食事の脂質(あぶら)とのつきあい方
概要
脂質(あぶら)は、たんぱく質・炭水化物と並ぶ、体に必要な三大栄養素のひとつです。細胞の膜をつくる材料になり、エネルギー源になり、ホルモンの材料にもなり、ビタミンA・D・E・Kを体に吸収するのを助けます。ただし脂質にはいくつか種類があり、とり方によって体への影響が変わります。大きく分けると、肉の脂身やバターに多い「飽和脂肪酸」、魚や植物油に多い「不飽和脂肪酸」(さらに一価と多価に分かれます)、加工食品で問題になりやすい「トランス脂肪酸」があります。
重要な事実
- 脂質は体に欠かせない栄養素です。まったく取らないのではなく、種類と量のバランスが大切です。
- 同じ量でも、飽和脂肪酸が多い食事はLDLコレステロール(悪玉と呼ばれるコレステロール)を上げやすいと言われています。
- 魚や植物性の油、ナッツなどに多い不飽和脂肪酸は、適量なら体によい働きが期待できます。
- 1日の目安量は年齢や活動量で変わります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」にも目安が示されています。
脂質は毎日の食事に必ず含まれるものなので、誰にとっても身近なテーマです。健康診断でコレステロールや中性脂肪の値を指摘される人も少なくありません。
すべての人が関係します。特に、揚げ物や加工食品が多い食事、運動不足、家族に若い年齢で心臓病の人がいる場合、喫煙、飲みすぎ、体重の増加がある場合は、脂質のとり方を見直すことが勧められます。成長期の子ども、妊娠中、高齢者では必要な量が違うため、極端な制限は避けましょう。
症状
- 胸の中央が締めつけられるように痛む、または圧迫される感じが数分以上続く
- 冷や汗、吐き気、息苦しさを伴う胸の痛み
- 突然の強い息切れ、意識がもうろうとする
- 顔の片側が下がる、ろれつが回らない、片方の手足が動かない(脳卒中のサイン)
- ⚠食後に強い腹痛が続く(みぞおちから背中にかけての痛み)
- ⚠皮膚や白目が黄色くなる
- ⚠尿が濃い色になる
- ⚠体重が意図せず急に減る
一般的な症状
- 脂質のバランスが崩れていても、多くの場合は自覚症状がありません。健康診断の血液検査で初めて気づくことが多いです。
- 長く続くと動脈硬化(血管が硬く狭くなること)が進み、胸の痛みや息切れなどにつながることがあります。
- 脂質を極端に減らしすぎると、皮膚がかさかさする、髪がぱさつく、疲れやすい、傷が治りにくいといったサインが出ることがあります。
- 揚げ物などの多い食事が続くと、体重が増える、胃がもたれる、お腹が張るといった変化を感じることがあります。
子供の症状
- 子どもは成長のために脂質が必要です。大人と同じように制限する必要はなく、極端に油を抜くと成長や発達に影響することがあります。
- 揚げ物ばかりに偏る場合は、魚や大豆製品、野菜も一緒に食べる工夫を。気になるときは小児科や管理栄養士に相談しましょう。
高齢者の症状
- 高齢者は食べる量が少なくなり、脂質やたんぱく質が不足しやすいです。制限しすぎると体重が減る、力が出ない、疲れやすいなど、フレイル(心身が弱った状態)につながることがあります。
- 持病がある場合は、主治医と相談しながら無理のない範囲で整えましょう。
原因
主な原因
- 脂っこい食事(揚げ物、脂身の多い肉、バターや生クリームを多く使った食品)のとりすぎ
- 魚や野菜、豆類が少なく、加工食品や菓子パンに頼りがちな食事
- 運動不足で、食べた量に対して体を動かす量が少ないこと
- 遺伝的な体質(家族にコレステロールが高い人が多いなど)
- 飲酒の習慣、喫煙
- 体重の増加、特に内臓脂肪の増えすぎ
- 甲状腺の働きが低下する病気や糖尿病、腎臓の病気など、ほかの病気の影響
- 一部の薬の影響
リスク要因
- 家族に早い年齢で心臓病や脳卒中の人がいる
- 体重の増加や内臓脂肪の多さ
- 運動不足
- 飲酒量が多い
- 睡眠不足や強いストレスが続いている
- 糖尿病や高血圧などの持病がある
- 加齢、閉経
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の痛みや息苦しさが強い
- 突然の激しい腹痛がある
- 白目や皮膚が黄色くなった
- 意識がぼんやりする、会話がかみ合わない
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断でコレステロールや中性脂肪の異常を指摘された
- 家族に若い頃から心臓病や脳卒中の人がいる
- 食事の内容をどう変えればよいか知りたい
- 体重が増えてきた
- 皮膚や髪の乾燥、疲れやすさが気になる
診断
ふだんの食事や生活習慣をお聞きし、体重・血圧を測り、血液検査で脂質の値を調べます。脂質の値は食事や体調で変わるため、複数回測って判断することもあります。気になる症状があるときは、ほかの病気が隠れていないかも確認します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪)
- 空腹時の血糖値やHbA1c(ふだんの血糖の状態を見る検査)
- 肝機能・腎機能の検査
- 甲状腺の働きを調べる検査
- 必要に応じて腹部超音波検査(脂肪肝などを見る)
診察で予想されること
診察は10〜20分ほどで、問診と血液検査が中心です。結果は数日で出ることが多く、値の意味と生活の工夫を一緒に考える流れになります。必要に応じて管理栄養士の栄養相談を紹介されます。
治療
食事の脂質のとり方で気をつけることは、多くの場合まず生活習慣の見直しから始まります。食事の内容と運動を数か月続けて、血液検査の値や体重の変化を見ます。それでも十分に改善しない場合や、ほかの病気がある場合には、医師が薬を検討することがあります。
自宅でのセルフケア
- 揚げ物や脂身の多い肉は毎日ではなく、週に何回かは魚や大豆製品、鶏むね肉などに置きかえる
- 炒め油を控えめにし、焼く・蒸す・ゆでる調理を増やす
- 野菜、きのこ、海藻、豆類を毎食に少しずつ添える
- 加工食品や菓子パン、スナック菓子の回数を減らす
- お酒は量と頻度を決めて飲む
- 歩く時間を1日少しずつ増やす
- 体重を週に1回、同じ条件で測って記録する
- たばこを吸う場合は禁煙を検討する
医療治療
生活習慣を見直しても値が高い場合や、心臓病・脳卒中のリスクが高いと判断された場合は、医師が薬を使うことを検討します。薬の種類や量は、年齢・持病・検査の値を見て医師が決めます。自己判断で飲み忘れたり中止したりせず、気になることがあれば相談しましょう。薬は食事の工夫とセットで考えるものです。
手術が検討される場合
食事の脂質がテーマの場合、手術が必要になることは通常ありません。ただし胆石やほかの病気が見つかったときは、その病気に応じた治療が検討されます。
この病気と共に生きる
完ぺきを目指さず、1週間のうち何食かを意識するくらいの気持ちで続けると長続きします。買い物のときに食品表示を見る習慣をつけると選びやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 朝食を抜かず、1日3食をできるだけ同じ時間に
- よくかんで食べ、満足感を得る
- 間食は回数と量を決める
- 睡眠時間を確保し、夜遅い食事を控える
- こまめに歩く、階段を使うなど日常の中で体を動かす
食事と運動
脂質は量だけでなく「何と一緒に食べるか」も大切です。魚、野菜、豆、海藻を組み合わせると、自然と満足感が得られます。運動は、早歩きや階段を使うなど息が少し弾む程度を1日20〜30分、週に数回から。持病がある方は主治医に相談してから始めましょう。
精神的健康と心の健康
食事の制限が強くなりすぎると、食べることが楽しくなくなったり、外食を避けて人づきあいが減ったりすることがあります。それは本意ではありません。気分の落ち込みが続く、食べることに強い不安があるときは、医療機関や自治体の相談窓口に相談してください。自分を傷つけたい気持ちがわいたときや、差し迫った危険があるときは、ためらわず119番など緊急の窓口を頼ってください。
予防
脂質のとり方による体への影響は、日々の食事と運動の工夫である程度コントロールできます。完全に防ぐことは難しくても、リスクを下げることは十分に可能です。
検診プログラム
健康診断(特定健診など)の血液検査で脂質の値を確認できます。40歳前後からは特に、年に1回の健診を続けることが勧められます。若い人も、家族歴や体重の変化が気になるときは一度相談してみましょう。
合併症
治療しない場合
- 動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中につながることがある
- 脂肪肝や肝臓の炎症を起こすことがある
- 中性脂肪が非常に高い場合、すい炎を起こすことがある
- 胆石ができやすくなる
- 体重増加や睡眠時無呼吸につながることがある
長期的な見通し
脂質は敵ではなく、体に必要な栄養素です。とり方を見直すことで、検査の値も体の調子も変わっていくことが多いです。小さな工夫を続けることが一番の近道で、多くの人は数か月で変化を実感しています。
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最終更新: 2026年10月23日
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