消化管の先天異常(生まれつきの消化管の病気)
概要
「消化管の先天異常」とは、赤ちゃんがお母さんのおなかの中で育つあいだに、食べ物の通り道(消化管)がうまく作られず、生まれたときから形や働きに違いがある状態の総称です。消化管とは、食道・胃・小腸・大腸・肛門まで、口から入ったものを体に取り込んで便として出すまでの長い通り道のことです。食道閉鎖(食道が途中で途切れている)、十二指腸閉鎖・小腸閉鎖(腸が詰まっている)、ヒルシュスプルング病(腸の壁にある神経が生まれつき足りず、便を押し出す力が弱い)、鎖肛(肛門の位置や形の違い)、腹壁破裂(おなかの壁に裂け目があり腸が外に出ている)など、いくつかの種類があります。多くは手術で通り道を整えることができ、その後の成長とともにふつうの生活を送れることが多い病気です。
重要な事実
- 生まれつきの消化管の形や働きの違いで、生後すぐに気づかれることが多いです。
- 主な治療は手術で、通り道を整えたり詰まりを取ったりします。
- 手術のあとも成長を見守る通院が続くことがありますが、多くは良好な経過をたどります。
- 妊娠中の超音波検査で見つかることもあります。
比較的まれな病気です。種類によって頻度は大きく異なり、生まれた赤ちゃんの数百人から数千人に1人程度といわれています。決して珍しいものではありませんが、多くの人にとって身近ではない病気です。
症状
- 緑色のものを何度も吐く、噴水のように吐く
- ぐったりして反応が弱い、呼びかけても目を開けにくい
- 呼吸が苦しそう、顔色が青白い・紫色に見える
- おなかが硬く大きく張って、触ると痛がって泣く
- けいれんが起きた
- 血が混じった便が出て、ぐったりしている
- ⚠ミルクや母乳をまったく飲まない
- ⚠繰り返し吐いていて、水分がとれない
- ⚠半日以上うんちもおならも出ない
- ⚠発熱がある
- ⚠黄疸が急に強くなった
- ⚠おしっこが極端に少ない、口の中が乾いている
一般的な症状
- 生まれた直後から、母乳やミルクを飲むと吐いてしまう
- 吐いたものに緑色(胆汁の色)が混じる
- おなかが大きく張っている
- 生後24〜48時間たっても胎便(黒っぽい緑色の最初のうんち)が出ない
- 口から泡のような唾液がよくあふれる(食道閉鎖のことがあります)
- 体重が増えない、元気がない、泣き声が弱い
- 黄疸が強い、または長く続く
- うんちがなかなか出ない、便秘が続く
子供の症状
- 慢性的な便秘で、おなかが張りやすい
- 育ちざかりなのに体重が増えにくい
- 繰り返す嘔吐や腹痛
- 便の量が少ない、細い、勢いが弱い
- 手術を受けた部位の傷が赤く腫れる、熱が出る
高齢者の症状
- 成人になって初めて見つかることもあります(腸の回転異常や、症状の軽いヒルシュスプルング病など)
- 長年にわたる頑固な便秘
- 繰り返すおなかの痛みや張り、吐き気
- 食欲低下や体重減少
原因
主な原因
- 多くは原因がはっきり分かっていません。おなかの中で腸が形づくられる過程で、何らかの理由により通り道が途切れたり狭くなったりします。
- 腸に血液が届きにくくなる出来事が関係することがあります。
- 一部は遺伝子(体の設計図)の変化や、染色体の違い、ほかの症候群の一部として起こることがあります。
- お母さんの健康状態や妊娠中の出来事が関係する場合もありますが、多くはお母さんの過ごし方のせいではありません。
リスク要因
- 家族に同じ病気の人がいる
- お母さんが妊娠前から糖尿病などの持病がある
- 妊娠中の喫煙や飲酒
- 妊娠中の感染症や、一部の薬の使用
- 双子など多胎妊娠、低出生体重
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 緑色の吐物がある、何度も吐く
- おなかが張って痛がる、うんちが出ない
- ぐったりしている、母乳やミルクを飲まない
- 発熱や傷の腫れがある(手術後)
定期受診を予約すべき場合:
- 便秘が長く続く、おなかの張りを繰り返す
- 体重が増えにくい、成長曲線から外れてきた
- 食事のあとにいつも吐いてしまう
- 手術後の傷の見た目が気になる
- 成人で長引く腹部の不快感や便通の異常がある
診断
妊娠中の超音波(エコー)検査で見つかることもありますし、生まれた直後の診察で気づかれることもあります。症状と体の診察に加えて、画像検査や、必要に応じて組織を調べる検査を行って、どの種類の先天異常かを確かめます。
行われる可能性のある検査
- 妊娠中の超音波検査(羊水の量や腸の様子を見る)
- 出生後の丁寧な身体診察
- 腹部のレントゲン検査
- 消化管造影検査(飲み物に映る液体を使って通り道を調べる)
- 腹部超音波検査
- 血液検査(脱水や感染の有無を確認)
- 直腸の組織を少し採って調べる検査(ヒルシュスプルング病が疑われるとき)
- 遺伝子検査や遺伝カウンセリング(必要な場合)
診察で予想されること
赤ちゃんへの検査は、痛みや負担が少なくなるように配慮して行われます。入院が必要になることもあり、結果が出るまでに数日かかる検査もあります。検査の意味や流れは、その都度スタッフに尋ねてかまいません。
治療
治療の中心は手術で、途切れている場所や詰まっている場所をつないだり、広げたりして、食べ物が通る道すじを整えます。手術の前に、点滴で水分と栄養を補い、鼻から細い管を入れて胃や腸を休ませる処置を行うことがあります。手術のあとは、飲み始めの量を少しずつ増やしながら、排便や成長の様子を見ていくことになります。
自宅でのセルフケア
- 授乳やミルクの量・回数は、主治医や看護師の指示に合わせて少しずつ進める
- うんちの回数や硬さ、色を記録しておくと診察の役に立つ
- 手術後の傷は清潔に保ち、腫れや赤みがないか見る
- 便秘がちなときは、水分や食事の内容を相談する
- 手洗いを徹底し、感染症にかからないようにする
- 予防接種は厚生労働省のスケジュールに沿って受ける(接種時期は主治医に相談)
医療治療
治療は主に手術による外科的な方法ですが、それに加えて、栄養を補う点滴や、飲み始めの量を調整する栄養管理、排便を助けるケア、脱水や感染を防ぐ管理など、複数の方法を組み合わせて行います。どの方法をどの順番で行うかは、病気の種類や赤ちゃんの状態によって変わります。具体的な治療方針は、必ず主治医から説明を受けてください。
手術が検討される場合
多くの場合、生まれてまもなく手術が必要になります。腸がねじれるなど緊急を要する状態では、すぐに手術を行うことがあります。状態によっては手術を数回に分けて段階的に進めることもあります。
この病気と共に生きる
手術のあとは、定期的な通院で成長と排便の様子を見守ります。授乳や食事の進め方、うんちの記録など、家庭での観察がとても大切です。分からないことは遠慮せずに医療者に尋ね、家族だけで抱え込まないようにしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活リズムを心がける
- 便秘を防ぐために水分と食物繊維を意識してとる
- 体調の変化を記録する習慣をつける
- ストーマ(人工肛門)がある場合は、スキンケアと装具の扱いを医療者に相談する
- 保育園・幼稚園・学校とは、必要な配慮を事前に相談しておく
食事と運動
食事は、年齢に応じてバランスよく、無理のない量から少しずつ進めます。水分不足は便秘を悪化させることがあるので気をつけましょう。体調が安定していれば、年齢に合った遊びや運動を楽しんでかまいません。食事や運動の具体的な量は主治医に確認してください。
精神的健康と心の健康
赤ちゃんの病気と手術は、ご家族にとって大きな不安や心配を伴います。「自分のせいかもしれない」と感じてしまう方もいますが、多くはお母さんやお父さんの過ごし方のせいではありません。眠れない、気持ちが沈み続ける、涙が止まらないといった状態が続くときは、一人で抱えずにかかりつけ医や地域の相談窓口、専門の相談機関に早めに相談してください。気持ちが追い詰められたときは、ためらわずに119番へ連絡してください。
予防
多くは予防することが難しい病気です。ただし、妊娠前から健康づくりをしておくこと(バランスのよい食事、禁煙・禁酒、持病のコントロール)は、赤ちゃんの健康を守る助けになります。葉酸を含む食事を意識することも、妊娠前からの健康管理のひとつとして厚生労働省などがすすめています。摂り方についてはかかりつけ医や保健師に相談してください。
ワクチン
消化管の先天異常そのものを防ぐワクチンはありません。ただし、生まれたあとの感染症を防ぐために、厚生労働省が定める定期接種のスケジュールに沿って予防接種を受けることが大切です。接種の時期や順番は、主治医や小児科医に相談しながら決めましょう。
検診プログラム
妊娠健診での超音波検査と、生まれた直後の診察が、早期発見の助けになります。妊娠中の健診は決められた回数をきちんと受けるようにしましょう。
合併症
治療しない場合
- 水分がとれず脱水になり、体の電解質(塩分などのバランス)が乱れる
- 栄養がとれず成長が妨げられる
- 腸が詰まる、腸に穴が開く(穿孔)
- 腹膜炎や敗血症など重い感染症を起こす
- 吐いたものが気管に入って肺炎を起こす
- 便秘が長く続いて腸が大きく広がる
長期的な見通し
多くの場合、手術とその後のケアで通り道が整い、成長とともにふつうの生活を送れるようになります。通院や食事の工夫が長く続くこともありますが、医療者と一緒に一歩ずつ進んでいくことができます。不安なときはいつでも主治医に相談してください。
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最終更新: 2026年10月23日
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