発達性言語障害(DLD)について
概要
発達性言語障害(DLD:Developmental Language Disorder)は、ことばを理解したり話したりすることが、同じ年齢の子どもたちに比べて難しい状態が長く続くものです。耳の聞こえに問題があったり、知的な発達に大きな遅れがあったり、ことばに触れる機会が極端に少なかったりするわけではないのに、ことばの力が育ちにくいのが特徴です。「話す」だけでなく、「相手の言っていることを理解する」「文章を組み立てる」「読み書きにつなげる」など、ことばに関わる幅広い力に影響することがあります。本人のやる気や育て方の問題ではなく、脳の中でことばを扱う働きの育ち方の違いによるものと考えられています。
重要な事実
- DLDは珍しいものではなく、子どものおよそ7%程度に見られると報告されています。30人のクラスなら2人くらいの割合です。
- 知的な力や聞こえに大きな問題がないのに、ことばの理解や表現が難しいのが特徴です。
- 早めに気づいて、家庭・園・学校での伝え方の工夫やことばの専門家の支援を受けることで、困りごとは大きく減らせます。
DLDは特別にめずらしいものではありません。海外の調査では、子どもの約7%、クラスに2人ほどいる計算になります。ことばの遅れを心配して相談に来る子どもの中でも、よく見られる状態のひとつです。
ことばの発達に遅れがある子どもに多く見られます。男の子にやや多いとされていますが、女の子にも起こります。また、子どものころだけの問題ではなく、大人になっても読み書きや会話の難しさが残ることがあります。
症状
- 急に話せなくなった、ろれつが回らない、顔や手足の片側が動かしにくい(脳卒中の可能性があります)
- けいれんが起きた、意識がぼんやりして呼びかけに反応しにくい
- 頭を強く打った後に、ことばが出にくくなった、様子がおかしい
- 呼吸が苦しそう、顔色が悪いなど、全身状態が急に悪くなった
- ⚠それまで話せていたことばが、数日単位で急に減った
- ⚠呼びかけへの反応が急に悪くなった、聞こえにくそうになった
- ⚠吃音が急に強くなり、話すことを極端に嫌がるようになった
- ⚠強い不安や不眠、登園・登校を強く拒む状態が続いている
一般的な症状
- 話し始めが遅い、使える単語の数が少ない
- 二語以上の文を作るのが苦手、語順を間違えやすい
- 相手の話の内容を理解するのに時間がかかる、長い指示が伝わりにくい
- 会話のやりとりが続かない、話の筋が飛びやすい
- 言い間違いが多い、音が抜けたり置き換わったりする
- ことばの遅れに加えて、読み書きの困難が出ることがある
子供の症状
- 1歳半を過ぎても意味のある単語がほとんど出ない
- 2歳を過ぎても二語文(「ママ きた」など)が出ない
- 3歳を過ぎても「どこ」「なぜ」といった質問の意味がわかりにくい
- 園や保育所で、先生の指示が通らないことが多いと言われる
- 友だちの遊びの輪に入りにくい、ことばでのやりとりを避ける
- 絵本の読み聞かせを極端に嫌がる、音読がとても苦手
- 吃音(どもり)が6か月以上続いている
高齢者の症状
- DLDは生まれつきの育ち方の違いによるもので、大人になってから新しく始まるものではありません。ただし、大人になっても会議での話の理解、長い文章を読むこと、文章を書くことに困りごとが残ることがあります。
- 学生時代にことばや読み書きで苦労した経験が、自信のなさや対人場面の緊張につながることがあります。
- 高齢になって急にことばが出にくくなった場合は、DLDではなく別の病気(脳卒中など)の可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。
原因
主な原因
- 脳の中でことばを理解し組み立てるネットワークの発達のしかたの違いが関係すると考えられています。
- 遺伝的な要因が関わることがあり、家族にことばや読み書きの困難がある人を見かけることがあります。
- はっきりした単一の原因はまだわかっていません。難聴や知的な遅れが直接の原因ではない点が、DLDの大事な特徴です。
リスク要因
- 家族(親やきょうだい)に、ことばの発達の遅れや読み書きの困難がある
- 早産や低出生体重であった
- 男の子である(やや多いとされています)
- まわりの大人とのやりとりや読み聞かせの機会がとても少ない環境
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に話せなくなった、ことばが出にくくなった
- けいれん、意識の変化、頭を打った後の変化がある
- 聞こえが急に悪くなったように見える
定期受診を予約すべき場合:
- 1歳半を過ぎても単語がほとんど出ない、2歳を過ぎても二語文が出ない
- 3歳を過ぎても、簡単な指示が伝わりにくいと感じる
- 園や学校で「話が通じにくい」「友だちとのやりとりが難しい」と言われる
- 吃音が6か月以上続いている
- 読み書きの苦手さが強く、本人がつらそうにしている
診断
小児科や地域の保健センター、ことばの専門家(言語聴覚士)が、お子さんのことばの様子をていねいに見ていきます。まず耳の聞こえに問題がないかを確認し、そのうえで、理解する力・話す力・発音・やりとりの力を、年齢に合った方法で評価します。生活の様子や、園・学校での姿もあわせて聞き取り、他の原因(難聴や知的な遅れなど)がないかを確かめます。
行われる可能性のある検査
- 聴力検査(耳の聞こえを確認する検査)
- 言語発達の検査(ことばの理解と表現をみる検査)
- 発達検査(全体的な発達の様子をみる検査)
- 園・学校の先生からの聞き取りや、生活の様子についての面談
- 必要に応じて耳鼻咽喉科を受診したり、血液検査や画像検査を行ったりすることもあります(多くはありません)
診察で予想されること
診断までには何回か通院が必要で、時間がかかることがあります。これは、お子さんのことをていねいに見極めるためです。診断名は「レッテルを貼るため」のものではなく、どんな支援が合っているかを見つけるための目安だと考えてください。
治療
DLDの支援の中心は、ことばの練習と、まわりの人の伝え方の工夫です。お子さんの得意・苦手に合わせて、家庭・園・学校が一緒になって環境を整えていくことが、生活のしやすさにつながります。早めに始めるほど、効果を感じやすいとされています。
自宅でのセルフケア
- ゆっくり、短い文で話しかける。一度にたくさんの指示を出さない
- 絵カードや写真、実物を見せながら伝えると理解しやすくなります
- 子どもの言いたいことを、大人がやさしくことばにして返す(「バス、乗りたいんだね」)
- 質問したら、すぐに答えを求めず、待つ時間を作る
- 絵本の読み聞かせを毎日の習慣に。無理に質問攻めにせず、一緒に楽しむ
- テレビや動画をながす時間を減らし、顔を合わせて話す時間を増やす
- できたことを具体的にほめる。失敗を責めない
医療治療
ことばの専門家(言語聴覚士)によることばの訓練や、発達に合わせた支援が中心になります。聞こえに問題がある場合は耳鼻咽喉科で相談します。園や学校とは、指示の伝え方や掲示の工夫など、環境を調整する相談を進めます。DLDそのものを根本から治す薬や手術はありません。不安や集中のしにくさなど、困りごとに合わせて医療機関が相談にのることはありますが、内容は人によって異なります。
手術が検討される場合
手術で治す性質のものではありません。
この病気と共に生きる
毎日の生活の中では、「伝わった」という小さな成功体験を積み重ねることが大切です。話す速さをゆっくりにしたり、大事なことは口だけでなく絵や文字でも示したりすると、お子さんもご家族もずっと楽になります。学校や園とは、早い段階から情報を共有しておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい睡眠を確保する(睡眠不足はことばや集中に影響します)
- 体を動かす遊びを毎日の習慣にする
- 画面を見る時間と、人と話す時間のバランスを意識する
- 子どもの興味のあることを通じて、ことばのやりとりを増やす
- ご家族だけで抱え込まず、支援者や同じ立場の家族とつながる
食事と運動
DLDに特別な食事や食事制限はありません。バランスのよい食事と、毎日の適度な運動、十分な睡眠が、脳と体の育ちの土台になります。特定の食品やサプリメントでことばが伸びるという確かな根拠はないため、高額な商品を勧められても、まずはかかりつけの医療機関に相談してください。
精神的健康と心の健康
ことばで伝えられない経験が続くと、子どもは自信をなくしたり、友だち関係で傷ついたり、不安やイライラが強くなることがあります。行動の問題に見えるものが、実は「伝えられないつらさ」であることも少なくありません。ご家族も、毎日のやりとりに疲れたり、心配が続いたりすることがあります。それは自然なことです。つらい気持ちが続くときは、地域の心の相談窓口やかかりつけの医療機関に早めに相談してください。ひとりで抱え込まないでください。
予防
DLDを完全に防ぐ方法は、今のところわかっていません。ただし、まわりの大人が早く気づいて関わることで、困りごとを小さくすることはできます。妊娠中の健康管理や、出産後の健やかな養育環境も、子どもの発達を支える大切な土台です。
ワクチン
DLDを防ぐ特別なワクチンはありません。ただし、決められた定期接種をきちんと受けることは、感染症から子どもを守り、健やかな発達を支えることにつながります。
検診プログラム
日本では、1歳6か月児健診や3歳児健診などの乳幼児健診で、ことばや発達の様子を確認する機会があります。健診は、心配ごとを早めに相談できる大切な場です。気になることがあれば、健診を待たずに地域の保健センターや小児科に相談してかまいません。
合併症
治療しない場合
- 読み書きの学習につまずきやすくなる
- 授業の内容が理解しにくく、学習の遅れにつながることがある
- 友だちとのやりとりが難しく、孤立やいじめのリスクが高まることがある
- 「自分はダメだ」と自信を失い、不安や行動の問題が出ることがある
- 大人になってから、就労や社会参加の場面で困りごとが残ることがある
長期的な見通し
DLDは、成長とともにことばの力が伸びていくお子さんも多くいます。一方で、大人になっても読み書きや会話の難しさが残ることもあります。けれども、早めの支援とまわりの理解があれば、学校生活や仕事、人間関係を十分に築いていくことはできます。ことばの力は、一生かけて育てていけるものです。あせらず、お子さんのペースを大切にしてください。
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最終更新: 2026年10月23日
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