認知症と向き合う早めの準備 — 元気なうちに話し合っておきたいこと
概要
認知症の早期計画とは、認知症と診断された方や、「もしかしたら」と感じている方が、まだ自分で考えて決められるうちに、これからの生活・医療・お金・人間関係について家族や専門職と話し合い、準備しておくことです。難しい言葉では「アドバンス・ケア・プランニング」や「意思決定支援」と呼ばれますが、要は「もしものときに、自分がどう暮らしたいかを先に伝えておく」ということです。準備は「終活」だけではなく、今日の暮らしを安心して続けるための工夫でもあります。
重要な事実
- 準備は「終活」だけではなく、毎日の暮らしを安心して続けるための工夫でもあります。
- 早めに話し合っておくほど、本人の希望が尊重されやすくなります。判断が難しくなってからでは、本人の気持ちを確認しにくくなるためです。
- 一人で抱え込まなくて大丈夫です。かかりつけ医や市区町村の地域包括支援センターなど、相談できる場所があります。
とても身近なテーマです。厚生労働省の推計では、65歳以上の方のおよそ15%(6〜7人に1人)が認知症と考えられており、軽度認知障害(MCI、認知症の一歩手前の状態)の方も同程度いるとされています。自分や家族に関係があると感じる人は少なくありません。
主に高齢の方ですが、65歳未満で発症する「若年性認知症」もあります。本人だけでなく、パートナー、子ども、孫、介護する家族など、家族全体に関わる出来事です。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が乏しい
- 突然、ろれつが回らない、手足が動かない、顔がゆがむ(脳卒中の疑い)
- 行方不明になり、夜間・悪天候・危険な場所にいる可能性がある
- 火の不始末やガスの臭いなど、命に関わる危険がある
- 自分や人を傷つける恐れがある
- ⚠いつもより急に混乱が強くなった(せん妄=体の不調で一時的に意識がぼんやりする状態の可能性)
- ⚠発熱、脱水、転倒後の痛みなど、体調の変化がある
- ⚠薬を重ねて飲んでしまった、飲み忘れが続いている
- ⚠運転中に危ないと感じる出来事があった
- ⚠強い不安・不眠・落ち込みが続いている
一般的な症状
- 同じことを何度も聞く、約束や予定を忘れる
- 物の置き場所がわからず、探しものが増える
- お金の計算や支払いでミスが増えた
- 料理・買い物・片付けなど、慣れた家事に時間がかかる、手順がわからなくなる
- 日付や曜日、場所がわからなくなることがある
- やる気が減った、怒りっぽくなった、不安が強い
- 新しいことを覚えるのが難しくなった
- 慣れた道で迷う、遠出が不安になる
原因
主な原因
- アルツハイマー型認知症(最も多いタイプ)
- 血管性認知症(脳梗塞や脳出血のあとに起こるタイプ)
- レビー小体型認知症(幻視や体の動きの変化を伴いやすいタイプ)
- 前頭側頭型認知症(性格や行動の変化が目立ちやすいタイプ)
- 治療で良くなる可能性があるもの(甲状腺の働きの低下、ビタミン不足、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症など)
リスク要因
- 年齢(高齢になるほど起こりやすい)
- 家族に認知症の人がいる
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病
- 喫煙、過度の飲酒
- 聞こえにくさ(難聴)
- うつ状態、社会的な孤立
- 運動不足、睡眠不足
- 頭を打ったけがの経験
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に混乱した、話が通じなくなった
- 転倒して頭を打ったあとから様子がおかしい
- 発熱や脱水でぐったりしている
- 強い落ち込みや「いなくなりたい」という気持ちがある(その場合はためらわず救急119や医療機関へ連絡を)
定期受診を予約すべき場合:
- 物忘れが増えたと家族が感じている
- お金の管理や薬の飲み方に不安が出てきた
- 運転や一人暮らしの継続に不安がある
- 診断を受けたあと、これからの生活のことを相談したい
診断
問診と、本人だけでなく家族など身近な人からの聞き取りが中心になります。認知機能の検査、血液検査、頭の画像検査を組み合わせ、他の病気が隠れていないかを確かめます。一度で確定せず、時間をかけて見極めることもあります。
行われる可能性のある検査
- 問診と生活歴の聞き取り(いつから、どんな困りごとがあったか)
- 認知機能検査(記憶・注意力・計算などを確かめる簡単なテスト)
- 家族や同居している人への聞き取り
- 血液検査(甲状腺の働き、ビタミン不足、貧血などを確認)
- 頭部CT・MRI(脳の萎縮、血管の詰まり、血腫や腫瘍などを確認)
- 必要に応じて、詳しい神経心理検査や画像検査
診察で予想されること
検査は痛みを伴うものがほとんどなく、半日程度で終わることが多いです。結果が一度にすべてわかるとは限らず、経過を見て判断することもあります。診断の場では、これからの生活についても遠慮なく質問しましょう。メモを持っていく、家族に付き添ってもらうと安心です。
治療
認知症そのものを完全に治す治療はまだありませんが、進行をゆるやかにしたり、不安やイライラなどの症状を和らげたり、生活の質を保ったりする方法はあります。薬だけでなく、暮らし方の工夫、リハビリ、地域のサービスを組み合わせるのが基本です。そして「早めの準備」も、大切な治療の一部と考えられています。
自宅でのセルフケア
- 手帳・カレンダー・スマートフォンの通知など、忘れを補う道具を早めに使う
- 薬はお薬カレンダーや一包化など、間違えにくい方法を薬剤師に相談する
- 財布・鍵・眼鏡など、置き場所を決めておく
- 運転の継続について、家族と早めに話し合う
- 通帳・保険・契約ごとを一か所にまとめ、家族がわかるようにしておく
- 元気なうちに、これからの医療や暮らしについての希望を書き留めておく
医療治療
治療は大きく二つに分かれます。ひとつは、認知機能の低下をゆるやかにするための薬物療法です。もうひとつは、不安・イライラ・不眠・幻覚などの「行動・心理症状」への対応で、環境の調整や声のかけ方の工夫、必要に応じた薬の調整が行われます。あわせて、高血圧や糖尿病など体の病気の管理、作業療法や運動などのリハビリ、デイサービスなど地域の支援が組み合わされます。薬の種類や量は人によって異なるため、必ず主治医や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
認知症そのものを治す手術はありません。ただし、もの忘れの原因として慢性硬膜下血腫(頭を打ったあとに血がたまる状態)や正常圧水頭症など、手術で改善が期待できる病気が見つかることもあります。その場合は主治医から選択肢が説明されます。
この病気と共に生きる
暮らしのなかでは、できることを残し、できないことを補う視点が大切です。「できない」を指摘するより、「こうしてみたら?」と一緒に工夫する。本人が決める場面をできるだけ残すことが、自信と安心につながります。まずは「お金・鍵・薬・予定」の4つを整えると、生活のトラブルがぐっと減ります。
生活習慣のアドバイス
- 生活リズムを整え、日中の活動と夜の睡眠をはっきりさせる
- 人と話す機会を保つ(通いの場、趣味、ボランティアなど)
- 聞こえにくさがあれば、補聴器などを検討する
- 買い物や掃除など、できる範囲で役割を続ける
- 家族も休息をとる。介護を一人で抱え込まない
- かかりつけ医や緊急連絡先の情報を、家族で共有しておく
食事と運動
特別な食べ物やサプリメントで認知症が治るという確実な証拠はありません。野菜・果物・魚・全粒穀物などを取り入れたバランスのよい食事と、塩分を控えめにすることが勧められます。運動は、早歩きなどの有酸素運動と、片足立ち・ストレッチなどのバランス運動を組み合わせるのがおすすめです。ウォーキングを日課にする、通いの場に参加するなど、続けられる形を見つけましょう。運動は脳にも心にも良い影響があります。始める前に、かかりつけ医に安全な範囲を確認してください。
精神的健康と心の健康
診断を受けた直後は、ショックや不安、怒り、悲しみが入り混じるのが自然です。「自分はもう何もできない」と感じることもあるかもしれません。家族もまた、同じように揺れています。気持ちを話せる場所を持つことが大切です。落ち込みが続く、眠れない、「いなくなりたい」と考えるようなときは、一人で抱えず、医療機関や地域の相談窓口、緊急時は救急119に連絡してください。つらい気持ちは、必ず誰かに話してよいものです。
予防
完全に防ぐ方法はまだ見つかっていませんが、発症を遅らせたり、リスクを下げたりできる可能性がわかってきています。厚生労働省の「認知症施策推進大綱」でも、予防と共生が柱になっています。高血圧・糖尿病・喫煙・難聴・社会的孤立・運動不足など、自分で働きかけられる要因を減らすことが勧められます。「ならないための努力」だけでなく「早めに備える」ことが現実的です。
ワクチン
現時点で、認知症を確実に防ぐワクチンはありません。ただし、帯状疱疹や肺炎などの感染症の予防接種は、健康全般を守る意味でかかりつけ医に相談する価値があります。
検診プログラム
市区町村によっては「もの忘れ検診」など早期発見のための健診を行っています。健康診断で血圧・血糖・聴力をチェックすることも、脳の健康を守る第一歩です。気になる場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターに尋ねてみてください。
合併症
治療しない場合
- 判断能力の低下により、契約や財産管理のトラブルに巻き込まれやすくなる
- 運転や火の扱いなど、事故の危険が高まる
- 行方不明、転倒、感染症などのリスクが上がる
- 家族や介護する人の心身の負担が大きくなり、孤立しやすい
- うつや不安が強くなり、生活の質が下がることがある
- 話し合いが難しくなってからでは、本人の希望を確認しにくくなる
長期的な見通し
認知症はゆっくり進むことが多く、診断後も何年も穏やかに暮らしている方はたくさんいます。早めに準備をしておくと、不安は少しずつ「見通し」に変わっていきます。今できることはたくさんあり、工夫と支えで暮らしを続けていくことができます。一人で決めなくて大丈夫。一緒に考える人がいれば、道は開けます。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月23日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.