糖尿病と健康的な食事
概要
糖尿病(とうにょうびょう)は、血液の中の糖分(血糖=血液中のブドウ糖)が高い状態が続く病気です。食べた物はブドウ糖になって血液で全身に運ばれ、体を動かすエネルギーのもとになります。このブドウ糖を体の細胞に取り込むのを助けるのが「インスリン」というホルモンです。インスリンが十分に出ない、またはうまく働かないと、ブドウ糖が血液の中にたまり、尿に出てしまうことがあります。食事は血糖値に直接関係するので、「何を・どれくらい・どの順番で食べるか」を知ることが、糖尿病と上手に付き合う近道になります。
重要な事実
- 糖尿病は「甘い物の食べすぎだけ」が原因ではありません。体質(遺伝)、体重、運動不足、睡眠不足、ストレスなどが重なって起こります。
- 食事の基本は「がまん」ではなく「組み立て」です。主食・主菜・副菜をそろえ、野菜から食べるだけでも血糖値の上がり方は変わります。
- 初期は自覚症状がないことが多いため、健診の血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー=過去1〜2か月の血糖の平均をみる検査)が大切な手がかりになります。
とても多い病気です。国の調査では、糖尿病が強く疑われる人が約1000万人、その可能性がある人を含めると約2000万人と推計されています。つまり、身近な人や自分自身が関係していても不思議ではありません。
大人、とくに中高年に多い病気ですが、子どもや若い人にも起こります。体質に加えて、体重の増えすぎ(とくに内臓のまわりの脂肪)、運動不足、食生活の乱れ、睡眠不足、ストレスなどが重なることで起こりやすくなります。家族に糖尿病の人がいる場合も、早めの健診が役立ちます。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけても反応がはっきりしない、けいれんがある
- 呼吸が速く深い、口から果物がくさったようなにおいがする、呕吐をくり返す(体にケトン体という物質がたまる危険な状態の可能性)
- 冷汗、動悸、手のふるえ、強いめまいがあり、自分で糖分をとるのが難しい(薬による低血糖が重症化している可能性)
- 激しい腹痛と呕吐が続き、水分もとれない
- ⚠高熱が続く、傷や足の傷が赤く腫れて膿んでいる
- ⚠のどが渇く・尿が増える状態が急にひどくなった
- ⚠数日のうちに体重が急に減った
- ⚠呕吐や下痢で食事や水分がとれない日が続いている
一般的な症状
- 初期はほとんど症状がなく、健診で初めて気づくことが多い
- のどが渇いて水をよく飲む
- 尿の回数や量が増える(とくに夜中にトイレに起きる)
- だるい、疲れやすい、力が出ない
- 食べているのに体重が減る
- 傷が治りにくい、皮膚がかゆい、感染をくり返す
- 目がかすむ
- 手足の先がしびれる、感覚がにぶい
子供の症状
- のどが渇く、水を大量に飲む、尿の回数が増える(おねしょが急に戻ることも)
- 短期間で体重が減る
- 元気がない、眠そう、学校で集中できない
- おなかの痛み、吐き気、呕吐(はく)をくり返す
- 息が速い、口から甘いようなにおいがする(この場合は急いで受診が必要です)
高齢者の症状
- のどの渇きや尿の増加が目立たず、気づきにくいことがある
- 食欲がない、体重が減る、元気が出ないなど、はっきりしない不調として現れる
- 脱水(体の水分が足りない状態)を起こしやすい
- 薬で血糖を下げている場合は、低血糖(血糖が下がりすぎる状態)の症状に気づきにくいことがある
- もの忘れや認知機能との関わりが指摘されており、家族の気づきが大切
原因
主な原因
- 1型:体の免疫の仕組みが、血糖を調整するホルモン(インスリン)を作る細胞をこわしてしまうことで起こります。生活習慣だけが原因ではありません。
- 2型:インスリンが出にくくなる、または体の中で効きにくくなる状態に、体質と生活習慣(食べすぎ、運動不足、体重の増加、睡眠不足、ストレス)が重なって起こります。糖尿病の多くはこのタイプです。
- 妊娠糖尿病:妊娠中に血糖が高くなる状態で、出産後に戻ることも多いですが、その後2型糖尿病になりやすいことが知られています。
- そのほか:すい臓の病気、長く使っている薬の影響、遺伝的な病気などが原因になることもあります。
リスク要因
- 家族(親・きょうだい)に糖尿病の人がいる
- 体重が増えている、とくにおなかの内臓のまわりに脂肪がついている
- 運動する習慣が少ない、座っている時間が長い
- 高血圧、脂質異常(コレステロールや中性脂肪の異常)がある
- 年齢が上がってきた(40歳以上は健診が大切です)
- 妊娠糖尿病になったことがある、大きな赤ちゃんを出産したことがある
- 睡眠不足、喫煙、強いストレスが続いている
- 甘い飲み物・菓子・夜遅い食事が多い
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 意識がもうろうとしている、けいれん、呼吸が速く深い、口から果物のようなにおいがする(救急車を呼んでください)
- 冷汗・動悸・ふるえが強く、自分で対処できない
- 足の傷が黒ずんできた、膿が出る、腫れて熱をもっている
- 高熱、呕吐・下痢で水分がとれない
定期受診を予約すべき場合:
- 健診や人間ドックで血糖値・HbA1cを指摘された
- のどが渇く、尿の回数が増えた、体重が減った、疲れやすい
- 手足のしびれ、目のかすみ、傷が治りにくいと感じる
- 食事の内容や量について相談したい、何から変えればよいかわからない
- 薬や通院について不安がある、血糖の記録の見方を知りたい
診断
血液検査で血糖値とHbA1cを測って判断します。症状がある場合は1回の検査でわかることもありますが、症状がない場合は別の日の検査で確認することが多いです。糖尿病かどうかの境界にあたる「境界型」と言われることもあり、その場合は生活習慣の見直しで改善が期待できます。
行われる可能性のある検査
- 空腹時血糖(食事をしていないときの血糖値)
- 随時血糖(食事の時間に関係なく測った血糖値)
- HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均をみる検査)
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(決まった糖分を飲んでから時間ごとに血糖を測る検査)
- 尿検査(尿の糖・ケトン体・たんぱくを調べる)
- 合併症を早期に見つける検査(眼底検査、尿のアルブミン、神経の感覚、足の状態など)
- 血圧・体重・脂質など、全身の状態をみる検査
診察で予想されること
検査の結果をもとに、今の状態と、これからの目標(体重、HbA1c、血圧など)を一緒に決めていきます。食事や運動について、管理栄養士と具体的なメニューを相談できることもあります。定期的な通院で変化をみていくので、一度の結果で気持ちが大きく揺れても大丈夫です。
治療
治療の中心は、食事・運動・薬・そして「学ぶこと」の組み合わせです。食事は「食べてはいけない物リスト」ではなく、主食・主菜・副菜のバランスと量、食べる順番、食べる時間を整えることから始めます。目標は人によって違うため、医師や管理栄養士と一緒に決めることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 3食をできるだけ決まった時間に食べる。抜いたり、夜遅くにまとめて食べたりしない
- 主食(ごはん・パン・めん)は量を意識する。茶わん1杯を目安に、大盛りを避ける
- 野菜・きのこ・海藻などの副菜から食べ始める。よく噛んでゆっくり食べる
- 甘い飲み物(ジュース・加糖のコーヒーなど)を水・お茶に置きかえる。間食は回数と量を決める
- 塩分を控えめにし、加工食品や外食の回数を意識する
- アルコールは飲む量と日を決め、飲まない日をつくる
- 自分に合った運動を続ける(早歩きなど、息が少し上がる程度)
- 体重と食事、歩数などを簡単に記録する。記録は自分を責めるためではなく、傾向を知るために使う
- 禁煙する。歯みがきと歯科受診を習慣にする(歯ぐきの病気は血糖に影響します)
- 睡眠を十分にとる。強いストレスが続くときは相談する
医療治療
食事と運動だけでは目標に届かないときは、血糖を下げる飲み薬や注射を使うことがあります。薬にはいくつかの種類があり、体の状態・年齢・腎臓や心臓の状態・低血糖の起きやすさなどから、医師が合うものを選びます。薬の名前や量、飲み方は医師・薬剤師の指示に従ってください。自己判断で飲む量を変えたり、やめたりすると危険なことがあります。薬を使っているときは低血糖(血糖が下がりすぎる状態)に注意し、冷汗・動悸・手のふるえ・強い空腹感が出たら早めに対処し、くり返すようなら受診してください。
手術が検討される場合
糖尿病そのもののために手術をすることはありません。手術が必要になるのは、足の傷や感染が進んだ場合や、ほかの病気の治療が必要な場合です。手術の前後は血糖が乱れやすいため、ふだんから血糖を整えておくことが大切になります。
この病気と共に生きる
食事は毎日のことなので、完璧を目指すと疲れてしまいます。「今日は野菜から食べられた」「甘い飲み物を水にした」といった小さな変化を数えていくのがおすすめです。1回食べすぎても、次の食事で整えれば大丈夫。続けられる形を見つけることが一番の近道です。
生活習慣のアドバイス
- 朝食を抜かない。生活のリズムを整える
- 買い物のときに、野菜・たんぱく質・主食をそろえておく(家にある物で選びやすくなります)
- 外食では、単品より定食のような組み合わせを選ぶ。ごはんの量を調整する
- 座り続ける時間が長い日は、こまめに立って歩く
- 体重は同じ時間・同じ条件ではかる(増減の傾向をみる)
- 健診・歯科受診を毎年の習慣にする
- 禁煙を続ける。吸いたくなったときの対処法を決めておく
- 家族や友人に自分の状況を伝え、協力してもらう
食事と運動
食事は「主食・主菜・副菜」の3つをそろえるのが基本です。主食はごはん・パン・めんなどの炭水化物、主菜は肉・魚・卵・大豆製品などのたんぱく質、副菜は野菜・きのこ・海藻です。野菜から食べ、よく噛むと、血糖の上がり方がゆるやかになります。食物繊維(野菜・豆・海藻・きのこに多い)を毎食とり、甘い飲み物を減らすだけでも変化が出ます。運動は、早歩きのような息が少し上がる運動を、無理のない範囲で毎日の生活に少しずつ取り入れるのがおすすめです。厚生労働省は、成人で週に合計おおよそ150分程度の運動を目安として示しています。持病や足の痛み、心臓の病気がある場合は、始める前に医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
「食べたい物を我慢できない自分が悪い」と感じてしまう人が多くいます。でも、食事の失敗は性格の問題ではありません。糖尿病の食事は長く続けるものなので、疲れたり、やる気が出なかったりする時期があって自然です。気分の落ち込みが続く、眠れない、食べることが怖いと感じるときは、かかりつけ医に相談してください。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちが出てきたときは、一人で抱えず、地域の相談窓口や医療機関に連絡してください。緊急の場合は119番に電話してください。
予防
2型糖尿病は、食事・運動・体重管理などの生活習慣を整えることで、発症のリスクを下げられることが分かっています。とくに「境界型」と言われた段階では、改善が期待できます。1型糖尿病は生活習慣で防ぐことはできません。
ワクチン
糖尿病があると感染症にかかったときに重症化しやすいため、インフルエンザや肺炎などのワクチンについて、かかりつけ医に相談することが勧められています。接種の可否や時期は、体の状態に合わせて判断してもらってください。
検診プログラム
40歳以上などの公的な健診(特定健康診査)では血糖値とHbA1cを調べられます。家族に糖尿病の人がいる、体重が増えた、運動不足が続いている場合は、年齢にかかわらず早めに相談しましょう。健診結果は毎年保管し、前年との変化をみると気づきやすくなります。
合併症
治療しない場合
- 目:網膜症(目の奥の血管が傷む)で視力が落ちることがある
- 腎臓:腎症(腎臓のろ過の働きが落ちる)が進み、透析が必要になることがある
- 神経:手足のしびれ・痛み・感覚のにぶさ。足の傷に気づきにくくなる
- 足:血流が悪くなり、傷が治らず重症化することがある
- 心臓・脳:心筋梗塞や脳卒中など、血管の病気のリスクが高くなる
- 歯ぐきの病気(歯周病)が悪化しやすく、逆に血糖にも影響する
- 感染症にかかりやすく、重症化しやすい
長期的な見通し
糖尿病は長く付き合う病気ですが、食事・運動・薬・定期的な通院を組み合わせることで、合併症を防ぎながら元気に暮らしている人はたくさんいます。血糖の状態は毎日の小さな選択で変わっていきます。うまくいかない時期があっても、そこから立て直せます。まずは一度、かかりつけ医や管理栄養士に相談してみてください。
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最終更新: 2026年10月23日
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