子どもの糖尿病(小児・思春期の糖尿病)
概要
糖尿病(とうにょうびょう)は、血液の中の糖(血糖=けっしょう)が高くなりすぎる病気です。食べたものがエネルギーに変わるとき、すい臓という臓器で作られる「インスリン」というホルモンが、糖を体の細胞に取り込む手助けをしています。インスリンが足りない、またはうまく働かないと、糖が血液の中にたまってしまいます。子どもや10代の糖尿病には、体の免疫のしくみがインスリンを作る細胞を壊してしまう「1型」と、体質に生活習慣が重なってインスリンが効きにくくなる「2型」があります。
重要な事実
- 糖尿病は「甘いものを食べすぎた罰」ではありません。1型は生活習慣が原因ではなく、本人や家族のせいでもありません。
- 子どもの糖尿病で多いのは1型ですが、思春期以降は肥満の増加に伴って2型も増えていると考えられています。
- 毎日の血糖測定、食事や運動の工夫、学校や家族のサポートがあれば、学校生活・部活動・進学を続けられます。
日本では、子どもの1型糖尿病は決して多い病気ではありませんが、少しずつ増えているといわれています。10代の2型糖尿病は、子どもの肥満が増えたことと関係して増えていると考えられています。
赤ちゃんから10代まで、どの年齢でも起こります。1型は就学前から思春期にかけて多くみられます。2型は思春期以降、とくに肥満や家族に糖尿病の人がいる子どもに多くみられます。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が弱い、けいれんがある
- 呼吸が速く深い、息が果物のような甘いにおいがする
- 嘔吐を繰り返し、水分がとれない
- 血糖値が非常に高いまま下がらない
- ⚠発熱や下痢・嘔吐で水分がとれず、血糖が大きく乱れている
- ⚠短い期間で体重が大きく減っている
- ⚠おねしょが急に戻った、のどが渇く・トイレが近い状態が数日続く
- ⚠元気がなく、学校を休む日が続いている
一般的な症状
- のどが渇いて、水をよく飲む
- トイレの回数が増える、夜中にトイレに起きる
- とくにしていないのに体重が減る
- 疲れやすい、元気がない、集中できない
- 傷が治りにくい、皮膚や陰部のかゆみが続く
- 視界がぼやけることがある
子供の症状
- おねしょが急に戻る(夜尿の再発)
- 体重が増えない、身長の伸びが悪い
- 機嫌が悪い、泣きやすい、元気に遊ばない
- おなかの痛みや嘔吐(おうと)を繰り返す
- 皮膚や陰部の感染症(かゆみ・赤み)を繰り返す
高齢者の症状
- 思春期以降や成人に近づくと、2型では症状がほとんど出ないことがあります
- 学校の尿検査や健康診断で初めて見つかることがあります
- のどが渇く、だるいなどの症状がゆっくり現れ、見逃されやすい傾向があります
原因
主な原因
- 1型糖尿病:体の免疫(自分を守るしくみ)が間違ってはたらき、すい臓でインスリンを作る細胞を壊してしまいます。生活習慣が原因ではありません。
- 2型糖尿病:体質(遺伝)に、肥満・運動不足・睡眠不足などが重なって、インスリンが効きにくくなります。
- そのほか:遺伝子の変化によるもの、一部の薬の影響、すい臓の病気など、まれな種類の糖尿病もあります。
リスク要因
- 家族(親・きょうだいなど)に糖尿病の人がいる
- 肥満、とくにおなか周りに脂肪がついている
- 運動不足、甘い飲み物のとりすぎ
- 思春期(ホルモンの変化で血糖が上がりやすい時期)
- 睡眠不足やストレスが多い
- 一部の自己免疫の病気を持っている(1型と関係することがあります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 嘔吐や下痢で水分がとれない、ぐったりしている
- 呼吸が速い、息が甘いにおいがする
- 血糖値が非常に高い状態が続く
- 意識がぼんやりしている
定期受診を予約すべき場合:
- のどが渇く、トイレが近い状態が数日以上続く
- 体重が減っている、元気がない日が続く
- 学校の尿検査で糖が出たと言われた
- おねしょが急に戻った
- 肥満や生活習慣が気になる、家族に糖尿病の人がいる
診断
問診と血液検査・尿検査で診断します。血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー=過去1〜2か月の血糖の平均をみる検査)が高いと、糖尿病が疑われます。症状が急に出た場合は、入院してすぐに治療を始めることがあります。1型か2型かを見分けるために追加の検査をすることもあります。
行われる可能性のある検査
- 血糖値の測定
- HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均をみる検査)
- 尿糖・尿ケトン体(体に酸がたまっていないかを見る検査)
- 自己抗体検査(1型かどうかの手がかり)
- Cペプチド(インスリンを作る力の目安になる検査)
- 必要に応じて、甲状腺などほかの自己免疫の検査や遺伝子の検査
診察で予想されること
診断のあとは、血糖を安定させるために数日から1週間ほど入院して治療を始めることが多いです。その間に、血糖測定のしかた、食事のとり方、低血糖(血糖が下がりすぎること)への対応などを家族と一緒に学ぶ「教育入院」が行われます。その後は外来に通いながら、成長に合わせて治療を調整していきます。
治療
治療は、小児科医・糖尿病専門医・看護師・管理栄養士・心理士などのチームと家族が一緒に進めます。目標は、血糖を無理なくよい範囲に保ちながら、子どもが元気に学校生活・部活動・成長を続けられるようにすることです。
自宅でのセルフケア
- 毎日の血糖測定(必要に応じて、持続的に血糖を測る機器を使うこともあります)
- 食事の量とタイミングを意識する(炭水化物の量を数える方法など)
- 低血糖に備えて、糖分(ブドウ糖やジュースなど)を持ち歩く
- 運動の前後は血糖を確認し、必要なら補食(少量の間食)をする
- 学校の先生や養護教諭と病気のことを共有しておく
- 発熱や嘔吐など体調が悪いときの対応(シックデイ=体調不良の日の過ごし方)を家族で決めておく
医療治療
1型糖尿病では、体で足りないインスリンを補う治療が中心になります。注射で補う方法や、持続的に注入するポンプを使う方法があり、年齢や生活スタイルに合わせて医師と相談して選びます。2型糖尿病では、まず食事・運動・睡眠などの生活習慣の見直しに取り組み、必要に応じて医療者が薬を検討します。治療の内容や量は一人ひとりに合わせて医師が決めるため、自己判断で変えたり中止したりしないでください。
手術が検討される場合
糖尿病そのものを治す手術はありません。ただし、極端な肥満がある10代の2型糖尿病では、専門の医療チームが手術を含む選択肢を検討することがあります(ごく限られた場合です)。
この病気と共に生きる
血糖測定や食事の工夫は、毎日の生活の一部になります。学校・部活動・旅行・お泊まり会なども続けられます。先生や友だちに病気のことを伝え、低血糖のときの対応を共有しておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 決まった時間に食事をとり、朝食を抜かない
- 部活動や散歩など、体を動かす習慣をつける
- 十分な睡眠をとる
- ストレスをためず、話せる大人を持つ
- 10代は飲酒・喫煙を避ける(血糖や体に影響します)
- 体調が悪いときの連絡先と対応を家族で決めておく
食事と運動
特別な「糖尿病食」を一人だけ食べる必要はありません。家族みんなで、野菜・たんぱく質・主食を組み合わせたバランスのよい食事を心がけましょう。炭水化物の量を数える「カーボカウント」は、血糖を安定させる助けになります。運動は血糖を下げるので、運動の前後の血糖測定と、必要に応じた補食が大切です。激しい運動のあとは夜間に低血糖になることがあるため、寝る前の血糖確認も役立ちます。
精神的健康と心の健康
思春期は、毎日の自己管理に疲れたり、周りと違うと感じたり、不安や落ち込みが生じたりしやすい時期です。これは自然な気持ちで、あなたや家族の努力不足ではありません。つらい気持ちが続くときは、かかりつけ医、学校の先生、スクールカウンセラー、地域の相談窓口(保健所・精神保健福祉センターなど)に相談してください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えたときは、ためらわず119番や、お住まいの地域の救急・相談窓口を利用してください。
予防
1型糖尿病は、今のところ確実な予防法はわかっていません。本人や家族の生活のせいではないことを知っておいてください。2型糖尿病は、家族で肥満を防ぐ、よく体を動かす、睡眠を十分にとる、甘い飲み物を控えるといった生活習慣によって、リスクを下げられる可能性があります。
ワクチン
糖尿病そのものを防ぐワクチンはありません。ただし、感染症にかかると血糖が大きく乱れることがあるため、インフルエンザなどの定期の予防接種について、かかりつけ医と相談しておくとよいでしょう。
検診プログラム
学校の健康診断では尿糖の検査が行われます。肥満がある、家族に2型糖尿病の人がいるなど気になる場合は、小児科で血糖値の検査について相談できます。
合併症
治療しない場合
- 血糖が非常に高くなり、ケトアシドーシス(体に酸がたまる危険な状態)になることがあります
- 低血糖(血糖が下がりすぎること)で意識がもうろうとすることがあります
- 長い目でみると、目(網膜)、腎臓、神経、血管に影響が出ることがあります
- 成長や思春期の進み方に影響することがあります
長期的な見通し
適切な治療とサポートがあれば、多くの子どもは大人になっても健康に近い状態で生活できます。進学、部活動、就職、妊娠・出産も可能です。思春期は血糖が乱れやすい時期ですが、それは失敗ではなく成長の一部です。医療チームと一緒に、少しずつ自分に合ったやり方を見つけていきましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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