透析(人工透析)とは——腎臓の働きを助ける治療
概要
透析(とうせき)は、腎臓(じんぞう)の働きが大きく落ちてしまったときに、その仕事を機械や体の膜で代わりに行う治療です。腎臓は、体の中で血液をきれいにする「浄水場」のような存在で、老廃物(体の中で出たゴミ)や余分な水分を取り除き、カリウムなどのミネラルのバランスを整えています。透析はこの作業を、体外の機械(血液透析)またはおなかの内側の膜(腹膜透析)を使って行います。一度始めると長く付き合っていく治療になることが多い一方で、透析を続けながら仕事や旅行、趣味を楽しんでいる人はたくさんいます。
重要な事実
- 透析には、病院などで血液を機械できれいにする「血液透析」と、おなかの中の膜を使って自分で行える「腹膜透析」の2つの方法があります。
- 腎臓の働きが完全に戻るわけではありませんが、透析は体の状態を安定させ、日常生活を続けるための治療です。
- 食事や水分の管理、通院のリズムづくりなど、生活全体を整えることが治療の一部になります。
日本でも決して珍しい治療ではなく、透析を続けながら暮らしている人は数多くいます。年々、高齢の方や糖尿病のある方の透析が増えているといわれています。自分だけが特別なわけではありません。
慢性腎臓病(腎臓の働きが少しずつ落ちていく病気)が進んだ方、糖尿病による腎臓の障害(糖尿病性腎症)、高血圧による腎臓の障害(腎硬化症)、糸球体腎炎(腎臓のフィルターの炎症)、生まれつきの腎臓の病気などがある方に必要になります。高齢の方だけでなく、働き盛りの世代や、まれに子どもが必要になることもあります。
症状
- 意識がない、または呼びかけへの反応がおかしい
- けいれんが起きた
- 息が苦しくて横になれない、話すのがつらい
- 胸が痛い、締めつけられる感じがする
- 透析中や透析直後の強い気分不良、冷や汗、目の前が暗くなる
- 透析用の血管(シャント)から血が止まらない
- じんましん、のどの腫れ、息苦しさなど強いアレルギー症状
- ⚠発熱や寒気がある
- ⚠シャント(透析用の血管)が腫れている、赤い、痛い、熱くない・冷たい
- ⚠短い間に体重が大きく増えた、むくみが急に悪化した
- ⚠吐き気や嘔吐が続いて水分がとれない
- ⚠透析を1回でも受けることができなかった
- ⚠動悸がする、脈が飛ぶように感じる
一般的な症状
- 疲れやすい、だるさが続く
- 顔や足のむくみ
- 少し動いただけで息苦しい
- 食欲がない、吐き気がする
- 皮膚のかゆみ
- 尿の量が減る、夜のおしっこが増える
- 体がかゆい・乾燥する
- 集中しにくい、ぼんやりする
- 体重が急に増える(水分がたまっているサイン)
子供の症状
- 身長や体重の増え方がゆっくりになる
- 食欲がなく、食べても体重が増えない
- まぶたや足のむくみ
- 元気がなく、疲れやすい
- 夜のおねしょが急に増える、尿の量が変わる
高齢者の症状
- むくみや息切れが「年のせい」と思われやすい
- 食欲低下や体重減少
- ぼんやりする、元気がない(意識がはっきりしないことも)
- 転びやすくなる、歩くのが遅くなる
- 薬の効き方が変わったように感じる
原因
主な原因
- 糖尿病性腎症(糖尿病が長く続くことで腎臓のフィルターが傷む)
- 腎硬化症(高血圧が長く続くことで腎臓の血管が傷む)
- 糸球体腎炎(腎臓のフィルターに炎症が起きる病気)
- 多発性嚢胞腎(のう胞(水ぶくれ)が腎臓にたくさんできる生まれつきの傾向の病気)
- 薬の影響による腎臓の障害
- 急性腎障害(急に腎臓の働きが落ちる状態)が回復しない場合
- 尿の流れが悪くなる病気(前立腺の病気や結石など)
リスク要因
- 糖尿病がある、血糖値が高い状態が続いている
- 高血圧がある
- 肥満、運動不足
- 家族に腎臓病の人がいる
- 年齢が高い
- 心臓や血管の病気がある
- 痛み止めなどの薬を長期間、自己判断で使い続けている
- 脱水(水分不足)を繰り返す
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさが強くなった、横になれない
- むくみが急にひどくなった、体重が数日で大きく増えた
- 吐き気が続いて水分がとれない
- シャントの腫れ・赤み・痛み・熱感の変化がある
- 発熱がある
- 透析を予定どおり受けられなかった
- 動悸や脈の乱れを感じる
定期受診を予約すべき場合:
- 健診で尿たんぱくや腎機能の数値を指摘された
- むくみや疲れやすさが続いている
- 糖尿病や高血圧で治療中で、腎臓の数値が気になる
- 家族に腎臓病の人がいて心配
- 透析について、始める前に知っておきたい
診断
透析が必要かどうかは、血液検査と尿検査の数値だけでなく、むくみや息苦しさなどの症状、食事や水分のとれ方、生活の状況を合わせて、腎臓の専門医と相談して決めていきます。腎臓の働きがかなり落ちても、症状が軽いうちは準備をしながら様子をみることもあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(クレアチニン、尿素窒素、eGFR(腎臓の働きの目安)、カリウム、重炭酸(じゅうたんさん)など)
- 尿検査(たんぱく尿、血尿の確認)
- 腎臓の超音波(エコー)検査
- 胸部レントゲン、心電図
- 必要に応じて腎生検(腎臓の一部を採って調べる検査)
- 透析用の血管(シャント)や腹膜透析のカテーテルを作る前の血管・腹部の評価
診察で予想されること
検査の多くは採血と尿検査で、痛みはほとんどありません。透析の準備が必要になった場合は、腎臓の専門医から方法(血液透析か腹膜透析か)、通院のペース、仕事や家族の状況をふまえた説明があります。その場で決める必要はなく、質問をメモしておき、納得いくまで相談してよいものです。
治療
透析治療には大きく2つあります。血液透析は、腕の血管(シャント)から血液を少しずつ体外に取り出し、機械で老廃物と余分な水分を取り除いて戻す方法で、一般的には週に数回、1回数時間の通院が必要です。腹膜透析は、おなかの中に専用の液体を入れ、腹膜(おなかの内側の膜)を通して老廃物を出し、自分で入れ替える方法で、自宅や仕事の合間に行えます。また、腎移植(けんいしょく)という選択肢もあります。どの方法が合うかは、体の状態や生活スタイルによって変わります。
自宅でのセルフケア
- 毎日、同じ条件で体重を測って記録する(水分がたまっていないかの目安になります)
- 塩分と水分のとり方を、担当の管理栄養士や医師と相談して決める
- シャントのある腕で重い物を持たない、血圧を測らない、時計やきつい服で圧迫しない
- シャントの音(血流の音)を毎日確認する習慣をつける
- 透析の日は早めに動き、予定を飛ばさない
- 薬は自己判断でやめたり変えたりせず、飲み忘れがないよう工夫する
- かぜ症状や発熱があれば早めに透析施設へ連絡する
- 旅行や出張の前には、事前に担当者へ相談する
医療治療
透析そのものに加えて、腎臓をこれ以上傷めないための治療と、透析で足りなくなる体の成分を補う治療を組み合わせます。具体的には、血圧や血糖のコントロール、体液(水分と塩分)のバランス調整、貧血の改善、骨やミネラルの状態を整える治療、感染症の予防などです。どの治療をどのくらい行うかは、検査の数値と体の状態を見ながら医師が判断します。薬の名前や量については、必ず担当の医師・薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
血液透析を選ぶ場合、血液を出し入れするための血管(バスキュラーアクセス、シャント)を作る小さな手術が必要になります。腹膜透析では、おなかにカテーテル(細い管)を入れる処置を行います。腎移植は、提供者が必要で、体の状態や年齢などの条件を満たす場合に検討されます。いずれも担当医から詳しい説明があります。
この病気と共に生きる
透析は生活の一部になりますが、生活のすべてではありません。通院の曜日と時間を決めて習慣にしてしまえば、仕事や家事、趣味の時間は意外と確保できます。体調の変化に気づけるよう、体重・血圧・食事・水分を簡単に記録するノートがあると役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 通院の予定を家族や職場と共有しておく
- 透析の前後は無理な予定を入れず、休む時間を確保する
- シャントのある腕を守る(重い物、締めつけるもの、注射や採血は避ける)
- 感染予防のため手洗いを丁寧に行う
- 十分な睡眠と、無理のない範囲の運動を続ける
- 喫煙がある場合は禁煙を検討する
- 体調の変化を一人で抱えず、透析施設のスタッフに早めに伝える
食事と運動
食事は、塩分・水分・たんぱく質・カリウム・リンのとり方がポイントになります。ただし必要な量は人によって違うため、自己流にせず、管理栄養士と相談して自分用の目安を作りましょう。運動は、散歩や軽いストレッチなど、息が上がりすぎない程度を無理なく続けるのがおすすめです。運動の始め方や強さは、透析の状態や心臓の状態をふまえて医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
透析が決まったとき、治療が続いていくことへの不安、仕事や家族への影響、通院の負担など、気持ちが沈むのは自然なことです。「自分は人に迷惑をかけている」と感じてしまう方もいますが、それは事実ではありません。気持ちがつらい日が続くときは、一人で抱え込まず、透析施設のスタッフ、かかりつけ医、地域の相談窓口、家族や信頼できる人に話してください。命に関わるほど追い詰められていると感じたときは、ためらわず救急(119)や地域の緊急相談窓口を利用してください。
予防
透析が必要になる原因の多くは、糖尿病と高血圧です。血糖値と血圧をよい状態に保ち、腎臓に負担をかける生活を避けることで、腎臓の働きが落ちるスピードをゆるやかにできる可能性があります。すでに腎臓病と言われている場合も、進行を遅らせるための取り組みは意味があります。
ワクチン
透析を受けている方は感染症が重症化しやすいため、インフルエンザや肺炎などのワクチンについて、担当医と相談しておくと安心です。接種の可否や時期は体の状態によって変わるため、自己判断せず医師に確認してください。
検診プログラム
健診の尿検査と血液検査は、腎臓の状態を知る大切な手がかりです。糖尿病や高血圧がある方、家族に腎臓病のある方は、かかりつけ医と相談して定期的に尿たんぱくや腎機能のチェックを受けましょう。
合併症
治療しない場合
- 尿毒症(体に老廃物がたまり、吐き気や意識の変化が起きる状態)
- カリウムが高くなり、脈が乱れる・心臓が止まる危険
- 肺に水がたまる(肺水腫)、心不全
- 骨がもろくなる、貧血が進む
- 感染症にかかりやすくなる
- 透析用の血管(シャント)の詰まりや感染
長期的な見通し
透析は、腎臓の働きが落ちても生活を続けていくための治療です。多くの方が透析を続けながら、仕事や家族との時間、趣味を大切に暮らしています。体調の変化を早めに相談し、食事・水分・通院のリズムを整えることで、安定した毎日を保ちやすくなります。将来の選択肢(腹膜透析、腎移植など)についても、あわてず情報を集めながら担当医と話し合っていけます。
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最終更新: 2026年10月23日
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