新型コロナの後は糖尿病のリスクが上がる?知っておきたいこと
概要
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかったあと、糖尿病を発症するリスクが高くなる可能性がある——ということが、いくつかの研究で報告されています。糖尿病は、血液の中のブドウ糖(血糖)が多すぎる状態が続く病気です。血糖値を下げるホルモン「インスリン」がうまく働かない、あるいは十分につくられなくなることで起こります。ここで大切なのは、「コロナにかかったから必ず糖尿病になる」わけではない、ということです。リスクが少し上がるかもしれない、という話です。
重要な事実
- 新型コロナにかかった人は、かかっていない人に比べて、その後に糖尿病と診断される人がやや多いという研究報告があります。ただし研究によって結果はばらつきがあり、はっきりした結論はまだ出ていません。
- 感染そのものの影響だけでなく、入院中や外出自粛中の運動不足・体重増加・食事の乱れ・睡眠の乱れなども関係していると考えられています。
- もともと血糖値が高めだった人、肥満のある人、家族に糖尿病の人がいる人などは、感染をきっかけに糖尿病が見つかりやすくなることがあります。感染後は血糖値の検査を一度受けてみると安心です。
糖尿病はとても多い病気で、日本でも成人のおよそ10人に1人が糖尿病か、その手前の状態(糖尿病予備群)だと言われています。新型コロナの後だから特別に珍しい、というわけではありません。ただ、感染後に血糖値が上がりやすくなる人がいることは知られてきています。
年齢を問わず関係がありますが、特に注意したいのは、40歳以上の人、肥満のある人、家族に糖尿病の人がいる人、妊娠中に血糖値が高くなったことのある人、そして新型コロナで重症になった人や入院中にステロイド治療を受けた人です。子どもでも発症することがあります。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が弱い、けいれんがある
- 呼吸が苦しい、息が荒い、顔色が悪い
- 止まらない嘔吐、水分がとれない
- 強い腹痛、おなかが硬い
- 血糖が非常に高い状態が続き、吐き気・腹痛・深く速い呼吸・口臭(甘酸っぱいにおい)がある
- ⚠のどの渇きとトイレの回数が急に増えた
- ⚠数週間で体重がはっきり減った
- ⚠強いだるさが続き、日常生活がつらい
- ⚠発熱や下痢のあと、水分がとれずぐったりしている
- ⚠視界のぼやけが続く
- ⚠足の傷やできものが赤く腫れて痛む
一般的な症状
- のどが異常に渇く(水分をとっても渇きが続く)
- トイレに行く回数が増える、特に夜中に何度も起きる
- よく食べているのに体重が減る
- だるい、疲れやすい、集中できない
- 傷が治りにくい、皮膚のかゆみや感染を繰り返す
- 視界がぼやける(血糖が高いと一時的に起こります)
- 何もしていないのに空腹感が強い
子供の症状
- おねしょが急に増えた、夜中に何度もトイレに起きる
- よく食べるのに体重が減る、やせて見える
- 元気がない、遊びたがらない、学校で集中できない
- 腹痛や吐き気を繰り返す(血糖が very 高いときのサインのことがあります)
- 皮膚や陰部のかゆみ、傷が治りにくい
高齢者の症状
- なんとなく元気が出ない、力が入らない
- 食欲が落ちて体重が減った
- 口が渇く、水をよく飲むようになった
- 足のしびれやむくみ、歩くのがおっくうになった
- 物忘れが進んだように見える(高血糖でぼんやりすることがあります)
- 脱水ぎみになりやすい(発熱や下痢のあとに特に注意)
原因
主な原因
- ウイルス感染による体の炎症:感染中は体の中で炎症が強く起こり、インスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)が一時的に強まることがあります。
- すい臓への影響:すい臓の「β細胞(インスリンを作る細胞)」が感染の影響を受ける可能性が研究で指摘されています。
- 治療の影響:入院中に使われるステロイド薬は血糖値を上げることがあります。
- 生活の変化:療養中や自粛期間に、運動量が減る・体重が増える・食事が乱れる・睡眠が乱れることで、血糖値が上がりやすくなることがあります。
- もともとの体質の顕在化:感染前から血糖値が高めだった人が、感染をきっかけに検査で見つかるケースもあります。
リスク要因
- 肥満(特におなか周りに脂肪が多い)
- 家族(親・きょうだい)に糖尿病の人がいる
- 40歳以上、特に50歳以上
- これまでに健康診断で血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー:過去1〜2か月の血糖の平均をみる数値)が高めと言われたことがある
- 妊娠中に血糖値が高くなったことがある、または大きな赤ちゃんを出産したことがある
- 新型コロナで重症になった、または入院して治療を受けた
- 高血圧、脂質異常症(血の中の脂肪が多い状態)がある
- 運動不足、睡眠不足、強いストレスが続いている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- のどの渇きとトイレの回数が急に増え、水分が追いつかない
- 数週間で体重がはっきり減った、あるいは急にやせた
- 強いだるさ・吐き気が続き、食事や水分がとれない
- 足の傷やできものが赤く腫れて痛む、膿が出る
- 視界のぼやけが続いて日常生活に支障がある
定期受診を予約すべき場合:
- 新型コロナから回復したあと、しばらく体がだるい、疲れやすい状態が続いている
- 感染前に健康診断で血糖値やHbA1cが高めと言われたことがあり、その後受診していない
- 肥満、家族歴など糖尿病のリスクがあると言われたことがある
- 感染後、体重が増えた、運動量が減った状態が続いている
- 妊娠を考えている、または妊娠中で血糖値が気になる
診断
糖尿病かどうかは、血液検査で血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー:過去1〜2か月の血糖の平均をみる数値)を調べることで判断します。痛みはほとんどなく、短時間で終わる検査です。症状がない場合は、別の日に再検査をして確認することが一般的です。
行われる可能性のある検査
- 空腹時血糖値の測定(朝食を抜いて採血します)
- HbA1cの測定(食事の影響を受けにくく、過去1〜2か月の血糖の平均がわかります)
- 随時血糖値の測定(食事のタイミングに関係なく測る方法)
- 尿糖・尿ケトン体の検査(尿に糖やケトン体が出ていないか調べます)
- 経口ブドウ糖負荷試験(決まった量のブドウ糖を飲んで、その後の血糖値の変化をみる検査。必要に応じて行います)
- 健康診断の結果票の確認(過去の数値の変化がとても役に立ちます)
診察で予想されること
まずは問診で、症状・体重の変化・家族歴・生活習慣などを聞かれます。そのうえで採血と尿検査を行い、結果は多くの場合その日のうちか、数日以内にわかります。結果によっては「糖尿病」「境界型(糖尿病予備群)」、あるいは「今は問題なし」と伝えられます。境界型と言われた場合は、生活の見直しで改善が期待できる段階です。検査結果の意味がよくわからないときは、遠慮なく医師や看護師に質問してください。
治療
糖尿病の治療の中心は、食事・運動・睡眠といった毎日の生活を整えることです。それに加えて、必要に応じて血糖値を下げる薬を使います。治療の目標は「血糖値を無理なく良い範囲に保ち、合併症を防ぐこと」です。新型コロナの後に見つかった場合も、基本的な考え方は同じです。早期に見つかれば、できることはたくさんあります。
自宅でのセルフケア
- 主食の量を見直し、野菜・たんぱく質を一緒にとる(極端な糖質制限は自己判断でしない)
- 甘い飲み物・間食の回数を減らす。水分は水やお茶を中心に
- 食後30分以内に10〜15分歩くなど、無理のない範囲で体を動かす
- 体重を週1回、同じ条件で測って記録する
- 睡眠時間を確保する(睡眠不足は血糖値を上げやすくします)
- 禁煙する。飲酒は量と回数を控えめに
- ストレスをためこまず、息抜きの時間をつくる
- 健康診断や通院の予定を忘れずに守る
医療治療
医師の判断で、血糖値を下げる飲み薬や注射薬が使われることがあります。治療の組み合わせは、血糖値の高さ、体重、年齢、ほかの病気、生活スタイルなどによって一人ひとり違います。薬は自己判断で始めたり止めたりせず、必ず医師の指示に従ってください。薬の飲み方や副作用が気になるときは、医師や薬剤師に相談しましょう。定期的な採血で効果と安全性を確認しながら調整していきます。
手術が検討される場合
糖尿病そのものを手術で治す治療は、一般的には行われません。ただし、肥満がとても強い場合に外科的な治療が検討されることがあり、また糖尿病による目の合併症などに対して手術が必要になることがあります。手術が適切かどうかは、専門の医師との相談で決まります。
この病気と共に生きる
糖尿病は、付き合い方を覚えれば決して生活を真っ暗にする病気ではありません。毎日の食事・運動・睡眠を少しずつ整え、数値を記録し、必要なときは通院する——この積み重ねが一番の近道です。完璧を目指さず、「続けられるやり方」を見つけることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 食事は1日3回、できるだけ同じ時間帯に
- 間食や夜食の習慣を見直す
- エレベーターより階段、一駅分歩くなど、日常の中で体を動かす
- お酒は休肝日をつくる
- タバコをやめる(禁煙外来や相談窓口を利用してもよい)
- 睡眠を7時間前後確保する
- 体重・血圧・血糖値の記録を続ける(記録ノートやアプリを活用)
- 家族や友人に自分の状態を伝え、協力してもらう
食事と運動
食事は、主食(ごはん・パン・めん)を適量にし、野菜を先に、たんぱく質(魚・肉・卵・大豆製品)を一緒にとると血糖の上がり方がゆるやかになります。よくかんでゆっくり食べることも効果的です。運動は、早歩き・軽いジョギング・水泳・ストレッチなど、息が少しはずむ程度を週に合計150分ほどが目安と言われています。ただし、持病がある方や足にしびれがある方は、始める前に医師に相談してください。無理をすると続かないので、小さく始めるのがコツです。
精神的健康と心の健康
「コロナの後遗症かも」「糖尿病と言われた」と感じると、不安や落ち込み、イライラが生じるのは自然なことです。気持ちの落ち込みが2週間以上続く、眠れない、何も楽しめない、といった状態があるときは、一人で抱えずに医療機関に相談してください。糖尿病の療養は気持ちの面の支えがとても大切で、話すことで楽になることがあります。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに地域のこころの相談窓口やかかりつけ医、または救急(119)に連絡してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、リスクを下げることは十分にできます。新型コロナの感染そのものを防ぐこと(手洗い・換気・体調が悪いときの行動の見直し)に加えて、感染後の生活を整えることが大切です。特に、体重を増やしすぎない、体を動かす、睡眠をとる、食事を整える——この4つは、糖尿病の予防にもつながります。
ワクチン
新型コロナのワクチンは、感染そのものだけでなく重症化を防ぐために有効とされています。接種するかどうかは、年齢・持病・これまでの接種歴などをもとに、かかりつけ医と相談して決めるとよいでしょう。ワクチンは糖尿病を直接防ぐものではありませんが、重症化を避けることは、その後の体の負担を減らすことにつながります。
検診プログラム
糖尿病は初期には症状がほとんどありません。だからこそ、症状の有無にかかわらず定期的な健康診断を受けることが大切です。会社や自治体の健診で血糖値とHbA1cを測る項目があります。新型コロナにかかったあと、しばらく健診を受けていない方は、次の健診で血糖値の項目を確認してみてください。気になるときは、健診を待たずにかかりつけ医で検査を受けることもできます。
合併症
治療しない場合
- 目の合併症(網膜症):進行すると視力が落ちることがあります
- 腎臓の合併症(腎症):進行すると透析が必要になることがあります
- 神経の合併症(神経障害):足のしびれ・痛み・感覚が鈍くなる
- 足の病変(足の壊疽など):傷が悪化しやすくなります
- 心臓や血管の病気:心筋梗塞、脳卒中などのリスクが上がります
- 感染症にかかりやすくなる、傷が治りにくくなる
- 歯周病の悪化、皮膚のかゆみや感染
- 血糖が非常に高い状態が続くことによる急性の体調悪化(意識障害など)
長期的な見通し
希望を持ってほしいことがあります。2型糖尿病は、早く見つけて生活を整えれば、良い状態を長く保てる病気です。合併症も、定期的な検査と治療を続けることで防げる可能性が高まっています。新型コロナの後に見つかった場合も同じです。数字に一喜一憂しすぎず、できることを一つずつ続けていくことが、一番確実な道です。気になることは医師に相談しながら、あなたのペースで進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年10月23日
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