大腸憩室症(だいちょうけいしつしょう)— 大腸にできる小さなポケット
概要
大腸憩室症は、大腸の壁の一部が外側に小さくふくらんで、ポケットのようなものができる状態です。このポケットを「憩室(けいしつ)」と呼びます。ポケットができているだけのときは「大腸憩室症」といい、多くの人に症状はありません。ポケットの中に便などが詰まって炎症を起こすと「大腸憩室炎(けいしつえん)」となり、おなかの痛みや発熱が出ます。
重要な事実
- 大腸の壁に小さなポケットができる状態で、ほとんどは症状がありません。
- 健康診断の大腸内視鏡検査などで、偶然見つかることが多いです。
- ポケットに炎症が起きると「大腸憩室炎」になり、腹痛や発熱が起こります。
- 食物繊維をとる、水分をとる、適度に動くといった生活の工夫が役立ちます。
とてもよくある状態です。日本でも食生活の変化にともなって増えているといわれ、50歳を過ぎると少なくない割合の人に見つかります。多くの人は症状のないまま、ふだん通りに生活しています。
年齢とともに増え、50〜60歳以上の人に多く見られます。食物繊維の少ない食事、肥満、運動不足、たばこ、便秘がちな生活がある人に起こりやすいとされています。若い人にも起こりますが、頻度は高くありません。
症状
- 突然の激しいおなかの痛みで、動けない・体を丸めても楽にならない。
- おなか全体が硬く板のように張っている。
- 高熱と激しい腹痛が同時にあり、ぐったりしている。
- 大量の血便が出る、または便器が赤く染まるほどの出血がある。
- 顔面蒼白(かおが真っ白になる)、冷や汗、ふらつき、意識がぼんやりする(ショックの可能性)。
- ⚠38℃前後の発熱とおなかの痛みが続いている。
- ⚠痛みがだんだん強くなってくる。
- ⚠便に血が混じった、または血便が出た。
- ⚠嘔吐が続き、水分がとれない。
- ⚠食事がとれない、ぐったりしている。
一般的な症状
- 多くの場合はまったく症状がありません(大腸憩室症)。
- おなかが張る、ガスが多い、便通が整わないなどの軽い不快感。
- 大腸憩室炎のとき:左下腹部(おへその左下あたり)の痛みや、押すと痛む感じ。
- 発熱や悪寒(さむけ)。
- 吐き気、食欲がない、気持ちが悪い。
- 下痢や便秘など、便通の変化。
- 便に鮮やかな赤い血が混じる(憩室出血=けいしつしゅっけつ)。
子供の症状
- 子どもではとてもまれです。
- 起こる場合は、繰り返すおなかの痛みや血便として気づかれることがあります。
- 子どもの腹痛は原因がいろいろあるため、自己判断せず小児科に相談してください。
高齢者の症状
- 年齢が上がるほど憩室を持つ人が増えます。
- 痛みや熱がはっきりしないこともあり、気づくのが遅れることがあります。
- 大腸がんなど他の病気と症状が似ているため、出血や便通の変化が続くときは早めの受診が大切です。
- 持病の薬を飲んでいる場合は、受診時に必ず医師・薬剤師に伝えてください。
原因
主な原因
- 大腸の壁の一部が弱くなり、腸の中の圧力で外側にふくらんでポケットができます。
- 食物繊維が少ない食事で便が硬く量が少なくなると、大腸が強く収縮して圧力が上がりやすいと考えられています。
- 加齢による腸の壁の変化や、便秘による圧力の上昇も関係します。
リスク要因
- 50歳以上(年齢が上がるほど多い)。
- 食物繊維や水分の少ない食事。
- 肥満、運動不足。
- たばこ。
- 便秘がちな生活、排便時に強くいきむ習慣。
- 家族に大腸憩室症の人がいる。
- 一部の薬の長期使用や、特定の病気が関係することもあります。服薬は自己判断でやめず、医師・薬剤師に相談してください。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱とおなかの痛みが同時にある。
- 痛みが強くなっていく、押すと強く痛む。
- 血便が出た、便に血が混じった。
- 嘔吐が続いて水分がとれない。
- 食欲がなく、ぐったりしている。
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断や大腸内視鏡で憩室を指摘された。
- おなかの張りや便通の変化が続いている。
- 血便が一度でもあった(必ず受診してください)。
- 家族に大腸がんの人がいる、または年齢に応じた大腸がん検診を受けたい。
診断
まず問診と体の診察で、痛む場所や症状の経過を確認します。炎症が疑われるときは血液検査や腹部の画像検査を行います。炎症が強いときは、まずCTなどで確認し、炎症が落ち着いてから大腸内視鏡で腸の中を詳しく調べるのが一般的です。
行われる可能性のある検査
- 問診と腹部の診察(痛む場所、押したときの痛み)。
- 血液検査(炎症の程度、貧血の有無をみます)。
- 腹部CT検査(炎症や膿のたまり、他の病気との区別)。
- 腹部超音波(エコー)検査。
- 便の検査(感染による下痢との区別)。
- 大腸内視鏡検査(炎症が落ち着いてから行うことが多いです)。
診察で予想されること
検査の多くは外来で行え、CTは数分で終わります。大腸内視鏡の前には、腸をきれいにするための食事の制限と下剤の準備が必要です。痛みが強いときは、検査の前に痛みを和らげる処置をすることがあります。
治療
症状のない大腸憩室症は治療の必要がなく、食生活の見直しが中心になります。炎症を起こした大腸憩室炎は、程度に応じて安静、水分、食事の調整、必要に応じて抗菌薬(細菌を抑える薬)などで治療します。重症の場合や合併症がある場合は、入院して点滴や処置を行うことがあります。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとる。
- 痛みや熱があるときは無理に食べず、消化のよいものを少しずつとる。
- 回復してきたら、食物繊維を少しずつ増やしていく。
- 市販の鎮痛薬や下剤を自己判断で使い続けない(医師・薬剤師に相談)。
- 症状と食事・排便の記録をつけると、受診のときに役立ちます。
医療治療
症状がない場合は経過をみるだけで十分です。炎症があるときは、腸を休ませるための食事調整や点滴、必要に応じて抗菌薬(細菌の増えすぎを抑える薬)が使われます。膿がたまっている場合は、針を刺して膿を抜く処置や、入院しての管理が必要になることがあります。治療の方針は炎症の広がりや全身の状態によって変わるため、担当医の説明をよく聞いてください。薬の種類や量は医師が決めます。
手術が検討される場合
手術が必要になるのは多くありませんが、膿のたまりや腸に穴があいた場合(穿孔=せんこう)、出血が止まらない場合、繰り返し炎症を起こして生活に支障がある場合などに検討されます。緊急に行う場合と、炎症が落ち着いてから計画的に行う場合があります。
この病気と共に生きる
ふだんは特別な食事制限はありません。便通を整えておくことが一番のポイントです。水分と食物繊維をとり、適度に体を動かし、トイレを我慢しない生活を心がけましょう。
生活習慣のアドバイス
- 食物繊維(野菜、果物、豆、きのこ、海藻、全粒穀物)を毎食少しずつとる。
- 1日のなかでこまめに水分をとる。
- 散歩など軽い運動を習慣にする。
- 排便は我慢せず、強くいきみすぎない。
- 禁煙を考える。
- 適正な体重を保つ。
- 睡眠とストレスを整える。
食事と運動
以前は「種やナッツは避けましょう」と言われましたが、今は多くの研究で、種やナッツを食べても憩室炎が増えないと考えられています。心配なときは主治医に確認してください。食物繊維は急にたくさん増やすとおなかが張ることがあるので、少しずつ増やし、水分も一緒にとるのがコツです。運動は、息が少しはずむ程度の散歩で十分です。
精神的健康と心の健康
「また痛くなったらどうしよう」という不安や、食事のたびに気をつかう疲れを感じる人は少なくありません。憩室があっても、多くの人はふだん通りに生活できています。不安が強いときや気分が落ち込むときは、ひとりで抱えず、かかりつけ医や地域の相談窓口に話してみてください。つらい気持ちが続く場合や、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療機関や地域の緊急の相談窓口を頼ってください。
予防
憩室ができること自体を完全に防ぐ方法は分かっていません。ただし、食物繊維の多い食事、十分な水分、適度な運動、便秘の予防、禁煙、適正体重の維持が、憩室炎のリスクを下げる可能性があると考えられています。
検診プログラム
大腸憩室症そのものを対象にした検診はありませんが、日本では大腸がん検診(便潜血検査)が推奨されています。血便があるときは検診を待たずに受診してください。年齢に応じた検診の受け方は、お住まいの自治体の案内やかかりつけ医に確認できます。
合併症
治療しない場合
- 症状のない大腸憩室症がそのまま悪化することは多くありませんが、炎症を起こしたときに放っておくと、以下のようなことが起こりえます。
- 炎症が広がり、膿がたまる(膿瘍=のうよう)。
- 腸に小さな穴があく(穿孔)ことで、おなかの中に炎症が広がる(腹膜炎)。
- 腸が狭くなって便が通りにくくなる(狭窄)。
- 腸と他の臓器や皮膚の間にトンネルができる(瘻孔=ろうこう)。
- 出血が続いて貧血になる。
長期的な見通し
多くは症状がなく、ふだん通りに生活できます。炎症を起こしても、多くは安静と食事の調整、必要に応じた治療で改善します。再発することはありますが、食物繊維や水分、運動などの生活の工夫でリスクを下げられる可能性があります。心配な症状があれば早めに相談することが、安心して過ごす一番の近道です。
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最終更新: 2026年10月23日
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