認知症のリスクを減らすために
概要
認知症(にんちしょう)は、ひとつの病気の名前ではなく、いろいろな原因で脳の働きが少しずつ低下し、記憶(覚える・思い出す力)や判断、言葉、物事の段取りなどがうまくいかなくなる状態をまとめた呼び方です。日常生活に支障が出るくらい続く点が、ふつうの「もの忘れ」との大きな違いです。「リスクを減らす」というのは、今すぐ完璧に防ぐという意味ではなく、脳にやさしい生活を続けることで、発症を遅らせたり、進行をゆるやかにしたりできる可能性がある、という考え方です。
重要な事実
- 認知症は「年をとれば必ずなるもの」でも「自然な老化」でもなく、脳の病気によって起こります。原因やタイプはいくつかあります。
- 世界規模の研究では、血圧や血糖の管理、聴力のケア、運動、禁煙、社会とのつながりなど、見直せる要因を整えることがリスク低下につながる可能性が示されています。
- 完全に防ぐ方法はまだ見つかっていません。だからこそ、できそうなことを無理なくひとつずつ続けることに意味があります。
とても身近な病気です。日本では、65歳以上の人のおよそ15〜20%程度、数百万人規模の人が認知症と考えられているという推計があります。年齢が上がるほど多くなりますが、年齢だけで決まるものではありません。
主に高齢の方に多い病気ですが、65歳未満で発症する「若年性認知症」もあり、40〜60代でも起こります。家族に認知症の人がいる、血圧や血糖が高め、聴力が低下している、社会とのつながりが少ない、といった方はとくに生活習慣を見直す価値があります。
症状
- 突然、意識がぼんやりして会話が通じない
- 顔の片側がゆがむ、片方の手足が動かない、ろれつが回らない(脳卒中のサイン)
- 急に激しい頭痛が始まった、けいれんが起きた
- 呼吸が苦しい、ぐったりして反応が弱い
- ⚠数時間から1日ほどの間に、混乱や物忘れが急に強くなった
- ⚠発熱や脱水を伴って、いつもと違う様子がある
- ⚠転倒や頭を打ったあとから様子がおかしい
- ⚠薬を変えてから、急にぼんやりするようになった
一般的な症状
- 同じことを何度も聞く、約束や置き場所を忘れてしまう
- いつもできていた家事や手順がわからなくなる
- 日付や時間、場所がわからなくなることがある
- 適切な言葉が出てこない、話の筋が通らないことが増える
- お金の管理や買い物でミスが増える
- 物の置き場所を探し回る、しまい忘れが増える
- 気分が落ち込みやすい、怒りっぽくなる、趣味への関心が減る
- 物事を決めるのに時間がかかる、判断が遅くなる
子供の症状
- 認知症は主に高齢者の病気で、ふつう子どもには当てはまりません。子どものもの忘れや集中できない様子は、睡眠不足・発達の特性・学校のストレスなど別の理由がほとんどです。気になるときは小児科やかかりつけ医に相談してください。
高齢者の症状
- 加齢によるもの忘れは、ヒントがあれば思い出せて、日常生活に大きな支障はありません。認知症では、忘れたこと自体に気づかない、生活に支障が出る、という違いがあります。
- 高齢の方では、発熱・脱水・薬の影響などで急に頭が混乱する「せん妄(せんもう)」が起こることがあります。これは認知症とは別の、早めの受診が必要な状態です。
- 聞こえにくさや見えにくさは、本人も気づかないうちに進んでいることがあります。会話がかみ合わないときは、聴力・視力の確認も大切です。
原因
主な原因
- アルツハイマー型認知症:脳にたんぱく質がたまり、神経の働きが少しずつ低下する
- 血管性認知症:脳梗塞や脳出血など、脳の血管の病気がきっかけになる
- レビー小体型認知症:脳の別のたんぱく質が関係し、体の動きの変化を伴うことがある
- 前頭側頭型認知症:性格や行動の変化が目立ちやすいタイプ
- そのほか、甲状腺の病気やビタミン不足、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症など、治療で改善が見込める原因もある
リスク要因
- 年齢が高いこと(最も大きな要因)
- 家族に認知症の人がいる、遺伝的な体質
- 血圧が高め、糖尿病、脂質の異常などの生活習慣病
- 喫煙、飲酒の量が多い
- 運動不足、肥満
- 聴力の低下(補聴器などで補うことが大切)
- 視力の低下
- うつ状態、長く続くストレス
- 社会とのつながりが少ない、外出や会話の機会が減っている
- 頭を打つけが(スポーツ中の衝撃など)
- 睡眠が十分にとれない、いびきや無呼吸を指摘されたことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に混乱が強くなった、意識がぼんやりする
- 発熱・脱水・転倒などと一緒に様子がおかしくなった
- 薬を始めた・変えた直後から、急にぼんやりするようになった
定期受診を予約すべき場合:
- もの忘れが増え、家族が気づくようになった
- 同じ話を何度もする、約束を忘れることが目立つ
- お金の管理や家事でミスが増えた
- 気分の落ち込みや意欲の低下が続いている
- 運転や買い物など、日常生活に不安が出てきた
診断
まずかかりつけ医に相談するのが一般的です。医師は、本人からの話に加えて、家族など身近な人から普段の様子を聞き取り、認知機能の検査(記憶や注意力をみる簡単なテスト)を行います。血液検査で甲状腺の病気やビタミン不足など「治療で良くなるもの」を除外し、必要に応じて脳の画像検査や、専門の医療機関での詳しい評価につなげます。
行われる可能性のある検査
- 問診と生活歴の確認(家族や身近な人への聞き取りが大切です)
- 認知機能検査(いくつかの簡単なテスト)
- 血液検査(甲状腺機能、ビタミン、血糖・脂質など)
- 脳の画像検査(CT・MRI)
- 必要に応じて心電図や、神経心理検査などの詳しい検査
診察で予想されること
一度の受診ですべてが決まるとは限らず、時間をかけて何回か通いながら判断することもあります。本人は変化に気づきにくいことがあるため、家族や身近な人が一緒に受診し、普段の様子を伝えると助けになります。メモに気づいたことを書いて持参するとよいでしょう。
治療
認知症そのものを根本から治す治療はまだありませんが、進行をゆるやかにする薬、不安や気分の落ち込み、睡眠の悩みなどに合わせた薬、リハビリや生活の工夫、家族への支援を組み合わせることで、その人らしい生活を続けやすくすることができます。リスクを減らす生活習慣は、始めるのに遅すぎるということはありません。
自宅でのセルフケア
- 血圧・血糖・体重を測る習慣をつけ、数値を記録しておく
- 耳が聞こえにくい、見えにくいと感じたら、補聴器や眼鏡の調整を相談する
- 人と話す機会を意識してつくる(近所づきあい、趣味の集まり、家族との会話)
- 睡眠を十分にとる。いびきや息が止まると言われたら相談する
- 頭を打たない工夫(転倒予防、自転車のヘルメットなど)
- お金の管理や予定の管理は、早めに家族や支援者と共有しておく
- 気分の落ち込みが続くときは、一人で抱えず相談する
医療治療
医師は、認知機能の低下をゆるやかにするための薬、気分の落ち込みや不安、眠りにくさなどに合わせた薬、生活のリハビリや作業療法などを組み合わせて考えます。治療の内容や使うかどうかは、体の状態や持病、本人と家族の希望によって変わります。具体的な薬の種類や量については、必ず担当の医師や薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
通常の認知症では手術は行いません。ただし、慢性硬膜下血腫(頭の中に血がたまる)や正常圧水頭症(脳に水がたまる)など、手術で症状が改善することがある原因が見つかった場合は、その治療が検討されます。
この病気と共に生きる
できるだけ今までどおりの暮らしを続けられるように、環境を整えることが助けになります。予定や約束はカレンダーやスマートフォンにまとめて書き、物の置き場所を決めてラベルを貼る、鍵や財布は決まった場所に置く、夜の道は明るくする、といった小さな工夫が効果的です。できないことを数えるより、できることを続けられる形を一緒に探していきましょう。
生活習慣のアドバイス
- ウォーキングなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつくる
- 人と会う・話す機会を定期的にもつ
- 禁煙する。飲酒は量と頻度を控えめにする
- 睡眠を十分にとり、生活のリズムを整える
- 血圧・血糖・体重を定期的に確認する
- 聞こえ・見えの悩みは早めに相談する
- 新しいことを学ぶ機会を楽しむ(習い事、読書、脳トレなど)
食事と運動
食事は、野菜・果物・魚・全粒穀物・オリーブ油などを取り入れた、いわゆる地中海式の食事が脳の健康に良い可能性が示されています。塩分や甘い飲み物、加工肉のとりすぎには気をつけましょう。運動は、息が少しはずむ程度の早歩きを1日20〜30分、週に数回から始めるのがおすすめです。持病がある方は、始める前に主治医に相談してください。
精神的健康と心の健康
もの忘れが気になり始めると、本人も家族も不安や落ち込みを感じやすくなります。「自分はどうなってしまうのか」という不安は自然な気持ちです。気持ちを話せる相手がいること自体が大きな支えになります。つらい気持ちが強いときや、眠れない日が続くときは、一人で抱えず、かかりつけ医や地域の保健所、公的な相談窓口に相談してください。緊急を要すると感じたら119番へ連絡してください。
予防
認知症を100%防ぐ方法はまだ見つかっていません。ただし、血圧や血糖の管理、禁煙、運動、聴力のケア、社会とのつながりを保つことなどで、リスクを下げたり発症を遅らせたりできる可能性が、多くの研究で示されています。完璧を目指すより、できそうなことをひとつ選んで続けることが現実的です。
ワクチン
現在、認知症を予防するワクチンはありません。いくつかの感染症やワクチンと認知症の関連を調べる研究は進んでいますが、まだ結論は出ていません。予防接種については、かかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
健康診断で血圧・血糖・脂質を確認することは、脳の血管を守る意味で大切です。聴力検査・視力検査も定期的に受けましょう。「もの忘れが気になる」と感じたら、地域包括支援センターやかかりつけ医に相談するのが最初の一歩です。
合併症
治療しない場合
- 日常生活の支障が少しずつ大きくなることがある
- 転倒やけが、服薬のミスが増える
- お金の管理や運転などでトラブルが起きやすくなる
- 人とのつながりが減り、孤立しやすくなる
- 気分の落ち込みや不安が強くなることがある
- 介護する家族の負担が大きくなる
長期的な見通し
認知症は、早期に気づいて環境を整え、支援につながることで、長くその人らしい生活を続けられる方がたくさんいます。リスクを減らす生活習慣は何歳から始めても遅くありません。心配なことがあるときは、早めに医療機関や地域の相談窓口に相談してください。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月23日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.