息切れは新型コロナのせい? ― 長引く息苦しさの考え方
概要
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかったあと、数週間から数か月にわたって「息が上がる」「深く吸えない」「階段がつらい」といった息切れが続くことがあります。これは「コロナ後遺症(罹患後症状)」のひとつとして説明されることがあります。息切れの原因は一つとは限らず、肺・心臓・筋肉・睡眠・こころの状態などが組み合わさって起きていることが多い、と考えられています。
重要な事実
- 息切れは、コロナ後遺症として相談されることの多い症状のひとつです
- 多くの人は時間とともに良くなりますが、数か月かかることもあります
- 原因は肺だけでなく、体力や筋力の低下、心臓、貧血、不安などさまざまです
- 別の病気が隠れていることもあるため、続くときは受診して相談することが大切です
コロナ後遺症の相談では、息切れはよく聞かれる症状のひとつです。ただし、軽く感じる人から日常生活が難しいほどつらい人まで、程度には大きな幅があります。
軽い症状で済んだ人でも起こることがあります。入院が必要なほど重症だった人、もともと喘息や肺の病気・心臓の病気がある人、高齢の人、入院や安静で体力が落ちた人では、息切れが強く出やすい傾向があります。当てはまらない人でも起こるため、「自分は関係ない」とは限りません。
症状
- 話すのがやっと、または話せないほどの息苦しさ
- 唇や爪が青白い、紫色になっている
- 胸の強い痛みや締めつけが続く
- 意識がぼんやりする、もうろうとする、気を失った
- 血を吐いた、痰に血が混じる
- 顔や手足の片側が動かない、言葉が出にくい(脳卒中の可能性があります)
- 呼吸が速く浅い、肩で息をしている
- ⚠息切れが急に悪くなっている
- ⚠発熱が続いている
- ⚠動悸が止まらない、脈がとても速い
- ⚠足のむくみが新しく出てきた
- ⚠横になると息苦しく、起き上がると楽になる
- ⚠食欲がなく、水分がとれない
- ⚠指先で測る酸素飽和度(パルスオキシメーターの数値)が、いつもより明らかに低い
一般的な症状
- 坂道や階段で、以前より息が上がる
- 長く話すと息が続かない、文の途中で息継ぎが必要になる
- 軽い咳が長く続く
- 胸の締めつけ感や、軽い痛み
- 動悸(心臓の鼓動が強く、速く感じる)
- 深く息が吸えない、息苦しい感じがする
- 疲れやすく、朝からだるい
- においや味の感じ方が戻りにくい
子供の症状
- 遊んでいるとすぐ疲れて休みたがる
- 呼吸が速い、肩で息をしている
- 授乳や食事のときに息が上がる、飲み方が弱い
- 泣き声が弱い、元気がない
- 咳が長引く、夜に咳で起きる
高齢者の症状
- 家の中の移動や家事で息が切れる
- 階段や買い物を避けるようになる
- だるさ、食欲低下、体重の減少
- 足のむくみが出てきた
- 急にぼんやりする、元気がない(意識の変化)
- 症状を「年のせい」と思って我慢してしまいやすい
原因
主な原因
- 肺の炎症が治りきっていない、肺の働きが元に戻りきっていない
- 入院や安静で体力・筋力が落ちている(動くと息が上がりやすい)
- 心臓の働きの変化(心筋の炎症などが関わることがあります)
- 気道が敏感になっていて、咳やゼーゼーが出る
- 貧血(血液が酸素を運ぶ力が弱くなっている状態)
- 不安やストレス、こころの状態(息苦しさと不安は互いに影響し合います)
- 睡眠不足、体重の増加
- 甲状腺などホルモンの影響
- 別の病気が隠れている(喘息、肺の血管の病気、心不全など)
リスク要因
- コロナにかかったときに重症だった、入院した、人工呼吸器を使った
- もともと喘息や肺の病気、心臓の病気がある
- 高齢である
- 肥満がある
- 喫煙している、受動喫煙が多い
- 糖尿病などの基礎疾患がある
- 長い安静で体力が落ちている
- 女性では報告が多いとされることもあるが、当てはまらなくても起こります
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさが急に強くなった、安静にしていても息が苦しい
- 胸の痛み、動悸、失神があった
- 唇や爪の色が悪い、血の混じった痰が出た
- 足のむくみが急に出てきた、横になると息苦しい
定期受診を予約すべき場合:
- 息切れが2〜4週間以上続いている
- 少しずつ悪くなっている気がする
- 仕事・家事・学校など日常生活に支障が出ている
- 軽い運動のあとに、いつまでも息苦しさが残る
- 咳・動悸・むくみなどをともなう
- 不安や気分の落ち込みが続いている
診断
まず問診で、いつから、どんなときに、どのくらい息切れがするのか、コロナにかかった時期や重症度、もともとの病気などを聞きます。そのうえで診察を行い、原因を絞るためにいくつかの検査を組み合わせます。一度の受診ですべての原因がわかるとは限らず、経過を見ながら考えることもあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(貧血や炎症の有無などを調べる)
- 胸部X線(レントゲン)検査
- 胸部CT検査(肺の詳しい状態を見る)
- 呼吸機能検査(スパイロメトリー:息を吸ったり吐いたりして肺の働きを調べる)
- パルスオキシメーター(指先で酸素の量を測る器械)
- 心電図・心エコー(心臓の働きを調べる)
- 6分間歩行試験(歩いたときの息切れや酸素の変化を見る)
- 必要に応じて、呼吸器科や循環器科などの専門医への紹介
診察で予想されること
外来での問診と検査が中心になります。結果が出るまでに数日から数週間かかることもあります。息切れが出た日時・きっかけ・どのくらい続いたかをメモしておくと、診察の助けになります。
治療
治療の方向は、見つかった原因によって変わります。はっきりした原因が見つからない場合でも、呼吸のリハビリや生活の調整で楽になることが多いです。医療者は症状に合わせて、無理なく回復を目指すお手伝いをします。
自宅でのセルフケア
- ペース配分を意識し、動作の合間に休憩を入れる
- ゆっくり鼻から吸って、口から長めに吐く呼吸を試す
- 少しずつ活動量を増やし、疲れすぎる前に休む
- 十分な睡眠をとる
- こまめに水分をとる
- 禁煙する、たばこの煙を避ける
- 部屋の換気をこまめに行う
- 体重が増えすぎないよう意識する
- 症状と活動量を日記に記録する
医療治療
原因に応じて、気道の炎症をしずめる吸入の治療、呼吸のリハビリテーション、心臓やほかの科の専門医による評価などが行われます。具体的な薬の種類や使い方は、必ず医師・薬剤師の指示に従ってください。市販薬やサプリメントを自己判断で使うことは避け、まず相談しましょう。
手術が検討される場合
コロナ後の息切れそのもののために手術が必要になることは、ほとんどありません。
この病気と共に生きる
一度にたくさんこなそうとせず、優先順位をつけて休み休み進めましょう。エレベーターや宅配などを上手に使い、家族や周りの人に「今は疲れやすい」と伝えておくことも大切です。
生活習慣のアドバイス
- 無理のない範囲で、毎日少しずつ体を動かす
- 規則正しい生活と十分な睡眠を心がける
- 禁煙し、受動喫煙を避ける
- ストレスをため込まず、話せる相手を持つ
- 換気や手洗いなど、感染対策を続ける
食事と運動
バランスのよい食事を3食とり、極端な食事制限は避けましょう。運動は、会話ができるくらいの軽い歩行から始め、息が上がりすぎない程度で行います。翌日に疲れが残る場合は量を減らし、体調に合わせて調整してください。
精神的健康と心の健康
「治らなかったらどうしよう」という不安や、気分の落ち込み、集中できない、イライラするといった変化はよくあります。息苦しさと不安は互いに影響し合うため、こころのケアも回復の一部です。つらい気持ちが続くときは、身近な医療機関や地域の相談窓口に相談してください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えたときは、ためらわず救急(119)や周りの人に助けを求めてください。
予防
感染そのものを完全に防ぐことは難しいですが、感染対策と、かかったときの重症化予防が、息切れなどの後遺症のリスクを下げる助けになると考えられています。
ワクチン
新型コロナのワクチンは重症化を防ぐ効果が期待されており、後遺症のリスクを下げる可能性も報告されています。接種については、年齢や健康状態をふまえて、自治体の案内やかかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
コロナ後の息切れに対する決まったスクリーニング検査はありません。症状が続く場合は、医療機関で相談することが大切です。
合併症
治療しない場合
- 体力や筋力の低下が進み、動くのがつらくなる
- 仕事・家事・学校など日常生活の制限が長引く
- 不安や落ち込み、睡眠の乱れが強くなる
- 別の病気が隠れていた場合に、見つけるのが遅れる
長期的な見通し
コロナ後の息切れは、多くの人で数週間から数か月かけて少しずつ良くなっていきます。回復には個人差があり、時間がかかることもありますが、原因を確かめて必要な支援を受けることで、楽になっていく道筋があります。あきらめずに相談を続けてください。
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最終更新: 2026年10月23日
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