介護から離れる時間を作り、自分の生活を取り戻す
- 本人の好きなこと(音楽・散歩・手芸など)を面会に取り入れる
食事と運動
本人は施設で規則的な食事と運動の機会を得やすくなります。家族の側も、食事を抜いたり睡眠を削ったりしないことが大切です。短い散歩やストレッチなど、自分が続けられる運動を少しずつ取り入れましょう。
精神的健康と心の健康
罪悪感、悲しみ、怒り、そして「ほっとした」という安堵——相反する感情が同時に押し寄せることがあります。どれも自然な反応です。自分を責め続ける必要はありません。つらい気持ちが強いときや、気分の落ち込みが続くときは、一人で抱えず、かかりつけ医や地域の相談窓口、医療機関に相談してください。緊急の場合は119番に連絡を。
予防
このテーマは「予防」というより「準備」です。元気なうちから、本人がどう暮らしたいかを家族で話し合い、介護保険や相談先を早めに知っておくことが、いざというときの迷いを減らします。介護者が一人で抱え込まない仕組みを作っておくことも大切です。
合併症
治療しない場合
- 介護する家族が燃え尽きてしまい、心身の健康を損なう
- 介護の負担が暴力や不適切な扱いにつながる危険
- 本人の体調悪化や事故のリスクが高まる
- 家族が孤立し、経済的にも追い詰められる
- 決断を先延ばしにするうちに選択肢が狭くなる
長期的な見通し
施設への入所は、終わりではなく新たな暮らしの始まりです。最初は落ち着かない時期があっても、多くの方は少しずつ環境に慣れていきます。家族の関わり方が変わっても、つながりは続きます。迷いながら少しずつ進んでいくことが、本人と家族にとっての安心につながります。
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最終更新: 2026年10月23日
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