デニス・ドラッシュ症候群(DDS)を知る
概要
デニス・ドラッシュ症候群は、生まれつきの遺伝子の変化が関係する、とてもまれな病気です。おもに3つの特徴が組み合わさって現れます。1つ目は腎臓の病気で、尿にたんぱく質が漏れてむくみが出たり、腎臓の働きが少しずつ落ちたりします。2つ目は性別の発達に関わる違いで、染色体がXY(ふつうは男の子)の子どもが、外性器の見た目がはっきりしなかったり、女の子として育てられていたりすることがあります。3つ目はウィルムス腫瘍と呼ばれる小児の腎臓のがんです。3つすべてがそろう場合もあれば、一部だけの場合もあります。
重要な事実
- WT1(ダブリューティーワン)遺伝子という、腎臓と性別の発達に関わる遺伝子の生まれつきの変化が関係しています。
- 腎臓の病気・性別の発達の違い・小児の腎臓のがん(ウィルムス腫瘍)という3つの特徴が組み合わさるのが典型です。
- 多くは赤ちゃんから幼児期の間に見つかります。早く見つけて支えることで、その子にできることが大きく広がります。
とてもまれな病気です。世界でも報告されている数は限られていて、正確な頻度はわかっていません。まれだからこそ、専門の医療チームとつながることが大切になります。
生まれたときから遺伝子の変化を持つ子どもに起こります。男の子にも女の子にも関係しますが、性別の発達の違いは染色体がXYの子どもで目立つことが多いです。多くは乳幼児期に気づかれます。
症状
- けいれんが続く、意識がぼんやりして呼びかけに反応が弱い
- 呼吸が苦しそう、息が速い、唇の色が悪い
- 尿がまったく出ない
- 突然の激しいおなかの痛み、血便、顔色が真っ白になる(腫瘍からの出血の可能性があります)
- 高熱でぐったりして水分もとれない
- ⚠むくみが急に強くなる、数日のうちに体重が大きく増える
- ⚠尿の量が目に見えて減ってきた
- ⚠尿が濃い泡立ちになる、赤みがかる
- ⚠発熱がある(腎臓や治療中の体では感染が重くなりやすいため)
- ⚠おなかに新しいしこりを触れた、おなかが張って痛がる
- ⚠機嫌がひどく悪い、哺乳や食事がほとんどとれない
一般的な症状
- 尿が泡立つ(たんぱく質が尿に漏れているサインです)
- まぶたや足、おなかがむくむ
- 尿の量が減る、おむつがいつもより軽い
- 水分が体にたまって体重が急に増える
- おなかが張る、食欲がない、吐き気がある
- 元気がなくなる、機嫌が悪い、哺乳(母乳やミルクを飲むこと)の量が減る
- おなかにしこりが触れる
- 尿に血が混じる(赤っぽい、コーラ色に見えることがあります)
- 身長や体重の増えがゆっくりになる
子供の症状
- 生後数か月のうちにむくみや尿の泡立ちで気づかれることが多いです。
- おむつの量が明らかに少ない、授乳の途中で疲れてしまう。
- 外性器の見た目がはっきりしない、または女の子として育てている子の検査でXYの染色体が見つかる。
- おむつ替えのときにおなかの片側にしこりを触れる。
- 健診で血圧が高い、尿たんぱくを指摘される。
高齢者の症状
- この病気はふつう小児期に見つかります。大人になってから診断される方はごくまれで、比較的軽いタイプの遺伝子変化が見つかる場合があります。
- 成人してから尿たんぱくや血尿、腎臓の働きの低下を指摘された場合は、子どものころの病歴や家族の病歴を医師に伝えてください。
- 大人になってから初めてわかる場合は、遺伝カウンセリング(遺伝のことを専門家と話す場)を受けることが勧められます。
原因
主な原因
- WT1遺伝子という、腎臓と性別の発達に関わる遺伝子の生まれつきの変化が原因です。
- 多くの場合、ご両親のどちらにも同じ変化はなく、お子さんの代で新しく生じた変化(新規変異)です。つまり、親の育て方や妊娠中の過ごし方が原因ではありません。
- まれに、親から子へ伝わる形(常染色体優性)で受け継がれることがあります。
リスク要因
- 家族の中に同じWT1遺伝子の変化を持つ人がいる
- 血縁者に若い年齢での腎臓の病気やウィルムス腫瘍の経験がある
- 遺伝子の変化そのものは防ぐことができないため、リスクがあるのは「遺伝子の変化を持つ子」であり、生活習慣が原因ではありません
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- むくみや体重増加が急に進んでいるとき
- 尿の量が明らかに減った、尿が出にくいとき
- 血尿がある、おなかにしこりを触るとき
- 発熱があり、元気がないとき
定期受診を予約すべき場合:
- 健診や学校の尿検査でたんぱく尿や血尿を指摘されたとき
- 尿の泡立ちやむくみが続いているとき
- 家族にWT1遺伝子の変化や若年性の腎臓病があるとき(症状がなくても相談を)
- 子どもの成長や発達、性別の発達について気になることがあるとき
診断
小児科(腎臓の専門医がいる病院が望ましい)で、体の診察、尿検査、血液検査、画像検査を組み合わせて調べます。疑いがある場合はWT1遺伝子の検査や染色体の検査を行い、遺伝の専門家(遺伝カウンセラーなど)と一緒に結果を確認します。
行われる可能性のある検査
- 尿検査:たんぱく質や血が混じっていないかを調べます
- 血液検査:腎臓の働き、たんぱく質の量、電解質(体の塩分バランス)を調べます
- 血圧測定:腎臓の病気では血圧が上がることがあります
- 腹部超音波検査:腎臓の大きさや形、しこりの有無を見ます
- CTやMRI検査:腫瘍が疑われるときに行います
- 腎生検:必要に応じて、腎臓の組織を小さく取って顕微鏡で調べます
- 遺伝子検査(WT1遺伝子)と染色体検査:診断の確認と、今後の見通しを考えるために行います
診察で予想されること
検査は何日かに分けて行われ、結果が出るまでに数週間かかることがあります。遺伝子検査の結果は、ご家族にとって大きな意味を持つため、説明の場をゆっくり設けてもらえます。わからないことは遠慮なく質問してください。
治療
この病気は「根治する1つの治療」があるタイプではなく、腎臓を守る治療、腫瘍への治療、性別の発達に関する支援を、専門チームが組み合わせて進めていきます。定期的な検査を続けながら、その子の成長に合わせて計画を調整していきます。
自宅でのセルフケア
- 医師に指示された通院・検査の予定を守る(症状がなくても続けることが大切です)
- 毎日の尿の量や色、むくみ、体重の変化を記録して受診時に伝える
- 食事の塩分を控えめにする(味付けは薄味を心がけ、加工食品を減らす)
- 水分のとり方は自己判断せず、医師・管理栄養士の指示に従う
- 感染症予防のため手洗いを徹底し、予防接種の予定を主治医と相談する
- 発熱や体調の変化を早めに医療機関に伝える
医療治療
腎臓を守るために、血圧を調整する薬や、尿にたんぱく質が漏れにくくする薬を、医師の判断で使うことがあります(具体的な薬の名前や量は、ここではお伝えしません)。腎臓の働きが大きく落ちたときは、透析(機械で血液をきれいにする治療)や腎移植が選択肢になります。ウィルムス腫瘍が見つかった場合は、手術と抗がん剤(がんの薬)による治療を組み合わせます。性別の発達については、内分泌(ホルモン)・泌尿器・心理の専門家を交えたチームで、急がずに話し合いながら方針を決めていきます。どの治療も、主治医から目的と副作用の説明を受けたうえで決めてください。
手術が検討される場合
手術が必要になるのは、ウィルムス腫瘍を取り除くとき、腎移植を受けるとき、そして外性器の形に関する手術を検討するときです。外性器の手術は、急いで決めないことが大切にされています。お子さん本人の気持ちが育つのを待ち、ご家族と専門チームで十分に話し合ってから判断します。
この病気と共に生きる
通院と検査が生活の一部になりますが、工夫次第で学校や家族の時間は十分に確保できます。体調の記録を1冊のノートにまとめると、受診のときに役立ち、ご家族の不安も整理しやすくなります。保育園・幼稚園・学校には、主治医の指示をまとめた用紙を渡しておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活と十分な睡眠を心がける
- 感染症が流行る時期は人混みを避け、手洗いを徹底する
- 体調の変化を記録する習慣をつける
- 学校・園と治療の情報を共有し、運動や給食について相談しておく
- きょうだいにも、病気のことを年齢に合った言葉で伝える時間をつくる
食事と運動
食事は塩分を控えめにし、たんぱく質や水分の量は腎臓の状態に合わせて管理栄養士と相談して決めます。運動は、体調が安定していれば制限しすぎる必要はありません。ただし血圧が高いときや治療中は、主治医に運動の強さを確認してください。
精神的健康と心の健康
この病気と向き合うことは、お子さん本人にもご家族にも大きな負担になります。不安、悲しみ、疲れを感じるのは自然なことです。気持ちが追い詰められていると感じたら、一人で抱えず、医療機関の相談窓口、地域の保健所や子育て支援センター、公的な相談電話などを利用してください。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療者や信頼できる人に伝えてください。緊急の場合は119番に連絡してください。
予防
遺伝子の変化そのものを防ぐ方法はありません。ただし、早期に見つけて腎臓を守る治療を始め、腫瘍の定期的なチェックを続けることで、合併症を減らし、生活の質を保つことができます。妊娠を考えている方や血縁者に同じ変化がある方は、遺伝カウンセリングを受けて、選択肢について話を聞くことができます。
検診プログラム
WT1遺伝子の変化がわかっている家族では、子どもが生まれたあとに遺伝子検査を受け、腎臓の検査(尿検査・血液検査・超音波検査)を定期的に続けることが勧められます。症状がなくても、主治医が決めた間隔でチェックを受けてください。
合併症
治療しない場合
- 腎臓の働きが少しずつ落ち、腎不全になって透析や腎移植が必要になることがあります
- 血圧が高くなり、心臓や血管に負担がかかることがあります
- ウィルムス腫瘍が大きくなったり、他の臓器に広がったりすることがあります
- たんぱく質が尿に漏れ続けることで、体の成長がゆっくりになることがあります
- 性別の発達に関する悩みが、本人の心の負担になることがあります
長期的な見通し
この病気はまれで、経過には個人差があります。ただし、医療は着実に進歩しています。腎臓を守る治療、腫瘍の早期発見、必要に応じた透析や腎移植、そして心理面・発達面のサポートを組み合わせることで、多くの子どもが成長し、学び、暮らしを続けています。心配なときは、主治医に「この子にとって今いちばん大事なことは何か」を具体的に聞いてみてください。
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最終更新: 2026年10月23日
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