DESドーターズ(DESで胎内に影響を受けた女性)
概要
DES(ジエチルスチルベストロール)は、昔、流産を防ぐ目的で妊婦さんに処方されていた合成の女性ホルモンの薬です。主に1940年代から1970年代ごろまで使われ、日本でも1970年代ごろまで処方が行われていました。その後、流産を防ぐ効果は確認できず、胎内でこの薬にふれた子どもの健康にさまざまな影響が出る可能性があることがわかったため、現在は使われていません。DESドーターズとは、お母さんが妊娠中にDESを処方され、おなかの中(胎内)でその影響を受けた女性のことです。
重要な事実
- DESは過去に使われた薬で、今は処方されていません。心配なのは過去の曝露(薬にふれたこと)による影響です。
- 胎内でDESにふれた女性の多くは健康に過ごしています。ごく一部の方に、腟や子宮頸部の形の変化、妊娠しにくさ、早産などの問題が起こることがあります。
- 定期的な婦人科検診を受けることで、変化を早く見つけて対応できます。
まれな状況です。日本でどのくらいの方が胎内でDESにふれたのかは、正確にはわかっていません。現在はこの薬が使われていないため、新たに同じ影響を受ける方はいません。
お母さんが妊娠中にDESを処方された女性(DESドーターズ)が主な対象です。男性(DESサンズ)にも影響が出る可能性が報告されています。また、次の世代(孫の世代)への影響については研究が続けられており、現時点でははっきりした結論は出ていません。
症状
- 大量の腟からの出血があり、止まらない、またはふらふらする・意識が遠のく
- 耐えられないほどの下腹部の痛みがある(特に妊娠の可能性があるとき)
- 急な息苦しさ、冷汗、顔面蒼白など、体調が急激に悪くなった
- 妊娠中に強い腹痛や出血があり、気を失いそうになる
- ⚠性交渉のあとの出血が何度も続く
- ⚠月経以外の腟からの出血がある
- ⚠普段と違うおりもの(血が混じる、悪臭がある)が続く
- ⚠発熱を伴う下腹部の痛みがある
- ⚠妊娠の可能性があり、片側の下腹部が強く痛む
一般的な症状
- 多くの方には目立った症状がありません。検診で初めて変化が見つかることも少なくありません。
- 月経の異常(量が多い、長く続く、間隔が不規則など)
- 性交渉のあとの出血や、月経以外のときの腟からの出血
- おりものの量やにおい、色の変化
- 妊娠しにくい、または妊娠しても流産をくり返す
- 下腹部の痛みや、骨盤のあたりの違和感
- 妊娠中に早産になりやすい、子宮頸管(子宮の入り口の管)が早く開いてしまうと言われる
原因
主な原因
- お母さんが妊娠中にDES(合成女性ホルモンの薬)を処方され、胎内でその影響を受けたことです。
- DESは胎児の腟や子宮、子宮頸部の形や発達に影響することがあると考えられています。
- 本人の生活習慣や食事が原因で起こるものではありません。
リスク要因
- お母さんが妊娠中(特に妊娠初期)にDESを処方されていた
- 母子手帳や、お母さん・ご家族から聞いた服薬歴がある
- DESが広く使われていた時代(おおよそ1940年代〜1970年代)に胎内にいた世代
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 大量の腟出血、または出血が止まらない
- 耐えられない下腹部の痛み、特に妊娠の可能性があるとき
- 発熱と下腹部の痛みが同時にある
- 妊娠中に出血や強い腹痛がある
定期受診を予約すべき場合:
- お母さんが妊娠中にDESを処方されていた可能性がある(本人に症状がなくても)
- 月経の異常や、性交渉のあとの出血、気になるおりものが続く
- 妊娠を考えている、または妊娠しにくさを感じている
- 出産経験があり、早産や流産をくり返したことがある
- 閉経後に出血があった
診断
まず、お母さんが妊娠中にDESを処方されていたかどうかの聞き取り(問診)がとても大切です。母子手帳やご家族の記憶が手がかりになります。そのうえで、婦人科の内診、細胞診(細胞を採取して調べる検査)、コルポスコピー(腟や子宮頸部を拡大して観察する検査)などを行い、必要に応じて超音波やMRIで子宮や腟の形を確認します。
行われる可能性のある検査
- 問診(お母さんの妊娠中の服薬歴の確認)
- 婦人科の内診と視診
- 子宮頸部・腟の細胞診(かんたんに細胞を採取する検査)
- コルポスコピー(腟・子宮頸部を拡大して見る検査)
- 経腟超音波検査(子宮や卵巣の様子を見る)
- MRI検査(子宮や腟の形を詳しく見る)
- 子宮卵管造影検査(子宮の形や卵管の通りを調べる)
- 必要に応じた組織の一部採取(生検)
- 妊娠を希望する場合の不妊に関する検査
診察で予想されること
検査は外来で行えるものがほとんどです。内診や細胞診は少し緊張するかもしれませんが、短時間で終わります。結果によっては、数か月ごとの経過観察を提案されたり、専門の医療機関を紹介されたりします。検査の意味や流れは、事前に医師に確認しておくと安心です。
治療
治療は、症状や検査で見つかった変化の内容によって変わります。特に問題が見つからなければ、定期的な検診で経過を見ていくことが中心です。腟や子宮頸部に変化がある場合、妊娠を希望している場合、妊娠中の場合などは、それぞれに合わせた対応を専門の医師と相談して決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 決められた間隔で婦人科検診を受け、結果を自分でも記録しておく
- 月経の記録をつけ、出血や痛みの変化に気づけるようにする
- 妊娠を考えているときは、早めに医師にDESの曝露歴を伝える
- 喫煙を避け、適正な体重を保つなど、体調を整える生活を心がける
- 不安や疑問は一人で抱えず、医師や保健師、家族に話す
医療治療
治療の考え方は、症状や検査の結果に合わせて選ばれます。変化が軽い場合は、細胞診やコルポスコピーを定期的に行いながら経過を見ます。腟や子宮頸部に前がん的な変化やがんが疑われる場合は、専門の医療機関で詳しい検査と治療が行われます。妊娠を希望する場合は、不妊相談や生殖に関する専門外来で相談できます。妊娠中は、早産を防ぐために健診の回数を増やしたり、専門施設で管理したりすることがあります。具体的な方法については、担当の医師とよく相談してください。
手術が検討される場合
腟や子宮頸部に前がん的な変化やがんが疑われる場合、変化の広がりに応じて手術が検討されることがあります。手術が必要かどうか、どの方法が合っているかは、専門の医師の説明を聞いたうえで一緒に決めていきます。
この病気と共に生きる
DESの曝露歴があることを知っておくことは、自分の体を守るための大切な情報です。かかりつけの婦人科を持ち、検診の予定をカレンダーに入れておくと安心です。妊娠を考えたときや、別の病気で受診したときは、医師に曝露歴を伝えておきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 婦人科検診を決まった間隔で受ける習慣をつくる
- 月経や出血、おりものの変化を简单的にメモしておく
- 十分な睡眠と休息をとり、ストレスをためこまない
- 喫煙を避け、アルコールはほどほどにする
- 骨盤底の筋肉を保つ軽い運動を取り入れる
食事と運動
特別な食事制限は必要ありません。バランスのよい食事と、ウォーキングなど無理のない運動を続けることが、体調を整える助けになります。妊娠を希望している場合は、葉酸を含む食品を意識することや、体重管理について医師に相談するとよいでしょう。
精神的健康と心の健康
「自分や子どもの体に何か起きるのではないか」と不安を感じる方は少なくありません。また、母や家族との関係について複雑な気持ちを抱えることもあります。そうした気持ちは自然なもので、一人で抱え込む必要はありません。つらい気持ちが続くときは、かかりつけ医、地域の保健センター、精神保健福祉センターなどの相談窓口を利用してください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えたときは、すぐに周囲の人や医療機関、地域の緊急の相談窓口に助けを求めてください。
予防
過去に胎内でDESにふれたこと自体を防ぐことはできません。ただし、DESは現在使われていないため、新たに同じ影響を受ける心配はありません。今できることは、定期的な婦人科検診で変化を早く見つけ、必要な対応をすることです。
検診プログラム
DESの曝露歴がある方は、症状がなくても定期的な婦人科検診を受けることが勧められます。子宮頸がん検診に加えて、腟や子宮頸部を詳しく見る検査が必要な場合があります。検診の間隔や内容は、曝露歴とこれまでの検査結果に応じて医師と相談して決めましょう。妊娠したときは、早めに医師へ曝露歴を伝えてください。
合併症
治療しない場合
- 腟や子宮頸部の前がん的な変化や、まれな種類のがん(明細胞腺がん)を見逃す可能性があります。
- 妊娠しにくさや、子宮外妊娠のリスクが高まることがあります。
- 流産や早産、子宮頸管が早く開いてしまう状態など、妊娠中のトラブルが起こりやすくなることがあります。
- 腟や子宮の形の変化により、婦人科の検査や処置がしにくいことがあります。
長期的な見通し
DESドーターズの多くは健康に過ごしており、必要に応じて検診を受けることで変化に早く気づけます。まれながんは非常に少ない頻度ですが、早期に見つかれば対応しやすいと考えられています。妊娠についても、専門の医療機関で相談しながら進めることで、安心して妊娠・出産をめざせる方が多くいます。不安なときは一人で抱えず、医師や相談窓口を頼ってください。
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最終更新: 2026年10月23日
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