糖尿病と勃起障害(ED)
概要
糖尿病があると、血糖値が高い状態が長く続くことで、体の細い血管や神経が少しずつ傷ついていきます。勃起(ペニスが硬く大きくなること)には、ペニスに十分な血液が流れ込み、その血液がとどまることが必要です。この血管や神経の変化が、勃起しにくい、硬さが続かないといった「勃起障害(ED)」につながることがあります。EDは恥ずかしい話ではなく、体の血管の状態を教えてくれるサインのひとつでもあります。
重要な事実
- 糖尿病のある男性では、勃起障害が起こりやすいことが知られています。
- 血糖値をよい状態に保つことが、EDの予防にも治療にも大切な土台になります。
- EDは、心臓や血管の病気が隠れていることを知らせるサインになることがあります。
- 相談すれば、生活の工夫から治療まで、いくつもの選択肢があります。
はい、めずらしいものではありません。糖尿病のある男性では、そうでない男性に比べて勃起障害が起こりやすいと報告されています。年齢を重ねるほど増えますが、若い人でも起こります。悩んでいる人は多くても、口に出して相談する人は少ないというだけのことです。
糖尿病のある男性全般が対象です。とくに、血糖値の高い状態が長く続いている人、たばこを吸う人、血圧やコレステロールが高い人、気分の落ち込みが続いている人に多くみられます。なお、糖尿病による性生活の悩みは女性にもありますが、この記事では男性の勃起障害について説明します。
症状
- 胸の強い痛み、冷や汗、息苦しさ、肩やあごへの痛み(性行為の最中や直後に起きた場合も)— 心臓の病気の可能性があります。すぐに119番に連絡してください。
- 勃起が4時間以上続いて、痛みを伴う(持続勃起症の可能性)— すぐに119番、または地域の救急相談窓口に連絡してください。
- 意識がもうろうとする、ろれつが回らない、体の片側が動かない、激しい頭痛 — すぐに119番に連絡してください。
- ⚠勃起が数時間続いて、痛みや張りがある
- ⚠これまでになかった勃起障害が、急に始まった(とくに若い人やケガのあと)
- ⚠尿が出にくい、排尿時に強い痛みがある
- ⚠冷汗や動悸を伴う低血糖のような症状が繰り返す
一般的な症状
- 朝立ち(朝の自然な勃起)が減った、ほとんどなくなった
- 性交のときに十分な硬さが得られない、硬さが途中で弱くなる
- 性欲はあるのに、体がついてこない感じがする
- 勃起するまでに時間がかかるようになった
- 射精やオーガズムの感じ方が変わった
- 性生活への不安から、気分が落ち込む、パートナーを避けてしまう
子供の症状
- 小児には通常あてはまりません。思春期以降の若い人でも、糖尿病があれば起こる可能性があります。
- 思春期の場合は、体の変化への不安や気持ちの面も大きく関わります。一人で悩まず、信頼できる大人や医師に相談できるとよいです。
高齢者の症状
- 年齢による体の変化と、糖尿病による血管・神経の変化が重なりやすくなります。
- 血圧や脂質の薬、前立腺の病気やその治療など、別の要因が関わっていることも多いです。
- 「年のせい」と決めつけずに相談すると、改善できることが見つかることがあります。
原因
主な原因
- 高い血糖値が続くことで、ペニスに血液を送る細い血管が傷つき、血流が悪くなる
- 神経が傷つくことで、勃起の指令が伝わりにくくなる(糖尿病性神経障害)
- 血管の内側の働き(内皮機能)が低下し、血液が流れ込みにくくなる
- 男性ホルモン(テストステロン)の値が低くなっている
- 糖尿病の治療を含む、使っている薬の影響
- ストレス、不安、パートナーとの関係、うつ的な気分などの心の要因
- たばこ、飲酒、睡眠不足、運動不足などの生活習慣
リスク要因
- 血糖値(HbA1c)が高い状態、または糖尿病の期間が長い
- 高血圧、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)
- 肥満、運動不足
- うつ的な気分、強いストレス、睡眠の悩み
- 飲酒量が多い
- 心臓や血管の病気の既往
- 年齢(加齢)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 勃起が4時間以上続いて痛みがある(持続勃起症の可能性)
- 勃起障害が急に始まった、ケガや手術のあとに始まった
- 排尿がつらい、尿が出にくい
- 胸の痛みや息苦しさがある(この場合は119番)
定期受診を予約すべき場合:
- 勃起しにくい、硬さが続かない状態が数か月以上続いている
- 朝立ちが減った、ほとんどない
- 性生活のことで不安や悩みがあり、気分が落ち込んでいる
- 血糖値のコントロールが思わしくないと言われた
- パートナーとの関係に影響が出ている
診断
まず問診で、いつごろから、どのような状態か、朝立ちの有無、性生活の状況、ストレスや気分、パートナーとの関係、飲酒や喫煙、使っている薬などを伺います。あわせて、糖尿病のコントロール状況や血圧・脂質を確認し、必要に応じて血液検査や血管・神経の検査を行います。症状の強さを整理するための問診票を使うこともあります。診断は、体の要因と心の要因の両方から総合的に考えます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(血糖値、HbA1c、脂質、腎機能など)
- 血圧測定
- 男性ホルモン(テストステロンなど)の血液検査
- ペニスに流れる血液の量をみる超音波検査
- 神経の働きをみる検査
- 症状の程度を確認する問診票(記載式の質問票)
診察で予想されること
診察は数十分程度で、一度で終わることもあれば、検査のために何度か通うこともあります。話しづらい内容かもしれませんが、医師は慣れています。必要があれば泌尿器科や、糖尿病の療養指導をしてくれる看護師・栄養士につないでもらえます。
治療
治療は「糖尿病そのものの治療」と「勃起障害への対応」を組み合わせて進めます。血糖値・血圧・脂質をよい状態に保つことは、EDの改善にも今後の血管の健康にも役立ちます。そのうえで、生活の工夫、心の面のサポート、必要に応じて医療的な治療を組み合わせます。どの方法が合うかは人によって違うので、医師と相談しながら決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 血糖値をよい状態に保つ(食事・運動・通院・薬をきちんと続ける)
- 禁煙する(受動喫煙も避ける)
- 適度な運動を無理のない範囲で続ける
- 体重を適正に近づける
- 睡眠を十分にとる、生活リズムを整える
- 飲酒は控えめにする
- ストレスをためこまず、リラックスする時間をつくる
- パートナーと、気持ちや不安について話してみる
医療治療
医療的な方法にはいくつかの種類があります。まず血糖・血圧・脂質を整える治療が土台になります。勃起を助ける方法としては、血流を助けるタイプの内服薬、ペニスに直接注入する治療、吸引式の器具、カウンセリングやパートナーとの話し合い、男性ホルモンのバランスに問題があればその調整などが挙げられます。内服薬は、心臓の病気がある人や特定の血圧の薬を使っている人など、使えない場合があります。自己判断で使わず、必ず医師・薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
他の方法が合わない、または効果が十分でない場合に、専門の施設で手術が検討されることがあります。適応や実施できる施設は限られているため、専門医との相談が必要です。
この病気と共に生きる
EDは生活の一部に影響しますが、日常生活の中で工夫できることは多くあります。血糖値の記録や通院を続けること、生活リズムを整えることが、体にも心にも良い影響を与えます。性生活は「できなければ終わり」ではなく、パートナーとの関係や触れ合い方を含めて、二人で考えていくものです。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙する
- 塩分や脂質をとりすぎない食事を心がける
- ウォーキングなど、息が少しはずむ程度の運動を続ける
- 睡眠時間を確保し、いびきや日中の眠気があれば相談する
- 飲酒は量と頻度を控えめにする
- ストレス対処の方法をいくつか持っておく
- 定期的に健診・受診を続ける
食事と運動
食事は、野菜・魚・大豆製品などを中心に、塩分と脂質を控えめにし、間食や甘い飲み物を減らすことが基本です。運動は、早歩きの散歩のような有酸素運動を、無理のない範囲で毎日少しずつ続けるのがおすすめです。低血糖を起こさないよう、薬を使っている人は主治医・管理栄養士と相談しながら進めてください。
精神的健康と心の健康
EDは、自信の低下、不安、いらだち、パートナーとの距離感、うつ的な気分など、心に大きく影響することがあります。これは弱さではなく、よくある反応です。気分の落ち込みが2週間以上続く、眠れない、何をしても楽しめない、死にたい気持ちがよぎるといったときは、一人で抱えず、医療機関や地域の相談窓口に連絡してください。命に関わる緊急の場合は119番へ。つらい気持ちは必ず相談できる場所があります。
予防
完全に防ぐことは難しいものの、リスクを下げることは十分にできます。いちばん大切なのは、血糖値をよい状態に保つことです。禁煙、適正体重、運動、血圧と脂質の管理、睡眠を整えることも役立ちます。
検診プログラム
糖尿病のある人は、HbA1cや血糖値、血圧、脂質、尿、目の検査などを定期的に受けることが勧められます。日本では特定健康診査(メタボ健診)などで糖尿病の早期発見が行われています。性生活の悩みも、健診や受診のときに一緒に伝えてみてください。
合併症
治療しない場合
- パートナーとの関係や自信、気分に影響が続く
- うつ的な状態が強くなることがある
- 心臓や血管の病気のサインを見逃す可能性がある
- 血糖コントロールへの意欲が下がり、糖尿病の状態が悪化しやすくなる
長期的な見通し
多くの人は、血糖コントロールを整えることと適切な治療を組み合わせることで、状態の改善や維持が期待できます。糖尿病の期間が長い場合でも、あきらめる必要はありません。相談することで選択肢は増えていきます。一人で抱えず、まずはかかりつけ医に話してみてください。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月23日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.