Dilated cardiomyopathy
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
拡張型心筋症は、心臓の筋肉(心筋)が弱くなって伸びてしまい、心臓が十分に血液を全身に送り出せなくなる病気です。心臓の部屋(心室)が拡大することで、ポンプの機能が低下します。
重要な事実
- 原因がはっきりしないことが多い(特発性)ですが、遺伝やウイルス感染、アルコールの過剰摂取などが関係する場合もあります。
- 病気が進むと心不全(心臓のポンプ機能が低下した状態)を引き起こし、息切れやむくみなどの症状が出ます。
- 適切な治療により症状の改善や進行を遅らせることが期待できます。
拡張型心筋症は、心筋症の中では最も多いタイプですが、一般の人の中では比較的まれな病気です(人口10万人あたり年間約5~10人程度の新規発症とされています)。
どの年齢でも発症する可能性がありますが、特に30~50歳代の成人に多く見られます。男性のほうが女性よりやや発症率が高いとされています。
症状
- 突然の激しい胸の痛みや圧迫感が続く
- 意識を失った、または反応が悪い
- 呼吸が極めて苦しく、息ができない
- 脈が不整で激しい動悸があり、めまいや意識が遠くなる
- ⚠息切れが急に悪化して、安静にしていても苦しい
- ⚠むくみが急にひどくなった(靴が履けないほど)
- ⚠動悸が続いて気分が悪い
- ⚠今までにない疲れやすさや体重増加(水分がたまるため)
一般的な症状
- 息切れ(特に体を動かしたときや横になったとき)
- 疲れやすさ、体のだるさ
- 足首や足のむくみ(浮腫)
- 動悸(心臓がドキドキする感じ)
- 胸の痛みや圧迫感
子供の症状
- 成長の遅れ(体重増加不良など)
- 哺乳力の低下、飲み方が弱い
- 呼吸が速い、ゼーゼーする
- 顔色が悪い、唇の色が紫色
高齢者の症状
- ふらつきや立ちくらみ
- 認知機能の低下(ぼんやりするなど)
- 食欲不振や体重減少
- せきや痰(特に夜間や横になったとき)
原因
主な原因
- 原因がはっきりしない特発性のものが最も多い
- ウイルス感染(風邪などの後の心筋炎がきっかけとなることがある)
- アルコールの長期間の過剰摂取
- 遺伝的要因(家族内で発症することがある)
- 妊娠や出産に関連したもの(周産期心筋症)
- 特定の薬物や化学物質の影響
- その他の病気(高血圧、甲状腺疾患、自己免疫疾患など)が関与することもある
リスク要因
- 心筋症や突然死の家族歴がある
- 長期間の多量飲酒(アルコール依存症)
- 過去にウイルス性の心筋炎にかかったことがある
- 高血圧や冠動脈疾患などの心臓病がある
- 特定の抗がん剤や放射線治療の既往(医師の指示に従うこと)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記「緊急」の症状がある場合は、すぐに119番に電話してください
- 急な息切れ、胸の痛み、失神など、命に関わる可能性があります
定期受診を予約すべき場合:
- 息切れやむくみが続く、または悪化している
- 疲れやすさや動悸が気になる
- 体重が急に増えた(水分貯留の可能性)
- 家族に心筋症や若い年齢での心臓突然死の方がいる
診断
医師がまずあなたの症状や病歴、家族歴を詳しく聞き、聴診器で心臓の音を確認します。その後、心臓の状態を詳しく調べるための検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 心エコー(超音波で心臓の大きさや動きを調べる)
- 心電図(心臓の電気的なリズムを調べる)
- 胸部X線(心臓の大きさと肺の状態を確認)
- 血液検査(心臓に負担がかかっているかどうかを調べる)
- 心臓MRI(より詳しく心筋の状態を見る)
- 心臓カテーテル検査(心臓内の圧力を測るなど、必要な場合に行う)
診察で予想されること
検査はほとんどが痛みを伴わず、外来で受けられるものがほとんどです。心臓カテーテル検査など一部の検査は入院が必要な場合もありますが、医師が丁寧に説明します。検査結果をもとに、あなたに合った治療が始まります。
治療
治療の目的は、症状を改善し、心臓の働きを支え、病気の進行を遅らせることです。薬物療法、生活習慣の改善、場合によっては医療機器の装着や手術が必要になることもあります。
自宅でのセルフケア
- 減塩(1日6g未満を目標に、汁物や漬物を控える)
- 禁煙(たばこは心臓に大きな負担をかけます)
- 適度な運動(医師と相談して、ウォーキングなど無理のない範囲で)
- 体重を毎日測り、急な増加に注意する(水分がたまるサイン)
- アルコールは制限または禁酒(医師の指示に従う)
医療治療
医師は、心臓の負担を減らす薬(例えば、血圧を下げる薬や心臓の収縮力を助ける薬など)を、あなたの症状や検査結果に合わせて処方します。また、体内にたまった余分な水分を排出する薬(利尿薬)が使われることもあります。薬の種類や量は人によって異なりますので、必ず医師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
薬の効果が十分でない場合や重症の場合には、ペースメーカーや植え込み型除細動器(ICD)という機械を体内に埋め込む治療が行われることがあります。さらに進行した場合には、心臓移植が検討されることもありますが、これらは総合的な評価の上で決められます。
この病気と共に生きる
拡張型心筋症と診断されても、適切な治療と生活管理を行えば、多くの人は普段の生活を送ることができます。ただし、無理をしないことが大切です。体調の変化に気をつけ、定期的に医療機関を受診して、医師の指導を守りましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日決まった時間に体重を測る(朝食前、排尿後が目安)
- 血圧を測定し記録する(家庭用血圧計を活用)
- 規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠をとる
- 感染症予防(インフルエンザや肺炎の予防接種について医師に相談)
- ストレスをためすぎないようにする
食事と運動
食事は、塩分を控えめにし、野菜や果物、魚を積極的に取り入れたバランスの良いものを心がけましょう。運動は、医師の許可を得た範囲で、ウォーキングや軽いストレッチなど、無理のない有酸素運動を週に数回行うと良いとされています。激しい運動や競技は避けてください。
精神的健康と心の健康
慢性の病気と向き合うことは、時に不安や落ち込みを感じさせるかもしれません。そんな気持ちは決して特別なことではありません。もし精神的な負担を感じたら、遠慮なく医師や看護師、またはカウンセラーに相談してください。必要に応じて、専門的な支援を受けることもできます。
予防
すべての拡張型心筋症を予防することはできませんが、原因となる可能性のある生活習慣(過度のアルコール摂取など)を控えたり、ウイルス感染を予防するための手洗いやワクチン接種を心がけることで、リスクを減らせる場合があります。家族歴がある方は、定期的な健康診断や心臓の検査を受けることが勧められます。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌ワクチンの接種は、心臓に負担をかける感染症を防ぐのに役立ちます。予防接種については、かかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
ご家族に拡張型心筋症や若い年齢での突然死(特に心臓が原因)の方がいる場合は、循環器専門医に相談し、定期的な心エコーや心電図検査を受けることを検討しましょう。
合併症
治療しない場合
- 心不全の悪化(息切れやむくみがひどくなり、日常生活が困難になる)
- 不整脈(特に心室頻拍や心室細動などの命に関わるリズム異常)
- 血栓症(心臓の中で血の塊ができ、脳梗塞などを引き起こす)
- 突然死(特に若い方で注意が必要)
長期的な見通し
拡張型心筋症は治療が必要な病気ですが、近年の治療法の進歩により、多くの方が症状をコントロールしながら日常生活を送っています。早期に診断し、医師の指導に従って治療を続けることで、進行を遅らせ、合併症のリスクを減らすことが可能です。希望を持って、前向きに治療に取り組みましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月9日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。