糖尿病と糖尿病予備群(プレ糖尿病)
概要
糖尿病は、血液の中の糖(血糖)が高い状態が長く続く病気です。食べた物は体の中でブドウ糖になり、エネルギーとして使われます。そのときに働くのがインスリンというホルモンで、血糖値を下げる役目をしています。インスリンが足りなくなったり、うまく効かなくなったりすると、糖が血液の中にたまりっぱなしになります。これが糖尿病です。糖尿病予備群(プレ糖尿病)は、血糖値が正常より高いけれど、糖尿病と診断されるほどではない「境界の状態」を指します。まだ病気と決まったわけではありませんが、放っておくと糖尿病に進みやすいサインです。だからこそ、早めに気づけたことがチャンスになります。
重要な事実
- 糖尿病予備群は、血糖値が正常より高いけれど糖尿病とまでは言えない、境界の状態です。
- 予備群ではほとんど自覚症状がなく、健康診断などの血液検査で初めて見つかることが多いです。
- 予備群の段階で生活習慣を見直すと、糖尿病への進行を遅らせたり、防いだりできることが分かっています。
とてもよくある状態です。厚生労働省の調査では、糖尿病が強く疑われる人と糖尿病予備群の人は合わせて約2,000万人と推計されています。大人のおよそ6人に1人くらいの割合になります。決して珍しいことではなく、誰にでも起こりうることだと知っておくと気持ちが楽になります。
年齢とともに増え、特に40歳以上で多くなります。家族に糖尿病の人がいる、おなかまわりに脂肪がつきやすい、運動する機会が少ない、といった人がなりやすいと言われています。最近は若い人や子どもでも2型糖尿病が増えています。やせていても発症することはあり、見た目だけで判断はできません。妊娠中に血糖値が上がったことのある人も、その後注意が必要です。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけても反応が弱い、けいれんがある
- 息が荒く深い、ひどい腹痛と嘔吐が続く(体に酸がたまる重い状態の可能性があります)
- 冷汗、手足のふるえ、動悸があり、意識が遠のく(血糖が下がりすぎた重い状態の可能性があります)
- これらの症状があるときは、すぐに119番に電話してください
- ⚠のどが渇く、おしっこが増えるといった症状が急に強くなった
- ⚠短期間ではっきり体重が減った
- ⚠傷や水虫などが化膿して、なかなか治らない
- ⚠足のしびれや痛みが強い、足の色が悪い、冷たい
- ⚠視界が急にぼやけた、ものが二重に見える
- ⚠発熱や嘔吐で、水分がとれない
一般的な症状
- のどが渇く、水をよく飲むようになる
- おしっこの回数や量が増える(特に夜中にトイレに起きる)
- 特に何もしていないのに体重が減る
- 体がだるい、疲れやすい、やる気が出ない
- 傷が治りにくい、皮膚がかゆい、肌が乾燥する
- 手足の先がしびれる、感覚がにぶくなる
- 目がかすむ、視界がぼやける
- 食後に強い眠気を感じる
- 糖尿病予備群では、ほとんど何も感じないことが多い
子供の症状
- のどが渇いて、水をがぶがぶ飲む
- おしっこの回数が増え、夜のおねしょが戻る
- 体重が減る、やせていく
- 元気がない、すぐ疲れる、集中しにくい
- おなかが痛い、吐き気がする(1型糖尿病の始まりのことがあります)
- 子どもはうまく言葉で伝えられないことが多いので、様子の変化に気づいてあげてください
高齢者の症状
- のどの渇きを感じにくく、症状が目立たないまま進むことがある
- 食欲がない、体重が減る、力が出ない
- トイレの回数が増えても「年のせい」と思って見過ごしがち
- 治療中は、血糖が下がりすぎる状態(低血糖)に気づきにくいことがある
- 薬をいくつも飲んでいる場合は、飲み合わせについて医師や薬剤師に相談を
原因
主な原因
- 2型糖尿病:体がインスリンを作る量が足りなくなり、さらにインスリンが効きにくくなる(インスリン抵抗性)ことで起こります。体質と生活習慣の両方が関係します。糖尿病全体の大多数を占めます。
- 1型糖尿病:体の免疫が、インスリンを作る細胞を誤って壊してしまうことで起こります。生活習慣が原因ではありません。
- 妊娠糖尿病:妊娠中に血糖値が上がる状態です。出産後に戻ることが多いですが、その後2型糖尿病になりやすいと言われています。
- そのほか:すい臓の病気、一部の薬の影響、遺伝的な体質によるものなどがあります。
リスク要因
- 家族(親やきょうだい)に糖尿病の人がいる
- おなかまわりに脂肪がついている(内臓脂肪型の肥満)
- 運動する機会が少ない、座っている時間が長い
- 40歳以上
- 妊娠糖尿病の経験がある、または大きな赤ちゃんを出産したことがある
- 高血圧やコレステロールの異常がある
- たばこを吸う
- 睡眠不足やストレスが多い毎日が続いている
- 一部の薬の影響(気になる場合は医師や薬剤師に確認してください)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- のどが渇く、おしっこが増えるといった症状が急に強くなったとき
- 短期間で体重がはっきり減ったとき
- 足の傷が化膿している、色が悪い、感覚がなくなってきたとき
- 視界が急にぼやけたとき
- 発熱や嘔吐で水分がとれないとき
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断で血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値が高いと言われた
- 糖尿病予備群と言われたことがある
- 家族に糖尿病の人がいて、自分も気になっている
- のどが渇く、トイレが近い、疲れやすいといった変化が続いている
- 体重が増えてきた、おなかまわりが気になってきた
- 妊娠を考えている、または妊娠中
診断
糖尿病かどうかは、血液検査の結果で判断します。症状の有無だけで判断することはできません。健康診断で見つかることが多いので、毎年の健診は大切な手がかりになります。検査の結果は、ひとつの数字だけでなく、いくつかの値を組み合わせて、体の状態全体を見ながら医師が判断します。
行われる可能性のある検査
- 空腹時血糖:10時間以上何も食べないで測る血糖値
- 随時血糖:食事の時間に関係なく測る血糖値
- HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー):過去1〜2か月の血糖の平均をみる検査。食事の影響を受けにくい
- 経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT):甘い水を飲んで、その後の血糖値の変化をみる検査
- 尿検査:糖やたんぱくが漏れていないかを確認
- 血圧・体重・コレステロールなど、ほかの生活習慣病のチェック
- 合併症のチェック:目(眼底検査)、腎臓、足の状態など
診察で予想されること
検査は採血と採尿が中心で、痛みは注射針を刺すときの一瞬だけです。ブドウ糖負荷試験では、甘い水を飲んで2時間ほど待つため、少し時間がかかります。日本では、HbA1cが6.5%以上、空腹時血糖が126mg/dL以上といった値を目安に判断しますが、最終的には医師が体の状態全体を見て判断します。結果を聞くときは、気になることをメモしておくと聞きやすくなります。
治療
糖尿病予備群では、まず食事と運動などの生活習慣を整えることが中心になります。糖尿病と診断された場合も、生活習慣の見直しが治療の土台です。そこに必要に応じて薬による治療が加わります。糖尿病は「治る・治らない」だけで考えるよりも、良い状態を長く保ち、合併症を防ぐことを目指す病気です。予備群の段階なら、十分に引き返せます。
自宅でのセルフケア
- 食事の量と内容を整える(野菜から先に食べる、主食は適量にする)
- 甘い飲み物やジュースを水やお茶に置き換える
- 毎日少しでも体を動かす(早歩きなど)
- 週に2回程度、軽い筋力トレーニングを取り入れる
- 体重を毎日または週に1回測って記録する
- 睡眠をしっかりとる、夜更かしを減らす
- 禁煙する(吸っている場合)
- お酒はほどほどにする
- 毎年、健康診断を受ける
- 足を毎日観察する(傷や色の変化、むくみがないか)
医療治療
生活習慣の見直しに加えて、血糖値を下げる飲み薬や、注射による治療が使われることがあります。薬の種類や量は、年齢・体重・腎臓の働き・ほかの病気や飲んでいる薬との組み合わせによって、一人ひとり違います。具体的な薬の名前や使い方については、必ず担当の医師や薬剤師に確認してください。また、血圧・コレステロール・体重の管理も一緒に行います。定期的に、目の検査、尿の検査、足のチェックを受けることが大切です。
手術が検討される場合
糖尿病そのものを手術で治す治療は、一般的ではありません。ただし、糖尿病が原因で起きた合併症(目の病気や、足の傷の悪化など)で手術が必要になることがあります。手術を受けるときは血糖値を安定させることが大切なので、事前に主治医とよく相談します。
この病気と共に生きる
毎日の小さな積み重ねが、いちばんの力になります。完璧を目指す必要はありません。今日は少し歩いた、野菜を一品増やした、そんな小さな変化で十分です。体調や気分によってうまくいかない日があっても、自分を責めないでください。記録をつけておくと、自分ができていることが見えて、通院のときにも役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 食事は決まった時間に、腹八分目を意識する
- 野菜・きのこ・海藻を毎食の最初に食べる
- 間食や夜食の回数と量を少しずつ減らす
- エレベーターより階段を使うなど、日常の中で体を動かす
- 早歩きを1日20〜30分、合計で週150分程度を目安にする
- 長時間座り続けないように、1時間に一度は立ち上がる
- お酒を飲む日は休肝日をつくる
- 歯みがきと歯科受診を習慣にする(歯周病は血糖に影響します)
- 足に合った靴を選び、靴ずれや傷を避ける
食事と運動
食事は「食べない」のではなく「整える」と考えてください。野菜から先に食べ、主食は茶わん1杯程度を目安にすると、食後の血糖の上がり方がゆるやかになります。よくかんでゆっくり食べることも効果的です。運動は、息が少しはずむ程度の早歩きで十分です。通勤や買い物のついでに歩くだけでも立派な運動になります。筋力トレーニングは、いすからの立ち座りや軽いスクワットなど、自分の体に合ったもので構いません。持病や痛みがある場合は、始める前に医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
「自分はだめだ」「この先どうなるんだろう」と気持ちが落ち込むことは、とても自然なことです。糖尿病のある人は、そうでない人に比べて気分の落ち込みが起こりやすいと言われています。落ち込んだときは、ひとりで抱え込まず、家族や友人、かかりつけ医、看護師、管理栄養士など、話せる人に話してみてください。つらい気持ちが2週間以上続く、眠れない、何も楽しめないというときは、心の専門家(心療内科・精神科・公認心理師など)に相談することが助けになります。つらい気持ちが強いときは、地域の相談窓口や、下に示す相談先も利用してください。あなたはひとりではありません。
予防
2型糖尿病と糖尿病予備群は、生活習慣を整えることで、発症を遅らせたり、防いだりできることが分かっています。特に、食事の見直しと運動、適正体重の維持が大切です。激しい変化は必要ありません。少しずつ、長く続けられる方法を見つけることが一番の近道です。
ワクチン
糖尿病のある人は、感染症にかかると重症になりやすいと言われています。インフルエンザや肺炎などのワクチンについて、かかりつけ医に相談してみてください。年齢や持病に応じて公的な助成が受けられる場合があります。
検診プログラム
日本では40〜74歳の人を対象に特定健康診査(メタボ健診)が行われており、血糖値やHbA1cの検査が含まれています。糖尿病予備群と言われた人は、年に1回は検査を受けて変化を確認しましょう。家族に糖尿病の人がいる場合や、体重が増えた、のどが渇くなどの変化がある場合は、40歳前でも早めに医師に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 網膜症:目の血管が傷つき、視力が落ちることがあります
- 腎症:腎臓の働きが落ち、透析が必要になることがあります
- 神経障害:手足のしびれや痛み、感覚がにぶくなることがあります
- 動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中を起こしやすくなります
- 足の傷が治りにくくなり、悪化することがあります
- 歯周病や感染症にかかりやすくなります
- 気分の落ち込みやもの忘れのリスクが高まるとも言われています
長期的な見通し
糖尿病予備群の段階であれば、生活習慣を整えることで進行を防げる可能性が十分にあります。糖尿病と診断された場合も、血糖値を良い範囲に保つことで、合併症を防いだり遅らせたりできます。今は治療の選択肢が増え、多くの人がふだんどおりの生活を続けています。心配なことは、ひとりで抱えずに医師や看護師に相談しながら、自分のペースで進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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